話し合いをしよう
勇者達が訪ねてきた。
「何の用だ。勇者御一行」
「むず痒いから勇者は辞めてほしい。いや、ちゃんとした自己紹介とかしてなかったなと思って。こんな事になっちゃったし、ちゃんと話しはしといた方がいいだろう」
どうやら、それが用事の様だ。
「最初は俺が。御門京介、年齢は15歳だ。勇者らしいがそんな大層な人間じゃない。京介と呼んでくれ」
主人公ぽい奴。
「私は伊藤梨花。歳は京介と同じ。私も梨花でいいわ。大変かもしれないけど、お互い頑張りましょう」
さっきラブコメしてたツンデレさん。
「藤崎詩織よ。詩織って呼んでね。よろしくね」
クール系なお姉さんって感じ。
「斎藤花音です。私も名前でいいです。あ、あの、仲良くしてください」
気弱な感じの妹キャラ。
「前から思ってたけど、ハーレムか?」
「っな!?だ、誰がこんな奴なんか!!」
顔を真っ赤にしながら否定する梨花さん。いや、有る意味肯定か?
「残念だけど、私は違うわ」
クスクスと笑いながら否定する詩織さん。この人はアレだ。どちらかというと、梨花さんとかで愉しんでる感じだ。
「私も違います」
苦笑しながら答える花音さんは、苦労人って感じがする。
「何言ってんだ?」
京介はどうやら、鈍感系主人公みたいだ。
「梨花さん苦労しそうだな」
「………わかる?」
「現実で鈍感系って初めて見た」
「そのうち刺されそうだな」
「同感ね」
「私もそう思います」
すぐに心が一つになった。
さっくりと俺達も自己紹介を終えて、現在歓談中。
「にしても、三人も大変だな。異世界に召喚とかに巻き込まれるとか」
「そうでもないさ。むしろ、そっちの方が大変だと思うぞ。魔王やらなんやらと戦わせられるんだから。それに比べればこっちの方が気楽でいいさ」
「そうゆうものか?」
「雲雀の言うことは真に受けるな。そいつは色々とズレてるから」
「開き直ってるだけだよね」
「おいコラ」
「そうゆう二人も結構冷静じゃないかしら?」
「そうか?」
「そうかな?」
「あんた達もズレてるわよ」
結果、俺達三人はズレてるという事になった。
解せぬ。否定はしないが。
「あんた達のステータスってどんなだった?」
梨花さんが聞いてきた。どうやってはぐらかそうかな。
「同じ日本に住んでたんだから、あんまり変わんないと思うぞ」
すかさず雄一がそう返す。
「まあ、確かにそうね。じゃあ、天職はなんだったの?」
誤魔化すか?と、雄一が目線で聞いてくるので、必要ないと答えておく。
雄一は一瞬怪訝そうにしたが、すぐに頷いた。
「俺は観測者で、翔吾が製作者。雲雀が大魔導だ」
「大魔導ってなんか凄そうだな」
「お前ら天職勇者だろ。そっちの方がよっぽどだ」
「うっ、そう言われると確かに」
「まあ変わってるとは思うけどな」
そんな感じで有る程度話していると、メイドさん入ってきた。なんでも、国王が俺達を呼んでるらしい。
断る訳にも行かないので、話し合いはお開きとなった。
「なあ、さっき誤魔化さなくて良かったのか?」
途中で雄一がさっきの天職の事を聴いてきた。
「良いって訳じゃないが、俺達の天職が勇者じゃないか確認される可能性があるからな。誤魔化してたとばれるのは悪手だ」
「ん、そうか」
どうやら納得したようだ。
少しすると、豪奢な扉見えてくる。
「此方で御座います」
そう言って、メイドさんが扉をノックすると、中から「入れ」と返される。扉を開けて中に入ると、国王と思われる壮年の男性が座っていた。
「お主達が勇者召喚に巻き込まれた者達か?」
「はい」
権力者に有る程度接していたいう理由から、国王との会話は俺が受け答えをすることになっている。
「そうか。まずは、此方の勝手な都合で召喚し、あまつさえ無関係な君達を巻き込んでしまった非礼を詫びよう」
国王が頭を下げた。
「本来ならすぐに君達をもと居た世界に戻すのが筋なのだが、残念ながら召喚は一方通行なのだ。だから、君達にはこの世界で生活してもらうことになる。もちろん、此方の落ち度だ。最大限の便宜を約束する」
どうやらこの国王は善王と呼ばれる部類に入るようだ。
「便宜と申しますと?」
「まず、私の信頼できる部下を君達の後見人とする。君達はそこで生活してもらう」
「あの、そこまでしていただかなくても」
予想以上の内容に翔吾が恐縮しながら断ろうとする。
「遠慮はしないでほしい。さっきも言ったが此方の落ち度だ。君達は勇者までとはいかないが、国賓相当の立場を約束するのは当然だ」
国王は好意で言っているようだが、国賓扱いをされると言われても雄一と翔吾はただの一般人だ。あまり丁寧に扱われると逆に萎縮してしまう。
「なんとかしろ」と二人に視線で訴えられた。
「陛下。私達は向こうの世界ではただの一般人に過ぎません。余りに過度な待遇だと此方が戸惑ってしまいます」
これは本音だ。二人よりは慣れているが、俺だって根は小市民なのだ。国賓なんて立場は落ち着かないのだ。
「ふむ、ならば公にするのは辞めといた方が良いか。だが、何かあった時は私の名を出しなさい。君達を出来る限り守らせてもらう」
とりあえず国賓は回避出来たようだ。
「後は、君達には学院に通ってもらおうと思っている」
「学院ですか?」
「異世界人は総じて高いステータスを持っていると聴いているが、君達はまだ子供だ。なので、学院に通って色々な事を経験してもらいたいのだ。もちろん、嫌なら断ってくれて構わない」
二人にどうするか視線で尋ねるがどうするか迷っているようだ。
「申し訳ありませんが陛下。この場では判断する事が出来ませんので、少し時間を頂けませんでしょうか?」
「いや、構わない。君達の今後の事なのだ。じっくりと考えてほしい」
「ありがとうございます」
とりあえず、国王との話し合いは終了となった。




