作家になりたい人が多すぎる (完)
作者さま:斎藤真樹
キーワード:自費出版 編集者 悪文 コメディ
あらすじ
自費出版の会社で編集者をやっている主人公。そして、素人である依頼者たちの文章は問題だらけ! しかし中には才能がある人もいたりして? 編集者の苦労と喜びを書く。
感想
「下手な文章・分かりにくい物語」の例がすごく上手い。読者としては共感しまくり、作者として活動している人なら参考になりそう。
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『私が下を見ると、そこに死体がばったり倒れていた。思わず悲鳴がしたが、すぐに口を押さえた。死体はすごい血糊で床にまで流れ、私は一瞬踵を返して逃げていった。』
「下を見ると」はどのくらい下なんだ。手もとを見るのも、足もとを見るのも、階下を見るのも、高層ビルから地上を見るのも、距離こそ違え全部「下を見る」だ。言葉の選び方が雑。前後の状況から、ここは「足もと」くらいの「下」だろう。
それに、死体は「ばったり倒れ」ない。人がばったり倒れてやがて死体になるのであって……いや、死んでからばたっと倒れたかもしれないが、特殊な状況下でなければ、死体については「ばったり倒れる」とは表現しない。でも、この、「日本語は、普通はそうは言わない」というのが作者に対してうまく説明できない。しかもたいがい、こういう文を平気で書く人に、そんなことは伝わりっこない。
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こういうのあるある! 気になりますよね~。分かりにくい物語の例も、まさにそんな感じ。色んなパターンが出てきますけど、どれもこれも本当にあるある。
それぞれに対する突っ込みにうなずきまくりですよ。首がもげるぐらいの勢いで共感しました。どこがどうおかしいのか、見事に言語化されているのがすごい。これが書けるのは作者さまに理解力と文章力があるからこそですね。
そして自費出版の編集者だからこその大変さも色々と書かれていて面白い。文章の問題点を指摘しようとしても聞き入れなかったり、予算を考えない注文をしてきたり。作者さま自身が出版業界の人なのでリアリティたっぷり。
しかし苦労話だけでなく、良い作者に出会えた・良い本を出せたことの嬉しさも伝わってきて爽やかな読後感。終盤の展開は読んでて主人公と一緒に嬉しくなっちゃいますね~。
「作家になりたい人が多すぎる」、このタイトルの感じ方が1話と最終話で逆転してくるのもステキな構成。
文章も構成も上手い、そして何より作者さま自身の出版愛・小説愛が伝わってくる作品です。
状態:完結
文字数:67,467文字
個人的高評価ポイント
◎ 高い完成度!
小説家になろう
https://book1.adouzi.eu.org/n2304do/作品URL




