第87話 おっさん、暇を潰す
ゴブリンとウルフを退治して、肥料の素が沢山できた。
畑や家畜の被害も少なくなり良い事尽くめだ。
子供達も元気に村の外で遊んでいる。
「なんか、人が生活してるちゅう感じやね」
「そうだな。活気が出て来たと思う」
「そろそろ、水の呪符はやばいんちゃう」
アルマが空を見上げてそう言った。
「雨が降って水の呪符が余るかもな。でもそれは置いといても、そろそろ雨が欲しい。水を撒いたのと雨が降ったのでは、雲泥の差があるみたいなんだ」
「そうやね。土全体が湿っているのと一部分だけやと、めっちゃちゃうかも」
「おっ、雲が出て来たぞ」
「ほんまやね。願いが通じたのかも知れんね」
農民にとっては待望の雨が降り始めた。
そろそろ、次の商品を考える時期が来たのかも知れない。
この雨は考え事をするのにちょうどいい。
ストーンバレットの呪符とぬかるみの呪符は防衛に必要だから今後も作るとして。
腐敗の呪符と植物成長の呪符も必要だな。
水の呪符の分が無くなった訳だから、これに代わる物を何か考えないといけない。
一人で数日、考えたが良い案が出ない。
仕方ないのでアルマ達を集めた。
「どんな呪符を作ったら良いかの案を出してくれ」
「そうやね。重さ軽減はどない」
「呪符は威力が小さいと聞いてるわ。駄目じゃないの」
たぶん紙一枚で大きな背負い一つぐらいだろうな。
「適用一瞬」
持続時間の問題があるのか。
良い案だったが、いま一つだな。
「私は水の呪符を作り続けたら良いと思う」
「エリナは何でそう考えた?」
「水を運ぶのは大変じゃない」
「そうだな」
「水の呪符は軽いから、水筒代わりに良いと思うわ」
「一理あるな」
「それに干ばつの記憶が薄れないうちは、水の呪符を備蓄したがるんじゃないかな」
「それも一理ある。しかし、代替え品は欲しい。高く売れるの物なら、なお良い」
「点火」
「点火は出来るけども、高くは売れそうにないな。候補としては、まあまあだけど」
「人に困っている事を、聞いて回ったらどない」
「それしかないか。必要は発明の母だからな」
雨の中、俺は村人宅に押し掛けたところ、菓子を持参したので大歓迎された。
「困っている事はないか?」
「金がありません。若い手も。食料の備蓄も」
そんな事を言われてもどうにもならないな。
何とかしてやりたいが。
でも何が足りないのかは分かった。
心の余裕がないのだな。
生活に追い詰められている。
玩具を作ろう。
これなら他の場所でも売れる。
何を作ろう。
何か和む物が良いな。
危なくない物で何かないかな。
エアークッションの代用品を作ろう。
呪符を一つ作動させるとプチっと音がする。
これだけだ。
今までは一枚の紙に100個の呪符だったが、400個ぐらいは出来るだろう。
試しに一つ作ってみた。
呪符に触るとプチっと音が。
「なんやしょうもな」
「アルマ達もやってみろよ」
「ほな」
アルマ達がプチプチやり始めた。
「なんや楽しくなってきた」
「癖になるわね」
「闇の誘惑、その名はプチプチ。虫けらを踏みつぶす如きの快感」
「代官様、遊んでないで仕事して下さい」
ディーンに叱られてしまった。
「いや売り物を考えたんだって。領民のストレス発散にもなる奴をさ」
「下らないですな。単純作業なら麦の脱穀でも出来ます」
「麦は音を立てないから」
「では麦の脱穀が出来て、音がする呪符を作ればよろしいのでは」
なるほど。
麦を切り離す呪符は出来る。
同時に音を出すのもだ。
作ってみたよ。
領民には大好評だった。
でもこれは高値では売れないな。
領内で流通するだけに留めておこう。
そんな事をしているうちに、数日間、降り続いた雨は上がり晴天になった。
そして更に何日か後。
畑に雑草がうっそうと生え始めた頃、馬車が続々と到着し始めた。
出稼ぎに行っていた働き手が帰って来たのだ。
やっとかよ。
雑草しか生えてなかった畑全てに、柵が作られ畑らしく整備された。
やっとスタート地点に立てたな。
これからだ。
ブレッド、首を洗って待ってろよ。
見返してやるからな。




