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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
42/111

クロエ 校外実習に参加する いち




 

 二年生の一大行事メインイベント。 





    ” 校外実習!!! ” 





 大規模な実習なんだ。 例年、騎士科、行政騎士科が中心になって、この校外実習が行われるんだけどね。 実習には行政科の生徒は基本全員何かしらの役割が割り振られるんだけど、例外もある。 特殊専門なんかを専攻してたら、校内での実習になる。 ミーナとか、アスカーナが専攻してる、王国戦略局志望者みたいにね。


 そんで、かなり大人数になるから、組み分けが行われて、龍王国の軍制から言えば、一組が増強中隊規模の約百名で編成されるの。 私が配属されたのが、9組。 殆どが、騎士科の人達。



 で、我らが9組、行政騎士科からは、ギルバート様とラージェだけ。  ラージェは、騎士科の女性騎士達の中にいた。 



 女性騎士にも二種類あってね、式典なんかで貴人の女性を専門に護る、警護隊志望の煌びやかな近接戦専門の人と、御家が騎士職で龍王国に仕えているので、その流れで、ガチに騎士を目指してる人。 ラージェは後者。 でもって、ガチ勢の中でも、かなり優秀らしいのよ。 だから、彼女今回分隊長やるって。 ケガには、気を付けてね。


 エルは、魔法科数人と結界を張る係。 魔法科の人達は、希望者って事に成ってるけど、実際は、特化した能力があれば、先生たちに強く勧められる。 なにせ、頭数が足りないからね。 エルは最初から参加するって言ってたけど、他の人達は嫌々参加なんだって。


 まぁ、手伝ってもらう手前、魔法科の人達には特別優遇処置があるんだ。 課題は無いし、奉仕作業もない。 食事の当番もなんにもね。 更に天幕は特別製で、お客様状態ね。 事前にエルには、 ” ルールに従ってね♪ ” って、釘差しといた。 でなきゃ、彼女、全部とっかえようとするでしょ?



 んでだ、私は「救護係」として参加。



 と云うより、 ” 衛生兵 ” として登録されているのよ。 理由は騎乗できるから。 本来なら、行政内務科の専攻だったら、単なる救護係なんだよ。 馬車でゴトゴト備品と一緒に揺られて行って、ポーション渡して、お疲れ様! ってね。 でも私、騎乗できる様になったから、騎士科の衛生兵に付いて行く事が可能と判断されたらしいのよ。 衛生兵ってね、最前線に救護天幕はって、その中で治療するの。 つまり、いつも野外活動義務付け……  




      ……馬さん ……乗ったら ……衛生兵……




 その上、魔法科兼科だから、ソッチの課題もドッサリ…… 野外活動だから、薬草摘み、野外での緊急製薬、毒薬の採取に、調合。 その他諸々……


 まだあるのよ……行政内務科の実地研修として、備品類の管理、入出庫管理、人員の管理、その他諸々の管理……つまり雑役……


 あの~~一人でするのですか? 行政内務科……私一人なんですが……


 悪い話と良い話はセットなんだよね。 そうだよね! で、概要と規定読んでったら、ありました! 希望の光が!! 各小隊の隊長さんに、行政内務科の諸々の管理を手伝わせる権利!!! つまり、仲良くさえなれば、数字は纏めるだけで良いのですよ!




 よ~し、がんばっちゃおう!






 *************






 ……なんて、思っておりました。 脳筋連中の中に放り込まれて、実習初日。 王城ドラゴンズリーチの学院正門前で整列した時に、思いました。




 こりゃ、あかん! こいつら…… ものっそい私を嫌っとる……




 よく考えたら、当たり前。 今回、大層な割り振りされているんだよね。 他の組は、それこそ、綺羅星のごとく、有名な高位貴族様が其々にいらっしゃるのよ。 そんで、その方を護る為に、有名どころの近衛騎士さんとか、魔法騎士さんとか、全部そっちへ教官としてついてるの。 



 問題は、この ” 9組 ”



 私の所属する組ね。 教官全部で20人。 これは、まぁ普通。 でもな、草臥れたオッサンとか、左遷されとったオッサンとか、そんなん、ばっかり。 こいつらに認めて貰って、得点を挙げよう! なんて、微塵も思えない人選なのよ。 そんで、9組の仲間?達はテンション、ダダ下がり。


 なんで、こんなひどい事に? って誰でも思うじゃん。 でだ、王族に覚えめでたくない「私が」、居る訳じゃん。 事務方もきっと、上に媚びたんだって、思う訳じゃん。 そしたら、その ” 悪感情ヘイト ” は、当然、私にむかうじゃん。



 初日から、嫌な目で見られ続けるのって…… 凹むよ?



 まぁ、気にしても仕方ないし、そう編成されちゃったもん、仕方ないじゃん。 愛馬 『クリークエクウス』に跨って、実習が始まりました。


 救護係から、衛生兵にクラスチェンジした私は、装備品も、白衣白帽から、それなりの軽装備になります。 乗馬を念頭に置いた服装にね。 これは嬉しかった。 素直に嬉しかった。 主にお尻関連で。


 クリークも、優秀な馬でね。 色々括りつけても、嫌な顔一つせずに、私と荷物を運んでくれました。 でっかい鍋まであるのよ。 ほんと、自分の課題用の備品は、自分で運べ、だからね。 おかげで、何もかも最小限度の荷物に纏めなきゃならんかった。 


 下着だって、3セットよ。 マジよ。 装備は1セット。 1セットよ。 壊れても替えは無いの。 ほんと、大事にしないと。




 もう一個の問題……  行先の「スターブの森」




 この森は、白龍大公領と青龍大公領の間にある森なの。 湖が何個も内包されて、とっても綺麗な場所だったんだけど、ちょっと前から、「魔物の一群」が、住み着いて、今じゃ、荒れ放題なんだって。 それでも森の辺縁部はまだ、魔物も居なくて、別荘地として、機能してるらしいんだけどね。


 ミハエル殿下の居る1組とかは、白龍大公家の別荘を拠点とするらしいのよ。 そんで、高位貴族の人達も同様にね。 いったい幾つ白龍大公家は、別荘抱えてるんだ? そんで、彼らの御威光に、 ” あやかった ”  貴族科の人達は、みんなそっち。 で、我が9組…… 



 無いのよ。



 拠点。 かなり深い所にある広場で野営なんだと。 魔法科以外は、全員自前で天幕立てろって。 さらにね、私の居る衛生兵分隊、救護天幕と同居なのよ。 



 ” 劣悪な環境に適合した、精強な精神と肉体を育む ”



 結構なお題目です事。 おかげで、” 悪感情ヘイト ” 爆上げ状態。 なんか、本当に雰囲気悪い。 野営地に着くまで五日かかるのよ。 ホントに憂鬱になりそう。 まぁ……  野外だから色々気がまぎれるけどね。 





 *************




 最初に泊まったの小さな村で、ちょっと、興味深い事が起こったのよ。 夜、さぁ明日に向けて眠ろうって時に、同じ衛生兵分隊の騎士見習いの子に変な目で見られながら言われた。





「シュバルツハント、お前、ホントに此処で眠るのか?」


「ええ。 割り当てられた寝床はココですわ。 なにか?」





 確かに、高位貴族が寝る様な場所じゃぁないよ、厩の横って。 でもさ、みんな同じ様な場所で、眠る事になってんだよ? ルールだよ? おかしくないよ。





「魔法科の奴らは、教官達と宿に泊まる。 お前の従者も魔法科だろ?」


「ええ、エルは、魔法科ですわ。 そして、彼女は、この実習の9組の中で、最も重要度が高い魔法結界を張る為に参加しています。 当然の処置ですわね」


「い、いや、そう言う事じゃ無くて、お前、従者が宿で、主人のお前がこんな所で眠ることに、なんか思わんのか?」


「えっ? 何かとは? 野外実習ですよ? 当然ですわ」


「……変な奴」


「お褒めの言葉として受け取ります」





 次の日の朝、鍛錬を終えて、出発の準備をしていると、またその子が近寄って来て云うのよ。





「何してたんだ?」


「鍛錬ですわ」


「なんで?」


「日課です。 しないと腕が落ちます」


「お嬢様が、なんで、剣の型の練習なんかするんだ?」


「小さい頃に、御爺様に教えて頂いて、体を丈夫にする為と、なにが有っても対応できるようにする為ですわ」


「貴族って…… そう言うモノなのか?」


「さぁ…… 判りかねます。 少なくとも、わたくし・・・・は、変えるつもりは御座いません」


「……変な奴!」


「お褒めの言葉として受け取ります」





 そんな、遣り取りが有ったのよ。 でね、二日目から、なんか、衛生兵分隊の連中の態度が変わったのよ。 まぁ、仲間に入れてやるかってね。 ちょっと快適になった。 


 そうそう、食べ物の話があった! 噂に聞く、騎士科の携帯食料。 食べましたよ。 焼いたパンを、ギュって押し固めた棒状のナニか。 ガッチガチになった、干し肉。 パッサパサのチーズ。 で、此れなんじゃ?っていう、チョコレートの塊。 粉吹いて真っ白で、ボソボソしとるね。


 うわぁぁぁ、これ、三食なの? 他の組も?





「んな訳あるかい! 殿下の居る1組なんか、朝昼晩と豪華なビュッフェだそうだ。 他の高位貴族の処もな。 この組だけだよ」





 これは……  どうして?





「一つには、シュバルツハント。 お前が居るから」





 おおおお、ダイレクト! まさしくね。 だと思った。 ごめんね、9組のみなさん。





「ただ、それだけじゃない。 と云うより、もともとだ。 お前の存在がどうこう言う前にな」


「どういう事ですの?」


「分からんかったのか? 組分けの人選で、9組だけ、庶民階層の者がほとんどだ。 で、教官がアレだ」





 う~~~ん。 いかんなぁ~~~。 こう云うの。 兵を蔑ろにすると、士気も下がるし、精強さだって落ちる。 兵はそれこそ、死の前に平等なんだから、ココはちゃんとした方がいいのに……なんか、釈然としない。





「シュバルツハント、ちょっとは、見直したんだ、お前の事を」


「はぃ?」


「俺達と同じものを、まぁ、しかめっ面だけど、喰ってる。 同じ所で眠る。 黒龍大公のお嬢様だから、もっと、高飛車で嫌な奴だと思ってた。 大公家の人って、大体そんな感じだと思っている」





 むっか~~~。 なんだそれ。 みんな頑張ってんじゃん。 眼に付きにくい仕事なだけで、閣下おじさまも、リヒター様も、イヴァン様も、みな、頑張ってるよ! 思わず「鷹の目」になって、軽く睨んだ。





「……黒龍の伯父様をそんな方だと、思わないでください。 私の事は何と思って頂いても結構です。 でも、黒龍の家の方達は一心に龍王国にお尽くししておられます」


「……うん、すまなかった。 僕の失言だ。 黒龍大公閣下には、申し分けない事を言ってしまった。 許してほしい」


「許します。 ちゃんと、私にではなく、伯父様に謝ってくれたから」


「ありがとう。 ……まぁ、実習は気楽に行こう。 どうせ、我等は、文字通り魔物討伐に駆り出されるんだから」


「衛生兵分隊として、精一杯お勤めいたします」


「期待している」





 と、まぁ、そんな感じ。 なかなかと闇が深いね。 私が官吏に成ったら、まずはこの辺に手が出せればいいのだけど。 それよりも、赤龍大公閣下にご相談申し上げるべきか? ギルバート様も戸惑って居られるだろうね。 あっちは、仲良くやってそうだけど。 時々、笑い声も聞こえてるしね



 五日の行程で、衛生兵分隊は、割と纏まったと思うよ。 



 でだ、やっと野営地に付いた。 ほんと、森の中。 円形に広がった広場に小川が一本。 何も無い。 高い空が綺麗だったね。 いや、ほんと。


 昼前に着いたから、まずは食事。 いつもの携帯食料。 う~~~ん、これ、いかんでしょ。 せめて温かいモノでも食べようよ。 で、教官に聞いてみた。 携帯食料に手を加えてもいいのかと。 結果、別に構わんだとさ。


 よっしゃ! 


 分隊のみんなを集めて言ってみた。




「携帯食料ですが、もう少し食べやすいように、調理しませんか? 与えられているモノだから、それをどのようにして食べても構わないと、許可を得ました」


「何をするんだ?」


「ええ、此れを使って、スープにしようかと。 ポタージュに」


「出来るのか?」


「ええ、わたくし、自分の課題の為に大鍋持ってきておりますから」




 そう言ってから、クリークの背中から、大鍋を下ろした。 はいよ! これで、鍋は用意できた。 小川の脇にあった石を組んで、竈にして、まず湯を沸かす。 小川の水はそんなに綺麗じゃないから、水玉の魔法で、水を出す。 沸いてきてら、干し肉を投入。 こいつ、めっちゃ固い上に、めっちゃ濃い味だっから、いいスープになるよ。 で、ある程度して、ちょっと掬って飲んでみたら、思った通りの味。



 塩味強かったもんね。 



 でだ、其処に元はパンだったナニかを投入。 グズグズになるまで煮た。 いい感じにほどけて、ボリューム出た。 とろみもついた。 そんで、その中にチーズを入れる。 まぁ、目指したのはチーズリゾットみたいなモノだけど、病人食みたいになったよ。 ちょっと煮詰めて、とろみの強いスープになった。 お椀とコップは皆持ってる。 だから、それを掬って入れたげたよ。 





「……う、美味いな」


「有難うございます。 上手く行ってよかった」


「いや、本当に、これ、携帯食料か?」


「ご覧になっていたでしょ? まだ、探索してませんが、周囲の森にも、食材は有りますから」


「……食事を…… 作ってくれないか?」


「よろしいですわよ、それで、皆様の士気が上がるのなら」




 食後にホットチョコレートを作ったら、これまた喜ばれた。 この脳筋共、甘党だった事が判明。 午後の作業がはかどるね。





 *************





 天幕……そうなんだ、天幕なんだ。 衛生兵分隊は、救護天幕に同居するの。 だから、他の騎士見習い達の天幕より、かなり大きい。 それを9人で立てるのよ。 で、それを分解して持って来た馬車に取りに行って、全部の部品を並べてみたの。


 無いのよ。 一つ重要な部品が。 と、いうより、それが無いと、天幕出来ないのよ。


 どういう事? そんで、”  旅のしおり ” みたいな、概要と規定を読んだら、書いてあったの。



 ” 使用している備品については、欠損がある場合がある。 その場合、現地で調達する事 ”



 ……実戦的ね。 軍務で行軍してると、良くある事じゃない。 落っことしたとか、折れたとか、破れたとか…… ”応急処置で機能回復。 現場の知恵がモノを言います”、的な? 欠品は、メインポール。 そう、天幕を一番高い所で支える柱。 やったろうじゃん。 途方に暮れている仲間を集めて言ったのよ。





「あそこに、いい感じの立木が有ります。 だれか、戦斧ワーアックス持ってませんか? ロープも」





 直ぐに集まる。 で、その立木の処にみんなで行って、高めの処にロープをかけて、切り倒す。 脳筋流石! あっという間。 でね、天幕の大きさから、長さを割り出して、調節。 四人の仲間が、先端とお尻の加工をしてくれた。 学院に入る前、大工の仕事した事有るんだって。 いいねぇ。 最高だよ。


 で、みんなで、天幕の処に持って行って、確認。 いい感じ。


 後は、手順通り。 そりゃ、脳筋8人居るんだし、力仕事はお手の物。 私? 私は、手順の確認と、やった方が楽だよって所を、”助言” するの。  みんな、お昼ご飯が効いてたのか、良く私の言う事聞いてくれた。 で、魔法科の天幕が立ち上がるより早く、救護天幕立ち上がったよ。 教官もびっくりしてた。


 知ったこっちゃない。 こっちは、仕事が山積みなんだ。 みんなで、一緒に、備品の搬入と、確認、設置。 作業の手順を最初から纏めてあったから、早いのなんのって。 力仕事は、彼らにお任せの一日目だったね。 夜ご飯? 勿論作ったよ。 いい匂いしてたから、他の分隊も覗きにきてたよ。




      さぁ、明日から、救護活動と課題に専念だね!!!




皆様に読んで頂き、とても、嬉しいです。


クロエの校外学習はちょっと続きます。まぁ、色々とありますので。


クロエも楽しんでいるようで、何よりです。


では、また、明日!

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