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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第一章 異世界と私
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17.異世界文化コミュニケーション 続迷い人編。

 私は迷い人だそうです。


 迷い人とは、保護するだけで国が豊かになるラッキーアイテムらしい。


 この世界にどれだけの国が存在するか知らないが、各国迷い人争奪戦がおこなわれているようだ。


 もちろんそこに迷い人の意志は皆無。


 迷惑千万である。


 だいたい500年前の文献なんてあてになるものか。絶対にどこかで情報が捻じ曲がって伝わるだろう。


 小学校のクラス会でおこなった、たった10人の伝言ゲームですら「きのう佐藤が夜中まで勉強してた」が最終的に「鈴木は昼まで弁当つくってた」のように、全然違う言葉になって伝わったりするのだ。

 佐藤どこいった鈴木はどっからきた。夜と昼って真逆だし、勉強と弁当は〝きょ〟〝と〟以外同じだった微妙におしい。

 

 私が何人目の迷い人かは知らないがアルベルトの話を信じるのであれば500年前に現れた迷い人は水道も電気も完備された家に住んでいたことになる……が、500年前、逆算するとオスマン帝国がめっちゃ強かった時代で、日本だと戦国時代。だいたい毛利元就とか足利義明が活躍してた時代だよね。どう考えても水道とか電気とかないでしょう。

 そうなると、私と同じ時代の人間が時間軸をずらしてこの世界に?

 いや、まてよ500年前でもローマ水道だったら……あ、でもやっぱり電気ないから違うか。


 てか、迷い人が現れる周期500年に1人って少なすぎでしょう。同胞誰もいないじゃん。世界規模のぼっちとか嫌だ。

 あ、そもそも迷い人が全員地球人なのかも不明だった。


 よく知らない国に保護されるのも嫌だな。もう私一生家から出なければいいんじゃない。アルベルトは明日朝になってから結界の外に飛ばせば、私の許可なしに結界内に入れないし……うん、いい考えではないか。


 なんてことを考えている途中で「迷い人の保護が遅れると戦争が……」「罪のない民が血をなが……」「我が国は迷い人に対して友好的ですが隣国は……」「下手したら一生監禁され……」「素直に保護されたほうが特典が……」とボソボソ悪魔の囁きが聞こえてきた。


 迷い人の保護遅れで戦争!? 隣国が何、友好的じゃない国もあるの!? 監禁ってなにされるの!? もうやだこの世界怖い!


 アルベルトが仕掛けた精神攻撃、効果は抜群だ。

 紗希は思考を放棄した。


「アルベルトさん」

「なんでしょう」

「難しいお話は明日でお願いします。もう、今日は寝ましょう」

 

 無い知恵は絞っても出てこないし、後で石文字の君にお伺いを立てよう。

お読みくださりありがとうございます。

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