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王都よ、俺は帰ってきた!

メリークリスマス。


この章はこれで終わり……と言う事にしたいです。


今日はクリスマスな訳ですが……特別篇、やれたらいいなぁ……。


誤字脱字の可能性大です。



灰猫先輩に勧誘されたり、強制的に学生組の自主練に付き合わされて全員纏めて叩きのめしたりと、そんな事があった翌日。


「さて、それでは出発しましょうか」


クリプトンさんの掛け声によって、馬車が走り出す。コルネ村の多くの住人に見送らながらの出発となった。


とは言え、行きの時のように、トラブル的なのが早々ある訳では無い。むしろ行きが多過ぎたと言えるだろう。



まあそんな訳で、ここからは少しダイジェスト。



馬車走る。


グレゴリウスを揶揄う。灰猫先輩とタイソン先生に殴られる。


魔物に遭遇。グレゴリウスとミカヅキの前衛だけで討伐。


遅めの昼食。少しの間休憩。また馬車走る。


夜になり、夕食食べる。そして野営の見張り。


「コラ! 見張りの間に寝ちゃダメ!」


「んがっ」


翌日。


朝起きる。朝食取る。少し休憩。学生組と自主練。全員あしらう。


「つ、強くね………」


「手も足も出んとは……」


「本当にもう……」


「まだまだ、だね」


全員に回復魔法を掛けた後、出発する。


そして昼食。また少し休憩の後出発。


そして夜。夕食を食べ、今回は見張りも無しなので直ぐ寝る。


「平和だね〜」


そして翌日。


朝起きる。朝食取る。少し休憩の後、ザックたちも交えた自主練。全員ボコす。


「だ、だから嫌だったんだ……」


「鬼畜……」


「フハハハハッ! 弱い! 弱過ぎるぞ!」


全員に回復を掛け、出発。


昼近くになり、王都が見えてくる。



ダイジェスト終了。



「おー、やっと見えてきた」


この補習のゴールである王都を眺め、全員が色々な感想を漏らす。


「何て言うか……刺激的な補習だったわね」


「うむ。これ以上無いくらいタメになった」


「後半ボコられた記憶しかねえ………」


「あはは……。凄かったですよねヒバリさん」


なんか凄い感慨深そうだけど。


それは兎も角。王都についてからの予定をタイソン先生に聞いてみる。


「王都についたら何すんすか?」


「お世話になったクリプトンさんと冒険者の方々に挨拶。その後は学園に戻って簡単な話をして解散。明日は週末だから休み。そして補習の課題として、来週の今日までにレポートを提出。レポート用紙は学園に戻った際に渡す」


「「うえええ!?」」


え!? レポートとか聞いてない!?


揃って声を上げた俺とグレゴリウスを見て、灰猫先輩は苦笑を浮かべながら言う。


「あのねぇ、これ補習なんだから、レポートぐらいあるのは当然でしょう?」


いや、確かにそうだけども!


「題は、『今回の補習における自分の欠点とその改善点について』だからな」


「すっごいナチュラルに話を進めてらっしゃる!?」


俺たちの悲鳴は無視ですか!?


「先生! 俺レポートなんて何書けば良いのか分かんないっす!」


「考えろ」


「はい先生! 欠点も改善点も特に無い俺はどうすれば良いでしょうか?」


「………書け」


「雑!?」


けど一瞬の間があったって事は、改善点とかが無いって事を遠回しに認めたと言う意味なのでは。


「しょうがない。なら全部古代文字で」


「書くな」


「じゃあグ○ンギ語で」


「何だよそれ……」


「とある種族の言語」


「書くな!」


「え? レポート書かなくて良いんですか?」


「そう言う意味じゃない!!」


っち。


「舌打ちしただろ今………まあ良い。 サクラギ、お前は報告が終わってから学園に来るように」


報告?


「お前は護衛完了の後は別行動だ。あのタリスマンを解析したのだろう? その件をザックさんたちと一緒に、冒険者ギルドのギルド長殿に報告するんだよ。


「うぇっ!?」


「事情説明だ。そんな驚くな」


いや驚くよね? それ明らかに学生にやらせる事じゃないよね?


「お前の能力は学生レベルを逸脱している。だから問題無い」


「それ関係無いでしょう!? 能力より立場重視の案件だよ絶対!」


「なら余計に問題無いだろう? フリゲート冒険者支部の悪魔と謳われる最強の冒険者、ヒバリ・サクラギ・アール。ギルド長とすら面識のあるお前なら、言葉の重みが違うだろ」


ぐっ。いや、確かに俺も事実上の高ランク冒険者だけど。……あ、因みにフリゲートはこの王都の正式な名称ね。


と言うか、ザックたちの野郎、タイソン先生に全部バラしやがったな?


「………はぁ、了解です。面倒ですけど」


色々と言いたい事はあるが、放置して良い類の案件で無いのは分かっているので、仕方なく従う事にした。いや、もう大抵の事は分かってんだけどさ。


「それで、報告した内容は先生に伝えれば良いんですか?」


「いや、それは後日冒険者ギルドの方から報告される。お前はギルド長殿に、タリスマンについて分かった事だけ伝えてくれ」


「へいへい」


タイソン先生に気の無い返事を返しながら、何処まで情報を開示しようか考える。


そうこうしている内に、王都の門が直ぐそこまで迫ってきた。









王都に到着し、所定の位置にてクリプトンさんを見送った後、予定通り俺と学園組は別行動となった。


そして現在、俺がいるのは王都冒険者ギルドのトップのお部屋である。


「まあ座れやザック、ベン」


部屋に入ってから未だに突っ立っているザックとベンに、俺は自分の隣に腰を下ろすように勧めた。


「何でさも自分の部屋みたいに仕切ってんだい……」


苦言を呈してきたのは、赤銅色の髪を持つ老婆。この部屋の主であり、フリゲート冒険者支部長、マーベラス・エンター。因みに多くの冒険者からはギルド長や支部長と呼ばれている。


「老い先短そうな老婆に気を使ったんだ。声出すのも億劫なんだろ?」


そう言ったら【ファイアー・ボール】が飛んできた。危な。


「焼くぞ糞ガキ」


もう焼こうとしている癖にとツッコミたかったが、まずは飛来する炎球を握り潰す。


「冒険者ギルドのトップの部屋で殺人未遂ってどうなの?」


「魔法を握り潰す小僧なんて人間じゃないよ」


「もうすぐカテゴリーが生物から物に変わるババアが何言うか」


「「ああ!?」」


互いにメンチを切る俺たちを見て、ザックたちが居心地悪そうにしている。


「お前、よく【燎原の魔女】相手に喧嘩売れるよな……」


「恐れ多いなんてもんじゃねえよ」


「こんなの棺桶に片足突っ込んでるババアだろ」


あ、また【ファイアー・ボール】飛ばしてきやがった。


「お前……。【燎原の魔女】と言えば、かつてのSSランク、魔人を討伐した英雄だぞ」


「それが今やこのザマか」


無言で【ファイアー・ボール】を飛ばしてくるな。


「ったく、本当失礼な小僧だよ。アンタみたいな生意気な奴がいるから、これだから最近の若者は、とか老人どもが騒ぐんだ」


「その騒いでる老人よりも、大抵はアンタの方が老人だったりするけどね」


御歳百十歳だったっけ?


「一緒にすんな。老害とは種族が違う」


おーおー、相変わらずだなこの破天荒婆さん。


「んで、今日は何の用だい? 何か大変な目に遭ったってのは聞いたけど。アンタたちが大変なんて言うからにはよっぽどの事なんだろ?」


ザックとベンを見ながら、そう言って婆さんは興味深そうに腕を組む。偉そうな態度とは裏腹に、その瞳は真剣だ。それぐらいには、鞘と杯を信頼しているのだろう。


「それがですねーー」


ザックがこれまでの経緯を婆さんに説明しようしたので、俺はそれを遮る形で一言。


「【混聖魔協会】」


一瞬で婆さんの眼光が鋭くなる。いやはや、冒険者ギルドの情報網がどれぐらいか測ろうかと思って言ってみたけど、結構手広くやってるご様子。


「何処でその名を知った?」


「風の噂」


すっとぼけたら、無言でジッと見つめられた。老婆に見つめられても嬉しく無いんだが。


「っち、この糞ガキが。………ザック、続きを」


「え、えっと、さっきの【混聖ーー」


「続きを言えって言ったんだ」


「うっす!」


ザックは何か聞きたそうにしていたが、婆さんに睨まれ即座に説明を再開する。弱えなオイ。


そして、説明が終わる。


「ーーと、言う事です」


「なるほどねぇ。そりゃ災難だったねアンタたち」


「本当にな」


「アンタにゃ言ってないよ」


えー。


「まあ、実際本当にヤバかったですね。ヒバリがいなければ、全滅もあったでしょう」


「あったと言うより、ほぼ確実に全滅してたろうね」


おい、折角ザックが見栄張ったんだから、綺麗にスルーしてやれよ。


「全く……。まさか王都の近くにそんな盗賊団が潜んでたとは。後で学園の方にも謝罪を入れとかないとねぇ」


謝罪、ね。事前調査が甘かった事と、非常事態に生徒を中心に働かした事か。その当人である俺は別に気にする事でも無いと思うが、そうはいかないのが大人の世界。


「まあ、今はまず、アンタたちを労おうか。良く守ってくれたね。ザック、ベン、ヒバリ、ギルドを代表して礼を言う。報酬は色を付けとくよう言っておく」


「「あざます!」」


「婆さんが素直に謝るなんて……あと余命何日だ?」


「火葬してやろうか?」


やってみろ。


「ほほう? それじゃあザックとベンは下がりな。分かってると思うけど、あんま変な事広めんじゃないよ。特にここでの事は他言無用だ。余計なパニックは御免だからね」


「あれ? 婆さん俺は?」


「アンタは残って説教だ! 目上の者に対する口調を叩き込んでやる!」


ああ、そゆ事ね。


「良し、帰るか二人とも」


説教なんて面倒なので、二人を連れてとっと帰ろう。


「逃がしゃしないよ!」


片手に炎を灯しながら、婆さんが俺たちを睨みつける。


「「ちょっ!? ギルド長俺たちいるんですけど!?」」


「死なば諸共」


「「ふざけんな!!」」


道づれにしようとしたら、二人とも我れ先にと逃げ出していった。


部屋に残された俺と婆さんは睨み合う。そして、同時にソファへと腰を下ろす。


「さて、それじゃあ説教と言うなの事情聴取を始めましょうかね」


「される側が何言ってんだい」


婆さんが白けた眼を向けてくるが、俺はそれを華麗にスルー。すると、今度は大きな溜め息を吐いた。


「本当、アンタは憎たらしいぐらいにこっちの意図を読んでくるねぇ」


「感謝しろよ婆さん」


特に内容が無い話しかしていないのに、ここでの話は他言無用とした婆さん。それを二人が不思議がる前に、俺が話の腰を折って上手い具合に追い出した。これがさっきのコントの真意である。


「まあ、俺心ぐらい読めるし」


「アンタが言うと冗談に聞こえないよ」


冗談じゃ無いんだけどね。


「それで、アンタは【混聖魔協会】の事を何処で聞いた? ああ、風の噂なんてくだらない誤魔化しは無駄だよ。この組織は国やギルドの上層部ぐらいしか知らない筈だからね」


「いや、実際噂は流れてたぞ?」


補習初日の見張りでザックがそんな事言ってたし。


「そりゃ意図的に流した情報さね。流石に無警戒じゃマズイからね。それでも、具合的な内容は流してない。冒険者なら、風の噂だけでも十分警戒するからね」


まあ、割とその辺りは命に関わるからな。


「だからこっちは驚いてんだよ。何でアンタが【混聖魔協会】の名前を知ってんのかが。一体何処で聞いた?」


「ゴブリン」


「ちょっと表に出な」


マジなんだけど。


「………はぁ。まあ良い。質問を変えるよ。アンタは一体何処まで知ってる?」


「狂信者とマッドの混成組織。魔人魔王と繋がっている。各国の上層部にパトロンがいる。こんぐらいかね?」


「つまり、概ね知ってるって事かい……」


いや、本当はもっと知ってる。リンリンと言う密偵がいるので、精細かつ鮮度の高い情報が集まっているのだ。


「本当、アンタは良く分からん奴だよ。無駄に高い戦闘力に、正体不明な耳の良さ。ショウゴもユウイチもそうだが、アンタたちが勇者をやりゃ良かったんじゃないかい?」


「ついに耄碌したか婆さん? 俺は勇者なんてガラでも無いし、そんな素質は無えよ」


「何言ってんだい。同じ異世界人なら問題無いだろう。ガラじゃないってのには同意するがね」


およ? 今聞き捨てならない単語が混じってなかったか?


「知ってたのか?」


「あんまり冒険者ギルドを舐めるんじゃないよ。箝口令すら敷かれてないんだ。探ろうとすれば探れるよ」


改めてそう言われれば、それもそうかと納得する。俺たちは王城内を結構自由に移動していたので、目撃者自体は沢山いるのだ。俺も多少は手を打ったが、情報が漏れるのは必然だろう。まあ、あくまで隠すべきは俺の真の能力であって、存在自体は大して隠そうとしていないのも要因だろう。


「公然の秘密って訳さね。とは言え、各当主たちは進んで話す事は無いだろう」


公然とは言え、秘密は秘密。無闇に広まるような事は無い。ルーデウス王からそんな通達もあったらしいし。まあ、それでも縁談の申し込みとかが来ても可笑しくないが、そこは俺の出鱈目な行動が良い感じに抑止力となってるらしい。奇行の働き甲斐があるという物だ。


「何笑ってんだい?」


「いや、やっぱり予防線は張っておくべきだなって」


「ふうん?」


婆さんは訝しげな顔をするが、やがて真剣な表情となる。


「ヒバリ」


「何だい婆さん?」


「アンタをBランクに昇格させる」


昇格。この手の話題が出たのは何度目だろう。


「断る。自分のペースで上げてくって言った筈だ」


決められた量の依頼をこなし、正規の手順で昇格する。それは以前に、この婆さんに告げた事だ。


「無理だね。アンタは今回そうも言ってられないような功績を叩き出しちまった。ランクを上げない訳にはいかないんだよ」


「例え本人が辞退しても?」


「辞退しても、だ。譲歩してもCランク。昇格は決定事項だよ」


視線鋭く婆さんを睨むが、婆さんは怯む事無く、むしろ余裕そうな表情で言い返してきた。


「このご時世だ。悪く思わないでおくれ。冒険者ギルドも優秀な人材を腐らせてる余裕は無いんだよ」


「俺が優秀ねえ」


「優秀だよ。とても憎たらしい事にね。本当なら、一気にS以上にさせたいんだけど、それには他の支部長の承認も必要でね」


それは逆に、Aランクまでならギルド長一人の裁量でどうにかなると言う事だ。実際、俺もこの婆さんにそんな事を言われた。


「と言うか、何で昇格をそんなに嫌がるかね?」


「メリットが無い。金もコネも困ってないのに、義務だけ増えても困る」


「ある程度の義務なら免除出来るよ?」


え、マジで?


「それ初耳なんですけど」


「まあ、あまり知られてないからね。けど普通に考えな。冒険者の中には貴族もいるんだ。少なくとも、『対軍緊急依頼』ぐらいは免除されて当然だろう」


「うっ、言われてみれば確かに」


それぐらい免除しないと、自国の軍隊相手に戦えって事になるのか。


だがそうなると、重要になってくるのは何処まで免除されるかだ。


上位冒険者、即ちBランク以上の冒険者に与えられる義務は、基本的には冒険者ギルドが発令する緊急依頼の強制だけである。だが、この緊急依頼が曲者で、尚且つ面倒なのだ。


強力な犯罪者などを相手にする『対人緊急依頼』


強力な魔物などを相手にする『対魔緊急依頼』


強大な組織などを相手にする『対組織緊急依頼』


侵攻してくる軍隊などに対する『対軍緊急依頼』


そして魔王、魔人などの災害を相手にする『超緊急依頼』


この五つが、上位冒険者に課せられる義務の詳細である。勿論、義務とは言っても、その時の状態や状況は考慮されるし、実力的に不可能だと思われる緊急依頼依頼はそもそも回ってこない。


とは言え、義務である以上は回されてきたら受けなくてはならない。俺はそれが億劫なのだ。


「それ早く言ってくれれば良かったのに」


「これは普通昇格してから知らさせる事なんだよ。昇格話を即行で断ってるアンタが悪い」


話は最後まで聞きな、と言外に婆さんに告げられた。


「それで、何処まで免除されんの?」


「そうさね、三つまでなら免除可能だ。けれど、それには支部長の厳選な審査が必要だし、残り二つは絶対に受注して貰う事になる。どんな状態だろうと、どんな状況だろうと、絶対にね。実力に見合わないとしてもだ。緊急と冒険者ギルドが判断した場合、真っ先にその依頼が回されてくる」


まあ、それは当然か。どんな事であれ、楽をするなら代償は絶対に存在するのだから。


「それで、どうするんだい? アンタが免除を望むなら、別に審査はスルーで良いよ」


ふむ……。暫く黙考してから、決めた。


「いや、今はCランク昇格だけで。次昇格するならそれお願い」


「………今度はやけにアッサリだね」


「まあ、嫌な事がスルー可能だったらしいしな。なら迷う事も無かろうと」


困ってはいないにしろ、高ランクの依頼を受けれるのなら受けたかったし。いや、暇つぶし的な意味で。


「ならBランクからでも良いだろう」


「上がる時は出来れは翔吾と雄一も一緒が良いし」


「んな遊びみたいな感覚で言われてもねぇ……」


苦笑する婆さんだが、表情とは裏腹に満足してるみたいだ。


「そりゃそうさね。これでまた働き手が増えたんだから」


「冒険者はアンタの手下じゃねえぞ」


「分かってるよ。と言うか、アンタみたいな手下なんて御免被る。確かに部下は忠実な無能より、腹に一物抱える有能な奴の方が良いさ。だがそれでも限度がある。アンタみたいな怪物、アタシには到底手に負えない」


「怪物とは失礼な。ほれ」


婆さんの物言いに苦笑しながら、冒険者カードを手渡す。


「確かに受け取ったよ。それじゃあ、十分ぐらい待っておくれ。そしたら晴れてCランクだ」


「あ、俺まだ学園に用あんだわ。明日で良いか?」


「それでも構わないよ。その代わり、絶対忘れんじゃないよ? コレは身分証も兼ねてんだ」


「へいへい」


念押ししてくる婆さんに苦笑しながら、俺は立ち上がる。


「あ、分かってると思うけど【混聖魔協会】の件は他言無用だよ。後、何か分かったら直ぐに教えな」


「へいへい、とは言ってもねぇ。分かってんのはタリスマンの持ち主がランシャン・レジームって名前だとかだぞ」


「それだけでも十分さね。むしろランシャンが関与してるって分かっただけでも大手柄だ」


ランシャン・レジームなるダークエルフだが、婆さんに聞いたところによるとAランクの賞金首だった。…… こりゃワザと逃がさない方が良かったか?


ちょっとばかし後悔するが、直ぐに問題無いと思い直した。何時でも捕まえる事が出来るのだから、後悔なんてするだけ無駄だろう。


俺がそんな風に考えていると、婆さんが手をシッシッと振っているのが目に入る。


「おいババア。何だその不快なジェスチャーは」


「やる事無いならさっさと帰れって事だよ。私は忙しいんだ。アンタも学園に用があんだろ?」


「おお、そだった」


さっさと学園で報告を済ませて、早くクラリスに土産話を聞かせてあげなければ。


「んじゃな婆さん。次会うのが葬式じゃない事を祈ってるよ」


「そうそうくたばる訳無いだろ糞ガキ。そもそも明日も会うだろが」


「あ」


「あ、ってコラ! アンタついさっきのやり取りも忘れてんじゃないだろうね!?」


「さらばい」


「待てこの糞ガキ!!」


婆さんの叫びを華麗に聞き流して、俺は冒険者ギルドを出て行った。何やら甲高い声が聞こえるけど気にしない。


「さーて、我が愛しの妹様にどんな話をしようかね?」


俺の頭の中は、既にクラリスへの土産話の内容で一杯になっていたのだから。



「………あ、その前に学園に行かな。ダル………」


ちょっと萎えた。

はい、こんな感じで締まりませんが、この章はこれで終わりになります。


今回の章でやりたかったのは、


敵になるであろう【混聖魔協会】の登場


新キャラである灰猫先輩の登場


フィアの物語への合流の布石。


後はゴブリン?


他は蛇足と言うか、書いてるうちに何時の間にか出てきた設定と言うか。


次回は登場人物発表、それとやれたらクリスマス特別篇でしょうか?


そして次章?の暫定的な名称の発表を


次章は『学園行事騒乱篇(仮)』です。



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