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大会前夜‐コンベンション・イブ

 情報の海に生じた世界。幻想の世界において、人々は際限なく力を、その「極端」を求める。

 持てる全ての能力、戦略、戦術、あらゆる「力」を駆使し、最強のゲーマーの座をかけて戦士プレイヤーたちが、今宵、集う。

 

「はーい。世界の皆さん。おはようございます。こんにちわ。こんばんわ。ここからはYouLeaksが特別生番組をお送り致します。KOG開催までもう間もなくまで迫ってきています。只今の残りカウンターは500人といったところまで来ています。

 ここ王都は、まだか、まだかと大会の開催を待つプレイヤー達で溢れています。

 皆さん、用意は万全ですか?」

「YEEEEEEEE」

「皆さん元気ですね。さぁどんどんいきますよ。私たちは今、城門を抜けて、開催準備中の城内に来ています。あちらこちらに装飾がほどこされて、とても綺麗ですね。スタッフの皆さん忙しそうですね」

「ちょっと、困るなぁ。君どこの局?」

「あれ、あそこ、王様じゃないかしら。特ダネのにおいがするわ」

「困りますよ。帰ってください」

「いいじゃないの。ちょっとくらい。ああ。もうあんな遠くに、あ!手を振ってくれたわ」

 場面は変わる。荒野エリア付近。

「さぁ私たちは今、大会に使われる特設ステージに来ています。もうほとんど完成しているそうですが、今もまだエンジニアの方が忙しそうに作業を進めています。特殊な映像保護が施されていて、映像を流すことはできません。私たちの独自に入手した情報によるといくつかの個性溢れるエリアが用意されているそうです」

「あ!またアンタたちか。困るんだよ。もう帰ってくれよ」

「おっと。邪魔が入りそうなんで、次の場所へ向かいます」

「私たちは今、大会を前にして盛り上がる、城下町に来ています。中央道をメインに多くの露天商で盛り上がっています。美味しそうな出店もありますよ。

見てください。フワッピの形をした綿アメが売ってますよ。

 え?街の人の様子をリポートしろ?はいはい。

 ねぇねぇ。そこの君たち、試合は楽しみですか?」

「もちろん。もう待ちきれないよ。あ!そうだ。あの噂は本当なの?」

「噂?」

「きまってるじゃん。開会式にはSieluが来るんでしょ?」

「そうですね。私たちも噂でしか聞いてませんけど、是非、来て欲しいですね。今度はあの人に聞いてみましょうか。どうも、こんにちわ」

 ローブを目深に被ったプレイヤーは黙ったまま答える様子はない。沈黙したまま立ち去ろうとする。

「忙しいところすいません。大会にでるんですか?Sieruを見に来たんですか?ん、あれ、まさか本物のSieru?ちょっと、ちょっと待って」

 ローブを羽織ったプレイヤーは走り去る。

「早すぎ。全然追いつけないわ。次に行きましょう。どうもーこんにちわ」

 通りすがりのガンナーの少女。

「うわぁすごいなー。これ全国で映るの?」

「そうですよ。皆さん見てますよ」

「本当?すごいなぁ。インタビューに答えたらいくらもらえるの?」

「それはねー。もらえないんですよ。ごめんね」

「え?もらえないの?なんだー。ばいばーい」

「ありがとね。ばいばーい」

「あれ?あそこにいるのは、もしかして今ネットで話題の美少女プレイヤーのシスターじゃない?」

 ライブを終えたシスターに直撃取材をする。

「お疲れ様でした。シスターさんですよね。今回のゲームの意気込みはどうですか?」

「え!?そんな、いきなりいわれても、あの、そのー」

「かわいい!ありがとうございました。シスターさんでした」

 ポニーテイルの女性剣士が通りかかる。

「どーもー。今ちょっといいですか?KOG出場の意気込みはどうですか?」

「ハ?けーおーじー?なんだいそれは強いのかい?」

「いや。人の名前じゃなくて、大会の名前ですよ。大きな大会がひらかれるんですよ」

「え?大きな大会?どおりで人がいると思ったよ。いつあるんだい?」

「きっと、今日中には開催されますよ」

「初耳だな」

「頑張ってくださいね」

「そうだな。そうだ。赤い髪の槍使いを見なかった?」

「あーちょっと見てませんね」

「そうか」

 剣士は立ち去る。

 赤い髪の槍使いが通る。

「どうもー」

「ああ。急いでるんで」

「ちょっと、一言だけでいんで」

「ハァ。音声だけにして下さいよ」

「え?あー。大丈夫ですよ。大会の意気込みはどうですか?」

「もちろん出るよ。賞金が欲しんで。これでいいですか、じゃ」

「ありがとうございましたー。あ、剣士の人が探してたっていうの忘れてた」

 どこに行っても写りこむ黒猫。

「ん?また黒猫だ。かわいいなー」

 銀色の鎧を纏った剣士が通る。フェアリーを従えている。

「どもー。インタビューいいですか?」

「え?インタビュー?」

「KOGの意気込みはどうですか?」

「KOGの意気込み?いんですか俺で?えーっと。そうだな。俺はこのKOGで」

「あ、すいません。こっちのカメラ見てもらえますか」

「あーすいません。俺はKOGで」

「あーそれカメラじゃないです」

「え?ちがうの?俺は」

「あ、もういいです」

 クルーは城の内部に来ていた。

「ついに発見しました。王です」

 スタッフが大きな声でどなっている。

「失踪しただぁ?そんなもん、どんな手使っても絶対見つけろよ!大変なことになるぞ!」

「なんか騒いでるね、あ!王様」

「やぁ。君たち、すごいなぁ。どこにでも現れるね」

 側近の兵士が言う。

「困ります。アポを取っていただかないと」

「いいじゃないですかー。そんな固いこと言わずにー」

「いいわけないでしょ。ん?あれ?王は?」

「え?いないじゃん。どこいったの?探して!あっちあっち。追うわよ」

「待ちなさい。あなたたち」

 王を追って全員、走り出す。

 行き止まりに行きつく。

「あれ、確かにいたはずなんだけどなー」

 撮影クルーが言う。

「見ろ。これ」

 壁に青い炎でメッセージが添えられている。

 TOOBESOONと刻まれている。

「あなたたち。誰の許可でここにいるんですか?」

「やべっ逃げろ」

「というわけでYouLeaksがお届けしました」

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