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King.Of.Gamer

 街の中が騒然としていた。

 皆、一挙に城の方へと向かっていく。

 アイリスは走っていくと見ず知らずのプレイヤーに聞いた。

「おい、何があったんだ」

「おまえ、なんもしらねぇのかよ。城の門があいたんだよ」

 俺たちは一斉に顔を見合わせる。

 すぐに走り出す。

 確かに、いつも閉ざされているはずの10mはある巨大な城門が開門している。これはテンションがあがらざるおえない。

 プレイヤーの列に加わる。

 門をくぐる。

「すげぇ。一体何人のプレイヤーがここに集まってんだ?」

「500人。いや、600人、もっとか」

「900人だよ」

 リリィの瞳の中に魔術紋章が浮かんでいる。魔眼を使っているようだ。

「そーいう使い方もできんのかよ。便利だな」

 ついに城が開く。(それまで城の中は入れなかった)

 バルコニーから王が顔を出す。

 広場のプレイヤーから歓声が上がる。

 ここからじゃ小さくて見えなさそうだ。


「お集まりの皆さん、よく、おいでくださいました」

 挨拶と同時に、バルコニーの左右に設置された。魔導鏡スクリーンに王の顔が映し出される。

 髪は紫の緩い長髪。女を魅了する、甘い顔立マスク。豪華絢爛な技巧のこらされた衣装。派手なマントが風でひるがえる。

「あまりの人数の方が来てくださったので、誠に申し訳ありませんが入場制限をさせていただきました。発売から一か月が経過し、相当数のプレイヤーたちがこの王都に辿り着いたかと思います。それぞれが、己の腕に自信を持ってきたところではないでしょうか。皆さんもそろそろ疑問に感じていたはずです。このゲームのクリア条件とは一体何なのか。そう、このゲームにクリア条件などないのです。」

 会場が一斉にどよめく。罵声も飛ぶ。

「落ち着いてください。無限の可能性を秘めたこの世界にクリアなどという無粋なものは不要です。しかし、私は皆さんにこの世界を堪能していただきたい。そこで今回、特別にゲームのシナリオとは別の特殊クリア条件を設けることに致しました。皆さんも噂ぐらいは耳にしたことがあるはずです。King・Of・Gamer」

 会場がどっと沸きかえる。そう。勘がいいものはもう気が付き始めている。

「皆さんがこれまで磨いてきた、その力。如何なく奮ってみたくはありませんか」

 呼応するように観衆が声を上げる。

「最強のゲーマは誰だ!」

 観衆の白熱は止まらない。

「私はここ、ナイツ・オブ・ワンダーランドにおいてKOGの開催を宣言します。優勝者には賞金の一千万円、そして、その暁には私は王座を退き、この世界の、新たな王の称号が手に入るのです」

 大きな歓声が上がる。

 この様子は中継で全世界に配信されている。

「今現在、この世界へのエントリー数は999万人。一千万人まで目前です」

 魔導鏡スクリーンのカウンターが動き始める。

 全世界のゲーマー達がこの映像を見る。

「このカウンターが1000万人になった時、大会は自動的にスタートするのです」

 これまでで最高の歓声が上がる。ここにいる誰もの目に闘志が宿っていた。そしてこの映像を見た全世界の人々に闘志が宿る。誰もが意気揚々と、そして虎視眈々とその高みを狙っている。

 自然と鼓動が速くなる。背筋がぞくぞくする。

 誰もが闘志に燃えていたその中で、アイリスだけが、何故かうつむいて暗い表情をしていた。

 なぜなのか。誰よりも、こういうことが好きそうなものだが。

 王はさらに告げた。

「もう一つ言い忘れていました。KOGの参加権はこのゲームをプレイしている者全てに与えられていますが、予選大会の出場条件を一つ定めさせてもらいます。開催当日まで、一度たりともロストしてはいけません」

 言い終えると、王の姿がバルコニーから消える。

 そして会場の中心に稲妻が走る。それとともに膝をつくような姿勢で突如現れたのは他でもない、王だ。

 それを見たアイリスは眉間を寄せながら言う。

「空間転移魔法。アイツ、強いぞ」

「そして、これは私からの、ほんの些細なプレゼントです」

 広場の床、全体を覆う巨大な魔法陣が幾何学模様に光り輝く。

 巨大な光の球体が広場に浮かぶ。そしてそれは落下した。

 光の球体の中から巨大なモンスターが現れる。それは全長30mを越える特大のフワッピだ。

 その体は金色に輝いていた。その名を妖獣王フワッピ・タイタン

 王の姿はいつの間にか消えていた。

 俺はこのモンスターをよく知っている。本来のこいつらは30cm程度。このゲーム中おそらくもっとも弱い雑魚にして、俺の最高の獲物だ。散々倒させてもらった。愛くるしい見た目から、一瞬倒すのがためらわれるが、他のおぞましい化け物どもに比べれば、全然怖くないので俺でも倒せる。

 フワッピとはこのゲームでも最弱の獣型モンスター。手もなければ足もない。

可愛らしい猫の頭だけのようなモンスターだ。現実世界の猫と同じだけ毛並みに種類はあるが金色に光るなんてのは聞いたこともない。

 そして、こんなにでかいと、全く可愛くはない。

 リリィは言った。

「わぁ。かわいーねー」

 もう一度言うが可愛さなど、ない。

 このモンスターの特徴といえば、ぴょこぴょことはねることだ。つまり。

 突如、会場が揺れる。まるで地震だ。同時に悲鳴があがる。そう、特大フワッピが跳ねたのだ。こいつが跳ねるだけで広場に地震が起きる。犠牲が出る。すぐに止めないと、犠牲が増える一方だ。

「まずい、あいつを倒さないと」

「でもここはお城のなかだよ?武器って使えるのかな」

「大丈夫だろ。さっきあいつは魔法使ってたじゃねーか」

「ああ。確かに」

 会場の戦士プレイヤーたちが一斉に武器を取る。

 それぞれが、得意とする魔術やスキルを使用する。

 リリィはレイジング・フィールドを構える。

火炎弾フレイムバレッタ装填。魔力供給70%」

 アイリスは呪乃剣アゾットを体の中心で構える。刀身が青く光り始める。

「我は破壊するもの。慈悲なき者よ、白き薔薇となりて、咲き乱れろ」

 俺は銀楯シルバーウォールを構える。化け物たちの攻撃から巻き添えをくわないように身を守る。

 赤熱の爆炎と白銀の氷柱が交互に妖獣王フワッピ・タイタンを包む。

 会場のプレイヤーたちが我こそはスキルを発動する。広場を色とりどりの閃光が包む。

 あっという間に、特大フワッピの体力は底を尽いた。

 妖獣王フワッピ・タイタンはボンッと破裂した。

 まるで白昼夢のようだった。特大フワッピの、その中から、大量のコインが降り注いだ。さらにとてつもない量の経験値が入ってくる。

 何もせずに参十$分も儲けてしまった。

 アイリスは、おお真面目な顔で言った。

「さっきの馬鹿王をとっ捕まえて、後100回くらい今のをやらせよう」

 こうして、KOG開催宣言が執り行われたのだった。


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