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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
この ” 矜持 ” に賭けて
93/111

クロエ 王家主催の【精霊祭】から、排除される

 




「おい! シュバルツハント! お前に話がある!」





 ミハエル殿下は、その取り巻きをほとんど連れて、大食堂、貴賓席に見えられた。


 うん、こんだけの人数、大食堂の普通の席に来られたら、迷惑で仕方ないよね。 まぁ、何時ものごとく、エリーゼ様 及び、 その取り巻きも一緒に行動しているのだから、迷惑感倍増だよね。




「はい殿下。 なんの、御用でしょうか?」




 ものっそい、平坦な声が出てしまった。 あーあー、大丈夫だね。 ちゃんと、声出てるよね。 この頃さぁ、いっつも、思った事とか、話したい事の半分くらいで、止められたり「話の腰」、折られたりしてるからねぇ。




「この所、学院の授業も出ずに、色々としているらしいな」




 えぇ、まぁ、授業に来なくて良いって、言われてますしね。 続きは?




「わたしの寵愛を受けれぬからと言って、やって良い事と悪い事があると、思わないのか?」


「なんの事でしょうか? まったく、心当たりがありませんが」




 エリーゼ様が、なんか、鼻を鳴らしてたよ。 フンってね。 ものっそく、蔑んだ目をしとるね。 なんだ? なにが言いたいんだ?




「グレモリーに対し、何をしている。 アレの持ち物が無くなったり、壊されたり…… 全く、いい加減にしろ!」




 そうなの? へぇ…… 答えてあげない。 だって何もして無いんだもの。 それに、私が授業出て無いのは、飛び級して六年次に成ってるからよ。 そんで、六年次の授業も、免除されて、各寮のお手伝いしてるんだもん。 忙しくて、学院にすらいないよ。




「全く、反省の色が無いな…… これだから、下賤な者は! いくら、俺から、気持ちを向けられて居ないからと言って、嫉妬から、目を掛けて居るグレモリーに嫌がらせをしても、お前に目を向けるつもりは無い!!」




 何言ってんだ? 頭にでも虫が湧いたのか? 




「もう一度、申し上げます。 心当たりはありません」


「もうよい。 目撃者の証言は山程あるのだ。 ……お前には罰を与えねばな」


「……罰ですか。 罰を受ける様な事を、した覚えは、御座いませんが」


「もうよい! 来たる 王家主催の【精霊祭】には、お前は呼ばぬ!! 王家の一員に成るやもしれぬ者が、国外の賓客に対し、無礼を働いているのだ!!! 本来ならば、厳罰に処す所なれど、情状の余地もあると、第一婚約者・・・・・でもある、エリーゼが庇ったのだ。 感謝するがいい!!」


「承知いたしました。 他に御用事は?」





 側に居る、ヴェルから、殺気が漏れているのよ。 さっさと済まそう…… ミハエル殿下を、ヴェルが、なんか睨みつけてるしね。 気が付かれない内に、行ってくれないかなぁ……


 私はね、もう、なにも言う気はないの。 馬鹿共の茶番に付き合う程、おひと良しじゃないし。 うん、そうだね、エル達に、裏取りして貰おう。 そんで、うちの暗部の人達に、状況を確かめよう。 必要ならば、色々と対策を取らないとね。 特に、証人・・って、人達にね。


 それに、エリーゼ様が庇ったって言ってるけど、それ多分、ボロ隠し…… 大事に成って、白龍大公翁閣下の耳に入れば、それこそ、大変な事になるからね。 その位の分別はある筈……と、思いたい。 その理解で、いいんでしょ? ニッコリ、エリーゼ様に笑って差し上げた。 なんか、エリーゼ様、引き攣ってたけどね。


 ミハエル殿下……なんか、顔、真っ赤にして、怒ってたね。 そんで、いきなり帰って行った。 ほんと、アレが、私の婚約者なんだよねぇ……変な笑いしか出てこないよ。 まぁ、王太后様が、無理矢理お膳立てした婚約だからね。 婚約式の時、顔すら見せて無いんだし




   ……婚約って、なんなんだ?




 そんな事してる、ミハエル殿下、どうして自分が、好かれているって、思えるのかしら? まったく、謎ね。 全ては、自分を中心に回っているって、感じて居られるのかしら。 あぁ……そうか……私の方から、婚約者に成りたいと、” 望んだ ” と、思っているのかも……  はぁ……溜息しか出ないよ……


 あれ?  グレモリー様…… 居なかったよね。 まぁ、あんな連中に四六時中取り囲まれてたら、嫌になるよねぇ…… そっちも、情報取り、しとくか。 


 まぁ、去年と同じ事遣らかす筈だからね。 なにかしら、こっちも対策とっとこうか…… まぁ、まずは、お部屋に帰ろう。





**********





「お嬢様、いくらなんでも、あれは…… 内郭に、抗議文の一つでも入れて……」




 お部屋への道すがら、ヴェルがそう言ってきた。 もちろん、誰にも聞こえないような声でね。 でね、止めたの。 わざわざ、揚げ足取りの理由をあげる必要なんてないもの。 




「ヴェル、やめておきなさい。 内郭の中には、聞く耳持つ者は居ないと。 そう、認識しておきなさい。 揚げ足を取られるばかりよ。 情報はきちんと取っておいてね。 許可します。 暗部の使用を」


「はい…… お嬢様、それでは」


「ヴェル、危険な香りがするわね。 ダメよ。 耳と、目だけ。 手は出さないで。 お願いよ」


「はい……」




 ヴェル、よく我慢したねぇ…… さっきは、ヴェルから、危険な匂いがしてきたから、さっさと終わらせたよ。 ハイハイってね。 だって、あそこで、暴れたら、ヴェル居なくなっちゃうでしょ……いくら護衛騎士だとしてもね。 ほら、直接手は出されてないし。 


 それにね、あんな所に行くのは願い下げだったから、渡りに船よ。 絶対に教皇猊下いるだろうし、何回も同じ手に乗るような馬鹿じゃなさそうだし、魔方陣の書き換えだって、面倒くさいし。 勝手にやってろ! ってな、感じかな? 個人が、汚染されるなら、その人の問題なんだよ。 わざわざ、そんな所に行く方がおかしいしね。


 国葬までして、フランツ殿下が亡くなった事にしたんでしょ? なのに、なんで、王家が主催で【精霊祭】すんのよ。 庶民階層の人達だって、今年の【精霊祭】は自粛して、大きなお祭りにしないのよ? 各個人で、精霊様にお祈りを捧げようって…… それなのにね…… 馬鹿じゃないかしら。



 そんなこと考えているうちに、お部屋についた。 うわぁぁ、なんか久しぶりね。 ここんとこ、忙しかったからね。 そんでね、テーブルの上に、一杯お手紙があったのよ。 へぇ……なんだろう。




―――――




 丁度、帰って来たメイドズと一緒に、ヴェルにお茶を入れて貰いながら、その手紙なんかを読んでいったの。 お茶しながら、手紙を確認しつつ、エル達が集めてくれてた、学院内の噂話を、聞いてたのよ。 私が居ない間に、学院の中で、出所の判らない噂話が飛び交ってたんだって。 その変な噂話を、エル達が可能な限り集めて、纏めててくれたのよ。


 勿論、ラージェ、ミーナも各教室でね。 と、言う事は、貴族科以外の教室の噂話ね。 貴族科の噂話は、マリーに聞くとして…… 


 へぇ……私が嫉妬に駆られて、グレモリー様に、色々やらかしてたらしいねぇ…… 曰く、グレモリー様の持ち物が無くなった、壊された、お部屋の前に不審なモノが置かれた、等々……


 ここ10日間くらいの間に集中して起こったんだって…… 




      私、居なかったよ? 




 たぶん、私が居ない事知らない人が、私のせいにして、やらかしたんだろうね。 そういえば、ミハエル殿下も、そんな事言ってたなぁ…… 


 目撃者が沢山いるって…… どこで見たんだろうね。 




「エル、その噂の元になった事がある筈ですよね」


「確かに、グレモリー様付の侍女の方から、学院の事務官様に、苦情が入ったようです」


「なるほど……私が、そのやらかした人だと、云った目撃者の方は?」


「クロエ様の報復をかわす為、という名分の元、名前等は秘匿されていますが……エリーゼ様の従者、白龍大公家の傍系の方々が、大声で、” 私は見たの!! ” と、そう言われております」




 ふむ、……嘘も集まれば、本当のように見せかけられる訳だ。 なんとも、いやらしい手を使うね。 で、エルはどう思ってるかな? もし、本当に私が何かしたんなら、どうなると思う?




「そうですね、今頃、グレモリー様は、本国にお帰りになって居られるんでは、ないでしょうか? それも、表面的には、ご自身の御都合と云われて」




 そうだよねぇ……証拠、証人、残すなんて事しないし、徹底的にするよねぇ……私だったら。 うん、やっぱり、エルは、私の事ホントよく知ってるよね。 流石だ。




「如何致しましょう?」


「信じているのは、貴族科の人達と、白龍系の貴族の方々?」


「ええ、左様に御座います。 庶民階層の方々、白龍系以外の方々は、クロエ様が嫉妬される事が、想像できないと、仰っておられました。 ” なぜ、ミハエル殿下は、クロエ様が嫉妬する程、好意を持たれていると思ってらっしゃるのか。 そちらの方が、不思議だ。 ” そう、仰られる方々も居られました」




 うん、やっぱり、見えている人もいるようだね。 それって、やっぱり、白龍系以外の貴族の方?




「白龍系の中にも、疑問を持たれている方は、沢山いらっしゃいますね」




 私の疑問に答えてくれたのは、ミーナだったよ。 彼女、この頃、凄く ” 洞察力 ” 、付けて来てね、諜報、防諜官にどうか、って話も出て来てるみたいね。 まぁ、アレクサス御爺様仕込みだからねぇ…… 謀略戦と捉えて、要所、要所の人に、くさび打ってくれてるみたいね。 おかげで、変な噂一色じゃない感じなのよ……


 まぁ、彼方には、ミハエル殿下がいらっしゃるから、表立っては言えないけどね。


 大体の立ち位置は判った。 対応……・どうしようかなぁ…… 面倒だから、放置って訳には行かないよね。 それにさぁ、王家主催の【精霊祭】、有るんだよねぇ…… 教皇猊下が御臨席されるよね。 きっと。 その対策はしとかないとね。 


 龍王国の精霊様が喰われるのは、良くないし。 内郭でさぁ、ミルブール国教会の奴が、ミールフルール呼出しやがって、龍王国の精霊様が喰われたら、絶対に加護が失われるよね。 ほら、王家がそれを認めたって思われちゃうでしょ。 いかんよなぁ…… 本当に、何考えてんだろ。


 でね、手元の手紙類を、眺めてたのよ。 黒龍のお屋敷からとか、学院の事務方の方とか、まぁ、雑多な事が多いけど、王家の封印がある手紙が二通、紛れてた。




「これは?」


「侍従長様が、わざわざ、お越しくださいまして、手渡しでお受け取りしました」




 あぁ……懲りたな。 他人を挟むと、何かしらやられるもんなぁ…… そんで、私に遣り込められる。 そんな事ばっかりするから、私も、半分以上脅してたもんなぁ…… 殺気出しちゃったしなぁ…… 気を使わせちゃったなぁ…… まぁ、いいか。 


 で、内容はなんだろうね。




 ” 【精霊祭】ご招待状 ”


 ” 王太子主催の舞踏会について ”




 だって……なんか、ちょっと、笑顔が浮かんだよ。 勿論、黒い方のね。 だってそうでしょ? 今しがた、” 来るな ” って、云われたばっかじゃん。 こんなのばっかじゃん。 


 ヴェルにさぁ、招待状を見せたのよ。 目を真ん丸にして、見てたよ。 そりゃそうよね。 さっきの遣り取り知ってるんだからね。 だから、ニッコリ笑って、ヴェルに云ったのよ。




「侍従長様に、御欠席のお知らせいたしませんと、いけませんね」


「御意に。 わたくしが、お届けいたします。 先程の件、合わせて、ご報告いたしておきます」


「宜しくね。 では、お返事、書きますね」




 窓際の机に行ってさ、お返事書いたよ。 出ねぇよ! ってね。 勿論、詳しく理由も書いたよ。 だってさぁ、私の婚約者様の御言葉だし、高位貴族の方々も、いらっしゃったし、もう覆せないよ? 侍従長様がいくら頑張ったって、無理なモノは、無理。 あぁ……きっと、去年みたいな事になりそうだから、王太后様、辺りから、侍従長、頼まれたのかもね。



 まぁ、しゃぁないよね。




      自業自得だよね。




 私は、私で、やる事、有るし。 そっちは、そっちで、如何にかしてくださいね。 こっちに、如何にかさせようって、思うなよ。 自分達がしでかした不始末は、自分達で始末をつけて貰おうか。


 書き上げた、お返事をヴェルに渡して、内郭に行ってもらった。 まぁ、ビックリするだろうね。 知らんけど。 私は、私で、必要な場所へお邪魔する事にするよ。 そうだね、ほら、人事局の人も言ってたじゃん。 【精霊祭】を楽しみなさいってね。 





    うん、精霊教会に行ってみるよ!!





 でね、ヴェルを送り出してから、もう一通のお知らせを見てたのよ。



 ” 王太子主催の舞踏会について ”



   ほー 

      へー 

         ふーん。



 王位を継承する事が、確実になって、自分の名前を冠した舞踏会が開きたくなったのかな? お金、掛るよ? 国庫、大丈夫なのかな? なになに、内郭の大広間でするつもりなんだ…… と言う事は、高位貴族の人達ばっかりね。 まぁ、そうよね。 ミハエル殿下、自分の顔見知りバッカリ、集めるつもりみたいだね。 


 でもねぇ…… 時期が悪いんだよねぇ…… 【精霊祭】 と、 【降龍祭】 の間ってね。 夏季休暇のど真ん中だよ。 貴族の方々、この時期は領地に帰って、自分の領地の経営とか、出て来た諸問題を解決する時期なんだよ…… まぁ、そのついでに、近隣の人達と、夜会とか、茶会とか、舞踏会とか、しちゃうわけだけどね…… 


 王都シンダイに残っているのは……ホントの大貴族か、領地を持たない、一代爵位の方々とかだね……後は、ちょっと、領地に帰り辛い人達とか……




 まぁ……なんだ、大貴族様以外、まともな人達なんか、残って無いよ。 




 そういえば、マリーどうすんのかね、今年の【精霊祭】。 ちょっと聞いてみよう! ヴェルが帰って来て、どんな反応してたか、聞いてから、マリーのサロンに行ってみよう。 マリーなら、他の友達がどうするのかも、知ってるかもしんないしね。




 そんな事、つらつら考えながら、エル達とお茶してた。




 初夏の風が、窓から爽やかな空気を、送り届けてくれた。




 穏やかな…… ホントに、穏やかな、午後だった。




 エル達の笑顔が、大切に思えたよ。




 美味しいお茶と、楽しい、お喋り。




 こんな、時間が続くと良いなぁ……








ブックマーク、感想、評価。 誠に有難うございます。

中の人、盛り上がって参りました!!


――――


お仕事から、帰ってきたら、トンデモ状況。


ホントに、お疲れ様ですね、クロエ。


でも、やる事はやるのです。 クロエは出来る子なんですからね。


それでは、明晩、また、お逢いしましょう!!

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