灰色の猫
誤字脱字の可能性大です。
すみません。書き忘れが。
タイトルについてツッコミが入ったので、題名をかえようと思っています。
新たな題名は『馬鹿と天災は紙一重〜厄ネタ系魔導師の享楽奇行』で行こうと思います。
みづどり
エクレ先生が教室を去ってから、入れ違いで雄一と翔吾、アルトが入ってきた。
「今エクレ先生が疲れて出て行ったけど、何か有ったのか?」
「補習だそうだ」
「へー、誰が?」
「俺」
「嘘っ、ヒバリが補習!?」
「ざまあ」
「ばーか」
「せめてアルトみたいな反応が欲しかったわ」
親友が補習宣告されてんのにその反応かよ。
「何でそんな落ち着いてるの二人とも!? 補習って事は、最悪留年になっちゃうかもせれないんだよ!?」
一緒のクラスになれなくなっても良いの!?とアルトは叫ぶが、親友二人は全く慌てていなかった。
「大丈夫だろ。コレは馬鹿だけど優秀だ」
コレとは何だ。
「優秀な人間は補習なんてやらないよ!」
「うん、だから馬鹿なんだって。どうせ何かやったんでしょ? 筆記テストで名前書き忘れるとか」
翔吾が冷たい。そして強ち間違って無い。流石は親友。
「なんでも魔法実技が判定不能で0点なんだと。それで補習だそうだ」
「ええっ!? ヒバリの魔法凄かったじゃないか!」
「凄すぎたらしい」
エクレ先生が言っていた事を簡単に説明すると、アルトは憤慨したように立ち上がった。
「そんなの横暴だよ! ちょっと僕行ってくる!」
「待て待て待て。何処に行く気だアルト。もう決定してるから先生に訴えても意味ないぞ」
「大丈夫! 僕の兄さんが学生会に所属してるんだ。だから話せばなんとかしてくれるかも!」
何か気になる情報が出てきたな。
「へー、兄さんなんて居たのかアルト」
「しかも、学生会に所属してるんだね」
「うん。ちょっと変わってるけど、自慢の兄なんだ。とても頼れる人だから、きっと力になってくれる筈!」
「待たんかい」
勝手に突っ走って行きそうな勢いだったので、アルトの制服の襟首を掴んで止める。止められた事にとても不満そうな顔をしているのだが、ぶっちゃけ可愛いだけである。
「何で止めるのさヒバリ!」
「だから、もう決定してんだって。今更ほじくり返しても面倒な事になるだけなの」
「でも!」
「でもじゃない。俺の為だって事は分かるけど、他人からは私情で決定を覆そうとしてる風に取られるかもしれない。それだと、アルトやアルトのお兄さんに迷惑が掛かるだろ?」
俺の事でアルトのお兄さんが動けば、それは私情で動いたとみなされる可能性が高い。そうなれば、アルトのお兄さんの事を気に食わない連中に、要らぬ隙を見せる事になってしまう。
「けど、それでヒバリが留年とかしちゃったら……」
「安心しろ。補習の原因は分かってんだ。次は上手くやるさ」
学生レベルの補習、特に実技関連の物となれば、下手な事をしなければ絶対に受かる。問題が有るとするならば、単に時間を取られるだけだ。
「……本当に大丈夫なの?」
「ああ」
「……はあ。分かったよ。ゴメンね、一人で暴走して」
誤ってくるアルトに、俺は苦笑しながら首を振る。
「謝らなくて良いさ。俺の為に怒ってくれたのは嬉しいしな……この二人に見習わせたいぐらいだ」
チラリと視線を横にやれば、そこには既に興味の失せている親友二人の姿が。
「……ん? ああ、終わったのか?」
「そろそろ次の授業の準備しないとね」
……なんとなく、額の血管が浮き出た気がする。
「……お前らな、せめて最後まで付き合えや」
「メンドイ。お前が補習を食らうのが悪い。それに、どうせ受かるんだろ? だったら考えるだけ無駄だ」
「心配するだけ損ってもんだよねー」
だからって興味を失せるなよ。
「僕と雄一は雲雀を信じてるんだよー」
「そうそう。信用は大事だぞ雲雀」
「張っ倒すぞ」
お前らの信用は何か違うんだよ。
そんな風に言い合っていると、教室に先生が入ってきた。よって、言い合いは終了である。
「……なんか、僕だけ盛り上がってて馬鹿みたい……」
取り敢えず、アルトが一人で赤面していた事は記しておこう。
そして、エクレ先生に言われた放課後がやってきた。
「んじゃ、学習室行ってくるわ」
「おう」
「行ってらっしゃーい」
「頑張ってね」
「ん。何時終わるか分からんし、二人は先帰ってて良いぞ」
「最初から待つ気なんて無えよ」
「あんまり自惚れちゃ駄目だよ雲雀」
「………あっそ」
親友からの扱いに涙ぐみながら、俺は教室を出て行った。
「えっと、学習室だから……確か、北校舎の三階……辺りだった筈」
うろ覚えの記憶を手繰り、学習室の場所を思い出す。
エクレ先生には分かると言ったが、いかんせんこの学園は広い。その分校舎もそこそこに入り組んだ構造となっているので、あまり行った事のない教室を探すのはかなり手探りになる。……いや、一発で道を覚えない俺が悪いんだけどさ。流石に三回ぐらいしか学習室なんて言った事無いんだし、そこは大目に見て欲しい。
「まあ、階が分かってれば良いか。適当にぶらつけば見つかるだろ」
取り敢えず、階段を上がって三階に上がるとしよう。出来れば一番端の階段が良いな。行ったり来たりする手間が減る。
「えっと、確かここ曲がったところが、北校舎の端の階段ーー」
「ふぁっ!? やっばい!」
「ーーんにゃ?」
階段の上から、焦りを含んだ声が聞こえた。それと同時に、何かの影が俺と重なる。
何だと思って顔を上げれば、予想通りと言うべきか。大量の箱と、白い人型が階段の上から降ってきていた。
「ちょっ!? そこの君どいてー!?」
人型の方も俺に気付いたのか、何やら悲鳴を上げている。良く見れば、その人型は白髪の女の子だった。因みに大量の箱は木箱だ。メタくそ重そうなので、あの高さから落下したら大惨事になりそうだ。特に人が居た場合。
「親方! 空から女の子が!」
取り敢えず、女の子と箱を受け止める事にする。台詞はノリだ。
先に落ちてきた木箱を順繰りに受け止め、丁寧に地面に置いていく。まあ、側から見れば高速で投げ捨ててるように見えるだろうが。
最後に女の子が落ちてきたので、お姫様抱っこで受け止める……なんて粋な事を俺がする訳なんて無く、女の子の身体に手を当てる事で勢いを殺し、そのままくるりと宙へと放る。
「ちょっ、うぇ!?」
女の子は驚愕の声を上げるが、見事に空中で体勢を整えて、スタッと廊下に着地した。
そして、俺にジト目を送ってきた。
「……普通さ、こういう時は華麗に受け止める物じゃない?」
「女性の身体を無闇に触る訳無いでしょう?」
普通は大丈夫だと思うけど、相手が貴族の子女の場合を考えるとな。
「そんな事言ってるような状況でも無いと思うけど…」
「貴女に言われたく無いんですけどね。まあ、相手によって対応は変えますよ。取り敢えず、貴女は一人で着地出来そうだったので、軽く手助けだけにしました」
「むー、見破られてたか」
この人、落ちてきた時には既に体勢を整えてからな。しかも、ご丁寧にお姫様抱っこをし易い感じにしながらも、いざという時は直ぐに動けるような体勢で落ちてきた。
色々な意味で相当なヤリ手だ、この人。
「確信犯なんて誤解を生みたくないのなら、そういう事をするのは止めた方が良いですよ」
「大丈夫よ。こんな事をするのは君ぐらいしか居ないだろうし」
流し目で此方を見てくる女の子に、俺は静かに距離を取る。
「その反応は傷付くわね」
「初対面の女性に好意を寄せられる、なんて夢は見ませんからね。今のは自分の容姿を自覚してる女性の行動ですし、出来るだけ関わり合いになりたくないなと」
「ふふ、そんな事を言われたのは初めてね」
相当に失礼な事を言ったのだが、目の前の女の子は微笑むだけだった。
その微笑みでさえ、世の中の男性全てが魅了されるだろう。
「傾国クラスの悪女の素質が有りそうでなによりですよ」
「流石にそこまでは無いと思うけど、褒め言葉として受け取っておくわ」
俺の嫌味を笑顔で流す辺り、本当に国を傾けそうで怖い。
本人は謙遜しているが、容姿だけでも十分に傾国クラスだ。何かと美少女が多いこの世界でも、恐らく断トツ。今まではクラリスやフィア、それとシャルロット王女がトップだったが、この人はその三人よりも更に綺麗だ。俺の知ってる中でこの人に匹敵しそうなのは、クラックの女神達と師天のドロップ、クイーンぐらいだろう。
穢れの無い純白の髪。僅かにウェーブの掛かるショートヘアで、サイドからはお下げが垂れている。瞳の色はエメラルドで、僅かにつり目となっている。顔立ちは可愛いというよりも綺麗系と言ったところだな、少女のような幼さも混同している。容姿は男の理想を体現していると思う。
問題が有るとすれば身体つきか。身長は高過ぎず低過ぎずと言ったところだが、一部分が致命的に無い。まあ、それでもスレンダーと言えるし、魅力の一切が損なわれて無いのが凄いところ。美少女は得だな。
そして個人的にどストライクなのが、髪から覗く白い猫耳と、腰の辺りから伸びる長めの白尻尾。ピコピコと動く猫耳も、フリフリと動く白い尻尾も、ひたすらにモフモフしたい。
「見惚れるのは嬉しいけど、あまり不躾に見ては駄目よ」
「これは失礼」
どうやら凝視し過ぎたようだ。だが、その声音も注意するような物であって、咎めるような声音では無かった。恐らく、見つめられのに慣れているのだろう。
「まあ良いわ。自己紹介してなかった私も悪かったし。私はメルト。本科二年の三組に在籍してるの。因みに十七歳ね」
茶目っ気たっぷりにウィンクをするメルト。無難にスルーしておこう。
三組という事は、この人は相当に優秀な生徒なのだろう。エクレ先生曰く、特進である一・二組に入れない、実力のある平民の生徒が多いらしいし。
「俺はヒバリです。予科三年の十組に在籍しています」
「あら、やっぱりキミがヒバリ君なのね」
俺が自己紹介をすると、メルトさんは納得したように頷いた。
「俺の事をご存知なので?」
「そりゃ勿論よ。キミ達は何かと噂になってるしね。もう少し自分の知名度を自覚した方が良いわよ?」
諭すように言われては、俺も肩を竦めるしかない。実際に色々とやっているので、何を言われても文句は言えないからな。
「まあ、私の場合はキミのクラスに弟が居るから、それ経由で他の人よりも詳しいんだけどね」
「へー」
メルトの言葉に頷きながら、俺は該当しそうなクラスメートを頭に並べていく。十組には獣人が結構居て、猫系だと七人。それで白猫系の男子だから、二人。恐らく、ジャンかゼルの何方かだろう。
俺が頭の中で当たりを付けて居ると、メルトが口を開いた。
「それでキミは……キミだと他人行儀かな。ヒバリ君って呼んで良い?」
「構いませんよ」
「ありがと。私も好きなように呼んでね。メル先輩でもメルちゃん先輩でも良いわよ」
何故候補に愛称しかないのかは分からないが、だったら丁度良いイメージのアダ名が有る。
「では灰猫先輩と」
「あら? そんな風に呼ばれたのは初めてね。理由を聞いても良いかしら?」
「ええ。単純に先輩が白猫系の獣人なのと、俺の知り合った人物の中でも上位の腹黒さを誇りそうなので。白と黒を混ぜたら灰色になりますしね」
「あははは! やっぱりヒバリ君は噂通りね! そんな事を面と向かって言われたのは初めてよ!」
相当に失礼な事を言ったのだが、メルト、もとい灰猫先輩は楽しそうに笑っている。これを懐が深いと見るか、感性がズレていると見るべきかは謎だ。まあ、大丈夫だと確信した上での命名だが。
「うん、気に入ったわ。これからよろしくねヒバリ君」
「あんまりよろしくしたい人種じゃないんですよねー、灰猫先輩みたいな人って」
神がかった美しさを持つ人種って、大抵碌な奴が居ないんだよ。ドロップやクイーンからの経験則だ。
「あらあら、振られちゃったかしら? ますます気に入ったわ。ヒバリ君みたいに思い通りにならない人って少ないのよね」
アカン。この人アレだ。素質とかじゃなくて既に悪女や。
「それで、ヒバリ君は何で北校舎に居るの? 予科生はもう放課後だし、まだ研究会には未所属よね?」
「ええ、まあ。ちょっと用事がありまして。研究会に入ってないのを知っているのかはスルーさせて頂きます」
「だ・か・ら、噂よ噂よ。キミは何かと噂に絶えないからねー。独自の上級魔法の使い手、陛下が絶賛する天才、アール公爵家の養子、自由奔放な問題児、などなど。ヒバリ君を表す異名は大量なのよ? 優秀な人材は何処も欲しいんだから、動向ぐらいは簡単に分かるわ。なんたって、ヒバリ君達は学生会ですら狙ってるんだもの!」
「へー、また変な通り名が追加されそうな情報ですね」
さっき灰猫先輩が挙げた通り、俺達三人には幾つもの通り名がある。数は色々とやらかしてる俺が断トツ、次点でハンスとの決闘で増えた翔吾、一番少ないのは雄一だ。理由は何もしてないから。
「ふうん? 予想より反応が小さいわね」
「ぶっちゃけ興味無いですからね。学生会とか忙しいみたいですし、誘われても入ろうとは思えません。二人は兎も角、俺はのんべんだらりとした学園生活を送りたいんですよ」
切った張ったは別に良いが、事務系の仕事は嫌いなのだ。
そう告げると、灰猫先輩は軽く肩を竦めるだけだった。
「なるほどね。やっぱりキミは面白いなぁ。普通の子だったら飛びつくのに」
「今のって遠回しにディスられました?」
普通じゃないって言われたよな今。
「あはは。ゴメンゴメン」
カラカラと笑う灰猫先輩。
「それにして学習室ね……。もしかして、補習宣告されちゃった?」
ニヤニヤと笑いながら聞いてくる灰猫先輩に、俺は疑問符を浮かべた。
「何でそれを?」
「この前にテストがあったじゃない? 毎年このぐらいの時期に呼び出しが始まるからね。この学園に長い事居ると、そういうのが分かるの。経験則って奴ね」
つまり、毎年少なくない人数が呼び出しを喰らっていると。
俺が一人で納得していると、更に灰猫先輩は続けた。
「特にこの時期の学習室ってのは、上級生や在籍年数の多い生徒からすれば、ある種の名物みたいな物なのよ」
「補習の生徒でごった返すからですか?」
名物となるなら、その光景は中々の物なのだろう。確かに、大量の生徒が必死な形相を浮かべている光景というのは、想像すると壮観ではあると思う。
「違う違う。補習関係は基本的に各教室だし、説明するにしても人数が多いから講堂を使うわ」
ん? じゃあ何で俺は学習室に呼ばれたんだ?
「何で学習室に呼ばれたんだ?って顔してるわね。その理由だけど、学習室に呼び出しされる生徒って、普通と違う内容の補習をされる訳」
「普通と違う内容?」
「そう。学習室に呼ばれる生徒ってのは、教員がこのままじゃマズイって思った生徒の事なの。それにはテストの成績も関係無いのよ。筆記や実技の点数が良かろうが、呼ばれる人は呼ばれる。逆に両方悪くても、呼ばれない人は呼ばれないの。……まあ、後者の場合は、普通の補習が待ってるんだけど。で、心当たりは有る?」
有ります。と言うか、心当たりが多過ぎます。
「えっと、魔法実技で的を吹き飛ばして判定不能を喰らいましたね。後は、戦闘実技で選んだ剣をぶん投げて、教員達を悩ませたりも」
「それなら理由は十分そうね」
うんうんと頷く灰猫先輩。微妙に笑みが浮かんでいるので、俺の評価が向上しているのだろう。理由は知らん。
「兎も角。そういう訳だから、集められる生徒は全員がアクが濃いと言うか、一癖も二癖もある人物ばかりと言うか」
「それで楽しみにしてると」
なるほど、野次馬根性か。それなら名物になるのも納得だ。
「そうなのよねー。呼ばれる生徒ってのは私達からすれば宝石の原石みたいな物なの。大抵が尖ってるから、上手く磨けば優秀な生徒に早変わりするって訳。まあ、単純に見ていて面白いって面も有るんだけど」
灰猫先輩はそう言って、チロリと悪戯っぽく舌を出した。こう言う姿も絵になるのだから、やはりこの人は綺麗だ。
「……あれ?」
関心していると、急に灰猫先輩が首を傾げた。何だ?
「ヒバリ君、学習室に行くんだよね?」
「ええ」
「じゃあ何でこっちに来たの? 学習室は此処とは真反対、北校舎三階の南側よ?」
「……」
どうやら、往復の手間を嫌った筈が、逆に一番遠い場所からスタートしようとしていたらしい。
俺が内心で頬を掻いていると、灰猫先輩がまたニヤニヤしだした。どうやら悟られたようだ。
「ははーん。さてはヒバリ君、学習室の場所知らなかったな?」
「……ええ、まあ。何分あまり行った事の無い場所なので」
「そうなの。じゃあ私が案内してあげるわ」
……なんとなく嫌な流れだ。
「いえ、もう場所は教えて貰ったので大丈夫です。それじゃあ灰猫先輩、俺は行きますね」
「はいストップ」
先の展開を予想して逃げだそうとしたのだが、灰猫先輩に袖を掴まれてしまった。
「一緒に行きましょう。私も南側の資料室にこの荷物を持ってくの」
「……いや、確か資料室は一階ですよね?」
「うん。だから、ヒバリ君も一緒に。三階にはは南側の階段で上がれば良いわ」
「……えっと、遠慮ーー」
「は要らないわよ。私とキミの仲でしょう?」
「さっき初めて会ったんですが?」
「私はヒバリ君の事は気に入ってるわよ? それに、愛称で呼び合うぐらいには仲が良いじゃない」
「……この為の布石ですか……」
「何の事かしら?」
呆れる俺と、惚ける灰猫先輩。
「それじゃあ行きましょうか。助かったわ。私一人だと、この荷物は少し辛かったから」
大量の木箱を眺めながら、灰猫先輩はトントンと肩を叩いている。
「……運ぶなんて一言も言ってないんですけど」
「私一人に運ばせる気? それでも良いけど、かなり注目されるわよ?」
大量の木箱を頑張って運ぶ美少女と、その横で手ブラで歩く男。どう考えても、針の筵なのは確定だろう。
「……選択肢は最初から無い訳ですか……」
「あら、手伝ってくれるの? ありがとうね、ヒバリ君」
「アンタやっぱり腹黒いわ……」
灰猫というアダ名は、やっぱり間違ってなかったか。
ニコニコと笑う純白の猫娘を見ながら、俺はそう溜息を吐いたのだった。
新キャラの灰猫先輩。この人は結構良いキャラしてると思います。自覚ある美少女ってタチ悪いなー。
そして、新たな師天のメンバーのドロップ。
超絶な美少女だが、壊滅的なまでのものぐさ。基本的に動かない、喋らない、何もしない。ヒバリから残念美人、人の姿をした老いたナマケモノ、などと呼ばれている。しかし、大体の行動を魔法で賄おうとする為、師天メンバーの中でも屈指の魔法応用力を誇ってたりする。
また、身の回りの世話をする為に、多くの便利魔法具を開発もしている。だが、管理がスボラな為に、開発しては紛失している。
紛失した発明が原因で、何度も国が争奪戦争を起こしてたりするのだが、本人は気付いていない。そもそも紛失した発明品を覚えていない。
その為、多くの師天メンバーが尻拭いの為に奔走する事に。主な被害者はヒバリとニャーさん。




