第百六話
引き続きメリッサの実家の要塞でお仕事。
嫁ちゃんやピゲットと仕事をしてるとヒューマ軍曹が来た。
せっかくなので忍者の話をする。
できたてほやほやのバカ話である。
もうねドヤ顔で語ったわけよ。
そしたらヒューマにはウケなかったのよ。
「その店行きましたぜ」
「はい? なぜに?」
「そういう昔からやってる店は地元の有力者が客だったりするんですわ。挨拶に行って有力者を紹介してもらうんですわ。ちゃんと地元に仁義を切って慣習なんかを聞いておく。それだけでトラブルが格段に減るんですわ」
「……嫁ちゃん」
「うむ、ピゲット」
「ですな。ヒューマ軍曹!」
俺たちは真顔になった。
「な、なんです? おっかない顔して」
「今の給与の5倍払う。近衛隊に来ないか?」
「なんすかいきなり!」
俺が説明する。
「いやだってヒューマさん! 優秀すぎるでしょ! 俺たち士官学校出じゃそこまでできねえって! マジで超優秀な人材なんで来てもらえませんか?」
「いや俺はお嬢の親父さんに大恩がありますんで!」
その忠義心も欲しいわ。
ま、今すぐ囲い込む必要はないんだけどね。
ねー、嫁ちゃん。
「婿殿。悪い顔してるぞ」
「そういう嫁ちゃんも」
さてヒューマのおっちゃんの勧誘はいったん置くとして。
子爵領を確保したので次が問題だ。
この辺からトマスたちがフルボッコにされてる地帯に入る。
小惑星帯までの逃走経路確保したからトマスほど難易度高くないんだけどね。
子爵領に防衛機構作っておくのがいいのかな?
メリッサパパが退院するまで何もできないけど。
とりあえず子爵領でボルトスロワーと警備ドローン作るのが当面の仕事である。
ボルトスロワーは欠陥兵器だけどないよりはマシ。
男子どもはエネルギーパックの交換に追われてる。
ボルトスロワーのあまりの燃費の悪さに右往左往である。
でもこれでも実弾よりだいぶマシという……。
「婿殿、どう考えてもボルトスロワーは歩兵用に小型化できんの」
「うん死人出るよね」
初期の火炎放射器よりひどいことになるだろう。
でも楽は楽なんだよな。
弾速クソ速いし、エイム適当でも当たるし、威力凄まじいし。
自分まで焦げるけど。
「とりあえず武器は改良型待ちかな」
整備班は機体の整備に追われてる。
ボルトスロワーのダメージが大きかったせいだ。
みんな表面塗装とかコーティングとか装甲が溶けまくってる。
ほぼすべての機体で装甲の全交換になった。
なお俺の機体なんだけど、テルミット弾で焼けた部分まであった。
あれ……けっこうギリギリのラインで戦ってたんじゃ……。
笑うしかない。
「書類仕事も終わったし、訓練でもするかー」
「婿殿、トレーニングルームがあるらしいぞ。エッジたちが先に行ったはずじゃ」
「さすが公安の訓練惑星。……嫁ちゃん。コスプレの約束忘れないでね」
俺は澄んだ目で言った。
「衣装がない!」
「ぬう、兵器の生産が優先か!!!」
繊維は戦闘服やらでも使うしね。
あと内装に困ると使う紅白のぼりにも。
トレーニングルームに向かう。
宇宙空間だと筋肉をいじめるにも限界がある。
久しぶりに限界まで追い込める。
とマゾ思考が鎌首もたげたところで侍に囲まれる。
チョンマゲってわけじゃないんだけどすぐにわかるよね。
「レオ・カミシロ大尉ですね。我が殿がぜひお会いしたいと申しております」
メリッサの件かな。
親に挨拶してないもんね。
「わかりました。行きましょう」
医療棟というかテーマパーク隣接の総合病院に行く。
大仏通路は使わず自動車で。
帝都惑星の自動車メーカーのものでごく一般的な車種だ。
ピカピカの悪趣味ホバー車じゃなくてよかった。
内装も普通。
ヘビ柄だったりミラーボールはない。
こういうとこやぞ!!!
ホントこういうとこやぞ!!!
こういうところで差がつくんだぞ!!!
わかってるか!!! 海賊領のアホども!!!
「迂回しますんで貨物車よりは時間かかると思います。地下の列車は非常用ですんで」
侍の一人、陽気な兄ちゃんに言われた。
助手席には護衛代わりのマッチョなおっさんが乗ってる。
「その大尉は現役の侯爵閣下だと聞いてます。どうです? うちの惑星、侯爵領に比べると田舎でしょう」
「いえいえ、うちの惑星は帝都近郊ですけど農業惑星ですから。田舎なんでテーマパークなんてないです。たいへん勉強になります」
「かの有名なレオ・カミシロ大尉にそう言ってもらえるとうれしいです。大変じゃないですか? 戦場に出ながら領地の運営をするのは」
「うちは兄が優秀なんで頼り切ってます」
最近わかったんだけど。
うちのサム兄はヒューマのおっちゃんと同類なんだわ。
圧倒的コミュニケーション能力で地元民を説得してありとあらゆる施設を誘致しまくる。
化け物じみたフットワークで取材を受けまくり、その足で地元のイベントに参加しまくる。
親父や長兄と真逆の存在。
地方自治体の長に最適化された男。
中央で権力握れば地元が豊かになるだろ的なのと真逆。
戦争終わったら侯爵領はサム兄に渡して俺は婿をエンジョイしようと思う。
本気でそう思う。
妙にほめられ続けてたら病院に到着。
もともとテーマパークで怪我人出たら治療する施設なんだって。
天才か?
個室に案内される。
「殿、レオ・カミシロ大尉がお越しになりました」
「ああ、通してくれ」
中に入ると筋肉質のおっさんがいた。
縦も横も大きいタイプのおっさんだ。
服の上からもわかるすげえ僧帽筋。
トレーニングさぼってたらこの体型にはならない。
達人クラスだわ。
だけど今は血の混じった体液を出す管に繋がれている。
年齢的にナノマシンの効果が薄いのかもしれない。
「メリッサの婿さんですな……ご挨拶が遅くなりました。館花です」
「い、いえ、こちらこそ!」
「……なんていい婿さんだ。私はね、あいつの育て方を間違えてしまったんですよ。女の育て方なんて知りませんでしたから。あんなに自分の顔に悩んで傷ついてたのに気づきませんでね……恥ずかしい話です」
「いえ……その……メリッサは強い人です」
強すぎるから今まで我慢しちゃったんだけどね。
すると俺の頭の中まで見透かしたような顔をした。
「メリッサを頼みます」
麻酔が効いてるのかその言葉を言った直後に館花子爵は寝てしまった。




