第52話 おっさん、無念を託される
「くそう、この無念……誰か……」
ダンジョンでまた一人犠牲者が出たようだ。
ダンジョンを経営する側としては罪悪感など芽生えない。
危険が嫌ならダンジョンに入ってくるなと言いたい。
だが、俺は気が付けば冒険者なるべく助けるようにしている。
謝礼が美味しいというのもあるが、これもダンジョン経営の一つかなと思っている。
帰還率が上がれば冒険者も沢山来る。
そういう事だ。
俺はさっき見ていた冒険者の所にポータルのワープで飛んだ。
「まだ息があるな。エリクサーを飲ませるか」
エリクサーを口に入れると吐血と共に吐き出した。
これ高いんだぞ。
「俺は裏切られて囮にされた。リオットに裁きの鉄槌を……」
あー、死んじまいやがって。
囮にされたって話は俺と同じだ。
ちょっと興味が出て来た。
ダンジョンコアの部屋に戻り、死んだ冒険者の付近にいる奴を探す。
居た、こいつかな。
その冒険者達はモンスターから逃げていた。
どうやら、農薬が切れたのでピンチになったらしい。
「人が。助かった」
問題のリオット達はあろうことかアルマと出会ったみたいだ。
ダンジョンコアで会話を拾う。
「君、可愛いね。僕達のクランに入りなよ」
「笑わせんといて、誰があんた達のクランになんて入るもんか」
「じゃあ、その手に持っている農薬を頂くとしよう。死ね」
その会話を聞いて俺はワープした。
「アルマー、無事でいてくれ」
現場に着くとバラバラにされたアシスタントのアルマが。
「くそう、今もとに戻してやるからな。アシスタント帰還。助手、来いアルマ」
「えらい目におうた」
「まさか強盗するとは考えなかった。これであいつらを殺す理由が一つ増えたな」
ダンジョンコアの部屋に戻ると、リオット達はダンジョンから出たらしく、カメラ機能で見てもどこにも姿が見えなかった。
ちっ、逃がしたか。
情報を集める為に冒険者ギルドに行く。
「ダンジョンで犯罪が行われた。報告をしたい」
「はい、どうぞ」
「リオットという男が率いているパーティなんだが、強盗をしたのを目撃した」
「難しいですね。ダンジョンですと証拠が残りません」
「被害者はまだ生きているんだが」
「それでも難しい事には変わりないですね。しかるべき所に告訴しても裁判でどうなるか」
そうだ、ギルドには始末屋がいたはずだ。
だが、一般の受付嬢は知らないだろう。
「ギルドマスターに会いたい」
「予定を確認してみます」
しばらく待たされてギルドマスターに会う事が出来た。
「強盗をやらかした冒険者が居る。始末屋を呼べないか」
「どこでその話を聞いたのか分からないが、報告はしておいてやる」
「情報が入ったら知らせてくれ」
「無理だな。始末屋は極秘事項だ。その裏付け捜査も極秘だ」
「分かった。こっちで調べる」
困ったな。
名前だけだと、同名の冒険者が居るだろうから、探しようがない。
ギルドなら情報を持ってそうだが、開示してはくれないよな。
顔は覚えているから似顔絵は作れる。
今できるのはこんなところか。
「そろそろ、本体が到着するで」
「おう、そうか。アシスタントは復活するが、本体は復活しない。着いたら気を付けるように言っておかないとな」
宿で今後の打てる手を検討しながら、待つ事しばし。
遂にアルマ達の本体が到着した。
「遅なってすんまへん」
「いや良いよ。アシスタントが惨殺された話を知っているだろう。あれに出くわさなくって良かった」
「あんなん、本体なら返り討ちや」
アルマの言う事も分かる。
アルマ達の本体はレベル50超えだから、中級の上位だ。
大抵のやつらだったら、対処できる。
だが、相手の強さが分からないから、用心に越した事はない。
「本体はダンジョンの出入り禁止だ」
「仕方ないわね。商会が忙しいから、入る暇はないけど」
「多忙」
そうエリナとモニカ。
「商会の情報網を使って、リオット情報を集めて欲しい」
「そうやね。そうするわ。でもまずはカップ麺や。あのチープな味が忘れらへん」
「十分、食ってくれ。」
「愛してます」
「ああ、俺も愛してるよ」
「何、二人で空気作ってるのよ」
「エリナもモニカも愛してる。また生身で会えた喜びはひとしおだ」
3人をまとめて抱きしめた。
体温が伝わってくる。
アシスタントではこの喜びはない。
3人を守りたい。
強く願った。




