4月26日 俺様 仲間を集めた(1.8k)
帰郷して、いろいろ考えて、今後の方針を決めてヴァルハラ平野を動き回って仲間を集めた俺は、シーオークと外洋人の混血青年ヨライセン。
シーオークの集落の跡地で、魚を獲って食べながら考えた。
これからどうするか。
いろいろ考えたら、全部一人で抱え込まなくてもいいと気付いた。
困ったときは誰かに相談すればいい。
答えはくれなくても、手がかりはもらえる。
そう考えて、ヨセフタウンのソンライン市長の所に行った。
ソンライン市長はすごく頼りになった。
ヨセフタウン内に各分野の専門家を集めて【情報部】を設立し、昆虫食を出荷する物流網を活用して、混乱するユグドラシル王国全体の情報収集をしていた。
各地から集めた情報より、ユグドラシル王国軍は大火力魔法を使う【獣人】の根絶作戦を行っていると判断。
危機感を抱いた【情報部】は、走るのが得意な混血者を集めて【偵察班】を編成し、独自に情報収集。
消滅した原住民集落と、部隊の移動経路と、今後の予測進路まで地図上でまとめていた。
その予測進路の終点は、エヴァ嬢の村だった。
俺は、その情報を持ってヨセフタウンを出発。
ユグドラシル王国軍との合流を目指した。
ヴァルハラ平野の予測進路上に先回りして待っていたら、トラック3両で移動するユグドラシル王国軍と遭遇。
その隊長とは【戦時伝令使】をしていた時の顔見知りだったので、あっさりと部隊に加えてもらえた。
部隊に合流した翌日、トラックが全車両燃料切れで動けなくなったので、総勢24名の部隊は食料や武器を背負った徒歩の移動に切り替え。
荒野になっているヴァルハラ平野の移動では、俺の洗車パイプが飲用水源として活躍した。
普段意識してないけど、水って本当に大事だと思った。
徒歩の移動で5日間ほど荒野を移動したら、エスタンシア帝国軍の軍用車両の新しい轍を発見。
食料も尽きかけていたので、イチかバチかで合流しようと、轍を追いかけるように進んだら、西ヴァルハラ市跡地周辺に、エスタンシア帝国の残存部隊のキャンプを発見。
とりあえず、俺が【白旗】を上げてお邪魔することにした。
「おじゃましまーす。元・戦時伝令使のヨライセンでーす。よろしければ、食料を分けて頂けないでしょうかー」
「おっ! おぉぉぉぉ! ヨライセンか! 生きていたか!」
テント傍で食事しているところにお邪魔したら、アレク中尉が居た。
「ユグドラシル王国軍23名を連れています。戦意はありません。合流してもよいでしょうか」
「かまわんぞ。こちらの生存者は33名。酒もあるから、皆で、【最後の晩餐】を楽しもう」
「【最後の晩餐】?」
アレク中尉の厚意に甘えて、キャンプにユグドラシル王国軍も合流させてもらった。
戦時糧食の【昆虫食】をつまみに、皆で酒を飲んで騒いだ。
戦時下で、敵国軍人同士が集まり酒盛り。
こんなことができるのに、なんで戦争していたのかと思ってしまう。
酒盛りで盛り上がるキャンプ地から離れて、武器と弾薬を集めている場所でアレク中尉と情報交換した。
大火力魔法で川沿い都市が消滅した時以降、アレク中尉の部隊は本国からの指令が届かなくなり、孤立しているそうだ。
大火力魔法の応酬で世界が滅びかけたこの状況下で、部隊全体としてどう行動するか話し合った結果、【最後の晩餐】をして兵器もろとも【自爆】することにしたと。
「アレク中尉。せっかく生き残ったのに、なんでわざわざ死のうとするんです?」
「守る物も、戦う意味も失った。その状況下で【戦う力】だけ残しても、悲劇しか生まん」
「だったら、兵器だけ破壊して、国に帰ればいいじゃないですか。死ぬ必要は無いでしょう」
「何一つ守れなかった無能な【軍人】に、帰る場所なんて無いさ。無用になった【戦う力】と共に、ここで消えたほうが未来のためだ」
「死ぬぐらいなら、その命、まだ使い道があります」
「我々に何ができる?」
「我々ユグドラシル王国軍と共同で、この世界に残る破滅の脅威を根絶しましょう」
「破滅の脅威? まさか、大火力魔法を使う原住民が、まだ生き残っているのか!」
「そうです。【最終兵器】と呼ばれていたあの獣脚女達の故郷の集落が、ヴァルハラ川上流に残っています」
「【獣人】の駆逐か……。了解した。最期の仕事として十分だ。協力しよう」
この状況下で、全てを守ることはできない。
本当に守りたいものを選ぶ。
俺は、エヴァ嬢だけ守る。それだけだ。
●オマケ解説●
指揮系統も補給線も失った【ノラ軍隊】同士が、世界の未来のために共同戦線を張る。
イイ話っぽく聞こえるけど、やってることはやっぱり【迷惑野郎】
そもそも、世界が滅茶苦茶になったのは、原住民のせいじゃないでしょと。
そんなことはお構いなしに事態は進行する。
この状況下、全てを守ろうとすれば全てを失う。
選ばなければ、守れない。
父の教えを守り、青年は決断する。
その覚悟は、果たして、想い人に届くのか。




