第156話 おっさん、宝石魔導士会を作る
「ムニ、アニータ、あなた達を一級市民として認定いたします」
庁舎で役人が認定の儀を受けた。
一級市民の証のバッジは触媒で作るのが一般的らしい。
気体や液体は作れないので、鉄で触媒をイメージした物を作る。
鉄バッジと言うと気体や液体の魔導士の侮蔑になるらしい。
俺はチタンでバッジを作った。
ぱっと見は鉄と変わりない。
馬鹿にされても一向に構わないが。
「これで正式に宝石魔導士」
「宝石魔導士って不遇なのよね」
お祝いに駆け付けたジャスミンがため息まじりにそう言った。
「なんでだ。強いと思うんだが」
「触媒が高くて。アニータは良いわね。触媒が簡単に手に入って」
「うん、ムニは太っ腹。歳が近ければ結婚したい」
「私もイチエンダマ目当てにアタックしてみようかしら」
「よしてくれ。俺には妻がいる」
「残念」
「それより、仲間を増やしたい。なんかいい考えはないか」
「新しい魔導士会を作ったらどうかしら。現在魔導士会はダイヤモンドと金属と万物しかないわ」
「いい考えだ。じゃ宝石魔導士会を作ろう。実は俺、触媒で宝石が使える。チタニアダイヤという名前だ」
天然石だとスフェーンというのがあるが高くて手に負えない。
人工宝石だとチタニアダイヤになる。
俺が地球にいた時に調べた事があるのはチタニアダイヤだ。
4ミリ粒で3千円ぐらいだ。
子供のおもちゃ目的だったから、馬鹿に安いからジルコニアを買ったが。
とにかく記憶に残っていた。
「三種類の触媒で魔導士会を作るのね」
「そうだ、俺のチタン。アニータのジルコニウム。ジャスミンのアルミで、どうだろう」
「私の属性はアルミって言うんだ」
「そうアルミだ。一円玉の原料だ」
「宝石って他にもないの」
「あるんだが。調べるが難しいのと。俺が触媒を簡単に用意できない」
「次の問題は会員の確保ね。ダイヤモンドは少数精鋭。万物は同じ万物魔導士なら加入可能で。金属は会員数の多さが売りね」
「俺達は不遇の者を救う。この理念は変えない」
「それは結構だと思うけど、どうやって魔導士の適性を調べるの」
「アルミは今までの試験で調べているけど、チタンとジルコニウムは調べてない」
「試験にチタンとジルコニウムの宝石を追加するのはできるけど、触媒があなたしか用意できないんじゃ不味いわね」
「チタンとジルコニウムの宝石は探せば天然石があるはずだ」
「それを探すのは容易ではなさそう」
「困ったな」
「チタンとジルコニウムはスラムで人を集めて、触媒を使えた人に宝石を進呈って事でどうかしら」
「それはいいかもな。残念賞には紙を一枚進呈しよう」
コピー用紙なら100魔力で100枚は用意できる。
何回も並ぶ人が出るかも知れないが、炊き出しだと思えば良い。
信用を得れば意外な所で役に立つかも知れない。
「ところで聞きたいのだけど、あなた何者?」
「おかしいか」
「ええ、妙に博識だったり、誰も知らない触媒を用意できたり、不思議だわ」
「ばらしても良いが、信じないだろうな。信じるような状況になったら言うよ」
「その時が少し楽しみね。期待しているわ」
アニータがスラムの顔役に繋ぎをとる。
何だ何だと人が集まる。
「ある試験をやってくれたら紙を一枚進呈しよう。合格者には宝石だ」
「本当か。俺はやるぞ。三日、何も食ってねえ」
「ではこちらに」
露店と呼べないほどのスペースに男が入る。
そこにあるのはチタン片とジルコニアだ。
アニータの監視の下に試験が行われる。
この男は駄目だったようだ。
紙をもらってホクホク顔で出て来た。
それを見てスラムの住人が列を作る。
上手くいった。
30人ほど試験した時に初めての合格者が出た。
「おう、おめでとう。これでお前さんも1級市民だ。そこで相談だ。触媒はこちらで用意するから、宝石魔導士会に入れ」
「嫌だと言ったら」
「触媒は手に入らないから、モンスター討伐の試験に受からないだけだ」
「分かったよ」
「ちなみにどっちだ」
「金属片の方だな」
「そっちかぁ、そっちは在庫が多い。運が良かったな。魔導士として活躍できるぞ」
チタン板が100グラムで2000魔力だ。
ジルコニアの1センチのが一個190魔力だ。
触媒は会員が増えれば増えるほど大量に必要だ。
どこかで魔力を稼がないと。
その日の内にジルコニウム魔導士が新たに2人、見つかった。
今日は3人か。
場所を変えないと急激な増加は見込めない。
それと2級市民にいるチタンとジルコニウムの魔導士はどうやってみつけよう。
目的が1級市民に一泡吹かすだもんな。
2級市民が協力してくれるとは思えない。
とにかく魔力が足りない。
ダンジョン攻略に行くべきだろう。




