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パーティー準備

少し長め。


えー、作者が受験の為、一度投稿の頻度が落ちます。九月ぐらいになると戻るので、悪しからず。


みづどり


誤字脱字の可能性大です。

ダダダダッ! バァッン!


「オイコラジジイ! パーティーがあるとか聞いてねーぞゴラァ!!」


学園が終了して公爵家へと帰宅し、俺が真っ先に行ったのは爺さんの執務室の扉を蹴破る事だった。……勿論、壊れた扉は即座に新品同然へと復元した。


「……儂からも色々と言いたい事はあるが……まずは一つ」


身体を震わせ、顔に青筋を浮かべた爺さんがゆっくりと立ち上がる。その身体から溢れるは怒気。一流の武人すら怯えるであろう怒気を身に纏い、石化の邪眼もかくやという視線を向けてきた。


「この馬鹿タレが貴様クラリスに何吹き込んだオラアァァッ!!!」


「上等だコイやクソジジイィィィッ!!!」


ここに第一次クラリス祖父VS義兄大戦が勃発した。




「馬鹿ですか? 馬鹿ですよね?」


「「申し訳ありません」」


荒れ果てた執務室で土下座をする俺と爺さん。第一次クラリス祖父VS義兄大戦は、騒ぎを聞きつけた第三勢力シータさんの介入によって終結した。


「全く……。お義父さんもヒバリ君も、一体何が原因だったの?」


「いやー、朝にクラリスと会っての。そこでヒバリに撫でられたとか、可愛いと言われたと恥ずかしそうに言っておったんじゃよ! つまりこの馬鹿がクラリスを誑かしたっーー」


スパーンッ! と熱くなった爺さんを張り倒したシータさん。怖い。


「で、次はヒバリ君ね。何で?」


ニッコリと眩しい笑顔で聞かれてしまった。この顔をされて嘘をつけるだろうか。いや、つける筈が無い。何故なら嘘=恐怖という等式が見えるからだ!


「……ノリです」


ゴンッ! と正直に言ったら、部屋に散乱してる木片で殴られました。


「……自分だけ武器って酷くないですか?」


「だって君どんなに強く攻撃しても効かないでしょ。お義父さんの二の舞なんて御免だし」


清々しいまでに断言したシータさん。……多分、時々見せるクラリスの良い性格はシータさん譲りなんだろう。


俺がそんな事を考えているのを察してか、シータさんがジト目で睨んできた。


「反省してる?」


「深く」


「はぁ……で、この部屋どうするのよ。これじゃあ当分使えないわよ」


もう色々と諦めた、みたいな溜め息を吐いた後、シータさんは執務室の件へと話題を変えた。


「もう直ぐ決算の時期なのに。お義父さん、毎年毎年軍務の書類でてんやわんやになってるじゃない」


「ぐっ……いや、確かにそうじゃが」


シータさんの意見に言葉を詰まらせる爺さん。この家の力関係が見えた気がする。……ん? 軍務?


「軍務と爺さん関係あるんすか?」


軍務ってアレだろ? 兵士や軍隊を管理する部門だろ?


「関係あるというより、お義父さんが軍務のトップなの」


「……は?」


「儂、これでも将軍」


「………この孫馬鹿が軍部のトップか……この国の未来は暗いな……」


開戦から二日で終戦しそう。


俺の素直な感想に、爺さんは青筋を浮かべていた。


「……お主、そこまで儂を馬鹿にするか……!」


「だって、今までのイメージがねぇ。俺と戦争したら一日も保つかって感じだし……」


「誰がお主相手に戦争するかっ! というか戦争は個人とやるもんじゃないわっ! そもそもお主の場合作戦とか関係無いじゃろうが!」


まあ、クラックではゲーム版をひっくり返す事に定評のある魔導師ですし。そもそも喧嘩売る奴なんていなかったしね。


「まあまあ、お義父さん。ヒバリ君もあんまり揶揄わないの。これでもこの人凄いのよ?」


「シータ、この人呼ばわりもどうかと思うのじゃが……」


かなり小さい声で反論する爺さん。とっても情けないのだが、どうやら本当に凄い人物らしい。


今でこそ平和な国であるルーデウス王国だが、かつては結構酷い国だったらしい。それを憂いたのが先代国王(当時は王子)で、若き頃の爺さんやその他を率いて革命を起こしたとか。王国軍と革命軍の戦力差は四・五倍はあったそうだが、当時の革命軍には爺さんや先代国王を始めとした、軍略の天才鬼才、一騎当千の実力者が多数在籍していたとの事。そんな英傑達の力によって内紛は僅か一年で終結。更に漁夫の利を狙ってきた周辺諸国を相手に大立ち回りを行い、四十年前には大国としての地位を不動の物としたそうだ。


「……という夢を見たのか爺さんは」


俺のコメントにコケる二人。


「違うわっ! 全て起こった事実じゃアホタレが! 教科書にも載っておるわい!」


「爺さん、気持ちは分かる。確かに男はそういう夢を見る。英雄英傑は男の浪漫だ。だがな、それを大声で叫んで許されるのは、精々が十二歳ぐらいなんだ」


それ以降は中二病と診断されてしまうんだ。別に中二病が悪い訳じゃない。俺も別に嫌いじゃないぞ。けど、世間はそれを理解しようとしないんだ。


「生暖かい目で見るな! 事実じゃと言うとろうが!」


「……え、マジ?」


何度も事実だと言い張る爺さん。シータさんの顔を見ると、コクリと頷かれた。どうやらマジらしい。


「そうなのよ。元々名門だったアール家だけど、お義父さんの活躍によって公爵の位を授かったの。それまでは伯爵だったから、途轍も無い大出世よね」


「え? マジすかそれ? それって他から反感凄そうですけど」


貴族はプライドの塊だ。平民が成り上がるのも嫌うが、他家が出世するのも嫌う。自分達は潤うのは是とし、それ以外が潤うのは否とする。それが貴族だ。爵位の二段飛びなど絶対に良しとしない。それも最高位の公爵になるなら尚更。


しかし、答えは予想と違っていた。


「それがねえ、特に反感も無かったそうよ」


「は? え、何故?」


何も無かった? そんな筈は無いだろう。疑問符を浮かべて爺さんを見れば、昔を懐かしむ様な遠い瞳をしていた。


「あの革命の後、悪徳貴族と呼ばれる連中の殆どが粛清されたんじゃ。残ったのは国を憂いて立ち上がった同士達と、日和見していた一部の貴族。儂も面倒だから嫌だと言ったんじゃが、同士達に逆に反論されてのう。渋々公爵になった訳じゃよ。……日和見どもにもっと主張して欲しかったんじゃがなぁ」


どうやら反感が無かった訳では無いらしい。ただ主張したのが日和見していた貴族だった様で、殆どの意見が黙殺された模様。そして革命軍の貴族は、竹を割った様な性格の貴族が多かった様だ。爺さんを担ぎ上げるなど、本当にざっくりした人しかいなかったんだろうな。それかただの嫌がらせか。


「アンタ、本当に貴族向いて無いのな」


「んなもん儂自身が一番分かっとるわい。儂だって、長子じゃなければ冒険者にでもなっとったわ」


「そう言いながらも結局は全部やってますけよね、お義父さんって」


そう。何だかんだでこの爺さん、公爵として長い間この国に君臨しているのである。しかも将軍という肩書き付きで。粗野で馬鹿で色々と喧しい爺いだが、為政者としては優秀なのだ。


「うーん、にしてもこの部屋どうするかのう。流石にこの部屋が直るまで仕事せん訳にもいかんし。……この際、空き部屋で良いかの?」


「駄目です。機密書類だってあるんだから、一時的に間借り出来る場所でする訳にもいかないでしょう」


……優秀なのだろう。明らかに面倒がってる爺さんを見ていると、かなり不安になってくるが。というか、シータさんが秘書みたいだ。


「じゃあどうする? 流石に期日までには提出せんと、馬鹿どもがまた五月蝿いぞ」


「けど、漏洩した場合の事も考えると……。それに、間借りした部屋で書類を片付けたなんて情報が洩れれば、どっちにしろ五月蝿いです」


「……おーい………」


あれやこれや言い合う二人を見ていると、こっちの本題に話を持っていき難い。なので、さっさと問題を取り除く事にする。


「【物質回帰】」


一瞬にして膨大な魔力が部屋に満ちる。


「ぬ?」


「あら?」


満ちた魔力は周囲の物質へと染み渡る。


「「……」」


散乱する木片や書類が、時間が巻き戻るかの様に元の状態へと戻る。


「以上」


三秒と経たずに、壊滅した執務室は完全に修復された。


「……うむ。悩む事もなかったの。我が家には世界の神秘が存在したのを忘れておった」


「誰が不思議生物だジジイ」


未確認生命体みたいな扱い止めい。


「にしても相変わらず凄いのう。お主、今度はどんな魔法を使ったのじゃ?」


「ただの修復魔法だよ。そんな驚く類の魔法じゃないさ」


少し時間軸に干渉している事を除けば、本当に大した事の無い魔法だ。


「……ヒバリよ、この魔法だけで一生食っていける事に気付いておるか?」


「そら勿論。てか、俺が食い扶持に困ると思うか?」


俺を崇める宗教まであるんだぞ?


「まあ良いや。それで、もう問題無いよな?」


堂々巡りになるであろう話題はさておき。さっさと俺の本題を済ませたい。


「……うむ。問題は無いの。強いて言うなら、お主が他の魔法を仕込んでいる可能性があるぐらいかの?」


失礼だなこのジジイ。


「断言するが、俺は一切魔法なんて仕掛けて無えぞ」


「冗談じゃよ。お主がそんな事するなど思っとらん」


「何時でも何処でも魔法を掛ける事が出来るんだから、わざわざ仕掛ける意味が無い」


「おいそれ聞くと違う意味で不安になるんじゃが!?」


何を今更。


「んで、俺の本題に入らせて貰うが、パーティーって何だよコラ」


「……ああ、そう言えば最初もそんな事言っておったの」


いや、うん。最初にネタに走った俺が悪いか。


「で、何で俺がパーティーなんかに? しかも雄一とか既に教えられてたんだけど。遅くね?」


「そりゃお主が今朝いなかったからじゃろうが。朝食の時に言うつもりじゃったんじゃよ」


えーと? 確か今朝はクラリスにあれこれ言った後、転移魔法で朝飯食わずにトンズラしたんだったか。


「……つまり?」


「いなかったからしょうがない」


全面的に俺が悪いと。


「……了解。それじゃあ、そこに関しては何も言わん。それで俺達なんかがパーティーなんて大丈夫なのか? あんまり表に出て良い類の人種じゃねーぞ俺達」


前にも言ったが、俺達の存在はこの国では爆弾と同じである。相当にややこしい立場の俺達が、王主催のパーティーなんて言う公の場に出るのは如何なものなのか。


「そこはまあ問題無い。出席する立場としては、お主達の後見人の親族扱いじゃ。既に養子の手続きも行っておる故に、他の貴族から何か言われる事も無い」


ん? 今なんか聞き捨てならない事が聞こえたぞ?


「……おい、養子ってどういう事だコラ」


「そのまんまの意味じゃよ。先週の時点で、お主はアール家の一員となった。名乗る時はヒバリ・サクラギ・アールと名乗れよ」


「んな事了承した記憶が無えつってんだよ!」


勝手に人の家を変えるな!


割と本気でカチンときているのだが、爺さんは仕方なさそうに頭を振った。


「そう怒るな。クラリスから多少は聞いてるだろうが、これもお主を取り込もうとする輩を防ぐ為じゃ。ついでに言うと、他の二人は既に了承しておるぞ」


「……マジかい。アイツ等、んな事一言も言ってなかったぞ」


大方、自分も言われてるのだから、俺も同じ様に伝わってるとでも考えたのだろう。


「そもそもじゃ。こうなったのはお主の責任じゃぞ」


お前が原因だと爺さんに言われるが、俺には全く心当たりが無い。首を傾げていると、爺さんが大きく溜息を吐く。


「お主が無闇矢鱈に上級魔法やらをぶっ放すから、他所の貴族から勧誘が凄まじい事になったんじゃよ。それを躱す為に仕方なくじゃ。事後承諾になったのは悪いが、身から出た錆じゃな」


「ぐっ……」


そう言われると大人しく引き下がるしかない。今後これをネタに雄一と翔吾が何かゆすってきそうで、とても不安だ。


「まあ、こんな感じで身分の方は問題無い。それにお主達の実力は兎も角、異世界人であるという事実は知っている者は知っておるしの」


それはそうだろうな。王城で普通に生活してたし。お世話して貰ったメイドさんやら、訓練に付き合ってた騎士の人とか、割と結構な人と関わってる。


同じ異世界人という事実を知っている人間からすれば、俺達が王主催のパーティーに出席しても怪しいとは思わないか。


「……OK。問題無いと言う事も理解した。だけど俺個人としては出席したくない。拒否は有りか?」


「無しじゃな。お主の様子なら知っているかもしれんが、お主達の出席を希望したのは勇者達じゃ。流石にそれは断れんよ」


遠回しにだが、同郷の人間の旅立ちを祝うパーティーぐらいは出席しろ、と言われた気分だ。


「パーティー嫌いなんだよなぁ……」


「どんなに嫌いだろうと、やらなきゃならない時もある。それが社会じゃ」


「そんな社会、この右手でぶち壊す!」


「壊すなっ!!!」


膨大な量の魔力を右手に集めていたら、冷や汗を流した爺さんに本気で止められた。何その反応。


「……冗談だぞ」


「そんな量の魔力滾らされては冗談に聞こえんわ!」


「んなに量多く無いぞ。魔王一体を殺すのが精々だ」


「魔王を殺せる量の魔力で何する気じゃったんじゃ貴様!?」


特に何も。


「にしてもパーティーか……あー面倒くさ」


「……いや待て。さっき聞き捨てならぬ事言ってなかったか? 魔王がどうたらとか」


「……気の所為」


首を捻る爺さんに冷や汗を流しながら、これ以上突っ込まれ無い様に話題を変える。


「パーティーって言っても何するんだか。適当に食って、壁の花になるのは有りか?」


いや、どうせ相手とかいないんだけどさ。それでもこれだけ確認しておきたいと言うか、ガチな方で踊りたく無いと言うか。


「それもダメじゃ。せめて一曲ぐらいは踊れ」


「いや、どうせ相手とかいないし……」


「既にお主は公爵家の人間だと言うとろうが。それに魔法の腕も多少なりとも知れ渡っとるから、縁を結びたい貴族がわんさかくる筈じゃ。壁の花なんぞなっとる暇は無い」


養子とは言え公爵家で、魔法の腕も一流。そして一部の人間には異世界人という事もバレている。他の貴族からすれば、俺は金の卵を産む鶏に見えるのだとか。


もう魔法使って存在感ゼロにしようかな……。


「というかお主、ダンスなんぞ踊れるのか? 踊れないなら強制的に覚えさせるぞ」


「一通りは踊れる。けどダルい」


俺がダンスを踊れると聞いて、爺さんもシータさんも驚いていた。そんなに意外かね?


クラックでは身分が身分だったので、その手のイベントに招かれる事も多かったのだ。その際にダンスやマナーなどは一通り覚えたのだ。……ぶっちゃけマナーに関しては覚えなくても問題無かったけどね。魔導師に文句言おうなんて肝の据わった奴なんて殆どいなかったし。


「……むう、少し予想外だったが、手間が省けたな。ならば次は衣装じゃ」


「それも持ってる。スーツで問題無いよな?」


魔窟を開き、衣類の類が入っている空間へと繋げる。


「……礼服の類は……あ、ここだ」


「その魔法……本当にどうなってるんじゃ?」


俺が魔窟を漁っているのを見て、不思議に思ったのか爺さんがそう聞いてきた。


「んー? 魔窟は物の種類毎に幾つか異空間に分けてるんだ。それで必要になった部分に繋げる感じ」


アレだ。スマホの操作に近いな。画面をスライドさせる感じで空間を動かして、使うアプリを選択する感じで特定の空間に繋げる。


「……なんか良く分からんが、どれぐらい入るんじゃ?」


「さあ? 流石にそれは知らん。全部の空間足せば王都の数十倍ぐらいにはなるし。どれぐらい入るとか想像つかね」


日本列島の数倍は大きいと思う。


「デカ過ぎじゃろそれ!?」


「これがそうでも無いんだよ。物だけなら兎も角、魔窟の中には生きてる奴らもいるから。割とこれでも足りない」


こういうアイテムボックス的なのには生物は入らないのが通例だが、俺の【不思議な魔窟】は違うのだ。自分の魔法なのに何で制限を付けるの? って感じでOKにした。生きていても収納可能だし、異空間の中で繁殖する事も可能だ。


「……それって大丈夫なのか?」


「大丈夫だぞ? 俺の造った空間だから時間の流れも操れるし、ちゃんと土地も造ってるから生活も出来る。逆に時間停止してる空間もあるけど」


一度、家の近くで戦争してたから、地面に魔窟の入り口開けて、時間停止してる空間の中に兵士全員落とした事がある。


「……それ、もう世界って言って良くないか?」


「ぶっちゃけ異界だな。空間によってはゴブリンが国とか造ってるし、傷付いた龍を何匹か放り込んで勝手に繁殖してたりするし」


因みにそいつら、全員俺に忠誠誓ってたりする。


あ、爺さんが頭押さえてる。偏頭痛か?


「……もう何も聞かん……」


さいで。


「で、こんなスーツなんですけど、問題無いですか?」


頭が痛そうに爺さんは放って置き、シータさんに尋ねてみた。


「……う、うん。立派なスーツね。それなら大丈夫よ」


許可も出たので、パーティーにはこれを着て行こうと思う。


そしてスーツを魔窟に戻したところで、聞きなれた声が玄関から聞こえてきた。


「……ん? ああ、クラリスか。それにライデンさんも一緒か」


「……本当? 何で分かるの?」


「色々と身体を弄ってるんで、耳が良いんですよ」


「……また不穏な言葉が……」


気にしない気にしない。


「にしても珍しいですね。ライデンさんは何時もより帰ってくるの早いし、クラリスは少し遅い?」


普段ならばクラリスはもう帰ってきている時間だ。寄り道でもしていたのだろうか?


「……と、ライデンさんはこっちに来ますね」


クラリスと分かられたライデンさんが、爺さんの執務室へとやってくるのを音で察知した。


「親父、今帰った……って、何か勢揃いしてんな」


「おかえりなさいアナタ」


「おかえりなさいライデンさん」


「ただいまシータ、ヒバリ君」


簡単に帰宅の挨拶を済ませ、早い帰宅の理由をシータさんが聞いた。


「やけに早かったけど、今日はどうしたの?」


「ざっくりとだが書類は一通り終わらせたんだ。そしたら帰って良いから、代わりにこれを親父に渡してくれって」


どうやら程の良いパシリに使われたらしい。まあ、この場合はただのついでだろうが。


「……う、パレード時の兵の配置の詳細か。また面倒な……」


仕事が増えて唸る爺さん。そんなに嫌かデスクワーク。


そんな爺さんの哀れな姿を横目に、俺も疑問に思っていた事をライデンさんに聞いてみる。


「そう言えばクラリスと一緒に帰ってきてましたよね。あの娘が遅かった理由って分かります?」


「……何で知ってるんだい?」


「いや聞こえました」


暫く不思議そうな顔をしていたライデンさんだが、勝手に納得出来たのかニヤニヤし始めた。……何故ににやけ顏?


「今日の今朝、ヒバリ君がクラリスにアドバイスしたろ? それを真に受けて、仲直りのお守りを友人と買いに行ってたそうだ」


「……そら、なんとも……」


わざわざお守りを買いに行くって、俺の事をどんだけ気にかけてんだか……。なんか気恥ずかしいやら嬉しいやら。


「真っ白な球のアクセサリーで、それを握りしめて『早く仲直りしたいんです!』だってさ。ヒバリ君、本当にクラリスに懐かれてるねぇ」


クラリスの実の父親からこう言われては反応に困る。


頬をぽりぽりと掻いていると、ふとある事に気付く。話題を変えるのにも丁度良かったので、早速ライデンさんに提案してみた。


「ああ、ヒバリで良いですよ。なんか家族になったみたいですし。シータさんも」


事後承諾とは言えど、俺はライデンさん達の息子となった。流石にそれで君付けは変だろう。


「ああ、もう知っていたのか。分かった。改めてこれからよろしくなヒバリ」


「私達も父と母って呼んでね」


少し気恥ずかしいが、断る訳にもいくまい。


「こちらこそよろしくお願いします。義父さん、義母さん」


これで名実共に、俺はアール公爵家の家族となった訳だ。

一つだけ張りたかった伏線の所為で、凄く長くなった。けど後悔はしていない。


因みに爺さん、あんな人だけど王国最強の一角。もう一角はダーブル学園長。団長はその一つ下ぐらい。将軍はやっぱり強くないと。


もう一つ補足。ルーデウスでは騎士と兵士がいる。騎士は主に街や村の防衛。兵士は工作やら攻撃やらを担当。戦争はもっぱら兵士がメイン

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