クロエ 友達のマリーと、天龍様にお会いする
グレモリー様、それはもう、ご機嫌。 でも、かなり魔力使ったけど、大丈夫? 見てる分にはそうでもないけどね…… テーブルの上に置かれていた、私の宝珠を袋に入れて、胸元に直してたら、グレモリー様、なんか思いつめたみたいに、口を開いたのよ。
「わたくし、…… 早急に、連絡を取らねばなりません。 誠に申し訳ございませんが……」
「ええ、御本国の方へですね。 判ります。 大事な方々と、今後の事を『 お話 』されますのでしょ?」
そう、応えると、グレモリー様、目を真ん丸にしてた。 愛らしいお顔に、苦笑いの表情を浮かべながら、立ち上がられたよ。
「楽しい、一時 でした。 そして、とても、大切な、一時でも ありました。 クロエ様?」
「はい?」
「また、【ご招待】して、頂けますかしら?」
「勿論ですわ、喜んで」
「こんなに、慌ただしくて、本当に、ごめんなさいね、それでは、ごきげんよう!」
グレモリー様、口の中で何か唱えると、入って来た時より、もっと巧妙に 【 モーフ 】 をおかけになって、むっちゃ地味な姿で、お帰りになった。 あれじゃ、誰もグレモリー様って判らんよね…… うわぁぁ………… グレモリー様って、一体何しに、ハンダイ龍王国にいらしてたんだっけ? ちょっと、その事に思い当たって、遠い目をしてたら、マリーが、溜息と共に、聞いて来た。
「凄いですわねぇ…… あれも、魔法ですの?」
「ええ、あれは 【 モーフ 】 と、言います。 外見の変化に使われますのよ…… あれほどの魔法は、見た事は御座いませんが…… 凄い方ですわね」
「それと……あの……クロエ様の、 ” 目的 ” は、何でございましたの? 御二方の、「お話」から、龍族と、人族の関わり方と、古に、何らかの契約事があったのは、理解出来ましたが…… それは、私が知っても、良い事なのでしょうか?」
「ええ、マリー様には、是非」
軽く応えといた。 で、こっからが、本日の本題。 ちょっとした 【 賭け 】 なのよ。 上手く行くかは、マリーの態度次第。 マリーが興味を示している今なら、口に出せる。 でも、心配もあるのよ。 不確定要素が多すぎてね…… ほんと、此ればっかりは、出たとこ勝負になるわ。 私がしっかり、しなきゃね!
「マリー様、天龍様ってご覧になった事、有ります?」
「とんでもございませんわ! 至高の存在なのです、龍族の方は! そんな恐れ多い!」
「でも、ちょっと、逢ってみたく御座いませんか?」
「……えぇ……出来る事ならば……この目で、見て、お話も……してみとうございます」
うん、かなり興味を持ってくれてる。 よしよし…… そんじゃ、始めるか!
「これはね……秘密なんですよ」
「何でしょう?」
ちょっと、乙女心に、” 秘密 ” って、スパイスを振りかけてっと!
「実は……お逢いできますの」
「えっ! 本当に!」
よっしゃ!食いついた! ほら、マリーって、私の前では、基本、好奇心満載だし。 私の辺境話、一番面白がってくれてたもんね。 引かずに、聞いてくれてたし。 よし、ここまで来たら、言わせてみせる!
「どうですか?」
「えぇ…… もし…… お邪魔じゃなくて…… わたくしが、お逢いする事で、何の不都合も無いのなら…… 一目でも…… お会いしたい」
よっしゃ! 言質は、貰った!
自主的に、会いたいと望まれた! この気持ちがなくっちゃ、話に成んないもんね。 誰かに言われて来たんじゃ、ダメなのよ。 マリーの状況じゃね。 ” 自ら天龍様に会い、龍印を調べて貰う ”って、形にしないと、成立しないのよ。 二人目以降の 「龍の巫女」 って。
まぁ、ほら、【龍の愛し子】の立ち合いもあるしさ。 大丈夫な事は、大丈夫なんだけど……意思の力って、やっぱり、重要だしね。 そうゆう形にしないと、逢っても貰えない筈なんだ…… もしさ、エリーゼ様が、【龍の愛し子】になってたら……私、多分、天龍様に逢ってなかったと思うよ。 ほら、最初、天龍様に会いに行く気も無かったもんね。 それに、会った時も、不意打ちだったし……
……そんじゃ、気が変わらない内に、とっとと、行こう 【降臨の間】 にね! そんで、私は、サロンのお部屋の中に入って、何も置かれてない壁に、「門の精霊」 の召喚魔方陣を出したの。 魔力を込めると、
じゃじゃーん!
ね、この通り、あの扉が出て来たの。
⦅ごめん、急に呼び出して⦆
⦅いいって事よ! で、何だい? 天龍様にお目通りかい?⦆
⦅話が早くていいわ。 そうなのよ。 ほら、こないだ、貴方がお話して、「黒の石碑」に載っけた女の子、いるでしょ。 正式に、天龍様にご紹介したいの⦆
⦅……あぁ、あの子か! たしか……マリー=ハンナ=アズラクセルペンネ! そうだよね!⦆
⦅そうそう! で、大丈夫かしら?⦆
⦅ちょっと待って、 いま、天龍様に聞いてみる⦆
そんで、いったん、「門の精霊」さん、扉の宝珠の中に消えたの。 横にマリーが来てね、言われた。
「やっぱり、古代キリル語ですわよね」
「ええ、彼等とお話するには、必須ですから。 マリー様も、” お話 ” できますでしょ」
出来るだけ、さらっと、言っといた。 「門の精霊」さんと、お話出来るって事は、使ったのは、古代キリル語で間違いないし、今の会話も、聞けてた筈よね。 王族とは、えらい違いだ! エリーゼ様も、私くらい話せたら……って、無理か……だいたい、聖句もろくに覚えちゃいねぇらしいし…… で、マリーは、何処で勉強したの?
「ええ……白龍のお屋敷で習いました……貴族の嗜みと言う事で」
「厳しく……ですか?」
「ええ、まさしく」
一応、お爺ちゃんズ、考えては居たんだ。 計画では、いずれは、必要な事だったしね。 そんな事つらつら考えてたら、「門の精霊」さんが戻って来た。
⦅クロエ! 大丈夫だよ! お会いできる! 待ってるって!⦆
⦅ありがとう! 無理してない? お怒りじゃなかった?⦆
⦅そりゃ、急な事だからね。 でも、クロエが来た!って言った途端、もう、他の用事全部ぶん投げたって!⦆
⦅ゴメンなさいね。 本当に。 天龍様には、会ってお詫びするわね⦆
⦅大丈夫だよ、別に。 だって、愛し子だよ?⦆
⦅それに、貴方にも、無理言っちゃったし⦆
⦅ほら、いつもお土産くれるからね! 今年も、期待してる⦆
⦅いっぱい、持ってくるわ⦆
門の精霊さん、ふわふわと私の周りを飛び回りながら、めっちゃ嬉し気に笑ってるね。 よっぽど嬉しかったんだね。 良かった。 絶対に持ってくるからね!
⦅楽しみにしてる!!!⦆
⦅マリーは、どうすればいい?⦆
⦅クロエと一緒で、名簿に載ってるから、一緒に行けるよ。 何も、問題はないよ⦆
⦅ありがとう! ほら、王家の方々みたいに、するのかと思って⦆
⦅ありゃ、龍印が薄すぎて、ちゃんと確認しないと、怒られるから…… 偽者が入ったら、大事になるしね! マリーなら大丈夫だよ! 保証する! 龍印、おっきいしね!⦆
やっぱりね。 そうだと思った。 単に、龍印が有るってだけなら、こんなに簡単に通して呉れる訳ないもんね。 そっか…… 強い龍印かぁ…… どんなんだろうね……
三枚の扉を抜けて、転移魔方陣の間に着いた。 マリーに伝えとこ。
「あのね、此処から転移した先に、【降臨の間】って所があるの。 そこで、天龍様と会えるの。 ちょっと薄暗いけど……天龍様が御降臨されたら、明るくなるのよ。 心配しないでね」
「大丈夫よ、クロエ様。 なんだか、ワクワクして来たんですもの。 凄いわ、凄い!」
うん、いつものマリーだ。 物怖じしない、元気で、可憐な、マリーだ。 これなら大丈夫。 転移魔方陣の真ん中に、二人で立って、
”行く”
って、心の中で云ったのよ。 そしたら、いつものごとく、あの、薄暗い【降臨の間】に、到着したのよ。 いつもは、末席の末席に立ってるけど、今は、ど真ん中! いっつも、御妃様とか、王太后様とか、エリーゼ様が、プルプル震えて立ってる場所に行ったのよ。 部屋全体が良く見えるね。 そんで、限定召喚大魔方陣が真正面に見えるのよ。
「マリー様、お願いしてみますね」
「はい!」
目をキラッキラさせた マリーが、大きく頷いているの。 もうね、この子、ほんと、怖いもの知らず…… 今は、それが、とっても有難いわ。 恐怖は、天龍様にも直に伝わるの。 不快な感情としてね。 お願いする立場で、それは、マズいの…… そんで、魔方陣に向かって、お願いしたの。
⦅天龍様! お願いします! クロエが来ました。 お話したい事が有ります!⦆
ボワンって、やっぱり、前と同じように、限定召喚大魔方陣が輝いて、中央から、天龍様の首がニョッキリはえて来た!
⦅おおお! 逢いたかったぞ! クロエ!⦆
⦅急なお願い、誠に申し訳ございませんでした。 怒ってない?⦆
⦅怒ってないぞ。 クロエに会えるのだ、嬉しさだけが、心を満たしている⦆
⦅有難うございます。 少し、魔力を、送りますか?⦆
⦅ああ、勿論!⦆
そう言って、鼻先を私に差し出して来た。 私は、天龍様の鼻先に両手を当て、少しづつ魔力を送ったの。 ポワンポワン音がして、ちょびっとあった、穢れが、光の粒になって、昇華していくのよ。 綺麗よ……ホントに綺麗。 マリーが、その様子を見てて、ホントに驚いてた。
「クロエ様……て、天龍様が、目の前に…… それに…… これが浄化…… なんですね……」
その声に、天龍様が反応を示された。
⦅クロエ……これは、誰だ?⦆
ちょっと、お声が低い……やっぱり、いきなりは、マズかったか? でも、ここまで来たんだ、事は成すよ。
⦅天龍様。 此方、マリー=ハンナ=アズラクセルペンネ様。 龍印をお持ちで、私の事を友達と云って下さる、人の子で御座います⦆
黄金の瞳が、マリーを見る。 かなり強い視線。 マリー大丈夫かな……
⦅ お初にお目に掛かります、天龍様。 マリー=ハンナ=アズラクセルペンネと申します。 矮小なる人の子、お目に掛かれて光悦至極にございます⦆
うわっ! マリー、私より、上奏文みたいな、喋り方だぁ…… よく勉強してるね。 凄いね!
⦅うむ……マリーとやら。 よく来た。 クロエの友人とな……そして、龍印の持ち主とな。 あぁ、マリー=ハンナ=アズラクセルペンネ、その名は、「黒の石碑」に刻まれたな…… そうであった。 よし、マリー、手を我が鼻先へ⦆
そう言って、天龍様、マリーの方にちょっと、顔を向けた。 でっかい鼻を前に、マリーは、やっぱり、マリーだった。 戸惑いも無く、両手を天龍様の鼻先に当てる。
ポワン!
両手が光ったのよ。 私とは、違う赤紫色にね。 そっか……あれが、マリーの魔力の色か……
⦅確かに、強い龍印があるな……クロエ、この者を、龍の巫女としても、良いか?⦆
⦅勿論に御座います。 ただ……⦆
⦅なんだ? 申してみよ⦆
⦅……マリーは、心幼き者です。 古の契約を全て注ぎ込めば、心が壊れてしまいます。……このクロエを、彼女の守護としては、頂けないでしょうか?⦆
⦅……よく知っておるの……いや、よく理解したというべきか。 判った。 クロエの言う通りにしよう。 愛し子の頼みだ、問題は無い⦆
⦅有り難き幸せ⦆
ちょっと、マリーに向き直り、やっぱり、私と時と同じように、げっぷする見たいな音がした。 で、やっぱり同じように、琥珀色の石が、彼女の手元にふんわりと落ちて来たの。 彼女の宝珠は、ハート形。 うわぁ! そんな形なんだ! いいなぁ~~ 可愛いなぁ~~
マリーが受け取る。 で、何を思ったのか、宝珠を両手の間に挟んだの。 えっ? なんで? どして?
⦅天龍様。 わたくしが習い覚えました事に、宝珠を手にするとき、まずは魔力を注ぎ込めと、有りました。 宜しいでしょうか?⦆
⦅勿論だ。 試すがよい⦆
マリーの手が光った。 赤紫色なんだよね…… でね、感じるのよ。 マリーの魔力の脈動をね。 そうだね、天龍様を介して繋がったもんね。
⦅これが……天龍様……そして、クロエの脈動……凄い……⦆
マリーにも伝わった…… うん、これで、マリーも龍の巫女だね。 よかった。 で、繋がりが出来た事で、天龍様、マリーに渡すべき知識を、一気に私に送って来た。 頭グワングワンするよ……まぁ、二回目だし……ちょびっとづつ、マリーに渡すよ……
そんでね。 私のお願いをしたの。 ほら、マリーが表舞台に立つには、心が幼過ぎるしね。 で、天龍様に、ご提案申し上げたの。 ほら、あの小部屋での話、そのまま。
王家には知られず、龍印の徴を私に乗せ、マリーの状況を韜晦するの。 時が来るまで、わたしだけを「龍の巫女、龍の愛し子」と呼称して貰い、龍印に関して、マリー様を、わたくしの庇護下に置くの。 時が来たら、マリー様を、「龍の巫女」としてお披露目するのよ。
天龍様、ちょっと考えてた。 出来るのか? って顔。 でね、出来るのよ。 ちゃんと、古の契約にあったもの。 ” 印持つ者、幼き時、後見に立つ者があらば、その者を守護者とす ” ってね。 ほら、思い出されたよ、天龍様。
⦅ふむ……クロエ、よいのか? 儂は、お前を失いたくは無い⦆
⦅クロエは、大丈夫です。 お約束も致しました⦆
⦅そうか……随分と危険な橋を渡るな⦆
⦅だって、友達ですもの!⦆
この会話、マリーにも聞こえてた。 そんで、天龍様の言わんとする事も、多少は判ったみたい。 見る見るうちに、マリーの両目に涙が浮かんできて、私に抱きついて来たの。 そうね、大丈夫よ、マリー。 絶対に護り切って見せるから!
そんな、私達を天龍様が、目を細めてみてた。 とっても優しい御顔だった。 天龍様、嬉しそう……
グレモリー様の件は、また今度。 まだ、大丈夫って言えないし。 今度の【降龍祭】には、きちんとお話出来るとおもうし……だから、だんまり決め込むの。
天龍様の光の下
やるべき事の二つ目が終わった気がする。
まだ、二つ目だけどね。
でも、万が一が
これで
無くなった。
さて
こっからは
私の戦よね。
ブックマーク、感想、評価 誠に有難うございます。
中の人の心の糧となって居ります。 頑張って、物語を綴ります。
―――――
クロエのお仕事、第二弾。 マリーを護る為に、天龍様にお会いしました。
でも、コレって、かなり型破りな行動です。 お爺ちゃんズは、次回の【降龍祭】にでもするのかと、それも、クロエ単独で行うと思って居られたようです。 クロエの行動力は、お爺ちゃんズの考えの、遥か上を行きます。 そうです、彼女は、状況を引っ掻き回すのです。
それが、クロエなのです。
それでは、また、明晩!




