第75話 おっさん、罠にはまる
収容所に行くと俺達は囲まれた。
罠か。
あるいは救出チームにスパイがいる可能性もある。
だが、こんなの食い破ってやる。
「手筈通りにやるぞ」
敵が瓶を投げて後退していく。
くそっ、毒か。
全員にガスマスクは支給していない。
俺と一部の味方はガスマスクを装備した。
「ありゅ、らりゅちっが、まわらりゃない」
しまった、皮膚から浸透するタイプの毒か。
ここまでするか。
「報告にあった通りです。フィーレス子爵、この麻痺薬の効き目はどうですか? 使えると思いますよ」
「大変すばらしい。この麻痺薬を開発した奴には褒美を取らせろ」
くそう、腕も足も力が入らない。
周りの味方は全て地に伏している。
このままじゃ、駄目だ。
話しているフィーレス子爵と思われる人物をなんとか人質に出来ないだろうか。
麻痺薬が回ったのだろう。
俺はくたっと崩れ落ちた。
万事休すか。
「ふはははっ、奴隷の首輪を嵌めてしまえ」
「はい、ただちに」
俺達全員は奴隷の首輪を嵌められてしまった。
しばらくして麻痺の影響が抜けていく。
首輪には精神魔法は仕組まれてないようだな。
精神魔法は精神力が強かったり、激昂したりすると無効化される。
不確かだから使ってないのだろう。
「おい、奴隷共よく聞け。武装を解除しろ、収納魔法の中身も全てだぞ」
味方はみんな動かない。
「罰を食らいたいようだな。電撃」
首輪から電撃が走る。
「あがががっ」
見ると味方全員が苦しんでいた。
首輪の機能は電撃を与えるだけなのかも知れない。
「分かったか。罰を食いたくなければ素直に従え」
仕方ない。
俺はいくつかの武器をアイテムボックスから出した。
他の味方も渋々と命令に従っている。
「良い奴隷がいっぺんに手に入ったな。そこの女はわしの好みだ。よく顔を見せろ」
フィーレス子爵がアルマに目をつけたようだ。
子爵がアルマに近づいて顎に手を掛ける。
その時、アルマが素早く動いて、フィーレス子爵の背後に回り、腕を首に回した。
「おい、わしを助けろ」
「はい、ただいま。電撃、電撃、電撃」
「ちいとも効かへんな」
「そんな馬鹿な。麻痺薬を使え」
アルマに麻痺薬が掛けられる。
「わしまで痺れたらどうする」
「しばし、我慢を。反抗している奴隷からお助けする為です」
「あほ、かいな。エリナ、モニカ!」
エリナとモニカが武器を拾い味方の奴隷の首輪を切り裂いていく。
「電撃、電撃。何故、効かない」
そりゃ、アシスタントはロボットみたいなものだから。
麻痺薬も電撃も効かない。
味方は全て解放され、人質をとられている子爵側の兵士はなすすべがなくなった。
「よし、収容所を解放するぞ」
「すみません。手柄を横取りするようで恐縮なんですが、子爵の身柄を渡して下さい」
突然現れて、そう声を掛けてきたのはイシュトンで、こいつはギルドで殺し屋をしている奴だ。
「仕方ないな。ちょっと待ってろ」
俺はメイスで子爵の兵士を叩いて回った。
逃げ出した奴もいたようだが、味方が止めを刺した。
「もう、連れてっていいぞ」
「では失礼します」
イシュトンが子爵に縄を掛ける。
「わしを誰だと思っとる。フィーレス子爵だぞ」
「ええ、存じてます。悪行も全てね」
「そんな」
観念した子爵がイシュトンに連れて行かれた。
収容所の解放はあっけなく済んだ。
「アンジェラじゃないの。何でこんな所に」
オリヴィエが少女と話している。
「知り合いか?」
「ええ、出身地の村に住んでる女の子よ」
盗賊に村がやられたんじゃないかな。
「オリヴィエ、村が、村が」
「落ち着いて、何があったの」
「ある行商人が疲れが取れると言って魔道具を持ち込んだの」
「それで」
「村の人達はその魔道具の虜になって、働かなくなったの。それで年頃の娘は全員が売られて」
クラン・ラベレンの匂いがぷんぷんするな。
次はその村を救いに行くか。
「アルマ、エリナ、モニカ、今回は助かった」
「油断しすぎや」
「そうそう、私達が居なかったら危ない所よ」
「油断大敵」
「今度からはウェットスーツを着込んで行くよ」
「そういう良いのがあるなら、もっと早く使いなさいよ」
「あれはな。着込んで運動すると暑いんだ」
四の五は言っては居られないか。
氷魔法も使える事だし、次は装備していこう。




