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三人の強者達 雄一

長々とやっていますが、もう少しでこの章?は終わります。


後ニ・三話なので、お付き合い下さい。


誤字脱字の可能性大です。

〈雄一side〉


「ったく……面倒な事を押し付けやがって」


雲雀の頼みによって、俺は魔王と戦う事になった。はっきり言って嫌だ。面倒。何でアイツの尻拭いを俺がしなくちゃならん。


「……と、言えれば良かったんだが…」


誠に遺憾な事だが、俺にはマジギレしてる雲雀に文句を言う勇気は無い。文句を言ったところで、『あ、そう』とかで済まされるんだろうが、それでも本能的に逆らえないんだ。


それ程までに、雲雀はキレると恐ろしい。


どんなにぞんざいに扱ったとしても、俺達は決して一線は越えない。長年の付き合いによって、雲雀の逆鱗の位置を熟知しているからだ。


「ぐっ……一体…何をされた……!?」


その逆鱗を、この魔王は刺激した。


「馬鹿な奴」


未だに地面にめり込んでいるインセラートを見ていたら、ついそんな言葉が出てしまった。


「何…だと……!?」


呟きが聞こえたのか、インセラートが身体を持ち上げる………が、また直ぐに地面に這い蹲った。


「ぐぅっ……な…んなの……だ、コレは……!?」


もがき苦しむインセラートは、はっきり言って憐れである。完全に自業自得なので同情はしないが。


「本当に馬鹿だなお前は」


今度は無意識では無く、はっきりと自分の意思で言った。それもそうだろう。なにせ、コイツの未来はほぼ確実しているのだから。


「お前はアイツを怒らせた。もう終わりだよ」


「わ、たしが……人間、如、きに…負けると、でも、言うのか……!」


「今の姿を見たら百パー負けてるよ」


説得力の欠片の無えよお前の体勢。


「アイツを人間だって思い込んでる時点で勝ち目は無えよ。ありゃ人間だけど人間じゃない」


雲雀と言う名の新生物だ。


「…どう、いう……事、だ…?」


「喧嘩を売って良い存在じゃないんだよ。戦おうとして良い存在じゃないんだよ。張り合って良い存在じゃないんだよ」


理不尽の中の理不尽。不条理の中の不条理。何もかもが滅茶苦茶で、何もかもが違う。


「…くっ、く……その、割には、私、の……策に……嵌…って、いた…ぞ?」


「……まあ、物の見事に嵌ってたのは認めるが」


アレは真性の馬鹿なのではと俺も思った。


「だがな、アイツは嵌った後どうした? 全然堪えて無かっただろ」


劇毒と胸刺されて死なないって、まるでプラナリアだよな。いや、プラナリアより上か。


「アイツはマジで死なん。下手なアンデットよりもよっぽど不死身だ。身体は馬鹿みたいに頑丈だし、大怪我してもさっきと同じ事が起きるだけ。毒を盛っても即解毒。どんな難病だろうが治療可能。後は老衰ぐらいだが、アイツに寿命なんて物が有るとは思えん」


自分で挙げておいて何だが、こうも不死性が強いとドン引きである。と言うか、雲雀ってマジで自殺以外じゃ死なないんじゃね?


「くく……やはり、ガキだな。……奴を…殺せなくとも……やり、ようなど、幾ら…でも有る。…あの娘の……ように、周りを……人質に、取れば……如何に、奴とて…勝て、まい」


手段を選ばねば如何とでもなるとインセラートは語る。ゲスいな。這い蹲っている分、雰囲気的に余計にゲスい。


と言うか、この魔王は未だに理解して無いのか?


「お前、それが原因で這い蹲ってんだろうが。何で態々喧嘩売るかね」


「敵を……挑発して…何が……悪い…!」


「相手を選べって言ってるんだよ。絶対に勝てない相手を挑発したら地獄見るだけだぞ」


もう既に手遅れ感があるが、それでも自分から首を絞めに行かなくても良いだろうに。


「もっと自分の身を大切にした方が良い。じゃないと、碌な死に方しないぞ」


俺が本気で忠告すると、インセラートがゆっくりと顔を向けてくる。生憎な事に蟲の表情は分からないが、疑問符が浮かんでいるように感じた。


「……貴様は…何が…したいのだ?」


「俺は雲雀がクラリスの件を片付けるまでの時間稼ぎだからな。こうやって雑談を交わしてても問題無い」


倒せなくても問題無いと、雲雀は言った。既に言質は取ってある。のんびりと暇を潰してても、アイツに文句は言わせない。


それに、もうそろそろだ。


「…ふっ……魔王…相手に、雑談か。…あの小僧も……そうだが、やはり…貴様達は……何所、か変だな」


「まあ、ズレてるのは否定しないが。翔吾は妙に世話焼きだし、雲雀は言わずもがな。俺も色々と観察するのが趣味だし」


「…観察…か」


興味深そうに呟くインセラート。一見すると和やかな会話だが、実際はそうでも無い。お互いに隠しているが、直ぐに動けるように気を張っているからだ。


「ついでに言うと、今のブームは昆虫の標本に色々と語り掛ける事で、学習能力が宿るかを観察する事だな」


「……くっ……くっくっくっ…」


俺が盛大な皮肉を込めた台詞を吐くと、インセラートが静かに笑いだした。


「くく……はっはっはっ。…なるほど……面白い、観察…だな。……ならば、しっかり…目に、焼き付け……ておけ。………コレが貴様の命を奪う一撃だっ!!!」


一喝と同時に、インセラートが腕を振るう。その腕にはしなやかな鞭、いや百足が巻き付いており、俺の首を食い千切らんと牙を剥いて襲ってくる。


意識の隙間を突いた一撃。更に、百足の迫る速度は回避不可能な程に速い。インセラートとしても会心だと思わせる、完璧な不意打ち。


「っと」


が、俺はその一撃を余裕を持って回避した。


「何っ!?」


会心の不意打ちを回避され、インセラートは驚愕の声を上げる。俺はその姿を見て、ニヤリと嗤った。


「演技がバレてるって思わなかっただろ?」


「くっ……何時から気付いてた?」


「おいおい、俺は観察するのが趣味って言っただろ。最初からに決まってる」


天性の才能と言えば良いのだろうか? 俺は元から、情報収集能力に長けていたのだ。五感を使って周囲の情報を集める能力。観察する事で他人の感情を見抜く能力。話術によって相手を誘導する能力。更に、これらの能力によって得た情報を、多角的な観点から分析する処理能力も有った。……雲雀には、ミステリー系が悉く楽しく無さそう、なんて言われたりする。


まあ、それは兎も角だ。この名探偵の卵みたいな才能だが、この世界に来た事で更なる進化を遂げた。それがユニークスキルである『未来予知』。


何もせずとも周囲一体から膨大な量の情報を取得し、高度な処理能力によって起こり得る事象を予測する。その精度はほぼ百発百中。文字通り、未来予知が可能になった。


が、予知とは言っても、全ての未来を見通せる訳では無い。このスキルの欠点は二つある。


一つは膨大過ぎる情報を処理しなければならない為に、それらが俺の意識とは独立している事。常時繋がっていると、脳が焼き切れる可能性が有るのだ。つまり、意識しなければ、得た情報を確認する事が出来ない。


二つ目は、予知は基本的に自動で発動しない事。俺の未来、特に無意識的に不利益と判断した事に対しては自動で発動するのだが、他人の未来に関しては意識しないと予知が出来ない。


この二つの欠点のお陰で、俺は自分の危機には敏感だが、他人の危機などには疎くなっている。特に不測の事態、今回のような場合だと、未然に防ぐ事が出来ない。破格な能力ではあるのだが、万能では無いと言う事である。


「悪いけど、俺には不意打ちなんて聞かねえよ」


まあ、それでも不意打ちを防いだりするには、うってつけの能力ではあるが。


「ならば、真正面から潰すまでだっ!」


両腕の鎌を振りかぶり、インセラートが斬りかかってくる。掠るだけでも危険な猛毒の鎌だが、当たらなければ問題無い。


即座に予知される未来には、攻撃の軌道が見えていた。


袈裟斬り、逆袈裟、右薙ぎ、逆風、唐竹。


両腕から繰り出される高速の連続斬りだが、俺を捉える事は無い。


「くっ!」


インセラートは当たらない事に歯噛みする。更に速度は加速し、攻撃はより複雑となる。


袈裟斬り、左薙、唐竹割り、蹴り、百足、逆風、唐竹、刺突、左右からの同時薙、百足、体当り、逆袈裟、毒針、刺突。流れるような連続攻撃。ラッシュ。ラッシュ。ラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュ。


だが、その一つとて当たらない。


「クソッ、何故当たらない!?」


「見えるからな」


攻撃の軌道が予知出来るならば、その上に居なければ良いだけだ。そうすれば、大体の攻撃は当たらない。


「っちぃ!」


一旦仕切り直す為か、インセラートが距離を取る。そして、大きく口を開ける。


「範囲攻撃か」


未来予知を使うまでも無く、インセラートの意図は明白だ。攻撃が全て避けられるのなら、回避不可能な範囲攻撃をすれば良い。


吐き出されたのは毒の煙。予知からの情報によると、毒の煙は強酸の類いだ。鋼鉄すらも溶かす紫煙が、俺の事を飲み込まんと迫ってくる。


「嘗めるな羽虫」


成る程、確かに範囲攻撃は正解だ。だが、そんな物が通用するなんて思わないで欲しい。


手元にアルテミスを呼び寄せ、矢を番えずに弦を引く。すると、何もない空間から忽然と矢が現れた。


アルテミスの能力の一つ『無限の鏃』。周囲の空間に存在する物質を集め、矢を精製する能力だ。弾切れの心配は無くなるので、かなり重宝している。


また、造られた矢は、元となった物質の特性が宿っているので、かなりユニークな物となる。例を挙げるなら、気体から造った矢は透明なので視認するのが難しい。魔力で造られた矢は、魔法との親和性が高く、威力をブーストさせるなど。今回は、周囲の魔力から矢を精製した。


「アル。矢の強化を頼む」


『畏まりました。マイマスター』


何処からか涼やか少女の声が聞こえてくる。これはアルテミスの声だ。魔弓アルテミスはインテリジェンスアイテムと呼ばれる道具であり、自らの意思を持っている。それ故に会話が可能であり、頼めば能力の細かい制御などをやってくれるのである。因みに、アルテミスだと紛らわしいので、意思の方を俺はアルと呼んでいる。


『強化完了です。目的は気体の無効化のようですので、高速回転によって拡散するように調整しました』


「ナイスだ」


正確なアドリブを盛り込んでくれる辺り、本当に助かる。まだ俺はアルテミスを完全に使いこなせていない為、こう言った細かい操作は苦手としている。その点、アルに任せておけば最高の精度で応えてくれる。自らの能力を操る為に、最高の結果を出すのはお手の物なのだ。


これで射撃の準備が完了する。矢の精製、強化、目的の為の最適化。此処までに掛かった時間は一秒も無い。アルテミスがどれ程の武器なのか、これだけでも分かろう物だろう。


「混合魔弓【水爆の鏃】」


魔法の矢が毒煙目掛け放たれる。矢に宿るのは、炎と水の魔法を合わせた複合魔法。局所的な水蒸気爆発を引き起こす魔法だ。


【水爆の鏃】が毒煙を貫き、爆発する。高速回転によって、衝撃波が螺旋を描いた。衝撃の竜巻は毒煙を吹き飛ばし、その先に居るインセラートへと迫る。


「ック、ガァァッ!?」


龍翼を使い咄嗟に空へと逃げたインセラートだが、避けきれずに足先を貫かれていた。如何に堅い甲殻を持っていても、アルテミスの一撃は防げなかったらしい。今の一撃は加護を使った物では無いが、それでも威力は絶大だった。


そこへ追い討ちとばかりに、螺旋の衝撃波がインセラートを巻き込み、より高くへと打ち上げた。


「グゥッ…オォォォッッ!!」


痛みに呻きながらも、インセラートは上空から無数の百足を降らせてきた。


「今度は物量か……嘗めるなと言った筈だ」


未来予知を使い、全て百足の軌道を見切る。


「アル、殲滅するぞ」


『畏まりました。拡散射撃へと切り替えます』


アルの手によって、アルテミスは単体を狙撃する狙撃型から、集団を一斉に攻撃する殲滅型へと切り替えられる。


「【雷煌の鏃】」


パチパチと放電する矢が、アルテミスから放たれる。途端、一本だった矢が百足と同じ数だけ分離した。


「軌道が分かれば、全部撃ち落とす事なんて訳無えんだよ」


電速で飛翔する矢は全ての百足に着弾し、突き刺さる。そして、矢に込められていた雷が解放された。


一瞬だけ、夜の闇が雷光の煌めきによって掻き消される。


全ての百足は、強力な電流によって炭化する。


「ギィ、ッァァァァァァ!?」


更に、電流は百足を伝ってインセラートすらも焼く。


「あ、これも返すな」


ボロボロになりながらも、何とか浮遊しているインセラートに狙いを定め、更にもう一発の矢を番える。


新たにアルテミスが精製した矢は透明で、薄っすらと紫色が浮かんで見える。透明なのは、気体を材料とした矢の特徴だ。薄っすらと浮かぶ紫色は、強酸性の毒である。


もう分かったと思うが、この矢の材料は先程の毒煙だ。【無限の鏃】によって、周囲に吹き飛んだ毒の成分を集めたのだ。


毒の矢は、インセラートの土手っ腹へと突き刺さる。


「グッ……ガァァァァァ!?!!?」


苦悶の叫びを上げながら、インセラートは身体中を掻き毟る。どうやら毒は即効性のようで、一瞬で全身に回ったらしい。甲殻の隙間からシュウシュウと白い煙が上がり、龍翼は所々に穴が開く。甲殻の方も酷い。黒光りしていた甲殻は既に陰も無く、ボロボロと崩れていっている。


流石は魔王産の毒。これ程までに強力とは思わなかった。毒煙全てが矢の形に凝縮されている分、濃度がかなり上昇しているのもあるだろうが、それでも恐ろしい効果だ。


「念の為集めておいて良かったな。これが王城を漂ってるとか想像したく無えわ」


毒を散らしたままにしといちゃ不味いかなと思っての事だったが、どうやら正解だったようだ。このまま放置していた場合、明日にでも誰か不調をきたしていた筈だ。


「それじゃあ、終わらせるか」


もう既にインセラートは満身創痍だ。そろそろトドメを刺す頃合いだろう。


「グッ……この、私、が……人間、風情に…負ける、など………!」


インセラートが何か叫ぶが、その声に力は無い。全身はボロボロになっており、今にも墜落しそうである。


既に勝ち目など残っていない事は、誰の目から見ても明らかだった。


「残念ながらお前の負けだ」


アルテミスの弦を引くと、煌々と真紅に輝く矢が現れる。鏃はインセラートの眉間を捉え、解き放たれるのを待っている。


「死ね。【日輪の鏃】」


膨大な熱量を伴う矢が、インセラートへと迫る。


「クソガァァァァァ!!!」


真紅の閃光が、インセラートの頭を吹き飛ばす。


「……ミッションコンプリート、なんてな」


冗談を一つ呟きながら、インセラートだった物を眺める。


「……ま、楽に死ねると思わない事だな」


完全に沈黙しているのを確認した後、アリア達の方へと向かって行った。



混蟲王インセラート、討伐。

雄一さんが初のメインの話。マトモな戦闘描写もコレが初。


因みに、雄一も地球のリアルチートの一人。雲雀の知り合い関係からは名探偵とも呼ばれてます。


現在はアルテミスを携えて、他の物語の主人公並のチートに成長。


必中、弾数無限、未来予知による回避能力、達人級の近接格闘能力。


何気に死角の無い万能系キャラ。



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