クロエ 生涯の友人達を得る にー
口々に、とっても素敵な演奏だったって言われたよ。 ハハハハ……・ なんか、変な感じ。 ほら、私じゃ無くって、楽器が良かったのよ。 曲は……あれは、ビジュリーの腕だよ。 私だけだったら、そんな、拍手貰えるようなもんじゃないし…… みんな、ヤだなぁ……
エヘヘヘ…………。
ビジュリー、とっても優しくて、眠そうな目をしながら、彼女の御兄さまとゴニョゴニョ話してたっけ。 なんの話か知らんけど、ほんわかした雰囲気が漂ってたよ。 楽しい時間だった。
願わくば、アルフレッド様に素敵な未来が訪れますように。
―――――
次の日に、素敵なプレゼントがあった。 差出人は、バンデンバーグ子爵様。 大きな箱と、小さな手紙。 エルが持ってきた。 何だろうって思って先にお手紙を読んだ。 内容を要約すると、
” ビジュリーと仲良くしてやってほしい。 あんなに楽しそうだった、我が娘を見たのは、初めてだった。 感謝している。 ささやかながら、贈り物を受け取って欲しい ”
って、すんごく、流麗な文章が書かれていた。 バンデンバーグ子爵様、ビジュリーの事心配してたんだね。文面から、ヒシヒシ伝わって来るよ。 父親の絶大な愛情って奴かな? 音楽の申し子みたいなビジュリーだし、宮廷楽士の御家柄なら、そうだよね。 まぁ、御茶会なら、いつでもしてるからね。
でだ、この大きな箱。 なんか、とってもヤバい気がする。 そう、嫌な予感。 箱から漏れて来る、威圧感っていうか、私には眩しい感じのなにか。 ちょっと開けてみる。
やっぱり……
使わせてもらってた、あのリュートだ。 蓋の裏に宮廷楽団の記章があった。 これ、備品だろ? いいのか? 子爵? えっ? 子爵家の持ち物なの? 記章の横に子爵家の記章があったよ。 うわぁぁぁ!! ということは、音楽で龍王国に仕えている家系のお宝じゃない。
う、う、受け取れないよ~~
「お嬢様、これを運んでいただいた方からの、ご伝言が有ります」
「な、なにかな?」
「はい、ごほん、「次は『ミーコック』の円舞曲がいいなぁ~~」、だ、そうです」
「ビジュリーが来たの!! なんで、言ってくれないの!!!」
「はい、先方様からの強い、”お願い” がございまして。 ”突然、強要してしまって、申し訳なく、御顔が見られないので”、と仰られて居られました」
「……わかった……練習する。 朝の鍛錬……また増えたね」
「はい♪」
なんだかんだ言っても、お友達だもんね。 気にする事無いのにね。 うん、頑張るよ。 でも、私、上手くないよ? そこそこだよ? 楽しんでるだけだよ? いいのかな? まぁ、それで、納得してもらおうかな。
子爵様には、御礼状を書いておこう。 素敵な、”贈り物” 本当に有難うございましたってね。
**************
ビジュリーが中庭で演奏したの、かなりの速さで噂になったみたい。
きたよ、さっそく。
今度は、大物だよ。 学院内最大勢力を持ち始めてる、 ” トップ ” だよ。 放課後の御茶会の東屋に、下女、取り巻き、合わせて、何十人も引き連れて来たよ。 もうね、一個中隊! 前進! な、感じだったよ。 べっちょり化粧してたし、なんでか、ほぼ全員、ドレス姿だし……キラキラって云うより、ギラギラって感じ。
そうね、ちゃんと、御名前、言わないとね。
エリーゼ=ナレクサ=ブランモルカーゴ白龍大公御令嬢
めっちゃ上から目線だ。 まぁ、そうだよね。 実質、女子寮の頂点だもんね。
「この場の、序列最高位はだれ?」
高い声だな……聴きづらいよ。 みんな、見回している。 そうだね、大公家の令嬢は私と、マリー。 仕方ないか…… 二人で立ち上がった。 一応カーテシーしておく。 同一序列なんだけど、相手は第一王太子殿下の御婚約者。 まぁ、間違いでは無い。
「マリー=ハンナ=アズラクセルペンネ青龍大公令嬢 ごきげんよう」
うん、無視だね。 いい傾向だ。 私も礼をしたから、後は黙ってよう。
「ごきげんよう、エリーゼ=ナレクサ=ブランモルカーゴ白龍大公令嬢様」
「昨日は、とてもよい演奏をお聞きになったようね。 私も聴きたかったわ」
「そうですわね」
「どうやって、彼女をここへ?」
「ビジュリー様でしたら、ご自分で……」
「そんな訳御座いませんわ。 わたくしの依頼をずっと断ってらしたのよ?」
「でも……」
「そこな、下賤の者が何かの策を弄したのでしょうか?」
なぜ、私を見る? まぁ、ビジュリーが来たのは、私が目的だったんだけどね。
「下賤な者の中に、”至高の音楽家”が、居る事自体間違いなのです。 この中庭の使用は、上級貴族の主催する【サロン】と同一条件といたします。 先程、学生会に命じました。 下賤の者達には、ココは相応しくありませんからね」
うわぁぁぁ……なんだ、この人。 目的の為には、手段を選ばんってわけか。 こいつかぁ、ビジュリーに散々粉かけまくってるのって。 ……マリーとのお茶、何処でしようかなぁ……なんか、ざわついてるね。 そうか……使用人とか、庶民階層出身者の居所がまた、なくなるよね……ゴメン。 多分、私のせいだ……申し訳ないよ、みんなに。
「下賤の者は、身の程を弁えることね。 アズラクセルペンネ青龍大公令嬢なら、わたくしの【サロン】、”至高の部屋”にいらしても、構わないわ」
「……」
「あら、どうしたの?」
「……」
「下賤の者と交わると、貴方の評判までおちますよ? アズラクセルペンネ青龍大公令嬢」
「……」
「では、ごきげんよう」
ちょっと、不機嫌そうな視線をマリーに送ってから、エリーゼ=ナレクサ=ブランモルカーゴ白龍大公御令嬢はご退出された。 ぺっ! おとといきやがれ! さて、皆さんにどう云おう。 マリーなんか、涙ぐんでるし。
「クロエ様……ごめんなさい。 何も言えなかった……嫌ですって、言えなかった」
「マリー様、云えませんわよ。 フランツ第一王太子殿下の『御婚約者』でもあり、ルードヴィッヒ=フランネル=ブランモルカーゴ白龍大公閣下の御令嬢ですもの。 でも、御心、確かに受け取りました。 クロエは嬉しかったですわ」
マリーがギュッと抱き着いて来た。 泣いてるし……困ったなぁ……なんか、みんな寄って来たよ。 なんで、みんな、泣いてるんだ? えっ、私? あのくらい屁でもないよ。 実際、もっとひどい事、云われたしね。 でも、どうしようかなぁ……明日っから、どこ行きゃいいんだ?
「お嬢様、暫く御茶会は……」
流石エル。 判ってらっしゃるね。 うん、こっそりとエルに耳打ちする。
「此処に来れない以上、無理だね。 また、どっか探すよ。 気軽に来れる場所」
「はい……それにしても……」
「あんまり、思いつめないでね」
心配そうな、困ったような、そんな感じの空気の中、私は、声を張って言い切った。
「皆さん、お騒がせいたしました。 またの機会を作りますので、ご容赦下さいませ」
ニッコリ笑って、そう言ったら、更にみんな泣き出した。 あぁ……やっぱり、放置が絶対正義だよねぇ……。
**************
マリー達には、また、どっか探すよって伝えたけど、無いんだよね。 ふらって来れて、目立たない場所ってね。 学生会の専用掲示板に、中庭の使用制限の申請が学院に対して起こされていたよ。 仮処分で、今後一週間は、使えない。
綺麗にしてたの私達なんだけどなぁ…… 例の事件の前までは、学生の法務官候補の審査、署名で通ってたんだけど、今は、本チャンの法務官がチェックするらしい。 学生の規約や、学院の規則に則ってるかどうかの審査なんだって。 外部委託状態だから、時間が掛かるのよ。
放課後、いい感じの場所探して、校内をブラブラ散歩してた。 図書館でお茶とか無理でしょ? 運動場も騎士になりたい脳筋連中が鍛錬に励んでいるし……いっそのこと、教授陣の区画の休憩所とか? だめだ、庶民階層の人達が入れないや…… どっかないかなぁ……
ウロウロしてるうちに、魔法科の薬草園近くに来た。 そんな大きなものじゃないし、薬草園っても、学院の建物の中だから、地植えは出来ないよね。 だから、植木鉢が沢山並んでる、温室みたいな場所。 一応、屋上。ガラスで壁と天井が作られてるから、中はムッと暑い。 此処でお茶会? 無理無理、マリーがすぐに倒れるね。 エルでもしんどいんじゃないかな。 あぁ……中庭が懐かしい……
まぁ、そんな事も言ってられないし、早く次の場所見つけないと、みんながっかりするしね。
でも、ココ、面白い物並んでるよね。 流石に王立魔法学院だ。 スペースも広いし、たくさんの種類を網羅してる。 懐かしい種類のもあるけど、こんな暑い中で平気か? 元々、痩せた寒い場所で生えるものだってあるじゃん。 おお、これは、”ブランデール”!! 食用の草で、ちょっと甘い、”ブランデーゴ”って奴と間違えた奴だ。 めっちゃ苦い上に、お腹が痛くなる奴。
懐かしいなぁ……おやつにって、エリックと競争で、喰ってたブランデーゴ。 あいつ、悪戯で、中にブランデール混ぜやがったんだ。 よく似てるしね。 葉っぱ毟って、茎の甘い所、モシャモシャ喰ってたからなぁ……混ぜられたら、判らんかったんだよ。 けっして、鈍感なわけではない!!!
「触んなよ。 医務官呼ぶの大変なんだぞ、ここじゃ」
突然、声かけられた。 手を伸ばしかけてたけど、ビクッて止まった。 そ、そうだね。 薬草園には、ヤバい草もあるから、厳重に管理されてたんだっけ。 なんかあって、此処に医務官呼んだら、大事になるよね。 うん、ゴメン。
「申し訳ございません」
素直に頭下げとく。ガサゴソ云わせながら、植木鉢の列の間から、人影がこっちに来た。 ちょっと、抜けた様な、それで、ちょい悪そうな、ハスキーな声が聞こえた。
「なんだ、クロエじゃん。 如何したの? 薬草園に用事?」
マーガレット=エスパイヤー子爵令嬢……まぁ、こんな荒い言葉使いするのって、彼女くらいしかいないけどね。この人の口の悪さは、学院内屈指。 ぞんざいな口調に、先生方も苦言を呈しているらしいけど、悪気は無いので、そのままでいいかって、なっている。 羨ましい…… い、いや、ダメでしょ。
「マーガレット様! すみません。 実は……」
御茶会の場所探してるって答えようとしたら、全部言う前に被せられた。 いや、あのね、聴こうよ、人の話は!
「あぁ……何となく判った。 此処は無理だね。 危ない物沢山あるし、暑いし、専門知識無いと、入室許可下りないし、メイドや、使用人の入室基本的に禁止だし」
「ええ、はい…… あの、私が何をしているのかを御存知……」
「うん、大体、 ” ご存知 ” だね。 御茶会ができる、新しい【大公家の茶席】の場所見繕ってんだろ?」
私が御茶会の場所探してるのは、彼女にとって当たり前の様だったけど、なんでかな? 昨日の今日だよ? それに、御茶会は非公式なものだし、場所探しなんて、普通しないよね。
「ええ、そうなんですが、何故その事を?」
「掲示板見た。 ありゃ、上位貴族の差し金だね。 ビジュリー様が、 ” 伝説の名器 ” なんか持ち出したからなぁ……あれで、完全に頭来たんだよ」
はぁ? よく分かりません。 どういう意味ですかね。 それに、また、伝説の名器……あのバイオリンでしょ? なんで、彼女が演奏するだけで、上級貴族の恨み買わなきゃならんですか? 本当に謎が多いよ、学院の生活って!
「クロエは知らんかったのか?」
「何をでしょうか?」
不思議に思って、マーガレットを見る。 そんな私を、額に手を当て、首を振りながら彼女は、残念な生き物を見る様な目で見てくれやがりました。 なんでじゃ~~!
「あの子、 ” 至高の音楽家 ” って呼ばれるのよ。 ” その手に「伝説の名器」が収まると、精霊が降臨しその場の人々に祝福を与える ” 、なんて噂されてるの。 あのバイオリンがそう。 それになぁ…… あんたの使ってたリュート、同じ楽器製作者が作った奴だから、姉妹楽器とか言われてる奴。 二つ揃って音出したら、そりゃ天上の音楽だろうさ。 私だってあの場所に居たんだから、そう思うよ。 知らんかったの?」
「全く……知りませんでしたわ」
「もうちょっと、噂話に耳を傾けた方がいいよ、クロエは」
「まぁ、そうなんですの、噂話で入って来るのは、私の悪口位ですからね、自然と耳を塞ぎます」
そ、そんな、大それたモノ、貰っちゃたんですけど……ど、ど、どうしよう……御返し出来ない雰囲気だったし……練習しろよって言われたみたいなもんだから、朝の鍛錬の後に、リュートの先生から指導された運指の練習初めてたよ……もう、べっちょり触ってるよ……ま、マズい……
「まぁね。 あんたも大変みたいだけどね。 そんでさ、そんな名手の演奏を聴きたいって、高位貴族様はいつもビジュリーを誘うのさ。 でもね、彼女言ってたよ。 だれも、曲を聴いてないって。 演奏中はお喋りばっかりしてるって。 演奏してても、気が入らないってさ。 聞く気も無いのに、呼びつけられるのは、嫌だって、全部、お断りしてんだと」
「まぁ、そうでしたの。 でも、よくご存じなのね」
「たまに、此処に愚痴吐きに来てたからね。 ” つまんなぁ~~い、 つまんなぁ~~い ”ってさ。 大公家のお茶席が、誰でも行っていいって聞いて、ビジュリー、興味深そうにしてたよ。 モチロンめっちゃ警戒してたけどね」
「あそこは、公の場所でしたからね。 警戒って、私に?」
まぁ、あれだけ、悪評垂れ流されたら、そうなるわね。 いくら、アルフレッド様が、彼女達に、私をご紹介したからって、そう簡単に、 ” ハイそうですか ” とは、ならないものね。 判る、良くわかるわよ。 その気持ちはね。 ちょっと腹立たしいけど。
「そう、其れと、貴方のお友達にね。 行ったら、演奏を! とか言われんじゃないかって。 そんな事云われたら、二度と近寄んないって。 だけど、興味はあるから、一緒に来いって。 そんで、私と一緒に行く事にしたんだと」
「いつも、寝てらしたものね」
云う訳ないじゃん、自己紹介貰うまで、誰だか知らなかったし、そんな有名人とは思ってなかったし、良く寝てる人だなぁ……くらいにしか。 まぁ、そんな有名人って知ってたとしても、好きにして貰ってたけどね。 だって、別に【サロン】じゃないし、ご招待してる訳でも、何かをして貰おうって訳でも無く、ただ、放課後の時間つぶし的、御茶会だもんね。
「いい感じに、寝てたね、あの子。 あれね、ビジュリーのリラックス法なんだと。 お昼寝で、心を開放するとか言ってたな。 たわいも無い会話に耳を傾けながら、 ” 微睡むの ” が、最高!って」
「残念ですわ。 そんな場所だったのに…… 余計、探さないと!」
うん、それも、判る。 心が休まる場所って絶対に必要だもんね。 期待とか、義務とか、役割とか、色々背負わされて、常にそれを意識するって、本当に疲れるしね。 マジで、早めに彼女が、心置きなく、” お昼寝 ” を、出来る場所、探さないと!!
「あはははは! クロエっていい奴なんだな」
「はぁ?」
「いっそ、サロン作っちゃえよ、クロエが」
いや、こいつ何言ってんだ? あの場所でしてた、 ” 御茶会 ” の趣旨、判ってんのか? 庶民も貴族も身分の垣根を取っ払って、単にちょっとした、息抜きの場所を作ってみただけじゃん。 サロン? あの規則やら、入会資格やら、何やら、かんやら、ギッチギチに固めたそんな物、息抜きにならんだろ? それにだ、そんな階級差別の場所で、リラックスできるような、精神構造してないよ、私。 なんか、腹立ってきた。
「面倒」
「め、面倒って……えっ?」
私は、目を半目に開いて、口を引き結び、強い視線で、マーガレットを見詰めた。 結構、剣呑な表情してたと、自分でも、そう思う。 彼女の偽悪的な口調より、多分、私の素の方が、口調的には、もっとダメなんだろうと思う。 でもね……この子には、本音ぶつけたよ。 クロエの本音をね。
「だって、サロンにしちゃったら、庶民階層の人達気軽に来れないじゃん。 お部屋使って入室、退室管理してって……嫌なんだよ、そんな、大げさで、面倒で、階級意識が強いのは。 たかが放課後の暇つぶしだよ? 社交? なにそれ。 息抜きにならんじゃんか」
「く、クロエ? ど、どうしたの? あ、あなた……えっ、どういう事?」
マーガレットよりも、もっと根源的な、私の育ちの悪さを現すような、口の悪さ…… 流石に混乱してるね。 多段重装型猫鎧の事も、言っておこう。 そうです、私は、 ” とっても素敵な猫 ” をずっと、飼っているのよ! アンナさんが言ってた、時と場合を考えろって。 だから、 ” 今は ” 要らないと判断した。
「多分、クロエは、マーガレットが思っている様な、そんな立派な御令嬢じゃぁ無いって事かな? 噂で、知ってるでしょ? 私、もともとは辺境の薬師の娘よ? ハンダイ龍王国北端の、魔物がしょっちゅう出る様な田舎のね。 お貴族様対応で、多段重装型猫鎧を標準装備してただけ。 素地はこんなものよ。 此処には、あなた以外、誰も居ないし、来ないだろうからね。 本気で話して、理解してほしかったから、素の私で、貴方には話したんだよ」
「う、うん……そうか……」
「色々、気使ってんの、これでもね。 貴方の口調とかさ、聴いてると、故郷の村を思い出してね、つい懐かしくなってね。 貴女なら、私の素でも、受け入れてくれるかと思って…… ゴメン、幻滅した?」
ちょっとした賭けだった。 私の素、結構、衝撃が大きいだろうね。 まぁ、これで、あっち向かれたら、そん時は、そん時。 自分の判断が間違ってたって事で、マーガレットと、 ” 友達になる ” のは、諦めるよ。 合わない人と、友達になるのは、むしろ時間が勿体ない。
「……い、いや……そんな事無い。 むしろ、……す、好きだな。 好感がもてるよ」
戸惑い気味に、マーガレットは、そう言ってくれた。 彼女があまり友人を作らず、彼女の志望学科の魔法科の先生に言って、この薬草園の世話をしてるって事は、アルフレッド様にお聞きしてた。
きっと……たぶん……彼女は、彼女の、” そのまま ” を、受け入れてくれる人を探してたんじゃないかな。 ビジュリーみたいな人を。 でも、アルフレッド様、何処で、彼女達の事知ったんだ? あの人、やっぱり凄い人だったんだ……
「あら、ありがとう! でさ、マーガレット。 どっか知らない? お茶出来る所」
「条件が難しすぎてね……ちょっと思い浮かばないなぁ……」
「そっかぁ……また、色々探してみるよ」
「ゴメン、力になれなくて」
しょんぼりするマーガレット。 気にしなくていいわ、私だって、学院内探し回って、此処にたどり着いたんだもん。 別な事考えてみるよ。 大丈夫、きっとなんか手があるよ。 でも、ここ良いね。
人が来ないのは、何でだっけ? あぁ……そっか、ここ、来れる人、制限あるんだった……魔法科関連の人しか入れないんだったね。 私は先生に兼科進められてるから、入れたけど…… あれ? なんで、ビジュリー入れんの?
「ところでさ、なんで、ビジュリーこの場所に来れるの? 制限厳しいのに」
「彼女の場合は、楽器で使う……ええっと何だっけ? なんかの草の茎が必要だから、特別に許可が与えられてんの」
「そっかぁ……そうだったんだ。 楽器に使うのか……知らんかった。 ……私もまた、来ていい?」
「あぁ! 歓迎するよ。 今度は、珍しい実でも、用意しとく」
「なら、あっちにあった、メズベールの実がいいなぁ! 甘くておいしくて、手が真っ赤になる奴!」
「お、おい、なんで、知ってる!!」
エヘヘヘ、見つけちゃったんだよね。 あれって、ちょっと麻酔成分あるから、ココじゃなくて、特別管理棟とかになくちゃダメな奴なんでしょ? でもって、あれって、マーガレットが。だんまりで、移植したんでしょ? そうでしょ? 美味しいもんね。 辺境生まれ、舐めんな。 大概の美味い野生の実、知ってるよ。
「さっき見た。 あの葉っぱ、特徴あるんだ。 もうちょっとしたら、白い花が咲いて、暑くなる前に実がなるんだよね。 そん時は宜しく!!」
「……かなわないな。 わかった、用意しておくよ」
「あんがと! そんじゃね!」
一緒に薬草園の出口まで歩いた。 お茶出来る場所探してて、素敵な友達見つけたよ。 マーガレットも、そう思ってくれてたら、嬉しいんだけどね。 出口まできた。 廊下が涼しいね。 彼女一旦下を向いてから、顔を上げて、真正面から私を見詰めて来た。 ちょっと、黙ってから、引き絞った口元が緩んで、彼女が言葉を紡ぎ出した。
「……クロエ様、色々判った。 色んな誤解してたみたい。 ごめんなさい。 こ、これからも、宜しく……ね 」
なんか、その言葉を聞いて、いじらしくなった。 彼女の口の悪さは、私の多段重装型猫鎧と同じ、彼女の鎧なんだね。 うん、わかった。 理解した。
「マーガレット様、貴女に素晴らしい時間が訪れますように。 わたくしからも、お願いします、これからもどうぞ、宜しく……ね。 それでは、ごきげんよう!」
真っ赤になって、手を振ってくれた、マーガレット=エスパイヤー子爵令嬢。 なんか、可愛いなぁ、もう! つられて、私も手を振ってたよ。
友達になれて、良かったぁ
ブックマーク 評価点 有難うございます。
今後とも、宜しく願い申し上げます




