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 3月27日 俺様 稼いだ(2k)

 【錬金術研究会】に所属しつつも、東ヴァルハラ貨物駅で水魔法を使って鉄道車両を洗う俺は、シーオークと外洋人の混血青年ヨライセン。


 何故に俺が洗車をしているかというと、話は3日前にさかのぼる。


 ロクリッジ技師長が有望な材料を見つけたと張り切って、宝石加工の工場からその材料を追加でたくさん買って来た。


 そして、【錬金術研究会】は資金が枯渇した。


 それを知ったラッシュ会長が無計画に資金を使うなと激怒して、ロクリッジ技師長と掴みあいの喧嘩になった。

 どうやらいつもの事らしくソンライン副会長が素早く仲裁。その後、空腹を満たすために近所にある東ヴァルハラ駅に4人で賞味期限切れの駅弁を貰いに行った。


 仕事をするって大変な事なんだな。


 その帰り道、隣にある東ヴァルハラ貨物駅の洗車場で大人数で鉄道車両を水洗いしているのを見たラッシュ会長が、水魔法が使える俺を駅長に紹介。


 水魔法で金属パイプから勢いよく放水するのを見せたら、洗車係として採用されて、しばらくこっちで副業することになった。


 その給料を資金源にできると3人は喜んでたけど、それってどうなんだろう。

 でも、住む場所と食べる物が確保できるからまぁいいか。


 夕方になり、今日予定していた穀物貨車20両を洗い終えたので、東ヴァルハラ貨物駅のルイス駅長に報告。


「ヨライセンは洗車が上手いなぁ。脚立無しで上側まで洗えるし、天職じゃないか?」

「ありがとうございます。なんか、車両がどんどん綺麗になるのは俺も楽しいです」

「力持ちだから貨車動かすのも上手いし。人手不足だったから本当に助かるよ」


 そして、仕事をすることで俺もいろいろ勉強になった。

 作業前の説明会でもらった【安全作業の手引き】の冊子を読むことで、普通の外洋人の身体が思っていたよりも非力で脆い物だと知ることができた。


 外洋人の身体では、バイクを担いで運んだり、屋根の上に飛び乗ったり、車よりも速く走ったりはできないんだ。だから俺が【力仕事】をするとドン引きされるんだ。


 日常生活の中でもドン引きされないように気を付けよう。

 俺は外洋人に混じって静かに暮らしたい。


…………


 【錬金術研究会】に帰ったら、ラッシュ会長に今日の日当を渡して、夕食を頂く。


 今日もメンバー4人でテーブルを囲んで楽しく食べる。

 調理は副会長が得意だ。


「すまんなヨライセン。事業が成功したら倍にして返すから、もうしばらくがんばってくれ」

「いいですよ。住む場所も食事もあるし、何より楽しいですし」


「ヨライセンって変わってるねぇ。助かるけど」

「そうか?」


…………


 夕食後、ロクリッジ技師長と相部屋の寝室で雑談。

 普段はさりげなく外洋人の常識を教えてもらったりするけど、今日は研究の進捗状況を聞いた。

 実験データを整理して【フロギストン理論】拡張の【フロギストン熱源素子理論】を構築しているところらしい。


「ヨライセンとの実験のおかげで、フロギストンから熱を作り出す材料を発見できたんだよ」

「すごいじゃないか。それで火魔法の道具ができるんだな」


 俺は未だに火魔法が使えないので、そういう道具があったら欲しい。


「でも、フロギストンの【流れ】に反応して発熱する性質があるから、魔法が使える人が居ないと熱を出せないんだ」

「あー、もしかして昨日会長の機嫌が悪かったのってそのせいか?」

「そう。すごく怒られちゃった。そんなガラクタ要らんとか」


「そうか。でも、そのフロギストンの【流れ】を起こす材料があれば使えるんじゃないか」

「そうなんだ。今はそれを探してて、心当たりがあるんだけど協力してくれるかな」

「俺に出来ることならがんばるよ」


「ヨライセンの近くは常にフロギストンの流れがあるんだ。だから、ヨライセンを分解すれば僕の求めている物が手に入るんだ」

「やめてくれ」


 できることならがんばるけど、そのために死ぬのは嫌だ。

 

 でも、何とかしないと本当に寝てる間に分解されかねない。

 平気でそういうことをする獣人に心当たりもある。

 このままでは俺が危ない。考えねば。


「その材料余っているなら、俺の洗車用のパイプに付けられないかな」

「付けてどうするの?」


「俺は金属パイプで水魔法を発動させて噴射させてるから、パイプの周辺はフロギストンの流れがあるよな」

「そうだね。実際結構流れてたね」

「そこにその材料つけたら、お湯を噴射できないか? 車両下部の油汚れは水だけじゃ落ちないからお湯と洗剤とブラシで掃除して時間かかってたけど、お湯噴射できたらもっとたくさん洗える」


「僕達は洗車機作ってるわけじゃないよ」

「いや、たくさん洗えたら給料も増えるから、その研究成果でお金を稼いだことになるだろ。そうなれば、ラッシュ会長も成果を認めてくれるんじゃないかな」


「そうか! これで会長を見返してやることができる!」


 技師長がやる気を出してくれた。できれは早めに作ってほしいな。

 洗う車両はたくさんあるんだ。


「僕達はもう、ポンコツガラクタじゃない!」


 技師長。そこまで言われてはなかったと思うぞ。

●オマケ解説●

 給料もらうつもりで働いていたら、給料未払いの上に副業の賃金をピンハネとか。ちょっとブラックを超越してるね。

 だけど、趣味のサークル活動と思えばそんなのもアリ。


 目先のお金よりも、大事な仲間、楽しい生活、見果てぬドリーム。

 そんな人生観もアリ。


 果たして、彼等は魔力で発電所を動かすことはできるのか。

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