第百十五話
まずはリリィに連絡。
「レオだ。民間人を逃がせ!」
「おい! 女はガキども守りながら殿下の船に! 野郎どもは戦え!」
「うおおおおおお!!!」
雄叫びがあちこちから聞こえた。
めちゃくちゃ士気が高い。
「ここの海賊ってさ……帝国軍より勇敢だよね……」
つぶやくとヒューマさんが教えてくれた。
「俺たちのほとんどが元帝国軍人。不名誉除隊に逃亡中の犯罪者に知らない方がいい秘密を知ってしまったり……死に場所を探してる連中です。最後に大きな花火ぶち上げられるって喜んでますぜ」
「なるべく死なないでね」
「へへへ。お嬢! レオ・カミシロ大尉が【死ぬな】ってさ!」
「あはははは! わかったよ! おい野郎ども! あのレオ・カミシロがお前らに【死ぬな】ってさ! 気合入れろ!!!」
ヒューマさんがごついライフルを投げて寄こした。
「M88ジャギュレイター。丸ノコを飛ばす実弾兵器です。大昔の対人型戦闘機用ランチャーです。昔は人型戦闘機が小さくて装甲が薄かったって話ですぜ」
「それ500年どころじゃなく前だよね……」
「準男爵領だと未だに現役ッスよ。火炎瓶なんかが未だに怖いように、こいつも殺傷能力は高いんですわ。見た目は頭悪そうですけどね」
ヒューマさんがジャキッと専用弾のカードリッジを取り付けた。
俺も見よう見まねで装填。
「はい、グレネード」
渡されたのは火炎瓶。
日本酒の瓶だ。
ラベルは銘酒【親父の寝言】。
どう考えても手作りだね。
「蓋に隙間がないかちゃんと確認してください。隙間があると投げる前に爆発しますんで」
「怖いんですけど」
「みんな最初はそう言います」
隙間はなし。
火をつけて投げるやつね。
一本しか持てないわ。
ジャギュレイターは肩にかけ、火炎瓶は手で持つ。
邪魔!
「あとこれ」
おっと、こいつはすげえ。
「海賊名物カトラスです。戦闘機の装甲を削って作ったんで丈夫ですよ」
こっちは鞘とベルトつき。
腰にかける。
カニちゃんには無力すぎるけどテンション上がるわ。
で、二人で外に出る。
海賊が戦ってるのが見えた。
カニちゃん……じゃない。
あれは……橋本の金魚の糞やってた公爵!
名前わかんないけど副会長じゃないやつ!!!
こっちはかろうじて人間の形を保ってた。
だけど鉄骨を振り回してる。
なんてこった。
「てめえら逃げろ!!!」
ヒューマさんが火のついた火炎瓶を投げた。
なんだろう揮発性の薬物かな?
刺激のあるにおいだ。
公爵が火だるまになる。
海賊たちはヒューマさんに感謝しつつ後方に下がった。
「じゃ、ちょうどいいんで帝国兵の一般的な戦い方をレクチャーしましょうか。レッスン1、パーソナルシールドは常に携帯する」
ヒューマさんが前に出る。
普通に歩いて行く。
公爵が口を開けた。
プラズマキャノン!
だけどシールドで防がれる。
「レッスン2、わざと喰らってから攻撃。恐怖を飼い慣らせ」
公爵の口めがけてジャギュレイターをぶっ放す。
公爵の頭が口から真っ二つになって飛んだ。
「レッスン3。死んだように思えても油断するな」
さらに何発もぶっ放す。
もともと人間に使うような兵器じゃない。
公爵は原型を留めなくなった。
「大尉! まだ動いてる! 焼いてください!」
俺も火炎瓶を投げる。
このにおい。
ガソリンかな?
激しい炎というか爆発が起こり公爵が燃えた。
威力でかすぎやないかい!!!
「おう、鎮火したら回収しとけ!」
ヒューマンさんが海賊に指示を出す。
やだ……かっこいい。
でもそれよりも火炎瓶のことだ。
「あのヒューマさん。火炎瓶のことなんですが……」
俺のだけ威力でかすぎだろが。
「【あたり】引いたみたいっすね。ハンドメイドなんで威力のばらつきがあるんですが……それ薬品の混合失敗したやつっすね」
「怖ッ!!!」
「レシピ通りに作れって言ってるんですけどね。作業に慣れてくると混合比がテキトーになってくるんですわ」
「うわーお」
でもさ、そういうの聞いたことあるわー。
オートメーション化されてない軍需工場とかでレシピ無視して作りはじめるやつ。
しまいに事故起こすやつ。
「やっぱり既製品にはかないませんわ」
「ほんとねー」
ほっこり。
ここで嫁ちゃんから連絡が入った。
「婿殿! そちらで異変があったと聞いたぞ!」
「一体倒した! ヒューマさん強すぎ!」
「……生身と聞いてるが?」
「生身で倒したよ」
「……あまり人間をやめるなよ」
「まさかの人外認定!!!」
「とにかく応援を送る! それまで耐えるのじゃ!」
「へーい」
というわけで避難を手伝う。
するとリリィの自称秘書のフェイがいた。
悪趣味なスーツが焦げてる。
さては【あたり】の火炎瓶引いたな。
それで焦げたのね。
へいへーい!
俺も同じ!
「おいっす! 久しぶり!」
「うわ! 出た!!! レオ・カミシロ!」
めっちゃびびってやんの!!!
でもなんでそこまでびっくりするんだ?
「んだよフェイ。俺もいるぞ」
「おうヒューマ。生きてたか」
フェイはパンパンとクールな動きですすを払った。
なぜかフェイはヒューマの前ではキザにふるまう。
なんだろうか?
ヒューマさんを狙ってる路線はなさそうなので却下。
ってことは対抗心?
でもなぜだろう?
ヒューマさんだったら組織内の立場にはこだわらないだろ。
「敵はどうだ?」
「いま化け物と交戦中だ。リリィ様もいる」
うーん……リリィに惚れてるのか?
ヒューマさんはライバルじゃなくて親父だと思うのよ。
「お嬢が! 馬鹿野郎! なんで行かせた!」
「行っちまったんだよ!」
するとヒューマさんが俺の方を向いた。
あ、はい。
余計な分析やめますね。
と思ったら真剣な話だった。
「レオ! 手を貸してくれ!」
「お、呼び捨て。いい感じッスね」
「いいから!」
「へーい!」
リリィを助けなきゃ。
まだ大丈夫な感じがするんだよね。
俺たちは公爵がいる区画に向かった。




