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クリスマス特別篇

という訳で書きましたよクリスマス特別篇!

まだ年終わってないんでギリ間に合いましたよね!?

尚、一緒に正月の特別篇を書こうとしましたが、文字数の問題で断念しました。

私はこの手の構成が凄く苦手なのですよ。


えー、今回は大量のメタ発言がありますので、一応ご注意を。


誤字脱字の可能性大です。

とある日の昼下がり。親友二人を呼び出し、三人で俺の部屋に集まっていた。


「唐突だがクリスマスを始めたい」


「ゴメン何言ってんの?」


「ついに……元から頭可笑しいな」


俺の唐突な発言に疑問符を浮かべる二人。取り敢えず雄一は殴るぞ?


まあ、まずは説明してからか。


「実を言うとな、今の時期が地球だと十二月の後半な訳よ」


「え? そうなの?」


「うん。まあ、実際は日本の暦というより現実世kーー」


「「止めろ!!」」


「失敬」


おっと、流石にコレはマズイか。では気を取り直してTake2。


「作syーー」


「「ヤ・メ・ロ!!!」」


ダブルでアイアンクローをくらったので、メタ発言はこれくらいにしておこう。


「とまあ、こんな背景があり」


「背景とか言うな」


「世界同士に時差があるという設定が追加され」


「設定とか言うな」


「尚且つクリスマスは既に過ぎていた為に、急遽こんなイベントを始めようと思った次第」


「駄目じゃねーか」


「二人とも久々の登場が特別篇で悪いけど、そこんとこは我慢して」


「「お前今日キレッキレだけどどした!?」」


いや、特別篇だし。


「それで二人に相談したいのは、クリスマスプレゼントどうしようかなって事」


「そもそも誰にあげるの?」


「事情を知ってる二十歳未満の人だから……プレゼントをあげるのはクラリス、ライト、シャナさん、アリアちゃん、シャル姫、京介たちか。あ、もちろん二人にもあげるぞ?」


「………聞いて良いのか分かんないけど、どんなの?」


「なら聞くなよ」


「じゃあ言葉を変える。言え」


命令かいな。まあ、聞かれて困る訳でも無いから言うけどさ。


「んー……翔吾にはチャールズって人の魂が入った人形を」


「それ誕生日の奴だよね!? てかいらないよそんなヤバいの!!」


「雄一には水槽の中に沈めたモグ○イを」


「増えるじゃねーか!!


え? お気に召さないの?


「当たり前だよ! 何でどっちもヤバい奴なの!?」


「そもそもネタ古いんだよお前! ボケるにしてももっと新しいのにしろ!」


しょうがないなぁ。


「じゃあちょっと昔の日本にいって手に入れたマ○セルを」


「アレお前か犯人!?」


「直ぐに返してきなさい!!」


じゃあその時仲良くなった教師にでも預けるか。てか良く知ってるな二人とも。こんなの殆どの人知らないだろ。


「ならガツ」


「……ガツって何だ?」


「豚の胃だよ」


「ああ、ガツ刺しのアレか。いらんぞそんなの………って、誰がブラックサンタで来いって言った!!」


おお、良く分かったな。


「ブラックサンタってあの悪い子のとこに来る性格悪い人だよね!?」


いや、性格悪いって翔吾な。あの人聖人の従者とか呼ばれてる人だぞ。


「て言うか何でそんな変なのばっかチョイスすんのさ!」


「いやだって、お前らクリスマスって毎回刺激的だったじゃん。今更普通のやってもなぁ」


「それお前が変なの引き寄せてるからだろ!」


うん。本当にクリスマスって碌な記憶無いんだよね。


「クリスマスに何故か時限爆弾が誤送されてきた事あったよな」


「ダッシュで川に投げ捨ててたよね。お陰で町中大パニックになって」


「爆発まで後五分無かったんだぞ!? 八歳で布に包んで液体の中に入れたの英断だろ!?」


めっちゃ怒られたけど。


「後は袋詰めにされて山奥まで誘拐されたよね」


「身代金要求の電話中に犯人たちの悲鳴が聞こえたっておばさん呆れてたぞ。親父さんなんか犯人たちの心配してたらしいし」


「まあ、雲仙爺さんたちのお陰であの頃から色々出来たしな」


確かあの時は縄抜けした後、落ちてた石ころで殴って全員ぶちのめして自力で帰還したんだっけ。まさか犯人たちも九歳児にボコボコにされるとは思ってもみなかっただろう。


「鎌倉掘ってたら交尾してたつちのこ出てこなかったっけ?」


「………アレか」


「めっちゃビビったよな」


十歳の少年には衝撃だった。即行で埋めたけど。


「後は何も無いのに警察が事件が起きたかを確かめに訪ねてきたり」


「一緒に遊んでて何事かと思ったよね」


「そんで警察帰った二分後にまた爆弾誤送されてきたしな。あの配送会社俺ん家になんか恨みでもあんのかな……」


まあ、十二の時には爆弾解除出来たし、三人で押し付け合いしながら解除したんだよな。その後また警察呼んで子供が何やってんだと大目玉。


「この頃からだよね? 雲雀のお父さんたちがクリスマスとかに家に帰らなくなったの」


「ああ。家の両親子供が絶対に困るって分かってて見捨てるを選択するからな」


家族旅行にすら連れてってくれないからな。


「いや、イベント事=事件って分かってんだから当然の反応だろ。しかも何だかんだでお前自分で解決するし」


「でもだからって帰ってきた途端に嬉々として土産話聞かせろとか言うか普通!?」


「まあ、お前が何かに巻き込まれて解決するのが近所の風物詩になってるからな」


そうなんだよなぁ。俺の体質って普通なら迷惑がられそうだけど、俺ん家のご近所さんたちはむしろ喜んでんだわ。最初は村八分って感じで予想通りの反応だったんだけど、そこまで被害が無いって分かったら皆楽しみ始めたんだよなぁ。理由を聞いたら、身近に非日常が転がってるからだと。


「けどネットとかには晒されないんだよね」


「体質の事で雲雀の個人情報載せようとすると、何故か機械が壊れるんだっけ」


「そそ。何でかなと思って、魔導師になってから調べてみたんだが、何かそういう運命っぽい」


「「お前の体質運命レベルか………」」


「俺もビックリ。しかもご都合主義かと思いきや、何もしなかったら普通に死ねるという」


あくまで事件に巻き込まれて、解決しても有名にはならないってだけなんだよな。解決するのは本当に命懸けだし。


しかもコレ、明らかな作為感じるけど、マジで誰の干渉も無えんだよ。師天の奴らからは、世界誕生レベルの魂のバグと言われた。


「それでマスコミ御蔵入事件が起きた訳か」


ああ、あったなそんな事も。


確か、人伝ての噂で聞いたマスコミが、めっちゃ苦労して密着取材のアポ取って来たのが切っ掛けか。それで仕方無しに許可したんだけど、そしたら命に関わる系の事件事故が連発したんだよな。俺は慣れてるから良いけど、取材班の人たちが全員腰抜かしちゃって。それで洒落にならないと判断されて御蔵入になったんだよな。


「その時の記事も、俺の運命+素敵な知り合いの方々の圧力で処分されたし」


そんな訳で、情報社会の中でも身バレせずに、わりかし平穏に暮らせてたんだ。都市伝説にはなったけど。


「まあ、こんなの本編には関係無え裏設定なんだけど」


「「ヤ・メ・ロ!!!」」


はいはい。


「兎も角、こんな刺激的なイベントを経験してきた二人には、普通のプレゼントじゃ物足りないと思った訳でして」


「だから全部お前が原因だろうが!」


「僕たちも普通に過ごせるなら過ごしたいよ!」


あっそう。


「て言うか、シャナ姉さんやライトに同系統のキワモノ送りつけないでよ!?」


「アリアにこんなのプレゼントしたらぶち殺すぞお前」


「流石にしねえよ! やるのはお前たちだけだわ」


「「それはそれで腹立つんだよ!!」」


「どうふ!?」


二人同時に打撃を貰い、変な声が出てしまった。


「ったく、痛いなぁ。まあ良いけど」


「良いんだ」


「でだ、シャナさんとライトとアリアちゃんは何が喜ぶか教えて欲しい」


プレゼントをするのなら、やっぱり喜んで貰いたいしね。


「姉さんとライトの喜ぶ物か……」


「アリアだと何だろな……」


そんな訳で、暫く三人で頭を捻る事に。


「うーん……女性陣にはやっぱり無難にアクセサリーとか宝石系?」


「ありきたり過ぎないか? それに貴族の娘なんだから良いの持ってるだろ」


「なら香水とか?」


んー、しっくりこないけど、やっぱりその辺りかなぁ。


「お前たちはそれで良いだろうけど、アリアはまだ小さいんだよなぁ。流石に宝石や香水は早いよな?」


「ならペットはどうだ? モ○ワイがオススメ」


「いらねえよ」


気を付ければ良いペットだとは思うんだけどね。


「……あ、けどペット系統は良いかも」


「何か決まったのか?」


「おう。手間の掛からないペット、というか相棒ならどうだ?」


精霊的な奴とか。


「良いんじゃない?」


「確かにそれなら喜びそうだ」


「問題は、コレが本編の時間軸的にどう影響するかだが」


「だから止めい!」


「メタ発言も大概にしろ馬鹿!」


いや、時間軸の扱いは大事だよ? まあ、違和感無いようにぶっこんでくれてれば良いだけだし。


取り敢えず、アリアちゃんの候補は決まった。


「後はクラリスとシャナさんとライト」


「アレだよな。小説とかならシャンプーとか美容液とかが喜ばれるんだろうけど、この世界質は兎も角どっちもあるんだよな」


「この度々垣間見える過去の異世界人の執念なんなんだろうな」


ルービックキューブとかまであるし。


「やっぱりそうなると光物かね………よし、クラリスにはブル○プラネットを」


「ハンターか」


「シャナさんには奇運アレ○サンドライトを」


「だからハンターか」


「なら天鱗を」


「そっちか!?」


「だから何で変なの狙うの!?」


「だってありきたりのは嫌だろ」


それは同意するらしく、同時に頷く二人。


「そう言えば京介たちには何やるんだ?」


「召喚後に発売されたジ○ンプ」


「いや、確かにそれは欲しいだろうけど………」


「駄目だろ色々と」


なら適当に便利アイテムを見繕っとくよ。


「後はライトか」


「男は取り敢えず出来の良い武器与えとけば良いんだけど」


「義兄弟としては物申したいけど、強ち間違って無いんだよね」


「職業問わずの浪漫だからな」


武器は男の浪漫なんて、本当に良く言った物だ。


「まあ、オリハルコンとかの特殊金属の武器なら文句も無いだろ」


「……普通にそれ国宝クラスだからね。下手に外で使えないでしょ」


あ、そっか。なら魔法付与したミスリルで造るか。


「翔吾鍛治やる?」


「遠慮するよ。その手のスキルは最近やっと手を出し始めたんだけど、流石にまだ人にあげられる腕じゃない」


「ならこっちで手配しとくわ」


「お願いね。ライトが使うのはレイピアだよ」


「了解。てな訳で頼むぞゴブ助」


『おまかせあれ』


魔窟ゴブリンたちに頼めば、一時間ぐらいで上等な品が作れるだろ。


「んで、やっぱり悩むのは女性陣と」


「アクセサリー系で決定して良い気がするけど」


「拘るべくは素材とデザイン」


「だな」


ひとまず、素材から案を出していく事になった。


「ダイヤ」


「王道過ぎだと思う。真珠とか?」


「真珠は微妙じゃないか? ルビー」


「それもありきたりだろ。エメラルド」


「宝石から離れない? シルバーアクセとか」


「だったら金でも良いだろ?」


「いや、なんか成金っぽい気が。という訳で俺は宝石押しでサファイア」


「「「………」」」


何故だろうか? そこはかとなくポ○モン臭が漂ってる気が。


「………不毛だ。デザインから考えよう」


「そうだね。その後イメージにあった素材で作ろうか」


と言う訳で、シンキングタイム。


「うーん、やっぱりネックレスとか指輪かね?」


「けどそれも普通過ぎる気が……」


「なら髪留めとかはどうだ? クラリスもシャナさんも髪綺麗だし」


「「それだ!」」


クラリスは太陽のように輝くプラチナブロンド、シャナさんは海を連想するマリンブルーの髪を持つ。そしてどちらも腰にも届きそうな長髪だ。髪留めはもってこいだろう。


次は髪留めのデザインだな。


「華美過ぎるのは避けろよ。普段も使えるようなのが一番だ」


「分かってる。プラチナブロンドに生える色……緑か?」


「そうだね。クラリスちゃんの太陽を連想する髪色なら……植物を象ったデザインだと良いんじゃない?」


なら本翡翠とエメラルドを魔法で合成して、それで蔦と葉っぱを。後は花を象った小さな宝石の欠片を散りばめようか。


浮かんだデザインを髪に描き、二人に意見を聞いてみる。


「こんな感じでどうでしょう」


「うん、綺麗だね」


「これなら文句無しだろ」


良し。なら次はシャナさんか。


「青だと……白とか黒かな?」


「だったら月並みだが蝶なんてどうだ? 水の上を飛ぶ蝶ってのも乙な物だろ」


「蝶か……なら黒をベースにした方が良いな」


そうすると、オニキスと黒曜石を合成するか。それで羽の模様を細く伸ばしたプラチナで描こう。


「こんなんでどうでしょう?」


「うん! これなら姉さんも喜ぶよ!」


「女性受けはするだろうな」


デザイン案はどっちもOKのようだ。


なら、早速作ろうか。取り敢えず、アクセの材料は魔窟から取り出してと。


そこでふと思った。これを全部魔法で加工するのは味気ないのでは?


「なら僕がやるよ。と言うかやらせて。ここまで協力したんだから、最後まで噛ませよね」


「宝石細工なんて出来るのか?」


「まあ、これでも創作のスキルレベルは8ですから。割りかしイケると思うよ。それにやり直しは効くんでしょ?」


「そりゃ勿論」


例え壊れたとしても、【物質回帰】で元通りだ。


「だったら大丈夫。道具も貸して。どうせ持ってるんでしょ?」


「まあな」


魔窟には何でもある。


「そんじゃあ、翔吾はこの部屋で作業しててくれ。時間操作と人払いの結界を張っておくから」


「はいはーい。あ、完成品に髪のダメージを回復させる効果を付けたいから、雲雀お願い出来る?」


「了解。んじゃ、俺と雄一はちょっと自然豊かな秘境行ってくるわ」


「俺もかよ」


「当然。雄一だってアリアちゃんの為なら一肌脱ぐだろ?」


「そんなの聞くまでも無えよ」


了解が取れたので、行動開始といきますか!





そして夜。




〈side翔吾〉


雲雀の思い付きに賛同してアレコレ動き、今は夜。家族全員での食事を済ませ、和やかに談笑していた。


「今日はショウゴはヒバリ君のとこに行ってたんだよね?」


「はい。結構色々な事をやってきました」


「色々? 例えばどんな事かしら?」


姉さんが首を傾げたので、タイミングとしては今かなと判断する。


「説明するからちょっと待っててね。部屋に取りに行く物があるんだ」


プレゼントは各自で手渡しとなっている。本当なら寝てる間に枕元に置いとくんだけど、生憎と何処の家にも女の子がいるので断念となった。流石に家族と言えど、僕たちは血が繋がってない。寝ている貴族の娘の部屋に侵入するのはアウトだろうとの事。


そして、部屋からプレゼントの入った包みを抱えて姉さんたちの元へと戻る。


「ショウゴ、その包みは?」


「あのね、僕たちの世界にはクリスマスって行事があって、親とかから子供たちにプレゼントが届くんだ」


本当ならサンタさんって言うべきなんだけど、実際は親だから間違っては無い。


「そう言えば聞いた事があるね。過去の勇者がそんな事をやったとか」


「ええ。それで雲雀が言うには、僕たちの世界が丁度クリスマスの時期らしくて、だったらこっちでも何かプレゼントを贈ろうって提案されたんです」


「……それって、異世界の時まで把握してるって事かい?」


「アレに関しては常識を求めるだけ無駄ですよ」


目を丸くする義父さんに、僕はそう言って無駄だと諭す。


「そういう訳で、ライトと姉さんに僕からの、僕たちからのプレゼント」


「あら! ありがとうねショウゴ」


「ありがとうございます」


「お礼は良いから開けてみて」


感謝してくる二人にそう催促する。二人は苦笑しながら包みを開けるけど、中身を見た瞬間に揃って目を丸くした。


「これは……」


「綺麗……」


二人は感嘆の声を上げながら、ゆっくりとプレゼントを覗き込んだ。


「そのレイピアの銘は『ムーンライト』。全てがミスリル鉱石出来ていて、それを一流の職人が加工したんだ。更に雲雀が直接耐久性上昇、自動修復、切れ味上昇の魔法を込めた逸品だよ」


因みに銘はちょっとジョークが入ってる。まあ、刃の輝きが月光みたいってのが一番の理由だけど。


「こんな、凄い物を……」


「あ、別に僕たちお金は使ってないからね。材料とかは全部雲雀が死蔵してたのだし、髪飾りは僕のハンドメイド。『ムーンライト』は命を預ける武器だから一流の職人に頼んだけど、それも雲雀の子飼いの職人だし」


凄いよね、雲雀のゴブリンたち。僕も今度色々と教えて貰う約束したし。


「そんな感じだから、気にせず受け取って」


先手を打って反論を潰すと、二人は大人しくプレゼントを手に取った。


ライトはレイピアを僅かに鞘から抜き、刀身を確認するとゴクリと喉を鳴らす。


「次は姉さんだね。姉さんのは『夜行蝶の髪飾り』。髪に着けるだけで、髪のダメージを回復させる効果があるよ」


「本当に綺麗ね………」


部屋の光に反射して輝く髪飾りに、姉さんはウットリと見惚れている。


感嘆の声を上げる二人を見ていると、今回の企みに乗って良かったと思う。







〈side雄一〉


夜。飯を食い終わった俺は、何時ものように自分の部屋でくつろいでいた。部屋にはアリアもいる。どうにも初めて会った時に気に入られたらしく、何時も暇な時は俺のいるところにやってくるのだ。


「アリア、ちょっと良いか?」


「何ですか雄一兄様?」


トコトコと俺の元へとやってきたアリアは、そのまま俺の膝の上に乗っかってきた。


「………お前な、もう十二なんだから膝に座るのは止めなさい。はしたないぞ」


「良いんです。アリアは雄一兄様のお嫁さんになるんですから」


「まだ言ってんのか………」


「言いますとも」


無い胸を張るアリアを見て、俺は溜め息と共に頭を抱えた。アリアは基本的に頭の良い子なのだが、この馬鹿みたいな嫁宣言だけは憚らないのだ。これが唯一の悩みの種と言える。


とは言え、今そんな事を言っても無駄だろう。その前に渡す物もある。


「ほら、プレゼントだ」


「わあ! ありがとうございます! ……でも何でですか?」


「クリスマスって言う俺の世界の行事だよ」


「なるほど。つまり恋人にプレゼントを渡す日なのですね?」


「何でそれでなるほどなんだ」


強ち間違っても無いが。


「まあ、折角の雄一兄様からのプレゼントです。ありがたく頂きます。中を見ても?」


「良いぞ」


許可を出すと、アリアは楽しそうに包みを開ける。


「これは……ネックレスですか?」


包みに入ってたのは、水晶のネックレス。キラキラと光を反射させる水晶に、アリアは嬉しそうにこちらを見上げてきた。


「ありがとうございます雄一兄様! 大切に使いますね!」


「そうか、喜んでくれて何よりだ。まあ、それだけじゃないがな」


「まだ何かあるのですか!?」


「その水晶に魔力を込めてみろ。出来るか?」


コクリと頷いたアリアは、言われた通りに水晶に魔力を込め始める。すると、水晶は光を放ち始め


「キュイ」


手乗りサイズのリスのような物が現れた。


「へ?」


「キュイ?」


アリアは何が起きたのか理解出来なかったらしく、少しの間固まった。しかし、やがて理解が追い付いてくると、


「うわぁ! 可愛いです! この子凄い可愛いです」


「キュイ! キュキュイ!」


リスの方もアリアを気に入ったらしく、どっちも凄いはしゃぎようだった。


「この子は何なんですか雄一兄様!?」


「精霊だな」


「精霊ですか!? 一体どうやって!?」


「雲雀と一緒に秘境まで行ったんだ。そこでアリアに合いそうな奴を俺が探して、雲雀がその水晶の中に住まわせたんだ」


「あの出鱈目な方ですか……確かにそれなら納得です」


どうやら、雲雀に対するアリアの認識は『出鱈目な人』らしい。あいつこの事知ったら崩れ落ちるだろうな。


俺がそんな事を考えていると、アリアが不安そうな表情でこっちを見てきた。


「どした?」


「……あの、それじゃあこの子は無理矢理捕まえてきたんですか?」


ああ、その心配か。


「いや、今でこそリスの姿で自由に動き回ってるが、そもそもそいつは自我の確立してない下級の精霊だったんだ。だから無理矢理って訳じゃない」


捕まえた当初は、ホタルみたいにふわふわ漂ってただけだったからな。それを雲雀が魔力を与えて仮契約みたいなのを結び、ネックレスの水晶に入れたんだ。


「……あの方は本当に何でもありですね」


呆れるアリアだったが、直ぐに表情を改めた。雲雀の事で呆れるのは無駄だと悟ってるらしい。


「けどそれだと、この子は雲雀さんの精霊なのでは?」


「そこはアイツが調整しといてくれた。水晶に魔力を注いだら、その人物に仮契約は変更されるそうだ。そして名前を付けたら正式に契約らしいぞ」


「それはまた」


「どうする? 嫌なら無理に契約する必要は無いが」


「まさか! こんな可愛い子が嫌な筈無いじゃないですか!」


お、おう。アリアが物凄い剣幕で言ってくるので、俺はタジタジになる。


そんな俺の反応を他所に、アリアはリス精霊の名前を考え始めた。


「さてどうしますか………この子は何属性の精霊なんですか?」


「風だな」


「風ですか………決めました! お前の名前は『エアリス』です!」


………。


「キュイ!」


リス精霊、もといエアリスが一鳴きするともに、両者の身体が僅かに発光する。どうやら契約は無事完了したようだ。


……いや、それよりも


「『エアリス』って、流石に安直過ぎないか?」


風のリスってそのままじゃねーか。


「そうですか? 結構可愛い名前だと思うのですが」


「いや、良い名前だとは思うけど……」


対象が風属性のリスってのがな……。


「良いんですよ。分かりやすいのが一番です。ねー、エアリス」


「キュイ!」


「………」


……本人たちが良いならそれで良いか。


取り敢えず、楽しそうなアリアを見れば、今回のクリスマスは成功と言えるだろう。







〈side雲雀〉


やるべき事を終え、二人は帰っていった。そして夜。


俺はプレゼントを渡すべく、クラリスの部屋を訪ねていた。


「おーいクラリス」


「はい、何でしょうかお兄様?」


「ちょっと渡したい物があるんだけど、入って良いか?」


「え? ええ、構いませんが」


俺が部屋に入りたいと聞き少し驚いた様子のクラリスだったが、直ぐに扉を開けてくれた。


「どうぞ」


「悪いな。こんな夜に」


「いえ、全然大丈夫ですよ」


そう言ってにこやかに微笑むクラリス。そのままイスに案内され、そこでふと思う。


「やけにあっさり通してくれたのな」


「どういう意味ですか?」


「いや、知り合いの娘の部屋にお邪魔した時は、やけに待たされた経験があるから」


魔人に攫われたフィアを送り帰した際、部屋の中で目を瞑らされたのだ。


「……えっと、それはお部屋が散らかっていたからかと」


「特に散らかってた様子は無かったけどなぁ」


「それでもですよ。女性が男性を部屋に招くという事は、その人が親しい相手と認めてるような物ですから。そんな相手に、だらしないなんて印象を持たれたくないんですよ」


「そゆこと」


一種の見栄みたいな物か。それなら男の俺でも分かる。特にフィアの場合、あの時から俺の事が好きだったみたいだし。


俺がそんな風に納得していると、クラリスが妙な表情、本当に見逃してしまう程度にだが、不安そうな表情を浮かべている事に気付く。


「……どった?」


「え!? い、いえ、その………お兄様が部屋を訪ねた女性というのは、一体どんな方なのかと思いまして……」


どんな方か。流石にリザイアの姫様とは説明出来ないよな。


「………んー、ちょっと説明出来ないかな。クラリスと会う前の事だし」


「………そうですか」


納得がいかないというニュアンスは薄っすらと伝わってきたが、それでも表面上は納得して頂けたらしい。


「けどそうなると、判断に迷うね」


「何がですか?」


「いや、俺が訪ねて直ぐに部屋に通してくれたクラリスは、何時人に見られても良いようにちゃんと整頓しているって事なのか、それとも俺相手ならだらしないと思われても良いと思ってるのか」


まあ、どう考えても前者な訳だが。それ以前に兄妹ならそもそもノーカウントかもしれない。


俺はそう思って苦笑したのだが、クラリスの顔が徐々に赤くなっていくのに気付く。え、何ぞ?


「お兄様! 少しの間だけ部屋から出ててください! 直ぐに済みますからっ」


「ちょっ、ええ!?」


急にどうしたとクラリスに聞こうとするが、それすら出来ずにぐいぐいと部屋から押し出されてしまった。


「………改めて言われて、恥ずかしくなった?」


そんな馬鹿なと思いながらも、部屋の中からは慌ただしい気配が。そして気配が止むと、


「す、すみません! そ、その、ちょっと不安になってしまって!」


「お、おう……」


どうやら予想は当たっていたらしい。クラリスって偶に抜けてるよなと思いつつも、口には出さないでおこう。この娘の場合は赤面して話が進まない可能性がある。


そして改めて部屋に入ったのだが、マジで言わせて欲しい。


「何か変わった?」


「お、女の子には色々とあるのです……」


それフィアも言ってたんだが。


というかそもそも


「そんな長居する訳でも無いし、態々片付けする必要も無かったのに」


「それでもなんです!」


「お、おう」


クラリスの剣幕に圧され、それ以上は何も言わない事にした。なんか地雷かもしれんし。


兎も角、とっとと本題を済ませてしまおう。


「ほいこれ。メリクリって事でプレゼント」


「へ? えっと、プレゼント、ですか?」


何故プレゼントを渡されるか分からないと言いたげなので、ザックリと、されど完結に説明する。


「家族にプレゼントを贈るっていう、俺たちの世界の行事だよ。向こうではそんな時期だから、俺たちもやろうって他の二人と一緒に計画したんだ」


今頃、あの二人もプレゼントをあげてるだろう。


「え、でもお返しの品はーー」


「いらないから。別にプレゼントを交換しあう行事じゃないし、そもそもそんなの期待してない。もしそれで納得出来ないのなら、俺がクラリスにプレゼントをあげたかったって思ってくれ。だから返品も受け付けません」


クラリスだったら、こんな高価な物〜とか言って遠慮しそうだから、先に先手を打っておかないと。


「ほら、分かったら開けた開けた」


「え、え? じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」


俺に急かされて、おずおずと包みを開けるクラリス。やがて、その瞳は驚きと感嘆で大きく見開かれた。


「これは……! 凄い、です……」


「だろ? 『日蔓の髪飾り』って言うんだ」


「けど、こんな高価なーー」


「はいはい。予想通りの台詞をありがと。けど言わせないから。さっき言ったろ? 返品不可だよ」


「ですけっ、はう!?」


それでも尚、言葉を続けようとしたクラリスの額を指で弾く。


「何度でも言うけど、コレは俺が贈りたいから贈った物で、コレは俺が、いや俺たちがクラリスの事を思って作ったんだ。だからこそ、コレを受け取るのはクラリスしかいないの。もし受け取れないって言うなら、残念だけど処分するよ?」


俺がそう言って残念そうな表情を浮かべると、クラリスは慌てて何か言おうと口を開き、そのままクスクスと苦笑を浮かべるのだった。


「……お兄様は意地悪です」


「知ってる。俺は性格がひん曲がってるからな」


「そんな事無いですよ。お兄様は意地悪ですけど、とても優しいですから」


「そりゃ嬉しい事を言ってくれるね」


そんな笑顔で言われたら、俺も何も言えないじゃないか。


「では、この髪飾りはありがたく受け取ります。本当にありがとうございます、お兄様」


「ああ。お返しはその言葉だけで十分だ」


金よりも価値のある言葉が聞けたなら、計画した甲斐もあるってもんだ。


さて、渡す物を渡したならさっさと退散しますか。年頃の娘の部屋に長居する物じゃないし。


「それじゃな、クラリス。良い夜を」


「お兄様も、良い夜を」


そう言って、俺は部屋を出て行った。


「さて、後は京介たちか」


シャル姫にもあげたかったのだが、流石に王族なので遠慮する事にしたのだ。


そして京介たちのプレゼントだが、大量の魔力を貯める事が出来る魔道具にした。


「これを、あいつらの枕元に転移させて」


この時間なら外なら寝てるだろうし、街か村でも似たような物だろう。


「この紙を一緒に送っておけば、意味も直ぐに分かるだろ」


あいつらは地球出身だから、クリスマスは知ってるし。なら、送った紙に書いた一文で理解するだろう。


『少し遅れたけど、メリークリスマス』

こんなギリギリになるとは……。いえ、私が書くのが遅いんですけど……。


今回の話で、今まで存在だけが仄めかされたキャラのイメージに役立ってくれたらなと思います。


では、良いお年を!

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