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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1125 行き先再変更

「ムキィィィッ! キィィィッ! 馬鹿にしてっ! 神であるこの私のことを馬鹿にしてっ! 許さないザマスよっ! キィィィッ!」


「はうぁぁぁぁぁっ! も……もうお許し下さいオーバーバー神様……」


「……なるほど、あのババァがキンキン言うごとに、天使さんのパンツが食い込み度を増していく仕掛けなのか……意味がわからんぞ普通に」


「やめなさいオーバーバー神よっ、いややめて下さいお願いします、この有能そうな天使がかわいそうですよ」


「ムキィィィッ! 何よあんたっ、世界をふたつしか任されていない雑魚女神の分際でっ、この美しく気高い私様に意見するっていうザマスか? 許さないザマス! キィィィッ!」


「あっ、ちょっと、私までそんなっ……ひぇぇぇっ!」



 どうやらウチの女神の方もババァの怒りを買い、パンツが食い込んでしまったようなのだが、どうしてこのように卑劣な攻撃を、いきなり繰り出すことが出来るのであろうか。


 横転した馬車から這い出して来たババァは、さらにこちらを、仲間全体を睨み付けて次のターゲットを探しているようだ。


 もちろん狙うのは『美しい女性キャラ』のみであって、キモ顔ババァの自分が嫉妬するような、そんな対象であれば理由の如何を問わず攻撃してくるつもりである。


 だが俺の仲間達は人数も多く、そして何よりも全員がこのキモ顔ババァの嫉妬対象であることから、目移りして誰を攻撃すべきかなかなか決まらないらしいな。


 というかそもそも、いきなり馬車で突っ込んで来たのは自分なのであって、こちらが喰らわせた攻撃は至極真っ当なもの……という理屈が通用する相手ではないな、確実に……



「それで、あんた自分で滅ぼしたこの町を使って、一体どんな悪事を働こうとしていたわけ? 答えないなら戦って倒して、殺す前に聞き出すしかなくなるけど」


「待て精霊様、前に出るな、攻撃されて恥ずかしいことになっても知らんぞ、ここは俺がいこう」


「そうね、キーキーうるさいうちはアレだけど、落ち着きを取り戻したら全員が食い込み状態にされるかもだし……ちょっと退き気味で居ることにするわ」


「キィィィッ! 話し掛けておいて、何をそっちでゴチャゴチャしているザマスかっ!」


「あぁすまんすまん、ちょっとお前を嬲り殺しにする際のやり方などに関しての相談をしていたんだが、キモすぎて決まらなかったんだよお前の顔が、で、マジで何のつもりなの? この町、何に使うつもりなの? 団体? やっぱプロレスか?」


「ムキィィィッ! だから違うと言っているザマス!」


「じゃあ何だってんだよ?」


「私はこの神界でも前衛的な思考を持った神であるザマス、それゆえ、ここに団体の本部を作って……そこな女神の支配領域にある魔界との連携をするザマスよっ! ヒィ~ッヒッヒッ!」


「なんということをっ、あなたっ、それでも神界の女神でっ、ひぎぃぃぃっ! 食い込みがっ!」


「思っていたよりもヤバい発言が出たわね、これ、放っておくとまたややこしいことになるわよきっと」


「あぁ、仁平だか何だかってのに会いに行くのとか、超越者をさらに超越した者とかちょっと霞むぐらいにやべぇな、てか神としてアレだろ神界の、普通に背任だろこれ……」



 わけのわからないことを言い、高笑いしながらこちらを指差して狂喜乱舞するババァであったが、全く笑えないし笑みが零れるような場面でもないように思える。


 そもそも、ウチの女神が居るこの場で神界を裏切るような、それに準ずるような行為に走っていることを宣言してしまうなど愚かなこと。


 だが、そこまで馬鹿ではないはずなのに平気でそれを言ってしまうところを見るに、何か強力なバックが存在しているのかも知れないと、そう考えられなくもない。


 そしてそれゆえの余裕なのか、現時点で、この場で俺達をどうこうしてしまうというつもりはあまりないようで、嫌がらせのようなパンツ食い込ませ攻撃を女神にしている以外、特に動くようなことはしない感じだ。


 最初は馬車で轢き殺そうとしていたのであるが、それは脅しの意味も込めて、『これで死んだら面白いな』ぐらいのノリであったに違いない。


 そして攻撃の内容もアレだし、ターゲットの選定が上手くいかなかった程度のことでもう完全に追加の一撃を諦めていることからも、やはりそうなのであろうと予想出来るのだが……



「……どうしようか……この場で仕留めるべきか、それとも時間を使って追い詰めていくべきか……どうよ?」


「今この場で手を出すのはヤバいんじゃないかしら? 神界を丸ごと敵に回すとか、そういうことになりかねないような気が……」


「ヒィ~ッヒッヒ、よくわかったザマスね、そう、私の神界上層部への食い込みっぷりは、そのアホな雑魚女神のパンツの食い込みよりも遥かに上ザマス! もし邪魔立てするようなことがあれば……わかっているザマスね?」


「自分は正当なことをしているのに、どこかの世界の下界から来た変な奴等から不当な圧力を掛けられて困っていると、そう主張して回るつもりね?」


「良くわかっているザマス、もちろん攻撃を受けるようなことがあれば、その女神が統治している下界がどうなるのか、わかっているザマス?」


「そりゃぁ……もちろん『魔界への取り込み』が直ちに行われるような事態になるだろうな、で、お前の作戦通り、そこと連携して力を得て、何らかの利益が……ってとこまでは見えるぞ」


「そこまで見えているのであれば、黙って事態の推移を見守るザマスよ、もうこのムーブメントは止められないザマス、強い神だらけの邪悪なる魔界を、私のバックのひとつに加えるザマスよ、そうすれば……この神界全部を我が物にしてしまうことさえ容易ザマス……」


「恐ろしいことを、こんな薄汚いババァが全ての異世界を統治するようなことになったら……考えただけで鳥肌もんだなこりゃ」



 ババァ、いやオーバーバー神の恐ろしい計画は、魔界の強力な神々までもを味方に付け、その力をもって神界での更なる躍進を、そして最終的には自らがトップに立つことを目的としたもの。


 それが成功してしまえば、俺達のようにクソ魔界付きの腐った世界の住人だけではなく、平和に暮らしているキラキラ清浄異世界の脳味噌お花畑な方々も被害を被ることとなる。


 俺達はまだ良い、腐った異世界で治安最悪の、まるで地獄のような場所で生活しているのだから。

 だがその脳味噌お花畑異世界の方々が、果たして俺達のような世界に『堕ちる』ことに耐えられるか……まず無理であろうな。


 そもそも人権などというモノが微塵も感じられない、戦争だらけ、魔王軍との戦いは苛烈であったがそれ以上に内部抗争がヤバいし、これからはその魔界との戦いもこなさなくてはならない世界。


 もしこのババァが天下を獲ってしまえば、そんなどうしようもない世界がそこら中に発生するのではないか。


 そうなってしまえばいくら勇者が居ても足りないな、もう王様が適当に勇者を募集して、棒切れと鍋の蓋と、僅かばかりの金銭を渡してダメ元で送り出す、そんなやり方がグローバルスタンダードになりかねない……



「……じゃあ、そういうことでサッサと立ち去るザマスよ、私は計画のための準備、資金調達の続きをしなくてはならないザマスからね」


「資金調達ですって? あのお金儲けする方法があるというのであれば教えて下さい」


「何よこの下界の小娘は……神界でのお金儲けは崇高ザマス、例えば神界人間を使って、金銭管理にイマイチ興味のない神々を騙してリボ払い地獄に陥れたりとか……」


『お前かぁぁぁっ!』


「キィィィッ! いきなり叫ぶとはどういう了見ザマス?」


「ざっけんじゃねぇぞお前! それで苦労している神、じゃなかった女神か、そいつに今から会おうとしていたんだ俺達はっ! 他の神に迷惑掛けんなよなマジでっ!」


「それは騙される方が悪いザマス、こちらは単に神界人間を使って、『全部リボ払いにしますけど、返答がないならOKということで』みたいなことを言ってやって、それで黙っていたら強制変更させてその手数料を……みたいな感じザマス、何も悪いことはしていないザマスよ、ヒィ~ッヒッヒ」


「極悪だなお前……ちなみに他は何やってんだ? 参考までに教えてくれ」


「他ザマスか、う~ん……」



 その後、ザマスのババァの口から語られた犯罪行為の数々は異常極まりないモノばかりであった。

 投資詐欺に募金詐欺、情報商材にねずみ講、また神界であるにも拘らず、どういうわけか霊感商法まで。


 このババァはどこの世界でも批判されそうなことを、ほぼフルコンプでやっていたということが判明したのであるが……ババァ単体でそこまでしていたということはまずあり得ないな。


 間違いなく組織だって、もちろん神界人間や天使だけではなく神々まで使って、怪しい情報をさも人気がある、有識者の言葉であるかのように偽るなどしていたのであろう。


 表立って動いているのはこのババァだけなのかも知れないが、全体を通して見るとかなり根の深い問題として、この神界を蝕んでいる可能性がある。


 ウチの女神はそのことに気付いているのかというと、ずっとパンツが食い込んだままなのでまだそれどころではないらしい。


 だがとにかく仁平とかいう女神を地獄に堕としたのがこのババァであること、その他にも様々な犯罪行為に走っていることがわかったのだ。


 ここはひとまずスルーしておくにしても、仁平とやらにそのことを話して、このババァと直接対決させるという方法は……アリのような気がしなくもないな……



「……それで、どうするんですかご主人様? やっつけますか?」


「いや、今はまだそのときじゃない、ちょっと待って、先に仁平とかいう奴の所へ行こう」


「ヒィ~ッヒッヒ、どこへ行くのかは知らないザマスが、二度とその薄汚い顔を見せることがないように気を付けるザマスよ、ヒィ~ッヒッヒッ」


「はいはいわかったわかった、じゃあ帰ろうか、幽霊にビビりまくっている3人ももう限界みたいだしな……っておいチコン野郎! サッサと馬車を起こさんかっ!」


「ででででっ、でも1人ではこれは……ひぃぃぃっ! やりますっ! ぜひやらせて下さいませっ!」


「それと精霊様、適当にその辺の悪霊でもシバいて、帰りの御者をやるよう強要しておいてくれ」


「わかったわ、えっと……まぁ、どいつでも良いわねそんなの」



 勝ち誇った表情で高笑いを続けているババァはガン無視して、馬車を起こした俺達はすぐにそれへ乗り込んだ。


 結局食料調達が出来なかったのだが、ひとまずここを離れるというのが先決であろうな。

 さもないとババァに色々と怪しまれて……と、そういえばババァに付いて来た天使さん、そのまま持ち帰ってしまっているのだが。


 ウチの女神もそうであるが、既にババァの術式の効果範囲外に出たのか、それとも単純に効果が終わっただけなのか、もうパンツは食い込んでいない様子の天使さん。


 疲れ切ってはいるようだが、とにかく鬱陶しいババァから離れることが出来てホッとしているのか、何も言わずに馬車の座席に着いている。


 これはこのまま連れ帰ってしまって良いのであろうか、それとも何らかのかたちでババァに返還してやらないと、誘拐だの略取だの何だのと、より一層ややこしいことになるのであろうか……



「おい女神、おいっ、聞いてんのかオラッ」


「……あっ、はい何でしょうか勇者よ? 少し疲れてボーッとしてしまいました」


「そりゃそうだろうがな、あの天使さんはどうするべきなんだよ? このままだとババァに付け入る隙を与えかねないぞ」


「そういえばそうですね……しかし、この天使はオーバーバー神のお付きではないようで……どこかの町で神界人間を管理していた者が、無理矢理引っ張られて何かを手伝わされていた感じですね」


「ババァに動員されただけなのか……まぁ良い、もう放心状態だし、しばらくこのまま乗せておくこととしよう、そのうちに気を取り直すだろうからな」


「ご主人様、そんなことよりも超お腹空きました、町はまだですか?」


「すまんなカレン、全部あのチコン野郎が悪いんだよ、それと御者に大抜擢してやった俺には見えない何かがな……おいウスノロ! モタモタしてっから日が暮れちまったじゃねぇかっ! どう責任取るんだこのボケがっ!」


「ひぃぃぃっ! スミマセンスミマセン……って、隣のおっかない悪霊も言っております、どうしてこんなに顔面がボコボコなのかは知りませんが……」


「チッ、見えないから殴れないんだよな俺には……まぁ、次の町で生の御者でも調達するか……とりあえず急げ、その悪霊とやらは限界まで力を使え、お前如きどうなっても構わんからなっ!」


『・・・・・・・・・・』



 御者をさせている幽霊がどういう反応をしているのか、俺には全くわからない状態なのであるが、精霊様やその他の仲間が面白そうに笑っていたのを見るに、そこそこの好反応であったのは事実だ。


 そんな幽霊馬車は全速力で次の町、今度はしっかりと生者が居て、まともに買い物等することが可能な町へと向かった……



 ※※※



「あ~あ、チコン野郎のせいでもう真っ暗じゃねぇか、ひとまずはどうする? 最高級な食べ放題の店でも探すか?」


「勇者よ、最高級で食べ放題というのは少し難しいかと、むしろ私が知っている、天使が運営している店を紹介しましょう」


「ほう、そこはお高いのか?」


「そうですね、あなた方の世界で言うと……お通しの小鉢だけで人族最大の国、つまり王国ですね、そのGDPを遥かに超える金額です」


「……⁉ そっ、その小鉢ってのは何だっ? とんでもないモノなのかっ?」


「いえ枝豆です」


「枝豆?」


「しかも輸入の、冷凍のやつです」


「ボッタクリなだけじゃねぇかそんなもん……」



 またわけのわからない店ではあるが、安心して食事が出来て、しかも肉も野菜も、そのどちらかしか食べない者にも対応しているというので、まずはその店をチョイスすることとなった。


 向かった先では明らかに高級な店が、しかも神界人間を寄せ付けないために下級の天使が見張りまくっている、どの角度から見ても神々専用であるとしか思えない次元のものが……本当に高級そうだ。


 まぁ、高級だと言っても中身は普通にそこそこのものであって、あえてお値段をお高くしておくことで、位の高い者がそこで食事することによる自己満足を誘発させるためのものなのであろう。


 女神と一緒に居る俺達は特に怪しまれることなく中へ通され、食器をカチャカチャと鳴らして子どものように催促するカレンやリリィも特に咎められることはない。


 後ろに立った真っ白な翼を持つ天使が扉を開けると、純金製としか思えないほどに美しく輝く台車に乗せられた人数分の皿、いや小鉢が、これまた金の美しさを称えて……中身は枝豆と安っぽいハムであるが……



「どうぞ、こちら、本日の選べるお通しになります、お好きな方をお取り下さい」


「選べるお通しって、どこの大衆居酒屋なんだよ全く……あ、ちなみに俺は枝豆で」


「文句言っておいて普通に食べるのね勇者様は、で、せっかくだからここで話しておくけど、この先はどこへ向かうことにするの?」


「そうだな、あのババァの拠点を襲撃するのは後で……っと、生ひとつ、それからおしぼりも追加で」


「へい生一丁入りやしたーっ!」


「……うむ、やはり最初に仁平とかいう神の所へ行くこととしよう、それがベストだ」


「ねぇ、冷やしトマト頼んで良い?」

「串盛りセット!」


「いやマジでどこの居酒屋だよ、まぁ良いけど、それと……天使さんはどうしたんだ?」


「ここの従業員用スペースで休ませてあります、どうやらオーバーバー神に動員されて以来、不眠不休で1か月間働かされていたそうで」


「そりゃ俺達が何もしなくてもあの馬車、事故まっしぐらだったってことだな、あの天使さんもついでに仁平の所へ連れて行こう、なるべく強い神の庇護下に入った方が安全だろうからな」


「わかったわ、じゃあその流れで行きましょ、今日はこの町に泊まって、明日出発すれば……どのぐらいで到着するのかしら?」


「そうですね、馬車で移動することを考えると、あと3日程度は必要なのではないかと」


「3日か……それだと到着までにもうひと悶着ぐらいありそうな予感だな……」



 明らかに居酒屋のそれでしかない謎の料理と酒を堪能しつつ、その後もこれからの予定について詳しく話をしていく。


 これから面会に行くホモだらけの仁平という女神と戦わされるという最悪の事態を、どうやって回避していくのかというのがメイン議題であるが、当然話の方はなかなかまとまらない。


 あのクソババァのトンデモ行為と、それによって自分が被害を被っているということを知って、仁平とやらはどういう反応をするのであろうか。


 教えてくれた俺達に感謝してくれればそれで良いものの、ならばババァの始末を手伝えと、そしてその前に力を持っているかどうかをどうのこうのと……ありがちな展開だ。


 まぁ、今ここで心配していても仕方ないということだけは事実であるから、ひとまず酒を飲んで、料理店に併設されていた高級宿に案内されてそこへ荷物を置き、そのまま寝る態勢に入った。


 で、翌朝になって出発しようとした俺達はひとつ忘れていたことをようやく思い出したのであるが……コチンコチンのチコンが、夜通し外に放置してあったため何だかこう、アレな感じになってしまっているではないか。


 もちろん俺達がやっておいて欲しいと、頼みはしなかったものの確実にそう考えていた御者探しもしていないし、その場から全く動いていないらしい。


 神でも天使でもない雑魚が立ち入ることを許されているエリアとそうでないエリアの境界線で、見張りの下級天使にガン見されながら、寂しく体育座りしていたということだ。


 となると、ここからまず御者探しをしなくてはならないということであって、心機一転、再出発の出鼻を挫かれてしまったということだ……この馬鹿のせいで……

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