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第百十二話

 戦線から離脱してはるか後方へ。

 ゾークは追ってこなかった。

 ゾークの船は防衛用で近づきさえしなければ危険性がないようだ。

 ……って、どうやって惑星サンクチュアリに近づくのよ。

 疑問が多々あるがここで答えは出せない。

 今できることをしよう。

 危険性がないことを確認する。

 逃げてきた公爵会の残党だらけなんでそのリスクは無視無視。

 大丈夫よ。

 みんな死ぬ寸前だから。

 嫁ちゃんやトマス、俺を殺してもシャーアンバー男爵ってことになってるサイラスがいるし。

 まずは怪我人を回収。

 なぜ、わざわざここでやるかと言うと、公爵軍の船が限界だったからだ。

 爆破しそうなもの多数。

 なのでここで足止めだ。

 まずは怪我人に無事な船に移ってもらう。

 爆発しそうな戦闘機やら戦艦はスペースデブリにならないように一箇所に集めてアンカーで係留する。

 ついでに機雷を仕掛けておく。

 ゾークが近づいたらボーンである。

 たったこれだけの作業に半日かかった。

 ただ人が移動するだけでこれ。

 公爵会の方と言うと、これまた頭が痛くなる。

 野望と運命をともにする程度の美学があると思った俺が間違っていた。

 橋本が死んだら降伏して俺たちに合流よ。

 で、いまなにが行われているかって?

 オークみたいなおっさんどもが俺におべっか使ってる。

 もう遅いと思うのよ。


「レオ・カミシロ侯爵殿! 逆賊橋本の手から解放していただきまして感謝のしようもなく……」


 すっげーな。

 トマスの遠征に加わってたのがすでに橋本公爵に監禁されてたことになってる。

 汚い貴族の神髄を見たぞ。

 手の平返し芸で何百年も家を維持してきたのか。


「いますぐ首都星に帰還し、悪の公爵橋本の残党を打ち倒しましょうぞ!!! なあにこの元木公爵家の力でベロニカ様を皇帝にするなど簡単に……」


「そうか下がれ」


 嫁は興味なさそうだった。

 元木公爵は会釈して部屋から出た。


「処刑じゃ」


 嫁ちゃんが冷たく言い放った。


「なにかに使えない?」


「無能な裏切者などいらん」


 そりゃそうか。

 さようなら……無能公爵たち……。

 これから大粛正ですな。

 さて、アリッサとエッジであるが寝込んでる。

 どうやら俺の専用機は超能力を使うようだ。

 ごっそりパワーを吸われてしまった。

 ……クレアはいつも無事だよな。


「婿殿はどうしたい? 公爵を味方につけたいと思うか?」


「善意で余計なことしそうだからいらない」


 あのレベルのクズを俺が制御できるとは思えない。


「ははーい、サイラスっちとトマスぽんが来たよ~」


 妖精さんが話に割って入ってきた。


「へーい」


 血を分けた三人が会議室で椅子に座る。

 俺は嫁ちゃんの横で【休め】で待機してた。


「レオ、君も座れ」


 トマスが椅子を差し出してきた。


「いや俺は皇族じゃないですし」


「私は弟だと思ってるのだが」


 ああーん。トマス兄さんいい人だ。

 上に立つ才能は微妙かもしれないがいい人だ。

 俺も椅子に座る。

 トマスが話を始めた。


「まず既定の話をしようか。公爵に大量の空きが出る。レオ、君はこれからカミシロ公爵だ」


「うっす」


 不敬と言われても【うっす】としか返事できない。

 だって公爵になりたくないもん。

 公爵になるのはいいんだ。

 問題は俺に公爵できるかが問題なわけで。

 圧倒的に知識が足りない。

 でも断れないから返事は【うっす】。


「公爵が大尉では世間体がよくないだろう。少佐に」


「そっちは無理!!!」


 無理である。

 それだけは無理である。

 絶対拒否する!!!


「大尉の今でもAIに半分以上やってもらったうえでギリギリなのに……少佐の仕事内容は大学出ないと無理!!!」


 正直言って妖精さんのサポートをつけてギリギリである。


「秘書ならつけるが……」


「トマス義兄さん違うの……ぜんぜんわからないの……知識がなさすぎて書類に書いてある文の意味がわからないの……。毎回調べるけど入門書レベルから読んでるの……」


 仕事の書類書くためだけに三千部も出てない学術書を読むはめになってる。

 無理である。

 それでもわからないことが多い。


「あ、ああ、そういう意味か……」


 喧嘩が強いだけじゃ軍幹部の仕事はできない。

 少佐くらいになると書類仕事でやらかすと死人が出るのだ。

 俺にやらせていいわけがない。


「婿殿は自分の立ち位置をちゃんと理解してるようじゃの。一旦保留するしかないの」


「嫁ちゃん……天使!!!」


「おかしいな……橋本は専門外の仕事でも役職を与えれば喜んでたが……」


 トマスは少し納得してないようだ。


「兄上、橋本たちは仕事を他人にやらせてただけです」


 嫁ちゃんが頭を抱えながら言った。

 アホの極みで頭痛くなってきたのだろう。

 そこで今まで黙ってたサイラス義兄さんがぼそりと言った。


「公爵の方なら手伝えると思うが。惑星シャーアンバーは閉鎖されるのだろう? 宇宙港のあるコロニーは大野に譲渡すればいい」


「サイラス義兄さん!」


 持つべきものは教養ある義兄である。

 これで少佐昇進は回避した。

 公爵か……。

 どれくらい偉いか正直わからない。

 侯爵でも村長レベルだもんな……。

【統治入門】だと【領主は惑星の王である】って書いてあったけど、俺の肌感覚じゃ王じゃねえや。村長だよなっと。


「義弟よ。これからよろしく」


 実質的な帝国最高会議はこれで終了。

 嫁ちゃんと今後の話をする。


「どうやっても惑星サンクチュアリに近づける気がしない」


「新兵器が必要か……」


「それ俺死ぬやつ」


 欠陥兵器を引き当てる才能だけは誰にも負けないと思う。

 とりあえず兵士を運ばないと。

 直近の問題としては食糧がね……。

 内部に生産施設がある戦艦がいくつもなくなったからな。

 サクッと戻らねば。

 嫁ちゃんと別れて食堂に行く。

 食堂では知らんやつらもいる。

 公爵軍の兵士だ。

 ケビンとメリッサを見つける。


「ういーっす」


「お、隊長、会議終わったん?」


「うん、とりあえずメリッサの家まで戻るわ」


「了解。親父に連絡入れとく」


「ところでさレオ、少佐に昇進するって本当?」


 のんきな声でケビンが聞いてきた。

 俺は暗い顔で答える。


「……無理でゴザル。昇進したら死ぬでゴザル」


「ああ、うん。なんかごめん」


 もうね、無理である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴザル頑張ってて偉い!一段落したし、誰かか何かに癒してもらいなー(でもって勉強しなーw)
[一言] 「……無理でゴザル。昇進したら(友と兵が)死ぬでゴザル」 切実やな~、主人公は勇者(鉄砲玉)であって指揮官にはなれんと分かってるからお辛いですな
[一言] 意図していない位打ちで破滅しそうになってる…… ゾークと格闘する時間より書類と戦う時間の方が多いもんな… ジェスターの効率的な倒し方は出世させて過労に追い込むことだったんや!
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