1142 資金源潰し
「ここのようですよ、勇者様、そこに見えている比較的高いカクカクした無骨な建物、そこの……3階に敵のアジトがあるとのことです」
「なるほど、雑居ビルの3階にオフィスを構えるカードの発行元という内容だな、どの世界の出身かによって見え方が違ってくるらしい……」
「勇者様は何を言っているの? ほら、もう着いたから行くわよ、こっちの考えを悟られる前に行動しないと逃げられちゃうかも知れないし」
「うむ、すぐに行く……っと、カレンとマーサと、それからリリィももう扉の前か……起きろルビア、到着したようだぞ」
「……うぅ~ん……先に行っていて下さい、終わった頃に行きますから~」
「馬鹿なこと言ってんな、ほら、もう突入してんぞ皆!」
しばらくの移動であったため、ダラダラしている中で寝てしまっていたのが数名、ほとんどは眠そうにしながらも馬車を降りたのであったが、そうしないルビアはまだ寝転がったまま。
そんな馬鹿に構っている間に、仲間達はターゲットが入っているという建物の扉を蹴破って……ちなみにそのターゲット以外に、無関係の善良な者も居るということを忘れているらしいな。
ダーッと雪崩れ込んだ戦闘集団に驚くその無関係の者を完全にシカトしつつ、窓から見えている階段の踊り場に2階3階と順に姿を見せている仲間達。
これ以上遅れると本当に終わった後にやって来た馬鹿になってしまうため、さらに寝ようと試みるルビアを引き摺って馬車から降り、抱え上げて皆に続く。
その光景を見た無関係の者にまた驚かれてしまったようだが……そうではない反応をしているのが明らかに1匹。
まるで自分が狙われているかのような、まだ仲間が残っていたのかという感じで、驚き、すれ違った俺から必死で逃げようとする神界人間のおっさん。
コイツは明らかにアレだ、踏み込んだ際にたまたま外に居て、オフィスが襲撃を受けていることに気付いてそのまま逃げようとしていたタイプで……このままだとリアルに逃げられてしまいそうだな……
「ちょっと、ルビアお前ここに座っておけ、逃げ出すような奴が居たらちゃんと起きて捕まえるんだぞっ、わかったな?」
「は~い~……zzzzzz……」
「ダメか、で、そこのおっさんはちょっと待て……待てって言ってんだよこのハゲェェェッ!」
「……な……何でしょうか? 私はハゲではございませんし、私は関係ありませんよね? ほら、毛髪がこんなにっ」
「バーコードにしているだけだろボケが、それでお前、どこへ行くんだ? もしかして3階に入っている悪徳カード会社の責任者なんじゃねぇのか?」
「めめめっ、滅相もないっ、私如き下っ端の下っ端で、追い出し部屋の窓際の、ムシロを敷いた横にある何も置かれていないみかん箱がデスクの者でっ」
「じゃあ関係者なんじゃねぇか、話があるからちょっと来い、あと、命はないと思え」
「ひっ、ひぃぃぃっ!」
その辺に落ちていた釘バットのようなもので、おっさんの長いバーコードヘアを絡め取って、そのまま階段を連行していく。
ルビアは……まぁ、万が一ここを通って逃げようとした奴が出た際のプレッシャーになるであろうから、もうこのままここに座らせておくこととしよう。
で、階段を上がった先にある敵のオフィスの様子を覗き込むと、既に仲間達による制圧が成された後であった。
数匹の神界人間おじさんらしき死体が入口付近に転がっているのだが、これは幼女神の拠点を守っていたロリコン野朗どもと同じような、明らかにチンピラの連中だ。
そして奥を見渡すと見える、最奥の高級なデスクの横に立ち、両手を挙げて降参しているのもチンピラ風情。
どうやらここは反社のフロント企業的な感じの会社であったようだな、上位らしき連中はほとんどがモヒカンかスキンヘッドのチンピラ野朗である。
まぁ、もう全て降参しているため特に何かをしてきたり、証拠隠滅を図ったりということはないであろうといったところだ。
で、その状態のまま奥のトップらしきモヒカンが、かなり焦った様子で口を開く……
「ひゃ、ヒャッハーッ……俺達が何をしたってんだ? お前等何なんだよ一体?」
「いやこの状況でヒャッハーッから会話始められても困るわよ、あんた達ね、ここに居る髭ジョリ女神のリボ払い、解除しておきなさい、それと他の神々のも」
「ヒャッハーッ、そんなことしたらウチが潰れて上納金が払えなくなって、オーバーバー神様に殺されちまうぜっ」
「大丈夫よぉ~っ、あのババァには殺されないからぁ~っ」
「どどどどっ、どういうことですか神様……」
「私、神様っていうよりも女神様なんだけどぉ~っ」
「ヒャッハーッ! そうですかそうでしたか申し訳ございませんっしたぁぁぁっ……で、女神様であるあなたの口添えで、ここの『メンバー』が処刑されないようにしてくれるってことっすか?」
「なわけないでしょぉ~っ、あんた達はこっちでキッチリブチ殺すから、あのババァに殺される心配なんかないってことよぉ~っ、そのぐらいわかってちょうだぁ~いっ」
「ひぃぃぃっ! じゃなかったヒャッハァァァッ! でもないそんなぁぁぁっ!」
「ま、まさか殺されるなんて、せいぜい堕とされるぐらいで済むと思っていたのに」
「あぁ、オーバーバー神様にだけ気を付けていれば、他の神々はお優しいとばかり」
「考えが甘いんだよお前等、とにかくトップの責任者とのこり数匹だけはこの場では殺さん、あとは今から惨殺してやるから表へ出ろ……サッサとしねぇと二度と生まれ変わったり出来ねぇようにすんぞオラァァァッ!」
『助けてくれぇぇぇっ!』
ここまで連行してきたハゲと同じく、他の連中も適当にとっ捕まえてオフィスから引き摺り出す。
もちろん責任者にはまだ様々な仕事が残っているため、今は連れて行かずにここに残した。
ちなみに、このモヒカン連中とは別にしてあった、というか俺が来たときには奥の方で壁に手を付かされて隔離されていた女性の神界人間に関してはこれから対応するところだ。
チンピラやおっさん共と一緒に処刑されるのではないかとビクつき、5人居るうちの2人はおもらしまでしている様子だが、まぁ、特にお咎めなしでも良いかも知れない。
結局のところ悪いのは、新しく引っ張ろうとしている芋づるの先端であるここの責任者と、それから連なっている上位者、そして最後の芋に該当するあのババァ神なのだ。
よって一般の従業員に関しては、特に悪事に加担していることを知らなかった……まぁ知っていたのだとは思うが、知らなかったということとして扱ってやる女性キャラには罰を与える必要がない。
せいぜいこのまま、おもらしした奴も交えた状態で集団にして引き回し、恥をかかせてやる程度で済ませてやって良いのであろうが……そうするとババァ神の怒りの矛先がこの女性5人に向かいそうだな……
「勇者様、こちらの人達はどうするのですか? 一応拘束しておきます?」
「そうだな、ほとぼりが冷めるまで拘留しておこう、じゃないと殺されるだけだからな」
「わかりました、では私達はそちらの処理を……」
「おいずるいぞっ! どうして俺達一般のおっさんキャラは殺されてっ、そいつ等は何も悪くないみたいな感じになってんだっ? 不公平だそんなもんっ」
「チッ、そんな所でゴチャゴチャ言ってないで早く連行されろよ、処刑会場によっ」
「だからっ、その処刑とかそういうの自体がおかしいだろうっ、俺達はただここで働いていただけだっ、何か悪いことをしている認識はなかったんだっ」
「あらそう、ここでモヒカンのチンピラに混じってとんでもないことやっていて、それで悪事を働いたつもりはなかったというの?」
「そうだっ、リボ払いにするかどうかはあくまでその神々が自身で決定したことで、俺達はただそれを『オススメ』しただけなんだっ、何も悪くないっ」
「そんなもんを『オススメ』すること自体がもう悪なんだよな……で、同じことをこの女連中がやっていたのかも知れないが、良く見ろ、気持ち悪いおっさんのお前は死刑、こっちの美しい女性キャラはお咎めなし……極めて正当な判断だろうよ」
「だからそれがおかしいって言ってんだぁぁぁっ!」
「ギャーギャーやかましい奴だな、カレン、とっとと連れて行け」
「わかりましたっ、こっちへ来て下さい、ちゃんとしないと私が怒られちゃいますから」
「イヤだぁぁぁっ! ギャァァァッ!」
野朗であれば、特にその中でも汚くてキモいおっさんであれば、たとえ微罪であったとしても即座に処刑する。
そして可愛い、美しい女性であれば無差別大量殺人犯でもセーフ、それが当たり前のことだとなぜ気付かないのか。
俺は今の世界に転移して来る前に居たところでも、基本的にそのようにしなくてはならないと習っていたし、それ以外の考えなど持とうものなら徹底的に糾弾されて社会から排除されていたため、これが当然だとしか思わない。
まぁ、こちらの世界ではあまり人権に関してとやかく言われないため、社会から排除する方法としての処刑が可能であるという違いはある。
だがその処刑によって、それが公開で行われることによって、そいつ1匹のくだらない命を消費するだけで、多くの者に『こういうことをするとヤバい』だとか、『悪い奴が消えて良かった』などと思って貰えるのだ。
さらにその処刑自体が娯楽化することによって、さらに『キモいおっさん1匹の命』の消費によって得られる効果が高まっているに違いない。
結局、そんな価値のない野郎がそのままのうのうと生き続けるよりも、それ自体が社会に貢献することが出来てしまう画期的なムーブを、俺達が提供してやっていることに感謝して欲しいぐらいである。
で、今回のおっさん共の処刑イベントとしては……ふむ、悪い奴等のオフィスだけあってかなり高性能らしいシュレッダーがあるな。
おそらくコレで様々な悪事の証拠を、状況に応じて消し去っていたのであろうが、今回はそれによって自分達が消し去られることになるのだ。
上蓋をパカッと外してみると、どう考えてもそこに指などを入れてはいけない形状の、鈍く輝く刃が重なり合うようにして存在している。
それを見てニヤニヤしている俺を遠くからさらに観測して、処刑の『手口』を悟った責任者のモヒカンが、その場でブリブリとウ○コを漏らしながら気絶したのであった……
「見ろよアイツ、ウ○コ漏らしやがったぜ、これじゃあ仁平や他の被害に遭っている神々のリボ払いなんぞ解除出来ないだろうよ」
「そんなの大丈夫よぉ~っ、この神でもちょっとヤバくなる気付け薬を、規定量の3倍ぐらい投与しておくからぁ~っ」
「ホモだらけの仁平神よ、それ、きっと破裂して死んでしまいますよあの神界人間など」
「そうかしらぁ~っ? まっ、とにかくしばらくの間生きれば良いのよねぇ~っ」
「待て待て、奴も『証拠品』としてまだ使う予定だから、そういうのはほら、他の残っているのでやってくれ」
『ひぃぃぃっ! お助けぇぇぇっ! 出来ればそのヒャッハーの馬鹿だけにして下さいぃぃぃっ! お金あげますからぁぁぁっ!』
「往生際が悪いですね、こういう連中というものは……」
この状況でまだ自分達だけが助かろうなどと画策している馬鹿共を、恐怖の眼力で睨み付けた仁平。
2匹の雑魚幹部のうち片方はその視線を直に受けて消滅、もう片方はビビり倒し、こちらもウ○コを漏らした。
その漏らしたものの一応は意識がある馬鹿に対し、この反社企業が行っている全ての事業の停止を手作業でやらせ、ついでに金の隠し場所等を聞き出す。
だが神々にリボ払いへの変更を『オススメする』などというとんでもない悪事を働いて、それで儲かった金のほとんどは組織のトップであるババァ神が持って行ってしまったらしい。
雑魚幹部は怒った仁平によってその場で、足元からボリボリと喰われ、恐怖と苦痛に満ちた悲鳴を上げながら、最後の最後までちょくちょく命乞いを挟みながら命を落とした。
そいつが供述した金の隠し場所から見つかったのは、俺には単位等がよくわからないものの、明らかに少ない、被害額には到底及ばないものだとわかる程度のもの。
おそらくこれまで仁平が搾取されてきたリボ払い手数料の1兆分の1にも満たないような、本当に僅かな金額であるようだ。
となると、もちろん残りの金は全部あのババァのところへ一旦動き、そこから幼女神など、協力している神々に分配されたということなのであろう。
だがせっかく連れて来ていた幼女神がその金庫にあった金を見ると、かなりの金額であって、自分がババァ神から『小遣い』として受け取っている額の1年分以上であるとのこと。
あのクソババァ、どれだけ自分で金をガメているというのだ、これはもう許し難いどころの騒ぎではなく、むしろ略奪してやりたい気持ちの方が大きくなってきたな……
「勇者様、もうあの下っ端の連中は処分し始めて良いわけ? ギャラリーとか集めたら凄く盛り上がっているみたいなんだけど」
「あぁ、あんな奴等どうでも良いし、この俺様がいちいち死に際に立ち会ってやる必要もないような雑魚キャラばかりだからな……っと、なかなかすげぇな、屋台まで出てんのか……」
「神界だと神々に嫌われて『堕ちる』だけの場合が多いから、リアル処刑イベントなんて結構珍しいんだって、対象が天使とか神の場合はあまり楽しめないらしいけど」
「そうなんだな……これ、神界で犯罪者殺戮ショーとか定期的にやって儲けられそうだな……まぁ、くだらんことはしない方が良いか」
窓から眺めていると、かなりのギャラリーが集まっていて、それにおびき寄せられた屋台もいくつか、あとでみかじめ料を請求することとしよう。
で、楽しげなムーブでシュレッダーに吸い込まれ、ゴキゴキと音を立てながらこの世を去っていく雑魚共の、最後の瞬間を指差して笑いながら、同時に荷物をまとめて移動の準備をした。
次は隣町の同じような会社を攻めて、また同じようにこういう雑魚共を『処理』していく感じの作業か。
これが延々続くと思うと面倒なので、後半はもう、生かしておくべき奴だけ避難させて残りは一気に消滅させよう。
処刑が終わると同時に、仁平と女神が『片付けは神界人間の仕事である』という旨のアナウンスをしたため、俺達はもうそのまま出発することが出来る。
馬車へ乗り込んで走り出し、しばらくすると次の町に到着、そこからまっすぐに敵のオフィスを目指したのであった……
※※※
「よしっ、ここも制圧完了だな、相変わらず金とかは全然なかったけど……ということで残りは全員死ねやオラァァァッ!」
『ギョェェェッ!』
「ケッ、楽に死なせて貰ったことを地獄で感謝するんだな」
あれからいくつの敵拠点、というかオフィスを破壊したであろうか、仁平のリボ払い地獄はほとんどが解消され、残っているのはもう気にならない程度のものばかりだという。
だがこいつの怖いところは『無限』であり、決まっている限度額よりも利息……ではなく『手数料』のほうが高くある限り、毎月雪だるま式に負債が増えてしまうところだ。
当然騙されている仁平のリボ払い地獄は強烈であって、数が減ったからといってそれで負債がなくなっていくようなものではない。
残りの場所も回り尽くして、全てをゼロにしてからでないと安心することなど出来ないのであるが、当の仁平はそれを余り理解していない様子。
敵対しているババァ神が擁している『リボ払い転換カード発行会社』は、幼女神の側近天使が供述した分だけで残り10程度であるが、それが全てではないというのがまたアレだな……
「さて、これを全部潰し終わったらどうするかだな、仁平がどうにかなったということで良いにするか、それとも残りも全部叩き潰すか」
「敵の資金源を断つためには全て叩いておくのが正解だと私は思う、アジトにはあまり金がないことを考えると、敵の本体である神様とその周辺はかなり儲けていることが予想出来るからな」
「ふむ、じゃあとりあえず全部潰し切るまでは続行……と言いたいところだが、きっとどこかで妨害が入るんだろうな……」
「ねぇねぇ、その妨害ってのが来ているような気がするわよ、ほら、向こうからドドドーッて」
「わう、人を吹き飛ばしながら走っていますね……あっ、この間転んじゃった馬車です」
「噂をすれば何とやらってことね、迎え撃つ? それとも隠れる?」
「もちろん隠れるだろうよ、どこか見えない場所から指差して笑って、ブチギレしているところを奇襲してやろうぜ」
「良いわね、あのヒステリックババァのことだし、またキーキー言いながら喚き散らしてわけわかんないことになるわよ」
早速やって来たらしい敵のババァ神による妨害、早速といっても噂をしてからすぐということで、こちらの計画はもうかなり進んでしまっている。
カレンやマーサの言う通り、進行方向から轢き殺される神界人間の悲鳴と馬車の振動が伝わってきたため、一旦路地裏に入るかたちで身を隠す。
ここで向こうからやって来ているということは、間違いなく俺達がこの付近に居るとわかってそうしているのであろうから、気付かなかったとしてもそこまで遠くへ行ってしまうことはないはずだ。
隠れながら、徐々に近付いて来るババァ神の馬車の音を良く聞いて……そろそろすれ違うはず、ここで通過させつつ何か仕掛けてみたらどうかと思ったのであるが……なんと、こちらが隠れている裏路地のすぐ近くで停止しやがったではないか。
もしかするとあのババァ神、何らかの方法でこちらの比較的正確な位置を割り出していて、それに基づいてこの近くに隠れているはずの俺達を探しているのでは?
馬車から降りて来て、周囲で平伏している神界人間や下級の天使などを引き裂いたりなどしつつ、ババァ神はキョロキョロと辺りを見渡す……これはそのうちに見つかってしまいそうだな……




