訓練をしてバレました
三人で話し合った結果、学院の話しを受ける事にした。理由は色々ある。まず、国王の純粋な善意からの提案だったという点。次に、まともな権力者とのパイプを作っといた方が良いという点。あと、純粋にファンタジーの世界の学校に興味かがあった点。
翌日、ルーデウス王に報告したら笑顔で了解してくれた。
で、現在俺達と京介達は騎士団の訓練場にいる。
なんでも、俺達の実力確認だそうだ。
「お前達が異世界人か。俺はダンク・ギル・グレゴリー。ルーデウス王国騎士団の騎士団長だ。お前達を鍛える役割を陛下から申し付けられた」
歴戦の戦士の雰囲気をだす男性が言う。
「私はセリア・ルルシェ・リンドスよ。この国の筆頭宮廷魔導師をしているわ。貴方達に魔法と座学を教えるように言われたわ。よろしくね」
美しく可憐な女性が言う。
俺達は彼女の顔に釘付けになっていた。美しいからではない。彼女の顔の両脇にある尖った耳のせいだ。
そう、ファンタジー世界の代名詞。エルフである。
「エルフ、キターーーーーー!!!!」
感動のあまりつい叫んでしまった。
突然叫んだ俺にセリアさんがビックリしているが気にしない。
「お前は異世界に行ってただろ!」と言われるかもしれないが、あの世界には人間しかいなくエルフや獣人といったファンタジーな存在がいなかったのだ。それにどれだけ絶望した事か。
「気持ちはわかるが少し落ち着け」
興奮している俺を宥めようとする雄一。
「だってお前エルフだぞ!!ファンタジーの代名詞だぞ!!」
「そうかもしれんが、見ろセリアさんを。お前の反応に引いてるぞ」
「セリアさん!」
「は、はい!?」
「獣人は!?この世界には獣人はいますか!?具体的には人間に獣耳と尻尾を付けた奴!!」
「え、あ、はい。確かに獣人は存在しますが?」
「モフモフ、キターーーーーー!!」
「だから落ち着けって言ってんだろ!!」
「ゴフッ!!」
キレた雄一に蹴りとばされた。
「本当にすいません、セリアさん。あいつはエルフや獣人に憧れてたみたいで」
「い、いえ、大丈夫ですよ。それよりヒバリ様の心配をした方が」
「あいつは大丈夫ですよ。頑丈ですから」
「クリーンヒットしてなかった?」
梨花さんがツッコミを入れる。
「そうだぞ雄一。怪我したらどうすんだ」
まあ耐久425896あるから大丈夫だけど。
「………本当に平気そうだし」
「頑丈ってレベルか?」
京介達が若干引いていた。
「どうしよう、雄一。この世界に永住したくなってきた」
「馬鹿な事言ってんな。話しが進まない」
「うちの雲雀がすいません」
話題修正。
「ともかく、俺達二人がお前達の教官になったて訳だ。まず、お前達のスキルを把握したい。戦闘で使えそうなスキルを言ってってくれ」
団長がそう言うと、花音さんがおずおずといった感じで疑問を口にする。
「あの、ステータスを見せた方が早いと思うんですけど?」
「アホか。ステータス見せたら自分の手の内が全部バレるだろうが。んなことしてたらすぐに殺されるぞ」
この世界の命は軽い。地球とは比べ物にならないくらいに。戦いにおいて対策を立てらる事は即ち死を意味するのだ。
「だから、ステータスは信頼できる相手にしか見せるな。ついでに、ステータスを聞くのはマナー違反だし、場合によっては罰則もありえるから気を付けろ」
「は、はい!」
「基本的にこういう場合は口頭でスキルを教える。スキルレベルは教えるなよ。仕方なくステータスを見せる場合は、名前と種族と性別と天職だけを見せて、後のレベルやスキル、称号などは非表示にすること。わかったな?」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
スキルを団長に教えた後は、騎士団の人達と一対一で模擬戦をしてみることになった。
「よし、ヒバリ。お前は俺が相手だ」
何故か俺は団長と戦う事になった。
「あの、団長。なんで俺なんですか?勇者の誰かの方が良いと思うんですけど?」
「勇者達はまだ弱い。俺相手だと戦いになんねえし、こっちもやり過ぎないよう気を使う必要があるからやり辛いんだよ」
「それって俺も変わんないと思うんですけど?」
「はっ、しゃらくせぇ」
俺の疑問の声は、団長の好戦的な笑みによって遮られた。
「召喚された中で、いや、この場所にいる全ての人間より強ぇくせに何言ってんだ」
「………それは流石に誤解ですよ?」
「俺はよ、直感スキルLV7を持ってんだ。このスキルを使って相手の力量を今まで測ってきたんだが、お前は全くわからねえんだ。つまり、それ程まで実力が離れてるって事だ。お前マジで何者だ?魔人や魔獣と言われた方がまだ納得できるぞ」
戦闘狂と言う言葉がピッタリな顔でなお団長は続ける。
「最初見た時は愕然としたぞ。お前もそうだが、あの二人にもだ。ありゃ、勇者達よりも強くなるポテンシャルを秘めている。もちろん、勇者達が弱い訳じゃないぞ。あいつらも俺なんかより遥かに強くなる。たが、お前達はその更に上を行く。もう一度言うぞ。お前達、マジで何者だ?」
「………」
団長の言葉を聞き、一見は無表情で佇んでいる様に見えるが、内心はめちゃくちゃ焦っていた。
(オイオイオイ、いきなりバレるとかマジか!?つーか、そんなスキル反則だろ!?誤魔化せるか?いや、あの顔は絶対に確信している顔だ。マジでどうしよう?)
とりあえず、揺さぶりを掛けて考える時間を稼ぐ。
「言ってる内容と表情が逆ですね。何故、笑ってるんですか?団長の言葉通りの人間だったら警戒しなければマズイと思いますよ?」
「一応言うが、お前達に害意がないのは確信しているから、そんな揺さぶりなんて掛ける必要ないぞ?」
「………どうしてですか?」
「お前達の人間性は陛下や姫様やメイド達から聴いているし、何よりさっき言っただろ?直感スキルを持ってるって」
「はあ、………本当に反則なスキルですね」
「否定はしない。ま、そういう訳だから誤魔化すだけ無駄だぜ?」
「わかりましたよ。とりあえず、俺については後で話しますよ」
「悪いが、陛下や他の奴も一緒でいいか?もちろん、信頼できる人間だけを集めるが」
「好きにして下さい」
どうせ、ルーデウス王の耳には入るのだ。何人か増えてもあまり変わんないだろう。
「あ、でも、雄一と翔吾は本当にただの一般人ですよ。トラブルによく巻き込まれるってだけで」
「そうかい」
どうやって二人に説明しようかなと悩んでいると、団長が
「よし。じゃあ、やるか」
………ん?
「やるって何をです?」
「模擬戦に決まってんだろ」
「………俺と話しをするのが目的じゃなかったんですか?」
「それはついでだ。お前みたいな強え奴と戦うのに理由なんているか」
獰猛に笑って言う団長。
「さっき勝てないとか言ってませんでした?」
「だからって模擬戦で戦わないなんて選択肢があるか。殺し合いならお前みたいな化物と戦わないのが正解だが、コレは模擬戦だ。だったらやるだろう、普通」
この人アレだ。モノホンの戦闘狂だ。………つーか化物て。
「まっ、胸貸してもらうぞ!ヒバリ!!」
そう言いながら、団長が斬りかかってきた。
次でやっと戦闘描写がはいります。
模擬戦だけど




