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不治の病

投稿を控える良いながらも投稿しちゃう馬鹿。勉強しないといけないのに、何でか目の前に画面があるの。現実逃避のレベルがMAX。


誤字脱字の可能性大です。

日本人は謙遜を美徳としてるだろう? それは裏を返せば、前に出る事をあまり良しとしない事だと思うんだ。勿論、目立ちたがり屋とか色々と例外はいる。でも少なくともそう言う意味では、俺は典型的な日本人だ。


つまり


「ヒバリ様は魔法がお得意だとか。もし良ければ、今度教えて下さいませんこと?」


「あら、それは良いですね。私も是非参加してみたいですわ」


今のシチュエーションは俺には場違い過ぎるって訳で。


(ああ……マジ帰りたい……)


内心でぼやく。半強制的に参加させられた勇者のパーティーは、俺に色々な精神的ダメージを与えていた。


一言で言おう。鬱だ。憂鬱だ。会場を飾る派手な装飾。参加者の纏う香水の香り。下心を持って群がってくる令嬢達。もうあらゆる物が鬱陶しい。


「あら、どうかしましたか? 何やら顔色が優れない様ですが」


そんな内心が表情に出てたのか、一人の貴族令嬢に指摘された。流石にマズイと思ったので、軽く苦笑いを浮かべて誤魔化す事にした。


「すみません。少し緊張が。元が田舎者なので、こういう場は慣れていないんです」


緊張で硬くなっている。そう言うと、周囲の令嬢達はああと納得の声を上げた。設定上では田舎者となっているので、不自然に思わなかったのだろう。実際には嫌になるぐらい出席した事があるが。


「あらあら、田舎者なんて自分を卑下する事はありませんわ。ヒバリ様の魔法は拝見しましたが、あの腕ならば宮廷魔導師にだってなれますもの」


「そうそう。あれ程の実力があるのですから、もっと胸を張って下さいな。貴方はこの場に相応しいお方なのですから」


周りを取り囲む三人の令嬢達がそう励ましてくる。おべっかなのだろうが、まるで普段の姿を知ってるかの様なその口ぶりには少しだけ違和感を感じた。


「……あの、失礼ですが何処かでお会いしましたか?」


「いいえ。今日が初対面ですわよ」


「ただ、私達は全員学園に通っているので」


「ヒバリ様のご噂は良く耳にしますの」


「ああ、それで」


確かに噂になる様な事はかなりやったので、学園の生徒なら納得出来る。


納得出来るが、今度は別の疑問が湧いてきた。


「噂を知ってるのなら、良く私に話し掛け様と思いましたね」


この三人はまだパーティーが始まったばかりなのに、かなり早い段階で俺の下へとやってきた。それがとても不思議なのだ。


「私より、あの二人の方が良い印象でしょうに」


そう言って、幼馴染みの二人を見る。雄一も翔吾も、漏れなく女性に取り囲まれていた。雄一の方は令嬢全員が熱い視線を向けていて、翔吾の方は何故か女子会的なノリになっていたが。


逆に、俺の周りにはこの三人しか人がいない。それもそうだ。俺は雄一や翔吾程に整った顔立ちはしていないし、悪い方向で噂も広まっている。田舎者という設定もあるので、貴族がこんな早い段階で近づいてくるとは思えない。


「ああ、そう言うことですの」


もしいるとすれば、それは公爵家という利益を本気で欲している者か、


「「「私達は貴方に興味があるのですわ」」」


余程の変人かの何方かである。


「……はい?」


聞き間違いだろうか? 何かやけに息のあった宣言をされた気がするのだが……。


「何故そんな不思議そうな顔をするのですか?」


むしろ何でそっちが不思議そうなの?


「いや……その、……何で?」


思わず素が出てしまったのは不可効力だ。


「今までのヒバリ様の行動を考えれば、興味を持つのは当然ではないですか」


うん。全然当然じゃないと思うよ。取り敢えず、興味を持たれる要素が無い。


「それにしても驚きました。ヒバリ様、こんな丁寧に話せるんですね。もっと破天荒なのかとばかり」


「それはそうですよ。自分は公爵家の養子となったのですから、時と場所は弁えます」


「なるほど。これは観察日記に書いておきましょう」


「そうですね。こんな一面もあるとは」


「新発見です!」


「俺なんか観察されてない!?」


興味ってそっちかい! 恋愛とかそっち方面じゃなくて、珍獣みたいな扱いかよ!? てか観察日記って何だオイ。


「「「今まで散々奇行を起こしといて、それ以外になんの興味が生まれるのですか?」」」


三人揃って不思議そうに首を傾げないで欲しい。


「……取り敢えずアレですね。貴女達とは学園でじっくりお話しましょう。この場じゃゆっくり話せないので……!」


この不思議な三令嬢と話してると、どうしても素が出てしまう。そして無性にイラっとくる。


「まあ、それは楽しみですわ。飾らないヒバリ様ともお話したかったですし」


「私達は予科三年の五組に所属してますので、好きな時に訪ねて下さいな。サーシャかリコル、私の誰か一人は大抵クラスに居ますので」


「あ、勿論魔法を教えて下さるのも大歓迎ですわ」


そして三人ともとても良い笑顔で、


「「「それでは、次会う時を楽しみにしてますわ」」」


そう言って去っていった。


「……何だろう…凄く納得いかない……」


そんな三人を眺めていると、なんとも言えない気分になった。


今の三人、サーシャ、リコル、そしてレイム。三人ともタイプは違うが、美少女と言っても過言では無い程度には魅力的な少女達だ。そんな少女達に、恐らく打算無しで再開を望まれた。普通の男なら狂喜乱舞しても変じゃない。……変じゃない筈なのだが、あの珍獣大好きです! みたいな瞳を見ると、素直に喜べない。


「あれ、どしたの雲雀?」


「何とも言えない表情を浮かべてますが、何かあったのですか?」


やって来たのは翔吾とライトだった。


「……なあ翔吾、ライト。俺って珍獣か?」


「いや変人」


「え、どうしました?」


即答する翔吾と、困惑するライト。


俺は親友の冷たさの方がどうしたって思いたいよ。


「で、何でそんな質問を?」


「いや、少し変な娘達に会った」


「変な娘って……さっき雲雀のとこに居た三人? 結構可愛い娘達じゃかった?」


目をパチクリさせて聞いてくる翔吾。うん、確かに可愛いかった。性格も良さそうだった。


「でも何か珍獣みたいな扱い受けた」


これでどう喜べよう。


「珍獣ってまた……言い得て妙だね」


おい納得するな。


「先程の……ああ、あの三人ですか。確か情報関係の研究会に所属してましたから、その関係では?」


少しだけ考える素振りを見せた後、三人の素性を見抜いたライト。


「……良く覚えてるな」


「この手の場に出席する方々は大体覚えてますから」


しれっと言うこのイケメン何なんなの?


「まあ、それでも彼女達の事は良く耳にしますよ。色々と」


それ絶対変わり者って呼ばれてるよね?


「……まあいいや。愉快そうな娘達だったし」


あそこまで屈託の無い瞳をしているんだ。悪い人間では無い筈。純粋な人って偶にやらかすけど。


「で、そう言う二人はどうしたんだ? さっきまで囲まれてなかったか?」


そっちはどうだと聞いてみれば、ライトは肩を竦めた。


「私は慣れてますから」


その様子から程々に終わらせたのが分かる。


「僕は七人ぐらいと友達になった。今度お茶会に誘われた」


翔吾は翔吾で、ニコニコと柔らかな笑顔を浮かべている。これ絶対に女友達にカテゴライズされてるよな。


「てか、まだ始まって十五分も経って無いぞ」


「ショウゴのコミュニケーション能力の高さには驚きましたよ」


こんな早い段階で七人って凄過ぎだと思う。


「それで雄一は……あらら」


未だやって来ない親友に目を向ければ、そこには予想通りの光景が。


「まあ、雄一だしね」


「ふむ。やはりユウイチは人気ですね」


雄一の状況にはライトと翔吾も苦笑するしかない様だ。


先程からちらちら見ていたが、雄一の周りには常に六人ぐらいの人間が集まっている。勿論、ずっと同じメンバーという訳で無く、入れ替わりで他の人間に変わっている。お陰でその場から動けてない。


「まあ、アイツって知的メガネだし。この手のイベントだと人当たりも良くなるしな」


「クールだけど冷たく無い絶妙な感じだし、そりゃ人気も出るよ」


雄一へ集ってるのは壮年の男性も多いが、やはり女性が多い。それも幼女からマダムと呼ばれる様なご婦人まで。幅広いニーズお応えしている雄一君。


「あ、雄一が一瞬こっち睨んだよ」


「アイツ本当に勘良いよね」


後が怖いのでこの話題は止めておこう。


「それにしても、三人共とても落ち着いてますね。離れて見ていた限り、受け答えも完璧ですし」


「そりゃまあ、俺は初めてじゃないし」


「僕も雄一も、似たような場所に出た事あるしね」


何気に翔吾と雄一もパーティーは経験あるからな。参加者が裏社会の重鎮という錚々たる面々だったけど。勿論俺が原因。


「父から困っていたら助けてやれと言われてましたが、これなら心配なさそうですね」


「一番の不安要素だった雲雀も普通だし」


「そうですね。まだ短い付き合いですが、普段とは似ても似つかないと感じました」


確かに奇行に走ったりと色々してるが、一番の不安要素って箇所は否定して欲しかったよライト君。


「ん?」


「あ」


「お出ましみたいですね」


会場に流れていた音楽が止み、参加者全員が会話を止めた。全員が主催者席へと視線を向け、やがて彼らは王と共に現れた。


白銀の礼服に身に纏う青年。情熱的な真紅のドレスを着る少女。静謐さを湛える蒼のドレスを着る少女。慈愛と気高さ溢れる純白のドレスを着る少女。


会場から息を呑む気配がする。多くの人間と接してきた貴族すら黙らせる。そんな圧倒的な雰囲気を、四人の勇者は持っていた。


「ヒュー」


関心のあまり、小さく口笛を吹いてしまった。別人だ。つい先日まで戦いすら知らなかった子供とは、全くもって別人だ。


「皆の者、今宵は良く集まってくれた」


ルーデウス王が何か言っているが、それすら耳には入ってこない。俺は只々、成長した四人を眺めていた。


「ーーそれでは、我らの勇者の旅立ちを、存分に祝おうではないか!」


ルーデウス王の宣言によって、再び演奏が始まった。


「と、最初のワルツが始まりますね」


演奏と共に、何人かの男女が舞台の中央へと向かって行った。そしてライトの言葉通り、彼らは優雅なダンスを踊り始める。


「二人は踊らないのですか?」


「そういうライトは?」


「私は婚約者がいますので」


「なるほど」


「それでは」


そう言ってライトは何処かに行ってしまった。恐らくその婚約者の所だろう。質問の答えを聞かなかったので、単に踊れと釘を刺しただけなのだろう。


「さて、それじゃあ僕も行こうかな」


「ん? 翔吾も相手いるのか?」


「うん。ライトのお姉さんのシャナさん」


「義理の姉と踊るのってアリなの?」


ライトの姉と言う事は、ルイス侯爵家の養子となった翔吾の姉にも当たる訳で。交流の意味合いを持つダンスに、自分の身内と踊るのは如何なのだろうか?


「問題無いって言ってよ。一番最初は親しい相手と踊るみたいだし」


「ふーん」


「雄一もほら。相手はガイルさんの娘さんだよ」


言われた通り雄一の方を向けば、十二歳ぐらいの美少女、いや美幼女をエスコートしていた。


「……おおう。踊り辛そうだな」


以前に声だけは聞いていたが、ガイル侯爵の娘さんはやはり幼いらしい。身長が140ギリぐらいなので、身長180の雄一が相手だとヤバいと思う。周囲の視線も、ハラハラと生暖かいのが混ざった視線になってるし。


俺が微妙な感想を零していると、翔吾がジッと此方を見ていた。


「……何か?」


「いや、雲雀の相手は誰?」


「……いないけど」


これアレだ。


「じゃあ誘ってきなよ。ほら」


翔吾の視線の先にはクラリスが。


「……いやー、いきなりは不味いっしょ流石に」


「その割には、クラリスちゃん誰とも踊って無いよ?」


「……」


そうなのである。クラリスの周囲にはやはり人がいるのだが、誰かと踊るって感じでは無いのだ。いや、多分誘われてはいるんだろうけど、さりげなく断ってるんだろう。


「クラリスちゃん、偶にチラってこっち見てるけど。雲雀と踊りたいんじゃない?」


「いやー、やっぱり身内は不味い気が……」


「僕と雄一も身内と踊るんだから、不味いとか関係無いから」


「いやー、クラリス気不味そうだぞ?」


「往生際悪いよ。ほら、こう言うのは男が誘うのがマナーなんだから。さっさと行く!」


時代は男女平等だと思うと主張するが、軽く翔吾に叩かれた。しょうがない、腹括るか。


まあぶっちゃけ目立ちたくないって理由だけで、クラリスと踊るのは吝かでは無かったりする。寧ろ、仲直りする良い機会か。


クラリスの下へと向かう途中、チラ見していたクラリスとバッチリ目が合った。慌てて顔を背けた義理の妹に、その態度は無いんじゃないかと苦笑を漏らす。しかもほんの少しだけウズウズしているので、何とも分かり易い事だと思う。


「失礼」


クラリスの周囲の人との間に割って入り、彼女と正面で向かい合う。


「……」


今まで散々避けてきた気不味さと、僅かに期待の篭った瞳。内心で盛大に溜息を吐いた後、それをおくびに出さずに片膝を着く。


「私と踊ってくれませんか?」


「……ぁ」


こんなキザったらしいのはガラじゃないんだけどなぁ。


「………はいっ!」


それでもこの娘の笑顔の為なら、まあ良いかと思うんだよね。


(あ〜あ、シスコン発病したわコレ)

シスコン、ブラコン、ロリコン、ショタコン。これが代表的な不治の病だと思います。

厨二病は賛否が分かるれる所です。


タイトルは何となく。最初は普通に『パーティー』でした。

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