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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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31.ロマンスグレーと、老紳士と、筋肉。

 城内を歩き、連れて来られたのは重厚な扉の前。

 軽く服装を整え背筋を伸ばしたフォルスが重厚な扉をトントンとノックした。 


「フォルスです。迷い人殿をお連れしました」

 

 一拍おいて「入れ」と短い返事が返ってきた。

 扉が開く。


 心の準備をする時間なしですかそうですか。


 室内に入るとまず大きな窓が目に入る。そして、その前に書類が積まれた執務机、中央には来客用であろう高級そうなソファーセットが一式。

 執務机に座っている男性を挟むように控えている男性が2人、合計3人の男性がいた。

 特徴を上げるのであれば右端から、ポニーテールが似合う白髪の老紳士、優しそうな――でも腹の中は黒そう――ロマンスグレーの中年男性、年齢不詳ムキムキ筋肉男性である。


 少し前にアルベルトが言った言葉を思い出す。

 彼は言った「いるのは、おっさんと、爺さんと、筋肉ですからそんな緊張しないで下さい」と。

 確かに、おっさんと爺さんと筋肉だ。特に筋肉は、第一印象が筋肉以外記憶に残らないくらいに筋肉だ。

 でも、緊張しないとか無理だよ。ただ者じゃないぜオーラすごいから、特に優しそうな中年男性。


「ようこそリガルの砦へ。団長のギルバートです」


 3人の男性の内の1人、優しそうな容貌の中年男性――ギルバート団長が席を立ち握手を求めてきたので、緊張でべとべとに汗ばんでいた手のひらを服で拭い応じる。


「こちゅ……ごほん。こちらこそお招き頂きありがとうございます。沙希と申します」


 舌がうまくまわらず噛んだ。恥ずかしい。


「長旅でお疲れでしょう。そちらにお掛けください」

「失礼します」


 団長にエスコートされ、ソファーに腰を下ろす。


 これ絶対高いソファーだ。

 友人が新しいベットを買いたいというから付いて行った家具屋で暇つぶしに色々なソファーに座って遊んでいた時に見つけた0が2つ多い高級ソファーに負けず劣らずな座り心地だし。


 ふかふかな座り心地を堪能していると、隣にアルベルトが座った。しかも隙間を詰めるように。

 そっと、少し横にずれてみる。

 無言で隙間を詰められた。


 ……何故だ。


 助けを求めてフォルテの姿を探すと彼は私が座っているソファーの後ろに立ってニヤニヤ笑っていた。

 ダメだ。これ、面白がって高みの見物してる顔だ。


「おや、アルベルトはずいぶんとサキ殿と仲良くなったのだね」

「えぇ、それはもう。とーっても仲良しですよ」


 にっこり笑顔で団長の言葉を肯定するアルベルト。


 待て待て、まだ3日しか一緒にいないから。

 そんな急激に仲良くならないでしょう。他人以上友人以下だよ。


 正面のソファーに腰かけた団長とその後ろに立っている老紳士からは微笑ましそうな視線を頂き、老紳士と同じく団長の後ろに立っている筋肉には驚愕の表情で凝視された。


 やめて、こっち見ないで。



 居心地の悪い視線に精神がガリガリ削り取られる私を助けてくれたのは老紳士の「これ、団長。若者をからかうのもほどほどにしておきましょう」という一言だった。


 もっと早く、その一言が欲しかったよ。

 

 ちなみに、老紳士はロウゼルと名乗った。リガルの砦でご意見番的な立場らしい。筋肉ムキムキさんはゴンザレスだって、彼はなんとアルベルトの部下だそうで。


 ……アルベルトって実は偉い人? すごい人?

  

お読みくださりありがとうございます。

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