第46話 おっさん、抗議文を送らせる
「オアシスの有力者に上等な酒を持ってきた」
俺は屋敷の前で門番にそう話し掛けた。
「商人か?」
「まあそんなところだ」
「よし、通っていいぞ」
門番は3人いて、一人が屋敷を案内してくれた。
ある部屋の前で扉を門番がノックする。
「入れ」
門番が扉を開けてくれた。
入ると白髪交じりの初老の男が鋭い目つきで俺を見ていた。
そばには護衛が4人立っている。
ありがちな歓迎だ。
「高級な酒を献上に上がりました」
「ふん、便宜を図って欲しいと言うんだろ。あてが外れたな。酒を置いて立ち去れ。運が良ければ顔を覚えておいてやる」
「一言いいか。儲け話を持って来た」
「ふん、詐欺師の類か。話にならんな」
「アタンの所に俺は品物を卸している」
「ほう、少し興味を引いた。今度はわしに卸してくれると言うのかな?」
「いいや、ただで品物を供給しよう」
「ふん、魂胆が見えたぞ。ただと言いながら何か頼むのだろう」
「まあ、そうだな。物を生み出すには魔力が要る。これは容易いだろう。それとは別に一つ頼みがある」
「ほら来たな。まあ良い。言ってみろ」
「グエルオアシスがサラクオアシスに戦いを吹っかけているのは知ってるな」
「ああ、知っている」
「グエルに抗議文を送ってほしい」
「ほう、それが何を意味するのか、分かって言っているのか?」
「何も同盟してくれとは言ってない。抗議文だけで良いんだ」
「なるほどな。圧力を掛けたいわけか」
「どうだ。乗るか」
「品物はどれぐらい融通できる?」
「俺が生きている間は無限だ。ただし魔力は貰うがな」
「良いだろう。乗ってやろう。魔力はオアシスの住人から集めたらいい」
「そう言うと思ったよ」
「魔力を集めるだけだと不満が溜まるな。生み出した品物の半分は住民に配ってやるか」
独り占めすると不満が溜まるのは目に見えている。
普通そう考えるよな。
「今日からやりたいが」
有力者は門番を手招きすると耳元で何かささやいた。
案内してくれた門番が俺をオアシスの広場に連れて行く。
「新しい税金を公布する。税金を払うも払わないのも自由だ。払った者には品物を渡す」
そう門番が言った。
「税金と品物の割合は?」
「税金は魔力で、品物は魔力に応じてだ」
「それはいいな。魔力なんざ普段は使わない。早く品物とやらをくれ」
「では一列に並べ」
瞬く間に住人は一列に並んだ。
俺は魔力を受け取り品物を魔力通販で買いまくった。
希望を聞いて色々な品物を出す。
品物の半分は有力者が持っていったが、夕暮れまでに配布は終わった。
さて、次のオアシスに行くか。
次のオアシスの有力者あての紹介状を頼んだら、有力者は気前よく書いてくれた。
今度も上手くいくだろうか。
門番に紹介状と酒を渡すと気前よく通してくれた。
前回と同じようなやり取りをして話は纏まったかに思えたが。
「わしが、お前を監禁すると言ったらどうする?」
「暴れるだけだ」
「おい、やれ」
護衛が俺達に殺到する。
「収納箱、拘束」
ワイヤーロープが護衛を縛る。
「お前、魔法使いだったのか」
「俺が殺すと言ったらどうする?」
「逃げ切れるわけないだろ。馬鹿な事は止めろ」
「早く抗議文を書け。それで許してやる」
「くそっ」
「ちなみに品物だが魔力で出してやる。しかし、こんな事がもう一度起こったら、今度こそあれだな」
俺は手で首を斬る仕草をした。
「分かった。護衛をけしかけたのは冗談だ。悪かった」
「そうだよな。冗談だよな。はははっ」
拉致しようとする輩が現れるのは想定済みだ。
だから腹も立たない。
そして、8つのオアシスから抗議文を出させる事に成功した。
オアシスを巡って魔力で品物を出す日々。
休んでいる時は空井戸の底の秘密基地だ。
それを3週間続け、信用がついたところで、次のステップに移る事にした。
サラクに友好の使者として俺が行けるように一筆書いてもらった。
アズリの嫌疑が晴れなくとも外部の者としてなら付き合える。
これから同盟を結ぶ懸け橋になれるはずだ。
アズリの事は気にしてない。
グエルオアシスへの復讐さえなんとかなったらそれで良い。
そう思う事にした。




