コルシカの修復家
作者さま:さかな
キーワード:近未来ファンタジー ジュブナイル 絵画 ミステリー シリアス
あらすじ
地球に埋蔵されたエネルギー源が枯渇した近未来。人類は絵画を還元すると不思議なエネルギーを得られると発見した。生活は維持されたが、代わりに絵画から芸術的創作的な意味は無くなった……
そんな時代、コルシカ島に住む少年「ルカ」は記憶喪失の少女と出会う。そこから始まる旅、そして見えてくる世界の真実。
感想
個性的な世界観の中で、絵画修復家の少年と記憶喪失の少女が地中海のコルシカ島をめぐる物語。何といっても「絵画がエネルギーに変換できるようになる。しかし、そのせいで美・芸術という概念は失われている」という個性的な設定がセンス抜群!
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「素晴らしい! この鮮やかな色合いはまさにこの画家の特徴。これなら修復前よりも数倍多くのエネルギーになるに違いないですぞ。ああ、本当に、何度見ても素晴らしい」
エネルギー。その単語が耳に入って、ルカは少し淋しい気持ちになった。修復とはもちろん絵画を本来の在るべき姿へ戻す作業だが、その目的は絵画をより美しい形で鑑賞したいからではない。絵画をより多くのエネルギーに還元する為なのだ。
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すごいアイディアでしょう! 絵画が「エネルギー資源」として扱われ、画家たちは「エネルギー生産者」として評価される時代!
絵の価値とは? 絵を描く意味とは? リアル地球とはまったく異なる世界観が支配する社会……とても個性的でとても魅力的です。
また、絵画を中心テーマとするだけあって風景の描写も美しく、色のこだわり感じるのも良い感じ。
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全てが撫子色に染まった空に、突如|閃光<<せんこう>>が走る。
黄金の、神が放った矢のように見える。また、秋の空の下たなびく黄金の麦のようにも見える。
真正面にそびえ立つ険しい岩の山――バヴェラ|鋭鋒<<えいほう>>の先端を貫き、黄金の太陽が生まれた瞬間、ルカの心は感電したかのようにじんわりとしびれた。
コルシカ島の朝は一枚の絵画から始まる。
それは全ての空を覆う撫子色のヴェール。
そしてそれを貫く一筋の黄金色。
人は、人が何かに触れた時に感じる感動を抑えることはできない。その感情を形にした芸術品もそうだ。
誰にもとめられやしない。
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う~む、美しい描写! 私もこの風景を見てみたい!
舞台として地中海のコルシカ島を選んでるのも良いセンスでしょう。オシャレでロマンチック。旅の中で訪れる各町の描写も魅力的。
ストーリー面でも少女の失われた記憶と世界の真実を探っていく本格ジュブナイルで質が良い。それぞれのキャラクターに過去・秘密、譲れない思いがある。
2018年8月時点でも70万字を超える大長編ですが、ダレた感じはありませんね。章分けが明確であり、1つの章の中では起承転結がしっかりあってテンポがいい。
あと、章の初めにはタイトルロゴがあるんですが、これがセンス良い! 見事! やはり作者さまはデザイン技能もお持ち用です。
あえて問題点を上げるなら、がっつり「絵画」をメインテーマにしているのでここに興味がないと楽しみにくいのだけが欠点?
読む人は選ぶかもしれませんが世界観・キャラ設定・ストーリー、すべての要素が高品質な良質ジュブナイル作品です。
状態:連載中
文字数:752,857文字
個人的高評価ポイント
◇ アイディアが良い!
◎ 高い完成度!
☆ 私の特に好きな作品です!
作品URL
小説家になろう https://book1.adouzi.eu.org/n2183cf/




