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第238話 おっさん、殺し屋を始末する

「このゲームはな。黒の場合は白を挟む。白の場合は黒を挟む」


 宿の部屋でムハナにリバーシを教えてみた。

 すぐにルールを覚えたばかりか、俺に勝ち始めた。

 頭が良いんだな。


 ムハナはリバーシで俺に勝って嬉しそうだ。


「こういう時は嬉しいだとか。やっただとか。次も負けないとか。思った事を言うんだ」

「楽しい?」

「なぜ疑問形なのかは分からないが。そうこれが楽しいだ」


 俺は試しに数独パズルをやらせてみた。

 すらすらと解くムハナ。

 本当に頭が良いんだな。


「これ楽しい。もっと下さい」

「よしよし、好きなだけやっていいぞ。俺は少し出て来る」


 俺は人目のつかない所、つまりトイレで血を飲んだ。

 ぷはぁ、美味い。

 液体歯磨きでうがいして、血が顔に付いてないか念入りに確認した。

 そして、部屋に戻る。


「おかえりなさいませ」

「変わった事はないか?」

「血の匂いがします」


「それはいいんだ。気にするな」


 鼻もいいんだな。

 念入りに血を飲んだ痕跡は消したはずだが。

 扉がノックされる。


「どうぞ」


 入ってきたのはジャスミンだった。


「イリスが呼んでるわ」

「そうか。ムハナは数独をやっておけ」

「はい、かしこまりました」


 俺はイリスの花屋に行った。


「困った事になったわ」

「何だ?」

「さらった奴隷の誰かが、皇帝の血をひいているらしいの」

「皇族を奴隷に落としたのか」

「皇帝と言っても先代のね。昔、その息子の一人が反乱を起こしたらしいわ。そしてその子供、つまり先代の孫が奴隷になった」

「ほう、処刑しなかったのか」

「今の皇帝が見せしめに奴隷にすると言ったそうよ」

「陰湿だな」


「あなたに預けた奴隷の所に殺し屋が来るかもしれないわ。気を付けて」

「分かった。早く戻らないと」

「ジャスミンが付いているから、心配は要らないんと思うわ」

「何かあったら、知らせてくれ」


 俺は大急ぎで宿に戻った。


「大変、ムハナが居なくなったの」


 宿に戻るとジャスミンがオロオロしていた。


「どういう事だ」

「トイレに行きたいというから行かせたの。そうしたら、戻って来ないのよ」


 俺は血の匂いを嗅ぎ取った。

 ムハナ、殺されたのか。

 血の匂いのする部屋に入ると、宿の従業員が下着姿で首を切られて死んでいた。


 敵は従業員に化けたのか。

 ムハナはどこに行った。

 なぜ出て行った。

 危険を察知したという事だとは思うが、宿の従業員に化けた殺し屋を見破れるか。

 普通は無理だろう。

 どこかおかしい。

 情報のピースが足らない。


 ええと、どう考えたらいいのか。

 シンプルに考えれば、殺し屋から逃げた。

 じゃ、どこへ。

 ムハナの知っている場所と言えば市場だ。

 それしかない。


 俺は俺の露店に行った。


「ついさっき、ムハナが来なかったか」

「来ましたよ。クッキーが欲しいと言うので、50枚ほど包みました」


 むっ、クッキーの食べかすが所々に落ちている。

 これを追って行けばいい訳だ。


 途中、解いた数独の紙を見つける。

 数独を解きながらクッキーを食べて歩いたのか。


 そして、ある路地の入口で痕跡は消えた。

 路地を進むと横たわったムハナが。

 そして、短刀を持って立つ宿の従業員の服を着た殺し屋が居る。


「見られたからには生かして帰せないな」

「ほざけ」


 俺は手刀で殺し屋の心臓を貫いた。

 殺し屋は息絶えた。

 ムハナを見ると腹に切られた痕がある。

 幸い傷は浅いが、刃物に毒を塗っていたらしい。

 紫色に腫れあがっていた。


 毒を吸い出して、度数の高い酒で消毒する。

 口移しで異世界産の毒消しポーションとエリクサーを飲ます。

 殺し屋は解毒剤を持っていなかった。

 短刀の毒を分析したかったが、見ると刃を腐食して変質している。

 これでは無理だろう。


 あとは医者に任せたほうがいいな。

 俺はムハナをジャスミンの部屋に運び込んで、医者を呼んだ。


「今夜が峠ですな」

「ありがとうございました」


「私がもっとしっかりしていれば」

「ジャスミンのせいじゃないよ。ムハナなりの理由があったのだろう。元気になったら聞いてみるさ」


 ムハナの額に冷却シートを貼る。

 俺に出来る事はもうない。

 勝手な事をしたんだから、死んでも当然だと内なる心が言う。


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