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お正月特別篇

少し遅れました。ゴメンなさいちょっと忙しくて。


次回からは本編です。


誤字脱字の可能性大です。

とある日の午後。アール公爵邸の俺の部屋で、何時もの三人で集まっていた。


「さて、唐突だがお正月をやろうと思う」


「またか」


「またなの?」


うん、またなの。


「理由は前話と同じ」


「前話とか言うな」


「違いがあるとすれば、今回は普段のペースなら三が日までには間に合いそうって事だ」


「間に合うとか言うな」


「とは言え、ぶっちゃけネタが無い」


「「駄目じゃねえか」」


いや、そうなんだけどさぁ……。


「ぶっちゃけ正月って何すんの?」


「いや、初詣とか?」


「異世界で?」


「………」


日本の神とかいねえし、そもそも俺神様とか殺してるんですが。


「初日の出を見るとか?」


「こっちの世界で年明けてるって訳じゃないし」


「……確かに……」


そう考えると普通の日の出だぜ?


「お年玉?」


「貰う必要無えだろ別に。あげるにしても、プレゼントとかと違って貴族の子供に現ナマは駄目だろ」


「だよねー……」


金に困ってない+普通に失礼だと思う。


「羽子板とか福笑いとかの遊びは?」


「この歳で?」


「憐れまれそうだな」


というか、あの手の遊戯は、肉体性能が上がった俺たちじゃ退屈な事になるか、バトル漫画よろしくな超展開のどっちかになるぞ。


他の事に関しても、向こうじゃないと意味が無い。クリスマスならプレゼントを渡すという事が出来たが、正月はこっちでやっても文化が違うから理解されない。勿論、この世界にも年越しイベントはあるだろうけど、この世界が年越しという訳でも無いのだ。


「「……やる事無いな……」」


本当にね。


「現実世ーー」


「おい止めろ」


「失敬。向こうの世界と合わせただけだからなぁ。かと言っていきなり年明けですとか、流石に特別ーー」


「ストップ」


「おっと失礼。魔導師としても、時間軸は簡単には弄れないからな」


まあ、そう言う事にしておきましょう。これなら二人も文句無いだろ?


「とは言え、ここで終了ってのもナンセンスだと思わないか?」


「いや、どうなんだろ……」


「やる事が無いのに、無理に何かをやらなくても、とは思うが………」


思うけれど、これの主旨は理解出来てる為に強くは言えないらしい。


だからこそ、俺は提案しようと思うんだ。


「帰るか」


「へ?」


「は?」


「いやだから、ちょっと日本帰ろうぜ?」


「「………」」


二人は沈黙する。米神を押さえ、目頭を揉み、顎に手をやり、一通り唸った後、大きく口を開け、


「「…………はぁぁぁぁぁ!???」」


大絶叫が部屋に響いた。









ガヤガヤと騒がしい人混み。肌を刺すような寒さと、人混み特有の生暖かさ。周囲に並ぶ屋台からは、店主たちの客寄せの声が聞こえてくる。


「まさか本当に帰ってくるとは……」


「ちょっと思わないよねぇ………」


眼下に広がる光景に、少しばかり放心気味の二人。ったく、何を驚いているのやら。


「あのなぁ、何でそんな呆然としてんだよ。日本に帰れるのは二人とも知ってんだろ」


実際にクラックから帰還してるのだ。シーラからだって帰れるに決まってる。


「いや、まあ、そうなんだけど……。実際に帰ってくるとね……」


「行き来自由って、異世界物では結構な反則だからな」


まあね。ああ言うのって、帰れないから仕方ないとか、帰れる為に頑張るってのが主人公たちの動機だし。偶に行き来自由な話もあるけど、そう言うのは商売系か、趣味感覚で異世界を満喫するとかだし。バトル系だとあんまり無いよね。


「と言うかさ、今更だけど何で雲雀はもっと早く帰ってこなかった訳? 魔導師になったら、速攻で日本に帰れたんじゃない?」


本当に今更な質問だな。


「あー、それはやっぱり初期だから俺の設定が固まっーー」


「んな事聞いてない」


「おほん。そもそもの話だが、二人はちょっと勘違いしてる。確かに魔導師ならその場で魔法を創れる。けどな、やっぱり即興で創ると効果が大味になるんだ。攻撃とかなら威力が高けれりゃ大味でも全然構わないんだけど、転移とかになるとそれじゃ駄目なんだ」


リアルで石の中にいる状態になりかねないし。いや、別に大陸移動とかならそこまで気にしないんだけど、流石に世界間移動だと洒落にならない事態もあり得る訳で。


「魔法だって万能じゃない。魔法を発動する過程があって、その結果として魔法となるんだ。だからその過程以上の効果は出ないし、過程に無い事は出来ない」


そもそも俺たち魔導師が魔法を創るプロセスは、魔力に命令を出す→魔力が動く→命令通りの効果を発揮する魔法となる、という三段階だ。


絵に例えると分かり易い。魔導師が依頼者で、魔力が絵描きで、絵が魔法。


「即興で創るって事は、何も指定せずに海の絵を依頼するって事。背景、オプション、色合いなどなど、全てが絵描きである魔力の判断だ。同じ海の絵であっても、そこに至るまでの過程や附属効果が違う」


燃やすと言う効果にしても、炎をぶつける、振動させる、概念を強制させるなど、やり方なんて幾らでもある。何も指定しなければ、魔力がこれらの候補の中から勝手に選び、物を燃やすという結果を出す。


「転移魔法の場合だと、最終的な結果は転移だ。座標は転移する為の過程でしかない。だからしっかり魔法を組まないと、全く違う世界に転移するか、限りなく似てるけど違う世界に行っちゃうんだよ。だからまあ大変。パラレルワールド含めると無数にある世界の中で、正しく俺のいる世界に戻るのは骨が折れた」


他にも色々と制約があるから、地球に帰るのも数年掛かったんだ。


「とまあ、こんな感じの理由があった訳ですよ。魔導師だって万能じゃないんだぜ? 俺のレパートリーにある魔法だって、相応の失敗を繰り返して完成してるし」


「そうなんだ」


いや、迷惑掛けてなきゃ天災なんて呼ばれてない訳でして。


「何と言うか、俺たち魔導師って性能に引っ張られてる部分が少なからずあるんだよ」


無駄に何でも出来ちゃう分、予想外の出来事が起きると言うか。


「まあ、それでも時間掛ければ大抵の事は出来るんだけど。取り敢えず、何でも出来るけど万能では無いって事だけ覚えておいてくれや」


それを踏まえた上での結論だと、


「あーだこーだ理由やら理屈やらを捏ねたけど、どっちにしろ万能チート系の俺Tueeeなのは変わらんから、深く考えずに読ーー」


「「黙れ」」


「豆知識程度に覚えておいて」


まず即興で魔法を創るって事をあまりしない訳だから、完全に蛇足だよね。


「さて、それじゃあそろそろ移動するか」


話もひと段落したし、いつまでもここで駄弁ってる訳にもいかないしな。罰当たりな気もするし。


「………そうだよね。今までツッコなかったけど、ここ神社の屋根の上なんだよね」


正解です。今俺たちがいるのは神社の屋根の上。俺たちの住む地域の中でも結構な規模な神社なので、眼下には大量の屋台と人が見受けられる。普通なら注意される物だが、俺たちは気配を消している為に気付かれていない。


「何で毎回屋根に登りたがるの?」


「浪漫?」


「煙の類だからだろ?」


それは遠回しに馬鹿と言っているのかい?


「まあ良いか。んじゃ、降りるぞ。降りたら初詣して、その後屋台を冷やかそうや」


「そだね。久しぶりにお祭り楽しもうか」


了解が得られたので、屋根から飛び降りる事に。とは言え、流石に人混みの中は危ないので、まずは人気の無い場所まで跳躍する。


すると、


「あ」


「ん? あ」


「あらま」


着地地点の直ぐそばで、高校生らしい女の子三人と、それを囲う酔っ払った様子のチャラい男五人の姿が。何と言うか、明らかに有効的な雰囲気では無い。


どうする? と二人にアイコンタクトを送ると、雄一は肩を竦め、翔吾は折角だから助けようと訴えてきた。まあ、年明けに人助けってのも乙か。


そうと決まれば、早速壁を蹴って二組の間に割って入る。


「よっと」


「っと」


「ん」


「「「「………は?」」」」


突然の乱入、それも空から降ってくるという乱入の仕方に、その場の全員が呆気に取られる。


その非日常に耐性の無い人間らしい反応に苦笑しながら、とてもらしい口上を述べる為に口を開く。


「やあやあやあ。折角のめでたい元日に、大の男が子供を囲むたぁ、随分と物騒じゃねえか」


「………っは!? な、何だお前ら!? どっから湧いて出やがった!?」


漸く事態が飲み込めたらしく、復活した男の一人がそう叫ぶ。湧いてじゃなくて降ってきたんだけどね。


「んな細かい事酔っ払いが気にしてんじゃねーよ。日本は前から女の子が降ってくる国なんだ。男三人が降ってきても可笑しく無いだろ」


「「「「んな訳あるか!!」」」」


そうか? 俺はクラック転移する前から老若男女問わず空から降ってくるの見た事あるぞ。その内の九割は絶望の表情を浮かべてたけど。


「そんで、アンタら何してる訳? こんな人気の無い場所で女の子たち囲むとか確実アウトよ?」


「う、五月蝿え! テメエらに関係無えだろうが!」


「声震えてるぞー」


男たちは予想外の事態に酔いが醒めてきたらしく、さっきまでのチャラついた雰囲気が減っていた。


その間に、翔吾と雄一はもう一方の学生らしき三人に声を掛ける。


「大丈夫だった? 変な事されてない?」


「え、は、はい。ありがとうございます」


「一応質問するが、どうしてこんな状況になったんだ?」


「えっと、私たち三人で初詣に来てたんです。それで彩香が一人で買い物する為に離れて、遅いなと思って二人で探してたら、ここで絡まれてる彩香を見つけて」


「アンタらねぇ……。幾ら酔っ払ってても女の子囲っちゃ駄目でしょ。しかも連れが助けに来たんだから大人しく引き下がりなさいな。どうせアレだろ? チャラ過ぎて接点が殆ど無い生の女子高生に興奮しちゃったんだろ? 唯一接点のあるギャルと違った、清楚系の二人と宝塚レベルの麗人一人にテンション上がっちゃったんだろ?」


「………とても鮮やかで的確な罵声を混ぜたね。いや、こっちとしては褒められたから気分は良いけれど」


そりゃ他人をおちょくるのは慣れてますから。と言うか貴女、声も張りがあって色っぽいのね。マジで宝塚の男役にいそう。


「うん、それは光栄だと言っておくよ。それより良いのかい? 彼らがお怒りのようだが」


言われて見てみれば、プルプルと震える男たちが。図星だったのかな?


「……この野郎……訳分かん無え奴が調子に乗ってんじゃねえぞ……!」


男たちは見せつけるように拳を構え、三下が浮かべるような表情で脅迫してくる。……なんともまあ、迫力の無い事で。


「この人数相手に喧嘩売っーー」


「「「へえ? 俺(僕)らの喧嘩を買うんだ?」」」


無謀にもガンを飛ばしてきたので、全員に殺気を返してやった。揃ったのはご愛嬌って事で。



「「「「っ!!??!」」」」


するとあら不思議。調子に乗ってた男たちが全員腰を抜かして、真っ青になってるじゃあーりませんか。良し、酔いも完璧に醒めたようなので追い討ちというかトドメを刺しましょう。


「酒は飲んでも飲まれるな。他人に迷惑掛けんじゃねえ。誰彼構わず噛み付くな。オーケー?」


ニコリと笑って確認すると、男たちは首がもげるんじゃないかってぐらいの勢いで頷いた。


「「「「はは、は、はい!!」」」」


「なら行って良し」


「「「「し、失礼しました!!」」」」


脱兎の如く逃げ出す男たちの背中を眺め、これにて一件落着。


「んじゃ、初詣行くぞー」


「おう」


「そだね」


問題も片付けた事だし、さっさと初詣を済ませてしまおう。そして屋台を賑やかすのだ。


そんな訳で、移動開始。


「あ、ちょっと待ってください! 何事も無かったかのように立ち去らないでください!」


だよねー。がっつり呼び止められましたわ。


「何かな? そろそろ尺がマズイから手短にお願いしたいんだけど」


「し、尺?」


「正確には文字すーー」


「「ゴホン」」


おっと。流石に一般人にメタ発言しちゃ駄目か。


「それで何かな?」


「えっと…その、助けてくれてありがとうございました!」


「あはは。良いよ良いよ。女の子が困ってたら助けるのは当然だもん」


「という仲間がいるからして」


「そこまで気にする事でも無い」


「な、流れるような台詞をありがとう……」


それ程でも。


「いや、褒めてないんだが……」


「んじゃサラバイ!」


「あっ! ちょ、待て!!」


後ろで麗人さんが何やら言っていたが、俺たちはそれを無視して人混みの中に紛れ込む。これで気配を薄くすれば、見つける事は不可能だろう。


「良いの? 案外良い出会いになってたかもよ?」


「ここ日本。俺たち住むのルーデウス。関係無い」


生活圏が違うのだから、出会い云々は意味が無い。それこそ、彼女たちが召喚されたりしなければ。


「そういや、二人は家帰るのか? だったら認識操作の魔法解くぞ?」


一応、俺たちと京介たちの家族、諸々の関係者には、『いないのが普通』と認識させる魔法を掛けてるんだけど。


「一応帰るつもりは無いけど……え? 雲雀そんなの掛けてたの?」


「当然。家族を心配させる訳にはいかんとです」


「何時?」


「結構前。と言うか俺、ちょくちょくこっち戻ってるし」


主に週刊誌とか新刊の関係で。


「何だよそれ。俺にも寄越せ。ハンタ○が連載されてるか気になってんだ」


「されて無かったぞ?」


「蹴りコックは?」


「全然出てこない」


俺的にはジ○ンプはそろそろ世代交代の時期だからなぁ。大御所は残ってるけど、中堅ぐらいの奴が何作か終わる雰囲気出してるし。出してるだけだけど。


とまあ、そんなくだらない事を話してる内に、賽銭箱が見えてくる。


「そう言えばだけど、日本の神様ってどんなんだろうね?」


「と言うと?」


「雲雀は神様にあった事があるんでしょ? なら地球にも神様がいても可笑しくないでしょ」


ああ、確かに可笑しくない。と言うより、十中八九いるだろう。


けど、


「100%碌でも無いぞ」


これはマジで断言出来る。


「そうなの?」


「そうだぞ。実際にクラックの神は碌でも無かった。具体的に言うと、揃いも揃って豆腐メンタル」


ひぐらし○なく頃にでギャン泣きしたショタ神とかいたし。因みにクラックの主神。


「様なんて付いてるけど、アイツらそこまで崇められるような存在じゃないからな? ぶっちゃけ凄い力を持った変人だから。神話とか見ると分かるぞ?」


下半身至上主義、メンヘラ、構ってちゃん、酒好き、ヤンキーなどなど、人間基準なら確実に駄目人間の部類に入るのが神様な訳で。


「日本神話の有名な逸話だと、天岩戸とかかな。あれは須佐男にキレた天照が引きこもるんだけど、その時に外で祭りをやっておびき出したんだ」


「うん、知ってる」


「じゃあ、その時に神の何人かが全裸で踊りまくってたのは知ってるか? それで他の神が大爆笑して、それがきっかけで天照が天岩戸から顔出すんだ」


「そりゃまた……」


「な? 全裸て踊るのも馬鹿らしいが、そんな見え透いた罠に引っかかる奴も馬鹿だろ?」


まあ、神話が作られた時代とは感性が違うし、そう責め立てる物でも無いんだが。それでもアホっぽく感じてしまうのは仕方ない。


「神様なんてそんな物だよ。詣でたところで御利益あるかは微妙だし。今頃出雲大社辺りで大宴会でもしてんじゃないか?」


「初詣の前に萎えるような事言うなや」


「てか、それなら何で初詣なんかするの?」


「習慣。大掃除とかと一緒だよ」


何故か年末に強制させられる、一年の中でもトップに入る苦行。それでもやるのは、毎年の習慣だからとしか言いようが無い。いや、ちゃんと意味とかは有るんだろうけど、今のご時世で信じてる人なんて少数派だろ。


「まあね。本当にただ伝統だからやってるだけだし。その行為に込められた意味とか知ってる人なんてあんまりいないもん」


「参道の真ん中歩くなとか、もはや雑学扱いだし」


やっぱり時代だろうな。今は迷信とかよりも科学とかだし。


「オカルト代表みたいな奴が何言ってんだ」


そういうな。言うだけならタダだ。


「それで、二人は何お願いするの?」


「厄除け」


「「無理」」


うん知ってる。ハモられたのは悲しいけど。


「雲雀は恋愛成就でしょ?」


………。


「恋愛上手?」


「タラしか」


「恋愛ジョーズ?」


「何食う気だ」


「恋愛チャオズ?」


「自爆すんな」


「……えーと、恋愛ーー」


「ネタ切れたんなら大人しくしろ」


「往生際が悪いよ雲雀」


うっ、いやだって………。


「だってじゃないの。雲雀には明確な好意を寄せてくれる娘も、結構際どい感じの娘もいるじゃない。その娘たちの想いを無駄にする気?」


それってどう考えてもフィアとクラリスだよな? てか無駄にするとか言うな。人聞き悪いだろが。


「と言うかフィアは兎も角、クラリスは違うだろ。義兄妹だぞ」


「何言ってんだお前? 今更鈍感系にでも目覚めたのか?」


いや、そういう訳じゃないけど……。


「だったら気付いてるでしょ? クラリスちゃんは雲雀に惹かれてる。まあ、本人は気付いてないみたいだけど」


「お前……そう言うのを勝手に暴露するのはいくないと思うぞ……」


「普通ならね。けどあんな分かり易い反応で、雲雀自身が相当に鋭いから関係無いよ。分からないフリしてるだけじゃん」


ぐっ……。


「………しゃーないやん。妹だと思ってないと、また変なタイミングで発作とか起きそうだし。次クラリス傷つけたら俺罪悪感で死ねるぞ……」


「だったら治せよ」


無茶言うなよ。PTSDとかそんな簡単に治せるかい。これに関しては魔法で治そうにしても治せないんだよ。


「何で?」


「深層心理の問題の所為か、上手く魔力に命令出来ない。さっきの例えで言えば、依頼に不備があって絵が完成しない」


「魔導師の仲間に頼めよ」


「魔導師相手じゃ精神干渉は効かないんだよ。精神干渉は物理現象に変わってない魔力の波動みたいな物だから、体内に入った瞬間に魔力の命令権が書き換わる」


お陰で精神治療とか出来ないんだよなぁ。


「だからこれに関しては、徐々に治していかないといけないんだ」


「だった余計に付き合っちゃえば? それで無理矢理慣れされる」


「んな荒療治出来るかい。そもそもーー」


「そんな理由で付き合うなんて失礼、とか? 馬鹿じゃないの?」


自称恋のキューピッドな親友が、気持ちの問題を馬鹿らしいと切り捨てたんですけどどうしましょう。


「あのねぇ、そういうのは本気でそう考えてる人が言うから説得力があるの。雲雀は告白されたら嫌いじゃなければ付き合うタイプでしょ」


いやまあ、そうだけど。


「女の子は好きな人と結ばれれば満足なの。相思相愛になるのは二の次三の次」


「ぶっちゃけたな……」


真理だとは思うけれど。


「それを真理だと思ってる時点で、本気で失礼とか考えてない証拠だよ。僕たちにそんな方便が通用するとでも?」


ごもっともで。


「それに雲雀、クラリスちゃんもフィアちゃんも嫌ってないじゃん。むしろ普通に好きじゃん」


「まあそれは」


トラウマ無かったら普通にアタックしてると思う程度には好きですけど。


「なら余計に問題無いでしょ。それとも何? 二人とも魅力的で選べない?」


「いや……それは別に」


誠に失礼な気もするが、ぶっちゃけどっちでも良いというか。俺はそう言う関係になった場合、大抵の相手なら全力で愛する努力をするし。


「うん、誠実なのか最低なのか分からない意見をありがとう。けど向こうは重婚OKだよ?」


「……うーん……ハーレムは出来れば最終手段で……」


「へえ、そりゃ意外だな。お前なら嬉々としてハーレム作りそうだが」


「あのドロドロ愛憎劇を見てるとな……。嫉妬や欲に狂った女は怖いよ?」


「あの二人なら大丈夫だと思うけどね。それに雲雀は何だかんだで上手く纏めそうだし。まあ、失敗しても受け止めるのが男の甲斐性だよ!」


とても良い笑顔で言い切られました。けどちょっと待とうね?


「何で君たちは他人にハーレム推奨してんのかな? 普通そういうのって嫌悪感とか抱くよね? 特に翔吾さん?」


「僕は恋する女の子の味方だもん。女の子が悲しまないで済むなら、そっちの方が全然良いじゃん」


「そこに俺の意思は!?」


「あると思ってるの?」


無いそうです。鬼ですか。


「まあそんな訳で、雲雀は早急に二人を受け入れる準備をしなさい。特にクラリスちゃんに関しては、雲雀から積極的にいきなさい」


「いや何でよ!? これ俺の問題だよね!? 明らかに余計な口出しだよね!?」


「要らぬお節介なのは百も承知。けどこれは雲雀の為でもあるんだよ?」


「俺の為? え、何で?」


「雲雀は恋する女の子のパワーを舐めてるからさ。今から覚悟決めとかないと、絶対後手後手になっちゃうよ?」


真剣な声音で、しかし薄暗い笑みを浮かべた翔吾。それはまるで、予言を与える占い師のようだ。


「やめろよー……。年明け早々に何でそんな不吉な事言うのさ……。お前の恋愛方面の助言マジで当たんだぞ……」


「うん、だから言ってるんじゃん。先手を打っときなって」


それは分かる……いや、分からないけどそんな感じはする。


けど、


「何でそれを今言うのさ……。これ特別篇だぜ? 本編にはあんまり影響無いんだぜ? お正月の話なのに何でこれからの方針決めるような流れになってんだよ……」


どう考えても今出して良い類の話じゃないだろ。


「そこまで影響無いからでしょ。どっちにしろ雲雀が振り回されるのには変わりないんだし。後は単純にネタが無い」


それ最後の一言が理由の九割締めるだろ……。


「……お前らメタは大概にしろ。翔吾も恋バナだからってハッチャケるな」


「「あ、ゴメン」」


雄一の呆れ混じりの指摘に、揃って頭を下げる。どうやら少し熱くなり過ぎていたようだ。何時もなら窘める側の翔吾も、恋愛方面の話題という事で同じくメタ発言をしていたし。


この話題は危険だな。だからここまでにしときましょう。


「それで、俺は無駄だとは思うけど厄除けを願うが、二人は?」


「あ、その話題は引っ張るのね」


「だってもう直ぐじゃん」


ほらと視線を前に向ければ、直ぐそこまでに迫った賽銭箱が見える。順番なら後三人で賽銭箱の前に辿り着く。話題としては丁度良いだろう。


「僕は家内安全とかかな。折角新しい家族が増えたんだし」


「俺は無病息災だ。アリアもまだ十二歳だし、健康でいて欲しい」


二人の答えは予想通りだった。やっぱり家族は大事か。


「俺がいれば済むけどな」


「「言うな」」


まあ、これは気分の問題か。


「さて、それじゃあ祈りましょうか」


賽銭箱の前についたので、早速お願いを開始する。因みに豆知識だが、神社の鈴は神に来訪を知らせる物で、拍手は自分が素手で下心が無い事を教える為らしい。まあ諸説あると思うけど。


鈴を鳴らしてから賽銭を静かに入れ、二礼二拍手。


(今年も平和……は無理なので、嫌な事が起きないように。どうか、切に願います)


お祈りを終え、一礼。


二人も同じタイミングで終わったようなので、そのまま列から外れていく。目指すは屋台だ。


「取り敢えず、今年も今まで通り過ごせると良いね」


「静かには絶対無理だけどな」


「それはしょうがないよ。誰かさんがいるんだから」


「やかましわ。俺だって静かに過ごしてえよ」


「「夢のまた夢のまた夢の夢」」


「夢多いな!」


絶対に無理って断言してんだろそれ!?


「まあ良いじゃない。楽しく過ごせれば」


「それは同感だ」


「安心しろ。俺が退屈させたりはしない!」


「「むしろお前には退屈させてもらいたいけどな」」


だよねー。




……今思ったんだが、異世界にいて日本でのお願いって叶うのかね?

お正月特別篇と言いながら、らしいネタがあまり無いという……。

いや、異世界系のお正月って本当にやる事無いんですよ。

だからちょした伏線張ったり、雲雀のこれからを軽く書いてみた訳ですが。


ネタを期待してた方ゴメンなさい。

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