二人っきり?
ちょっと遅れましたが、連続投稿です。
場合によっては、一つ前から読んでください。
誤字脱字の可能性大です。
そして部屋へと辿り着き、ツインの部屋なのでお互いのベットに腰を下ろして向き合った。
「さて、それで話って言うのは?」
「こう言うのって、最初は世間話から始める物じゃない?」
ふむ? こっちとしてはさっさと本題に入りたかったのだが、灰猫先輩がそう言うなら合わせようじゃないか。
「………最近…どうだ?」
「いや、そんな接し方の分からない父親みたいな台詞言われても……」
呆れる先輩を見て、どうやら期待に添えなかったらしい事を悟る。なら
「先輩って好きな人いるんですか?」
「いやだから何で反応に困る話ばっかフってくるの!?」
「因みに俺は灰猫先輩が好きです」
「ふぁ!?」
笑顔で告白すると、顔を真っ赤ににめ灰猫先輩は思いっきり仰け反った。そのまま俺から距離を取ろうと後ろに下がるが、生憎と今座ってるのは宿屋のベット。そこまで横幅がある訳では無い。しかし、
「ふにゃ!?」
気が動転していた灰猫先輩はそれに気付かず落下した。
更に、見事に頭から落下した所為で、普段とは逆向きに重量が掛かる事になり、
「スカート捲れてますよ」
「ふにゃあっ!?」
慌ててスカートを抑える灰猫先輩だが、ひっくり返っている所為で上手く動けていない。どうやら本当に気が動転しているらしく、体勢を立て直すという考えすら思い浮かばないらしい。
「はぁ……全く。よっと」
「きゃあ!」
見ていて面白かったが、話が進まないのでベットの上へと灰猫先輩を引っ張り上げる。
「慌て過ぎです」
「ひ、ヒバリ君が変な事いきなり言うからっ……って近い!?」
引っ張り上げた所為で抱き締めるような体勢になっていたのだが、それが灰猫先輩には看過出来なかったらしい。思いっきり俺を突き飛ばし、距離を開けようとしてきた。……そんな事したら、
「ふにゃあっっ!?」
また落ちた。
「天丼芸してんじゃないですよ………」
「き、キミが変な事言うから………」
もう一度引っ張り上げると、今度は羞恥で灰猫先輩は顔を染める。
「うっ……やっぱり近い」
また言ってるので、今度は直ぐに離れた。
「灰猫先輩、反応が乙女過ぎです。アンタ見た目だけの筈だろ」
別に男が好きって訳じゃないんだよなこの人。その割には反応がアレだけど。
「うっ……だって、キミが変な事言うから……」
そのセリフ三回目だぞ。
「……いきなり真顔で告白なんかされたら、流石に驚くわよ……」
「いや、それを踏まえても反応がアレです。男から告白された経験無いんすか?」
「あるけど………」
あるんかい。
「その度にそんな反応してたら、相手も勘違いしますよ?」
「そんな訳無いでしょ!? 何時もなら適当にあしらうか、真剣にお断りするわよ!」
「じゃあそうしろよ」
「したくても何でか冷静な対応が出来ないのよ!……あ」
「………」
「………」
聞かなかった事にしようか。何か灰猫先輩の頭から煙出てるし。
話題を変える為に話の種を考えていると、灰猫先輩が意を決したように口を開いた。
「………えっと、さっきの告白の返事だけど、その………」
「あ、アレ冗談です」
「………へ?」
惚ける灰猫先輩に、俺はもう一度告げる。
「冗談ですよ、冗談。流石にあんな唐突に告白する訳無いじゃないですか」
俺がそうパタパタと手を振って苦笑すると、灰猫先輩も笑み浮かべる。
「へ、ヘェ〜………ッ!!」
多少引き攣っていたが。
「だから今のは冗談です。安心して下さい、本気の時はちゃんとムード作りますから」
「へっ!? ちょ、それっーー」
「因みに今のも冗談です。先輩も結構単純ですね」
慌てふためいていた先輩をクスクスと笑うと、向こうも小さく苦笑を浮かべた。
「………もう、キミも本当に悪ふざけが好きね」
「ははは。そりゃ、コレが生き甲斐ですから」
人を揶揄うのが生き甲斐ってのも結構末期な気がするけど。
「まあ、私もあまり人に言えた物じゃないけど」
そう呟いた後、灰猫先輩は徐に近寄ってきて、
「それでも言って良い冗談と悪い冗談はあると思うの」
ジャキンと首に双剣を突き付けてきた。
「…………へいボウイ? 少し落ち着こうZE」
「あら、これでも結構落ち着いてるわよ? 落ち着いて尚凄まじい殺意を抱いているの」
あ、これダメな奴だ。結構ヤバめな地雷踏んだ奴だ。
「それじゃあ、最後に何か言う事は?」
「……えっと、せめて剣は止めません? 怪我しますよ?」
灰猫先輩を宥めようとそう言うが、当の本人は良い笑顔で、
「安心して。私は優しいから峰打ちにしてあげる。そうすれば、キミも魔法で治療出来るでしょ?」
そう言って灰猫先輩は、剣の峰で殴り掛かってきた。
結果。
「い、痛い……」
「だから言ったのに………」
涙目で手首を抑える灰猫先輩と、呆れ果てる俺がいた。
「お、大人しく殴られなさいよっ………!」
「その結果なんですけどね」
「だったらキミの身体は岩か何か!?」
「ただのレベル差ですよ」
耐久値が6桁だからな。そらこうなるわ。
「けど、言った通りになりましたね」
「うう……けど違う……」
先程の灰猫先輩言葉通り、魔法で治療を施す。灰猫先輩に、だが。
それも終わってから、一言問い掛ける。
「んで、頭冷めました?」
「………ええ。釈然としないけど」
痛みによって冷静になったらしいので、話題を戻す事に。
「それで、どんな世間話にしますか?」
「もう良いわよ……。キミと話してると碌な事にならないから……」
あら酷い。
「それじゃあ、本題に入るわ。ここからは真面目は話だから、ヒバリ君もふざけないでね」
そう言って灰猫先輩が背筋を正すので、俺も同じようにする。
「単刀直入に言います。ヒバリ・サクラギ・アール、貴方を学生会に勧誘します」
それは、ある意味で予想通りの内容だった。
「理由は?」
「単純な理由だと、ヒバリ君の実力が高い事。後は私見だけど、人を動かすのが得意な事。大きな視点で物事を観れる。貴族であり平民だった過去があり、お互いの立場を理解している。けれど立場を傘にきない。他にもあるわ」
そりゃまた、随分と高評価なこった。
「そんな風に見られてると思いませんでしたよ。過大評価し過ぎです」
「それこそ過小評価ね。キミは学生会に所属するに相応しい人材よ。性格にはちょっと、いえかなり難があるけど」
そこは否定して欲しかったなー。まあ、結局は関係無いけどね。
「お誘いは嬉しいですけど、お断りです」
「………いや、うん。予想はしてたけど、結構バッサリとぶった切ったわね……」
灰猫先輩は僅かに頬をヒクつかせるが、それも直ぐに改めた。
「それで、断った理由は?」
「面倒、じゃ駄目ですか?」
「ダメ。こっちも人手不足でね。納得出来る理由じゃないと大人しく引き下がれないの」
まあ、相当な数の学生と研究会の管理を一手に引き受けているのだ。慢性的な人手不足なのは当たり前であり、それでも役職の関係で単に優秀なだけの人物は採用出来ないときている。
結果、今の学生会の人数は十人に満たないらしく、多忙を極めている。灰猫先輩が必死になるのも当然か。
「けど、所属してもメリットが無いんですよねぇ」
「メリットね。一応、学生会に所属するだけでも、将来が有望視される程度に名誉なんだけど」
「名誉なんて興味無いです。そして必要なら自分で掴み取ります」
それぐらいなら何時でも出来る。
「なら、実利の方では? 学生会役員なら色々と割引きとかあるわよ?」
「俺は個人資産で屋敷を建てれます」
ちょっと前に億単位の金が入ったし、それが無くても魔窟には色々とあるからな。
「……各方面にコネ、とか?」
「陛下、モルト公爵、ルイス侯爵、学園長、後は旅立ちましたけど騎士団長と筆頭宮廷魔導師と知り合いです。アール公爵は言わずもがな」
これに勝るコネは早々無いと思う。特に陛下。
それは灰猫先輩も感じたのか、がくりと肩を落として尋ねてくる。
「………キミ、何で学生やってるの?」
「だから学生生活を満喫する為だと」
馬車でも言ったろうに。
「ああっ、もう! 普通ならどれか一つでも十分なのに、全部上をいかれるとかどう言う事!? これじゃ本当にメリット無いじゃない!」
そうなんだよね。改めた並べてみて分かったけど、学生会に入るメリットがマジで0なんだよね。
「雑務に追われ、各連盟と折り合いをつけ、時には生徒間の諍いにも介入する。メリット無しで入るにはちょっと」
「ううっ……そう言われると確かに無理強いはしたくないけど……」
どうやらそれでも引けないらしい。
「……ねえ、本当にダメかな? 私に同情してくれない?」
情に訴え始めたか。そこまで辛いのか。
「いや無理」
「ううっ……そこで断言する事無いじゃない……」
なんかここまで落ち込まれると、こっちが悪い気になってくるんだけど。
「……ねえ、何が面倒なの? 私も手伝える事なら手伝うから……」
「いや、別に書類仕事とかの雑務は。面倒だとは思いますけど、そこはまだ我慢出来るんですわ」
「じゃあ、何が?」
「俺、予算とかの権利を巡る争いが苦手なんすよ。特に貴族関係が入ってくると嫌で嫌で」
「………自分も貴族なのに……?」
「元が平民だから余計に、です。何かもう色々と黒くて」
「………ああ、そう言えばキミの友達が貴族の子息と決闘してたっけ」
本人も貴族関係で揉めた事があったのか、これで納得はしてくれたらしい。
「だから、充実な学生生活の為の時間を、そんな事に浪費したく無いと言うか」
「それはちゃんと授業を受けてる子のセリフだと思うのだけど………」
「楽しさ優先です」
それの為に学園に通っているのだし。
「まあ、そういう訳なんで。貴族関係や利権争い的な仕事をしなくて良いなら考えますけど、そんなの無理でしょう?」
「うん……流石にそれだと仕事にならないから……」
「なら、やっぱり無理ですね。俺は嫌な事に時間を裂こうとは思えません。やる必要の無い事なら特に」
「そっか……残念」
凄く落胆する灰猫先輩。やっぱり見ていて罪悪感が。
「とは言え、絶対に学生会に入りたく無いって訳じゃないんで。例えば、嫌な事以上の楽しい事、メリットを提示してくれたら考えますよ」
ここで妥協してしまうのは、俺が灰猫先輩に甘いからか。まあ、楽しい事なら入っても良いと思うのは本心なんだけど。
そして予想通りと言うか、灰猫先輩はバッと顔を上げた。表情は光明を見い出した者のそれだ。
「それ、本当?」
「ええ。まあ、採点は辛口ですけど」
そこは妥協しない。今のが最大の譲歩だ。
「なら保留って事ね! それだけでも十分よ!」
「いきなり元気になりましたね」
「そりゃそうよ! 雑務の所為で学園に泊まり込む事もあるんだから、人手が増えるかもってだけで狂喜しても良いくらいね!」
そんなに辛いのか。その割には、髪や肌は傷一つ見受けられないが。普通に女性を敵に回しそうだな。てか回すな。
「それじゃあ、早速メリットを考えてくるわ!」
そう言って、部屋を出て行こうとする灰猫先輩。
「自主練は?」
「それもやるわよ!」
己の修練には妥協無しと。向上心が高いのは素晴らしい事だが、これだと身が入らなそうだな。怪我しなければ良いのだが………良し。
ここで一計。灰猫先輩に冷水を浴びせましょう。
「灰猫先輩。ちょっと聞きたいんですけど」
「ん? 一体何かな? 学生会の業務の詳細?」
あ、こりゃダメだ。早くなんとかしないと。
「さっき俺が告白した時、冗談だって言わなかったら何て返事してたんですか?」
「んなっ!?」
効果は覿面で、灰猫先輩は顔を一瞬で真っ赤に染めて硬直した。
「そんなの断ったに決まってんでしょうがっ!!」
そう叫んだ後、灰猫先輩は脱兎の勢いで部屋から飛び出していった。猫が脱兎とはコレ如何に。
「さいで」
ま、あの様子なら時間を置けば、幾分か冷静になるだろう。
少し甘めの雰囲気にしてみました。けど男。
なお、学生会はそこらの社畜と同じくらい忙しいです。




