ニート廃業届 ~自宅警備員、クビになる~ (完)
作者さま:髙田 電卜
キーワード:ニート 社会復帰 人生
あらすじ
38歳無職。職歴なしのニート。兄から渡された封筒のなかみは100万円と、『これで最後』の手紙が一枚。果たして生きていけるのか? そもそも生きる意味はあるのか?
感想
リアリティのある心理描写に読んでいて心がえぐられます。無力感、後悔、自殺をするかどうか、ハローワークの冷たい対応、白紙の履歴書、ようやく入れたのはブラック企業……
しかし、語り口はとてもユーモラス。
~~~
俺、部屋、蛍光灯。
これが全ての完璧な世界がここに完成しちゃったわけよ。
あ、今なら死んでもいい。むしろ死にたい。
そんな考えが浮かぶんだけどさ、ほら、さっきご飯を食べたから、死ねないの。
水飲んで、米食って、塩舐めて、酸素と二酸化炭素を交換してると死ねないの。
人間の身体っていうのは不便だよね。
死にたいな~って思っただけで死ねるようにできててくれれば良いのに。
そしたらさ、苦しい思いをする自殺とか考えなくて済むのに。
死ぬのは良いんだけどさ、死ぬ直前が問題なんだよね。
すっげぇ苦しそうだから。
もっとこうアッサリと、蝋燭の火がフッと消えるみたいにさ、ボーっとしてて、意識がフッと消えたら、「ハイ、お終い」みたいなのが理想なんだけど、人間の身体って、ホント、不便にできてるよね。
もっとさ、俺よりも生きたがってる人にさ、
「はい、これ俺の寿命。あげる」
って、ポンと渡せれば良いのにね。
~~~
すべては「俺」の言葉として書かれる。見たこと感じたことを素直に話している感じで、主人公に親近感がわきますね。
あと、主人公は「誰かのせい」にしないんですよ。泣き言はいっぱい言うけど、「自分の問題」として真摯に現状に向き合ってるし、周りの人が自分を助けてくれれば素直に感謝する。弱い人間だけど悪い人間じゃないので読んでて不快感が無い。
話が進むにつれて何とか社会復帰していくけれど……元ニートが都合よく人生が逆転できるわけなし。最後の締めも現実的で心に刺さります。
~~~
そういうわけで、今日も俺は生きてます。明日も生きてます。一週間後も生きてるんじゃないかな。あと一年は大丈夫。頑張って生きていきますよ。俺。
……十年後は、ちょっとわかんないかな。それはちょっと、ゴメン。
~~~
けっきょっく10年後は分からないような不安定な人生を生きるしかなく、未来に大した希望もない。それでも、とりあえず自分なりに生きていくつもりはある。
ほろ苦いからこそ、印象に残る終わり方です。
状態:完結
文字数:89,353文字
作品URL
小説家になろう https://book1.adouzi.eu.org/n2207et/




