何でもは出来ません。出来る事だけです。偶に出来るのに出来ませんが
もう直ぐ終わるでこの章も。今回は予定通りいきそうでホッとしてます。
誤字脱字の可能性大です。
学生組がゴブ共を殲滅し終えた。
中々に見事だったので、呆然とする四人に拍手と労いを送っておく。
「お疲れー」
「「「「………」」」」
返事が無い。ただの屍のようだ。と言うか、本当に呆然としてるけど大丈夫か?
「そんなに驚いた?」
「そりゃそうよっ!! 自分でやっておいてアレだけど、何なのアレ!?」
「何か身体が自然に動いたぞ!? 【闘争本能】が発動しても興奮しない、てか普段よりも冷静だったし!」
「詠唱破棄で【トルネード】なんて私使えない筈なのに、何故か当然のように使えたんですよ!? ヒバリさん一体何したんですか!?」
「私も同意見だ。先程の技の冴えは、私の練武では到達出来ていない領域だった。それなのに、それがまるで当然のように繰り出せた。流石に説明してくれるのだろう?」
おう、ぐいぐいくるな。
「まあまあ、落ち着け落ち着け。説明はするが、それも全部終わってからだ」
周りを見れば、鞘も杯もまだ戦っている。まあ、苦戦はしてないようなので、そのうち終わるとは思うが。
それに、
「そうも言ってられないだろうしな」
これから起こるであろうイベントを考えると、説明なんてしてる暇は無い筈だ。
「……まだ何かあるの?」
ザックたちがまだ戦っていて、更に俺の意味深な言葉。この二つは、学生組に警戒心を取り戻させるには十分だったらしい。
「そう言えばサクラギ。謎の襲撃者はどうなった?」
森の方に意識を向けながら、タイソン先生がそう聞いてきた。流石は学園の教師だけあり、学生組の事を疑問に思いながらも警戒は怠っていなかったようだ。
「そうね。ビックリするぐらい強くなってたから浮かれてたけど、まだ終わってないのよね」
「まずは彼らの加勢に行った方が良いだろう。あの精確な狙撃は脅威だ。もし戦闘中に狙われたらマズイ」
「だな。今の俺たちなら、ザックさんたちの足手まといになる事も無い筈」
「頑張りましょう!」
「じゃあ、私とレベッカちゃんはザックさんたち、グレゴリウス君とミカヅキちゃんはベンさんの方に。先生とヒバリ君は襲撃者の警戒をお願いします!」
灰猫先生の指示の通りに、全員が駆け出そうとする。
「あー、止めといた方が良いぞ?」
それを止めたのは勿論俺だ。この先の展開を考えるとなぁ。
「何で止めるの?」
「いや、ザックたちは放っておいて問題無いだろうし、襲撃者はとっくに消えてるし」
「え? そうなの?」
「ええ」
実を言うと、謎の狙撃手は学生組が無双しだした辺りで姿を消していた。消え方が唐突だったので、転移系の魔法だろう。
「転移魔法ね……」
「あのタリスマンとも関わりがありそうでしたし、ロストマジックの一つや二つ、使えても可笑しく無いでしょう」
召喚系の魔法も人類から失われているのだ。それを使えて道具にしているのだから、そういう物として考えておけ。
「まあそんな訳で、狙撃手に関しては放置で良いっすよ」
既にいないんだから、気にするだけ無駄と言うか。
「あの、それでもザックさんたちに加勢しない理由にはならないんじゃないですか?」
「そうだぞ! 今の俺たちなら十分戦力になるだろ!」
「そりゃそうだな」
けど忘れてないかい?
「そろそろ五分経つぞ?」
【覚醒時計】には、制限時間有るんだぜ?
「「「「あ」」」」
やっぱり忘れてたか。まあ、そんだけ衝撃的だったんだろうけど。
「ついでに言うと、反動もそろそろ」
「「「「へ?」」」」
学生組が首を傾げると同時に、【覚醒時計】の効果が切れた。
すると
ーーピキピキ
「っはう!?」
「ぐぇ!?」
「っ!」
身体から妙な音を立てて、グレゴリウスと灰猫先輩が崩れ落ち、ミカヅキが膝をつく。
「え? えっ!?」
レベッカちゃんだけは何とも無く、崩れ落ちた三人を見て慌てている。
「ひ、ヒバリ君!? な、何かすっごい身体中が痛いんだけど!? 全身がピキピキいってるんだけど!?」
「攣った!? もしかしてコレ全身攣った!?」
「っ、これが先輩の言ってた反動か。た、確かにこれなら、助太刀しても足手まといか」
理解が得られたところで、動けない三人を馬車まで運ぶとしよう。
「あ、あの!」
「ん? どったのレベッカちゃん?」
「私は何で平気なんですか?」
ああ、そういやその説明はしてなかったっけ。
「ほら、さっきレベッカちゃんだけサービスするって言ったでしょ? レベッカちゃんに返ってくる分の反動は、俺が肩代わりしたんだ」
「え!? それ大丈夫なんですか!?」
心配そうに詰め寄ってくるレベッカちゃん。他の三人の様子を見ている分、俺も同じようなダメージを食らっているとでも思ってるのだろう。
「大丈夫大丈夫。伊達に強い訳じゃない。これでも身体は頑丈でね。竜の群れに素手で特攻した事も有るんだ」
「それ、冗談に聞こえないからねヒバリ君?」
「うむ。確かに先輩ならあり得そうだな」
「冗談じゃないけど?」
「「え?」」
固まる二人を無視して、話を続ける。
「それに、レベッカちゃんの場合は激しく動いてないしね。身体に掛かる負担は殆ど無いよ」
「それはつまり、メルト先輩たちは過度な肉体の負荷によりこうなったって事ですか?」
「そゆことそゆこと」
「あの……本当にさっきのはどんな魔法なんですか? あんな強力な魔法、初めて見たんですけど」
「さっきも言ったけど、それは事が終わってから………って、もう終わってたみたいだね」
周囲を見れば、ザックたちもベンたちも魔物を倒し終わっていた。
「おいヒバリ! 学生さんたちは良いとして、テメエは終わってたんなら手伝えや!」
「そうだそうだ! 何ノンビリしてんだよ! こっちはめっちゃ大変だったんだぞ!」
知らんがな。
文句を言ってくる冒険者組は無視して、レベッカちゃんに向き直る。
「じゃあ、簡単な説明だけしとこうかな。向こうはオーガとかから剥ぎ取りするだろうし」
オーガ系の魔物から取れる素材は、薬の材料となる眼球と心臓と肝臓と睾丸。鎧などの緩衝材などになる皮。弓の弦などに使われる健。確かこれぐらいは有った筈だ。ホブゴブは忘れた。
「おらヒバリ! 大丈夫そうなお前は素材の剥ぎ取り手伝えや!」
「灰猫先輩たち馬車に運ぶから無理!」
「なら運んだらこい!」
「俺が倒した分やるよー。後、素材は持ってくればアイテムバックに無償でいれてやるぞー」
「ほらお前らとっと剥ぎ取りすんぞ!」
凄まじいまでの手の平返し。
「さて、それじゃあ説明するけど」
「何事も無かったかのように……」
良いんです。ちゃんとした相互同意の上なんだから。
「俺が使った魔法は【覚醒時計】。一時的に指定した年数分の経験を蓄積させる魔法だよ」
つまり、一時的に技術レベルを上昇させる魔法だな。今回の場合なら、グレゴリウスとミカヅキと灰猫先輩は五年分、レベッカちゃんは十年分技術的に成長したという事になる。
「そんな事が出来るんですか!?」
「やれば出来るよ?」
「出来るか!!」
タイソン先生がツッコンできたけど、実際出来てるしねぇ。
「誰もがお前みたいに出鱈目じゃないんだよ! そんなの御伽噺の領域だ!」
「教えれば出来そうな奴に二人程心当たりが」
勿論、雄一と翔吾ね。
「………えっと、すんませんちょっと理解出来ないんですけど。 ヒバリがしたのはそんな凄い事なんですか? いや、確かに凄い効果でしたけど」
俺とタイソン先生が言い合ってると、グレゴリウスが恐る恐る口を挟んできた。どうやら話を理解していないらしい。寝ながらの格好と言い、なんとも情けない姿だ。
それを見て、ミカヅキが嘆息しながら説明を始めた。
「全く、これだから馬鹿犬は……。良いか? 簡単に言うと、ヒバリ先輩はステータスに干渉したんだ」
おう、すっごいザックリ纏めたな。
「いや、だからそれが疑問なんだよ。強化魔法が掛かった状態なら、ステータスの能力値が上昇すんのは当然だろ?」
この世界のステータスは、ゲーム的に登場する奴と違ってその都度変化する。それはステータスが、個人に対する世界の認識だからだ。だから筋力を10強化する魔法を掛ければ、筋力値は10アップするし、その逆もある。
「ああそうだ。ステータスは世界が私たちの能力を数値化した物だ。だが、だからこそ容易に変動しない項目も有るだろう」
「そんなの有ったか?」
「スキル項目だこの馬鹿犬! 良いか? スキルは才能と経験によって獲得でき、経験によってしか成長しない。何故なら世界がそのスキルを納めたと認識し、どれ程の力量かを判断するからだ」
この世界はゲームじゃない。ステータスなんてゲーム的なシステムも有るが、基本的には現実だ。スキルは個人が納めた技能であり、スキルレベルによる補正なんて存在しない。……多分。
「先輩はそれをやってのけたんだ。先輩の説明の通りなら、あの時の私たちはスキルレベルが上昇、下手をすれば新たなスキルを一時的に獲得していたのかもしれないんだ」
「マジか!? そんな事出来るのか!?」
「だから皆驚いてるんだ理解しろ馬鹿犬!!」
遅まきながら理解したグレゴリウスを、ミカヅキが一喝した。
取り敢えず、オケ?
「まあ、属性とかはどうなんだとか、色々と言いたい事は有るだろうけど、魔法の説明はこれで終了ね。そういう物だと受け止めて欲しい」
理解不能な事をいちいち考えても時間の無駄だ。『ま、いっか』『へー』『あっそ』とかは最強の呪文なのだ。棚上げ、マジ大切。
「そんで反動の理由だけど、経験的には成長しても、肉体的には成長してないのが原因ね」
魔法によって誤魔化しているが、本来なら容量オーバーなのだ。簡単に例えると、ソフトにハードの方がついていけてない。肉体的にはまだ無理な動きをした所為で、身体が悲鳴を上げたのだ。
「だからレベッカちゃんは大丈夫なんだよ。動いてないから、身体が悲鳴を上げない。強いて言えば処理能力に負荷が掛かったぐらいじゃない? 魔力は有限で限界以上に使えない分、効率面とかに処理能力を極振りしたみたいだし」
まあ、それも俺が肩代わりした訳だけど。そして俺の場合、レベッカちゃんとは比べ物にならない処理能力が有るから、肩代わりしても問題無い。
「そういう事だったんですか。えっと、ありがとうございます」
良いの良いの。レベッカちゃんの優しさにお兄さんが心打たれただけだから。
「どっかの誰かさんたちも、口は災いの元だと学んだだろうし」
チラリと見れば、思うように動けていない三人の姿が。
「う〜。ヒバリ君治療してぇ〜。確か治癒の魔法使えたでしょ〜」
「こ、コレ、やっぱりキツイ……」
「っ、久々だなこの感じ……」
おーおー、生まれたての子鹿みたいに震えちゃって。三人ともなんとか立ち上がった感じだが、全身がプルプルしている。けど、ミカヅキは症状が軽そうだな。グレゴリウスや灰猫先輩と違って、強化中に使用したのがちゃんと理の存在する武術だったのが要因だろう。口振りからして、この手の筋肉痛に慣れてもいそうだ。
「……それにしても、先輩の言ってる意味が分かった」
「ん? 何が?」
「今後の為にもなると言っていただろう? つまり私たちは、数年の努力であそこまでの領域に立てると言う事だ。これが分かっただけでも、今回の補習に参加した意義が有ると言う物」
「俺は別にホストって訳じゃないんだけどねぇ」
どちらかと言えば参加者側だ。まあ、それも曖昧になってきてるが。
「それじゃあタイソン先生、こいつら運びましょうか」
「………何でお前がこっち側にいるんだよ」
だから、曖昧になってきたんだって。
「先生はグレゴリウス運んで下さい。俺はミカヅキと灰猫先輩運びます」
「い、いや、私は大丈夫だ。この程度の距離なら、自分で歩ける」
ミカヅキを背負おうとしたら、問題無いと言われたので引き下がった。まあ、症状も軽いし大丈夫か。
「て、そもそもヒバリ君が魔法掛けてくれれば」
「嫌です。身から出た錆なんで、今日一日は大人しく受け止めて下さい。代わりに夜の見張りとかは全部やるんで」
まあ、罰ゲームみたいなもんだな。
「そんな〜」
灰猫先輩が嘆くが、俺はそれを無視して抱え上げる。体制は所謂お姫様抱っこだ。
「うきゃ!? ちょっ、ヒバリ君!? 普通に背負ってくれて良いのよ!?」
「大丈夫ですよ。それに先輩手に力入らないでしょう?」
「恥ずかしいって言ってるのよ!」
顔を赤くして叫ぶ灰猫先輩。まあ、ある程度年齢いってたら恥ずかしいよな。
「ええ、分かっててやってます」
「だと思ったわよ!」
「はっはっは」
顔が近いやら笑うなやらと叫ぶ灰猫先輩を無視して、俺は馬車へと歩き出す。
そしてその途中、灰猫先輩が少し神妙な顔をしているのに気付いた。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ」
「なんすか?」
なんなりとどうぞ。
「謎の襲撃者は逃げたって言ってたけど、それ本当?」
「本当ですよ?」
転移でどっか行っちゃいました。
「いや、そういう事じゃなくてね。私思うんだ。ヒバリ君なら、あの襲撃者も捕まえる事が出来たんじゃないかって」
「………」
「そりゃ、あの時は私たちもピンチだったし、キミが付きっ切りになってたのは分かってるわよ? でも、あんな凄い魔法を使えて、何処に居るかも分からない襲撃者を察知出来るキミが、簡単に逃がすとはちょっと思えないくて」
「…………そそれ、それは、か、買い被りす過ぎですよ」
「目がザバンザバン泳いでるけど!?」
あれ?
「まあ冗談はさて置き」
「……真面目な話してたんだけど」
そりゃ失敬。
「先輩、俺が何でも出来る人間だと思ってません?」
「私の知る限り、キミ何でも出来てない?」
「何でもは出来ませんよ。出来る事だけです」
その出来る事がクソ広いだけで。
「まあ、俺にも出来ない事が有るって事で。今回は出来なかった。それで納得して下さい」
「………何か釈然としないんだけど」
「そもそも、何でも出来たらこんな補習に参加してませんし、さっきの召喚も阻止してるでしょ」
「いやー、キミの性格を考えると………うっかりやらかしそうね」
どういう意味だ。いや、実際結構なドジしてるけども。
「うん、ゴメンね。変な風に疑ったりして」
「その納得のされ方には異議を申し立てたい」
何か嫌だよそれで納得されても。
「はぁ…まあ良いです。それじゃあ」
微妙な気分になりながらも、灰猫先輩を馬車の中へと降ろした。
「そんじゃ、俺はザックたちの方を見てきます」
「うん、お願いね」
灰猫先輩に軽く手を振って答え、俺は馬車から出て行った。
そして、
「さて」
やっておくべき事に手をつけた。
(失われたとされる空間転移の魔法に、召喚のタリスマンなんてロストテクノロジーの道具を使う謎の襲撃者。うん、なんとも興味深い)
さっきは灰猫先輩にああ言ったが、当然そんな存在を俺が見逃す筈も無く、
(おい、ゴブ助)
俺の中の内なる存在、てか魔窟の中の住人の一人に思念を飛ばす。
返事は直ぐに帰ってきた。
『おお! 一体何でしょうか主様。主が我らに声を掛けるなど、とても久しく感じますな』
めっちゃ喜んでるやん。
『それはそうでしょう。主様は我らの中では神と言っても過言では無い存在。信者が信仰する神からの御言葉を賜れば、歓喜に打ち震えるのは至極当然であります』
地の文読むなや。
『それは申し訳ありません。主様を不快にさせてしまうとは』
(……もう良いよ)
良く考えれば、魔窟のこいつら、特に古代組と長老組と王族組は前からこんな感じだ。あれこれ言うのも今更だろう。
俺を崇拝する困った奴らであり、絶対の忠誠を誓う優秀な手下。それがゴブ助を筆頭とする、魔窟に住まうゴブリンたちだ。
『それで主様。今回は一体どんなご用件で?』
(今から送る魔力の持ち主を見張ってくれ。人選は長老組から選べ)
『御老公たちや王族組は宜しいので?』
(古代組はどう考えても過剰戦力だろ)
『まあ、それは確かに』
苦笑のニュアンスが含まれた声で納得するゴブ助。彼自身、古代組に関しては冗談だったのだろう。
魔窟のゴブリンたちは大きく分けて五つに分けられている。
通常種、派生種、亜種、上位種の属する『通常』
ゴブリンジェネラルとデュークが属する『貴族』
クイーンとキングの属する『王族』
エルダーゴブリンたちが属する『長老』
エンシェントゴブリンの属する『古代』
これらのカテゴリーは大まかに分けたゴブリンたちの種類であり、明確な実力差を形にした物だ。
古代>>長老>>>〜>王族>>貴族>>>通常と考えてくれれば分かり易いだろう。
具体的な例を挙げると、王族組でインセラートやガルマンと同格。長老組で圧勝。古代組に至っては片手間でも余裕だろう。
そう考えると、長老組でも過剰戦力な気がしないでも無いが、
(王族組なら丁度良いかもしれないが、だからと言って必要以上に戦力を下げる事も無い)
安全マージン、大切。
『畏まりました。となると、やはりリンリンが妥当でしょう』
(やっぱりそうか)
エルダーゴブリンのリンリン。彼女は高い諜報能力を持つ個体なので、今回の任務には最適と言えるだろう。長老組なので魔王クラスだろうと簡単にあしらえるので、実力的にも申し分ない。
『ではそのように。あ、主様からリンリンに何か一言頼めますか? そうすれば彼女のモチベーションも上がるでしょう』
(いや、わざわざ上げなくても良いだろ。別にそこまで重要でも無いんだから)
そもそもの話、逃げた狙撃手を本気でどうにかしたいのなら、俺が直接動いた方が早い。それをしないでゴブリンたちに任せようとしているのは、わざわざ動くのが面倒だからであり、黒幕が一体どんな存在なのか興味深いからであり、暇つぶしになりそうだからだ。
(遊びの一環みたいな物なんだ。気負わず肩の力を抜いたぐらいで良い)
『それは承知しています。魔導師や神の関わってくる案件なら、主様自らがお動きになるでしょう。我らをお使いになる時点で、重要性が低いのは明白』
だが、と続けるゴブ助。
『それはそれ。我らは主様の僕。例え重要性の低い任務であろうが、主様からの御言葉は賜りたい物なのですよ』
(ああ……そういや筆頭決めた時もそんな理由で揉めてたね)
今でこそ俺の指示を聞いて他の面々に伝えるのはゴブ助の役割だが、当初は誰が連絡役を務めるかで揉めに揉めた物だ。結局は性格が一番マトモで分別の有るゴブ助を代表としたのだが、あの時はマジで大変だった。
それを思えば、簡単なご褒美ぐらいは与えても良いかもしれない。やはり、純粋に慕われるのは嬉しい物なのだ。
(じゃあ、今度酒でも飲むかって伝えといてくれ)
『………それは、リンリン以外にも立候補が殺到しそうですな。特に女性陣に』
(俺はアイドルじゃねえんだぞ……)
『偶像には変わりますまい』
(おい……)
間違っては無いけども。
(まあ、そこらの調停はゴブ助に任せる)
面倒な事ではあるが、それを踏まえての筆頭であり連絡役だ。
『畏まりました。それではご機嫌よう主様』
それはゴブ助も弁えてるらしく、何も言わずに念話を切った。
「さて、どんな黒幕なのかねぇ」
色々と楽しみだ。
という訳で、要望が多かったので登場しました魔窟ゴブリン。長老組、古代組はちょくちょく出てくる予定です。
そして遂に現れた、物語上での明確な敵らしき存在。そして速攻でヒバリの魔の手が伸びてます。
敵の思惑通りに物事は進む事が出来るのか?




