第百四十五話
高みの見物である。
戦わなくてもいいってのは素晴らしい。
やはり世界はラブ&ピース。たまにバイオレンス。
地下組織の連中に死ぬまで戦う根性はない。
だって命をかける理由ないもん。
「悪いのは皇室だ!!!」
それはそう。
でも皇室ひっくり返して革命するには弱い。
だって次期皇帝の嫁ちゃんはゾークに負けたことないもん。
トマスなら戦争がヘタクソって理由で退位を迫ることができるし、ウォルターなら麻呂の共犯扱いで倒してもいい。
でも嫁ちゃんは戦争が得意だし、気持ち悪い麻呂の路線は継承しない。
かといって文官を皆殺しになんかしないし、公爵だってゾークとの関係が薄い家には罪を問う気はない。
被害者には皇帝就任後に謝罪と賠償をする予定だし、テロリストじゃない違法クローンには市民権を与えることも検討してる。
ジェスターその他の特殊な超能力者を支援する会議を開くことはちゃんと報道されてる。
女性型のゾークについてもネットワークから切断後に市民権の復活を考えている。
侯爵以下の領主には反乱を抑える圧政を見直し、経営へのアドバイスや融資を行う。
要するに制度的理不尽の改善だ。
今まで差別の対象だったビースト種や人体改造者の人権問題にも乗り出した。
というかレンと俺の問題があるので全速力で解決しなければならない。
誰も損をしない。
その代わりゾーク側の裏切り者はぶっ潰すと宣言してる。
女性型みたいに洗脳されてるなら仕方ないが、自分の意志で反乱を起こしたものは許さない。
そんな状況なので嫁ちゃんの人気は高い。
ゆるーい独裁が待ってるが、麻呂時代よりはだいぶマシだ。
一部のメディアが調子にのってあることないこと書き連ねたが、即日市民に襲撃&放火された。
やだ怖い。
そんなわけでテロリストが抗議しても相手にされない空気である。
警察も容赦なくボコボコにしている。
どこで手に入れやがったのかプラズマライフルを連射する。
だけど対策は完璧だった。
パーソナルシールドと盾で防御して接近。
盾でぶん殴って倒れたところを数人で取り囲んで警棒で殴ってる。
銃を出した時点で手加減一切なし。
普通、ボコボコにするときは誰かが手加減してるはずだが、そんなものはない。
武道の黒帯ぞろいの警察が本気でボコボコにする。
そりゃね、警察だって怪我したくないもん。
さらに暴れたやつは数人で手足をつかんで放り投げる。
元気でよろしい!!!
「てめえらぶち殺してやる!!!」
やめればいいのにイキリ散らかしたアホが火炎瓶を持ち出した。
パンッと音がして火炎瓶が割れる。
レンの狙撃だ。
火がついてた火炎瓶が割れるとどうなるか?
アホは一瞬で火だるまに。
警察が慌てて消火。
「てめえら! 殺すつもりだな!!!」
「火炎瓶持ち出したのはお前らだろが!!! もういい! 銃の使用を許可する!!!」
アマダが拡声器で怒鳴った。
テロリストたちはようやく警察が本気だと理解したようだ。
アホの集団だな。
警察はプラズマショットガンを出す。
アサルトライフルをシールドで受けるとそのまま撃ち返す。
人が死ぬとかはよくないことだ。
でもアサルトライフル持ち出したら死んでも文句言えないよね。
問答無用で制圧していく。
ほとんどが老人。
それに人生失敗してそうなおっさんたちが次々倒れていく。
俺たちは倒れた連中を引きずって救急車に乗せていく。
軍が救急みたいなことしてる。
俺が指揮? してない。全力で肉体労働してる。
もうね応急処置して、死にそうなのにナノマシン注射して……。
「痛えよぉ」
「おら止血パッド貼るぞ!!!」
べんっと止血パッド貼って救急に引き渡す。
ケビンも看護師役をしていた。
「頭怪我してる! ホチキスない!?」
「ほらよ!!!」
ケビンに医療用のステイプラーを投げる。
メリッサも……というか士官学校のほぼ全員が救急技能資格を取得したので衛生兵として大活躍である。
ほら……いつ死にそうなくらいの怪我するかわからないし。
軍の救急技能は上級取っておけば二ヶ月の講習で看護師資格を取得可能!(ただし受講料三十六万クレジット。国からの補助なし)
軍をクビになっても生きていけるお得な技能なのだよ!!!
ケビンはアホの頭にグサグサホチキスを刺して傷を塞ぐ。
ナノマシンが止血するから大胆に!
アホはパルスグレネード投げようとして警察に二階から投げ落とされたらしい。
ぶぁーか!
「警察の横暴だ!!!」
アホが怒鳴った。
「あははははは。我々軍が突入したら問答無用で撃ち殺してましたよ」
ケビンも辛辣である。
人型ゾークだとしても洗脳解けたら普通の帝国民。
せっかく落ち着いてきた帝都を荒らされたらそりゃ怒るわ。
今回は怪我しないし、死人も出ないしで完全勝利だぜー!
と思った瞬間、警官が叫んだ。
「クローンだ!!!」
なんでわかったん?
そう思って見たら納得。
手配写真と同じ顔。
侍従長だ。
侍従長はこちらに手をかざした。
あ、やべ!!!
「超能力者だ!!!」
俺の声と同時に周囲が爆発した。
爆風で何人もの警察官が飛ばされた。
パーソナルシールドなかったら死んでたぞ!
銃撃が響く。
レンが頭を撃ったのだ。
侍従長の頭が弾けた。
だけど侍従長は立ち上がって笑顔で自らの頭の穴に指を突き刺した。
「愚か者どもが! この私を殺せると思うな!」
次の瞬間、侍従長の傷が塞がった。
俺の自動回復なんてものじゃない。
桁が違う。
まるでメリッサの実家で出会った肉の怪物みたいな……。
「侍従長! お前! ゾークだったのか!!!」
「クローンは必ずオリジナルとは違う生き物になる。たとえゾーク因子を持ったとしても必ずゾークの意思に目覚めるわけではない。それが私とオリジナルの違いだ」
「なに言ってんの?」
ふふっと侍従長がほほ笑んだ。
次の瞬間、警察が一斉射撃した。
パルスショットガンで蜂の巣になるはずだった。
だけど侍従長はゾーク。
どこまで目覚めてるかはわからない。
だが帝国のテクノロジーに対する備えはしていた。
侍従長の体が固い殻に包まれる。
パルスショットガンが弾かれる。
レンの実弾狙撃は首を傾けてよけた。
「レオ・カミシロ! 教えてやろう。あの日の真実を! オリジナルを殺すように俺に命じたのは当時皇太子だったミツサダだ」
いきなりの麻呂登場に俺たちは一瞬固まった。
ほんとあいつ! なにやらかしてんの!!!
待て待て待て待て、もしかしてありとあらゆる苦難を作り出したのって麻呂ぉッ!!!




