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銀河縦断ふたりぼっち  (完)

作者さま:クファンジャル_CF

キーワード:SF 百合 巨大ロボット バトル 宇宙種族 金属生命体 ブラックホール 過去改変


あらすじ

記憶を失い人間に擬態していた宇宙種族の侵略兵器。そして、彼女と一緒に仲良く活動していた人間の少女「遥」。ある日、地球は破壊され2人は逃げ延びる。人類最後の生き残りとなった遥が目指すは、銀河中心に座する超巨大ブラックホール。その特異点を潜り、滅びの歴史を改変するために。2人のはるかなる戦いと旅が始まる。


感想

これぞSF!な大スケールかつ美しいシーンがたくさん。あっさりと地球は破壊され、巨大ロボが亜光速で格闘したと思えば、もふもふの宇宙人と遭遇し、人工太陽と宇宙樹にめぐり合い、金属生命体の防御網を突破する……すばらしい!

SFと言っても色々とありますが、個人的には宇宙の神秘と美しさ、地球上では決してあり得ない超絶スケールの光景が大の好み。ストライクゾーンど真ん中の描写です。


~~~


膨れ上がった太陽の中に、その居留地(セツルメント)はあった。

他の恒星間種族より黎明種族と呼ばれ、そして自らはもふもふ族と名乗るひとびとの。

その形状を一言で言い表せば、巨大なクジラである。実際それは生きていた。ある種の生命を備えた機械なのだ。彼の代謝は強力な防御磁場を生み出し、恒星のプラズマや放射熱への防壁となる一方、太陽風を受け止め、運動エネルギーや有益な物質を確保するための帆の役割をも果たしていた。

さらにはこの、130キロメートルにも及ぶ巨大な構造物は、表面をある種の液体で守られている。防御磁場によって受け止められた物質をこしとり、必要な元素を抽出する機能を備えているのだ。元素転換は枯れた技術だが、この地に住まうひとびとはそれに頼らず、昔ながらのより素朴な方法を選んだ。ローテクで十分に間に合うからである。


~~~


「人工太陽が照らし出す、内向きに閉じた楽園。か……」

世界のことを遥は、そう評した。

一見すればそこは、木漏れ日の差し込む森の一角。そう見えるだろう。

間違いではない。

されど、それ以外の全てにおいて、ここは規格外だった。

まず、地面がない。その代わりをしているのは機械生命体(マシンヘッド)でもサッカーが出来そうなくらいに巨大な木の幹であり、四方で交差しているのも同様の巨木である。ここは複雑に絡み合った巨木。それも惑星サイズのそれからなる、途方もなく巨大な生態系なのだ。

まさしく驚異としかいいようがない。

そして、この天体の植物の枝葉はすべてが内を向いている。陽光が惑星の外ではなく、中心から来るからだった。


~~~


くぅ~~~!!! たまらん! ロマンあふれる宇宙描写、すばらしい。

そして、表面的な美しさだけなく作中に出てくる各種理論もしっかり作られていて作者さまの確かな知識とこだわりを感じて好印象。

たとえば、作中には光速を超えるいわゆるワープが出てきますが、異次元などを使わずにがっつり理論化されています。


~~~


トンネル効果が光速を越えて作用するように、位置エネルギーが一致する点同士を渡るのである。物質の存在はそれ自体が量子である。ある瞬間に消滅し、次の瞬間にそれは再び生成される。離散的なのだ。本来(量子論的な揺らぎの範囲内で)同一地点に出現するはずのそれを、均衡するもう片方の地点に再生成させるのが慣性系同調航法だった。


~~~


私は科学者じゃないので説明の正誤・可能性のありなしは判断できませんが、少なくとも作中世界の物理法則にしたがった描写しか出てきません。

なんというか作者さまの「科学的思考」を感じます。「ファンタジーじゃなくてSFを書くぞ!」という心構えと言いますか。


ストーリーも本格的。ある意味で自己同一性が崩壊しまくっている。

序盤で少女があっさり死んで、計算されたデータとしてシュミレーション上で会話する……この展開を見た時に「この作品は面白い!」と確信しましたね。間違いなく作者さまはSF好き。

主人公の遥さんも、とても良いキャラです。科学的知識が豊富で宇宙大好き。そして、精神的強さと好奇心がやばい。


後輩の正体が金属生命体。あっさり地球が滅び、自分が人類最後の生き残り。しかも、自分の体は分解されて、機械の中で計算されたプログラムとしてのみ存続している……こんな状況を受け止め理解し、それでも前に進めるのはすごすぎる。

私を含めて人類の99.9%は精神崩壊する展開では(笑) 物語が成り立つのも生き残ったのが遥さんだからこそでしょう。

特に4章のストーリーは、ほんとSF的ですねぇ。これはガチのハードSF系の思考回路じゃないと思い付けない流れでしょう。


2人の少女(?)たちが助け合い支え合う百合物語にして、壮大なスケールな本格ハードSF。今までの紹介を見て気になった人はぜひ読んでみてください。めちゃ面白いですよ。

こういう驚くほどの良作に出会ってしまうから、web小説の発掘はやめられません。


状態:完結

文字数:222,319文字


個人的高評価ポイント

◇ アイディアが良い!

◎ 高い完成度!

☆ 私の特に好きな作品です!

作品URL

小説家になろう https://book1.adouzi.eu.org/n4633eh/

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054882492566

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