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第二百十一話

 出陣式は派手だった。

 すげえの。

 軍のマーチングバンドの演奏が先導して礼服の俺たちが行進した。

 相変わらずビジュアルにこだわらない軍は俺たちを出身惑星順に並べる。

 先頭は嫁ちゃん。

 嫁ちゃんに旗持たすわけにいかないので近衛のガタイのいい隊員が旗を振る。

 トマスは嫁ちゃんの組にいた。

 嫁ちゃんと帝都組の後に各領主。

 つまり俺たちが旗を持って行進する。

 当然、大公の俺が先頭。

 惑星カミシロ本家の旗を振りながら行進。

 龍虎の刺繍がされた大きな旗だ。

 なんというか……まるで応援団のようである。

 そのあとに領主になったみんなが旗を掲げる。

 普通に領地の名前が書かれている。

 ……俺だけ派手なのね。

 少し恥ずかしかったけど観客たちは黄色い声をあげて応援してくれる。

 家族を亡くした人たちは涙を浮かべていた。

 嫁ちゃんが挨拶をして、ゲーミング坊主と神職が儀式を行う。

 それが終わると俺が副艦長に任命される。


「この身にかえてもゾークを討ち果たします!」


 俺がそう述べると割れんばかりの拍手が起こった。


「大公閣下! がんばってくれ!!!」


「祈ってるぜ!」


「やって来い!!!」


 好きなこと言っちゃって。

 トマスの時よりも熱狂的なんだって。

 俺たちを甲板に並べて敬礼させ発進。

 空を飛ぶので急いで中へ。


「ふへー……疲れたー……」


 訓練よりこっちの方が疲れる。


「はいはい。着替えて。礼服洗うから」


「はーい」


 クレアに言われて普段の軍服に着替える。

 なお三交代シフトが終わると芋ジャージマンになる。

 嫁ちゃんはメディアの取材を受けていた。

 艦には従軍ジャーナリストまでいる。

 俺といるとスクープが撮れるんだって。

 彼らも命がけである。


「あ、カミシロ大公様! ぜひコメントを! この戦争勝てそうですか?」


 眼鏡のお姉さんに聞かれる。

 コメントに困る。

 勝つか負けるかなんて時の運だろ。


「勝ち目があるから行くんですよ」


 勝てねえなんて口が裂けても言えるかよっての。

 勝つよ。

 泥すすってでもな。

 俺は軍帽を目深に被って表情を読まれないようにした。

 それを勝手に悲壮な決意と感じたらしく、メディアは「そ、そうですか……」と行ってしまった。

 俺の勝ちである。

 さーて、洗濯手伝いに行こっと。

 俺たちの雑用は当番制だ。

 少佐であっても同じである。

 だから俺は仕事を終わらせたらエプロンつけてランドリーへ。

 クレアが洗濯し終わった軍服とシャツをカゴに乗せてた。


「悪りぃ。今終わった。手伝うわ」


「うん、お願い」


 洗濯物を乾燥機に入れて行く。

 大型のためか洗濯と乾燥は別なのである。

 乾燥したやつが終わるとタグを見て分けていく。

 アイロンは個々でかける。

 ワンオーワンもタチアナもできるのだ。

 できないとは言わせない。

 ベッドのシーツとアイロンはできなければ士官学校ですら人権が認められないのだ。

 袋に入れて、たたんだシーツと一緒に配達係へ渡す。


「頼むぜ」


「ういーっす」


 そこに例の記者のお姉さんがやって来た。


「あ、あの……大公閣下も……雑用をするんですか?」


 なんだか驚いているようだ。


「しますよ。この船の隊長格はみんな士官学校の同級生ですし」


 トマスやサイラスと違って俺は職業軍人だし。

 このくらいはするんじゃねえの?


「は、はあ、やはり士官学校生から生活を変えてないと」


「基本的にはそうですねえ。直属の上官も陛下の近衛隊なんで、こういう細かいところの指示はありませんので」


 なんでもやるよね、士官学校では……って!

 そういや俺の士官学校の卒業ってどうなったんだろう!?


「ねえクレア。俺たちの卒業ってどうなったんだっけ?」


「電子ファイルで卒業証書来たよ。昨日かな」


「見てなかった……だそうです。少佐と言ってもまだ学生気分が抜けてないッスね。あはははははははは!」


「は、はあ……」


「便所掃除も配膳も調理もしますよ。やらないとできなくなりますからね~」


 なんだろう?

「さっそくスクープゲット」って顔してるんだけど。

 はい洗濯終わり。

 時計を見たら会議の10分前だ。


「おっと会議の時間だわ。クレアも来て」


「了解」


 エプロンを置いて会議に向かう。

 会議室にはメディアは入れない。

 部屋の前で別れて他の艦と通信会議である。

 嫁ちゃんは先に来ていた。


「お、婿殿が最後か」


 みんなやる気あるなあ……。


「洗濯当番だったんで申し訳ねえッス」


「カカカカカ! さすが婿殿だ! 大物よ!」


 通信会議の相手はトマスとサイラスである。

 全滅したらヤバいのだが、トマスは遠征の失敗を取り戻すため、サイラスはこの遠征の成功をもって公爵にねじ込む予定だ。

 そして嫁ちゃんはもう自ら出陣しなければ誰もついてこない。

 それだけ麻呂と公爵会で失態を繰り返しまくったのだ。

 みんな逃げられなかった。

 逃げるつもりもなかったようだけど。


「義弟がいれば安泰だな! あはははははははは!」


 なぜかトマスは喜んでる。

 サイラスも笑いを堪えてる。


「それにしても【佐】に雑用をさせる仲間たちも大物よな!」


 嫁ちゃんはツボに入ったのか机を叩いてゲラゲラ笑ってた。


「そんなおかしかった?」


 クレアに聞くとクレアも笑う。


「普通の会社なら部長さんだよ。部長さんに雑用させるんだもん」


「ほ、ほら、婿殿以外はそう思ってるようじゃぞ。見ろ」


 メディアの速報記事に俺のエプロン姿があった。

 好意的な記事ではあった。

 その記事は元軍人を中心に支持されてた。


「普通の士官学校はね、こんな雑用やらせないんだよ。国立で一番厳しい士官学校だからそういう教育方針だったんだろうね」


「ふへー……」


 知らんかった。

 学費なしで給料もらえるから入っただけである。

 あと宇宙海兵隊の方が陸軍より待遇いいし。

 特にメシ。

 陸軍はメシがなあ……。

 あと取得できる資格の多さとか、そういうのである。

 そこまで考えてなかったのである。

 だけど黙っとこ。

 黙っていればいい方に考えてくれるはずだ。

 こうして俺たちは戦艦での日常を過ごしていた。

 そして最前線の惑星近くに到達したのである。

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― 新着の感想 ―
カワゴン ソウジ スル カワゴン リョウリ スル カワゴン ハイゼン スル カワゴン シカク トル カワゴン 書類… ニげる!!!!!!
でも待遇いいから厳しさに完全脱走とかはしてないです(カワゴンみたいなアレはともかく) というのもそれはそれで軍隊の世界を知らない人には面白い話っぽくはある
>あと取得できる資格の多さとか そうそう、玉掛とフォーク(以下略) あれですな、悲壮な決意を滲ませつつも部下に混じって雑用に精を出す親しみやすい指揮官とかそういう記事書かれてるんやろなあ・・・ や…
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