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魔導師様御一行、研究会探索ツアー その3

やっぱりまだ短めです。


大体後二三話で終わるので、そしたら元の長さにしようと思います。


誤字脱字の可能性大です。

商品研究会を後にし、俺達は現在アルトを先頭に移動中。


「次は刀剣研究会。主に刀剣の作成と販売をしている研究会だよ」


ふむ。どうやら生産関係から回っていく方針は変わらない様だ。こういうさり気ない気遣いには本当に頭が下がります。


「ふと思ったんだが、アルトってあのフルールって人とやけに仲良かったな。彼女か?」


それは俺も気になってた。翔吾もこの手の話題は大好物なので、目を輝かせてアルトを見ている。


だが、アルトは俺達の反応に苦笑しながら首を振った。


「違うよ。フルールは家が近くて、昔から付き合いがあったんだよ。幼馴染みって奴」


ああ、道理で二人が姉弟みたいに見えた訳だ。異性の割に距離が近かったのは、家族同然に育ったからか。……俺にはあの人がそれ以上の感情を持っている様にも見えたが。


まあ、だからと言って何かする訳でもない。


馬鹿だ馬鹿だと称される事も多い俺だが、流石にその辺りは弁えている。秘めている感情、それも女性の心をダシに動き回るなんて無粋の極みだ。頼まれたなら兎も角、自分から首を突っ込みに行くのは違うだろう。……と言うか、その手の事に関しては凄い怖い奴がいるのだ。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるなんて言うが、俺の周りだと地獄を見る事になる。


この手の話は観客に徹する事が吉。これが俺の経験則である。


「ふーん。まあ、権力者?が知り合いってのは良い事じゃね?あの人なら特に」


セリフだけ聞けば下衆のソレだが、強ち間違ってはいない。


商品研究会はこの学園でも大きな研究会らしく、商業関係の研究会という事で学園の物流に多大な影響力がある。そんな組織の幹部クラスが幼馴染みなど、かなりの幸運ではなかろうか。俺なら色々とコネで融通して貰う。勿論対価は払うが。あくまでwin−winの関係だ。


「あはは。実際僕も驚いたよ。僕が入学した時には既にあの店の副店長になってたんだもん。昔から口が上手かったりしたけど、予科二年で準幹部クラスになってたなんて」


「おお。そんなに凄いのかあの人」


色々な人物がひしめき合うこの学園で、そんな早い段階から頭角を現すなんて相当だぞ。


「みたい。ずっと前から知ってる僕が、一番理解出来ないけど……」


ぽりぽりと頬を掻いて苦笑するアルト。身近な人間の意外な才能は、アルトには余程衝撃だったらしい。


「優秀な人間なんて総じて変人なんだって。これは歴史が証明してる」


今では偉人なんて呼ばれる人々だって、良く考えれば変人奇人の集団でしか無い。数学やら物理の偉人達は様々な定理や法則を発見したが、そもそも何でそれを求めようとしたと考えれば分かると思う。


「それは僕達からすればそうであって、専門家からすれば必要な事なんじゃ……」


「いや、そりゃ確かに大事な事もあるよ?フレミングの左手の法則とか、三平方の定理とかさ。でもよ、sin・cos辺りになると何故それを求めたしとか思わね?求めたとしてだから何?ってならね!?」


「そりゃまあ、確かに……」


「おい、途中からただの学生あるあるみたいになってるぞ」


おっと、こりゃ失敬。つい心の声が。


因みに、アルトも今の話題には頷いていた。割と固有名詞とか出ていた筈だが、どうやらこの辺りの事もかつての異世界人が伝えていたらしい。色々と広め過ぎだろ地球人と思わなくもない。


「まあ、魔法を覚えてからは授業なんてマトモに聴いて無いけどね」


「おい」


今もそうだけど、日本では楽する為に魔法を使ってた。テスト?がっつり魔法でカンニングしてましたけど何か?


「……それ、学園でバレたら一発退学だからね?」


「バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ」


「「堂々と言うな屑野郎」」


いや、だって実際バレないし。俺に掛かってる【貪欲】の大罪刻印があれば、そもそも授業なんて真面目に受ける必要が無いのだ。効果は見聞きした技術や知識の完全記憶と完全解析。


如何なる謎も、如何なる技術の秘奥も、全てが俺の前では丸裸になってしまう。これじゃあ努力のしようが無い。……まあ、オンオフは可能なので面倒な時だけ使用しているのだが。


因みにこの【貪欲】作成のエピソードだが、見たアニメを師天メンバーが録画するのがダルいと言い出したのがきっかけだ。滅茶苦茶な効果を持つ【貪欲】だが、師天メンバーには内蔵型レコーダーとしか扱われていなかったり。技術の記憶と解析能力に関しては、暇だから付けられただけである。


閑話休題それはさておき


「話を戻すが、その刀剣研究会って何処にあるんだ?」


まあまあ脱線していたが、俺達の目的は研究会の見学である。無駄に広い学園なので、とっとと移動しないと日が暮れる。


「えっと、学園の東エリアの……って、ヒバリだし言っても分かんないか」


「おい」


実際に分からんが。


「もう直ぐ転移棟に着くから、そこで転移したら直ぐだよ」


転移棟とは、転移陣が大量に敷かれている建物の事である。学園の関係者はこの転移棟を使って、目的の場所へと転移するのだ。


「相変わらずデカイなぁ……」


既に使用した事もある転移棟の前で、俺は呆れた様に呟いた。


転移棟の大きさは調◯駅ぐらい……って言っても分かんないか。まあ、外観も大きさもまんま駅である。これも異世界人の努力の賜物なのだろうが、世界観が色々とぶち壊しなので止めて欲しい。


以前この世界の文明レベルは中世ぐらいも予想したが、最近自信がなくなってきた。魔法というファクターがあっても、所々で変なのがあり過ぎるのだ。


「ヒバリがそう思うのも分かるよ。僕だって最初見た時は驚いたしね」


「下手すれば数百人単位が使用するんだから、妥当と言っちゃ妥当だがな」


それはまあ確かに。見た目駅なのは解せないが。


「あはは。やっぱり慣れ親しんだ形にしたかったんじゃない?」


翔吾が見ず知らずの異世界人にフォローを入れる。ええ子やぁ。……にしても何故だろう。俺の知り合いの中だと、翔吾とアルトがトップクラスで女子らしい気がする。いや、フィアやクラリスも可愛いけどさ。


「ほら、さっさと行くよ。ボーっと突っ立ってると置いてくからね」


振り向きながらそう促すアルトは、正しく創作物の中のヒロインである。何故俺の周りには女よりも女らしい男子が多いのだろうか。神は理不尽である。だから何体か殺したのだが。


それはさておき。アルトに促されるままに転移棟の中に入り、お目当の転移陣の上に移動する。


「ヒバリ、ここはお前がやれ。無駄に魔力あるだろ」


「無駄とは何だ無駄とは」


そりゃ確かに魔力量は多いけどさ。


恒久的に展開される様になっている転移陣だが、それはあくまで維持する為だけである。ちゃんと起動させるには、使用者が魔力を注ぐ必要があるのだ。勿論、転移陣の特性として使用する魔力は少ない。それでもやはり、魔力を使用するのは、その場で最も魔力量のある人間というのが暗黙の了解となっている。……魔力量云々は自己申告の為、ちょくちょくそれで諍いが起こるらしい。アホか。


まあアホは兎も角、時間も無いのでさっさと魔力を注ぐ。瞬く間に転移陣が発光し、一瞬の浮遊感の後には景色が変わっていた。……とは言っても、あくまで内装が少し変わった程度である。対になってる転移陣のある棟に移動しただけなので当然ではあるが。


「ほら、終わったぞ」


「相変わらずスムーズだね……。ここまでくると嫉妬すら抱けないよ」


アルトが感嘆の声を上げる。どうやら俺の魔力操作に見惚れている様だ。


「そらどうも。けどそんなに難しい事じゃないぞ?アルトだってこの程度ならその内出来るだろ」


「そうかな……?僕に出来る気しないんだけど」


首を捻るアルトの肩を叩き、問題無いと断言する。


「何だかんだで魔力の流れが感知出来てるし、何より俺が教えてるんだ。不可能なんてあり得ない」


あの時の食堂以降、俺はアルトに頼まれて魔力操作を教えている。お陰でアルトの魔力操作は、もう少しで基礎を覚え終わるぐらいまで上達していたりする。


「多分だが、もう直ぐでスキルレベルも上がるんじゃないか?それかもう上がってるか」


アルトに師事する際に教えて貰ったのだが、魔力操作のスキルはレベル2だった。因みに一般的な魔法使いの平均は3・4ぐらいらしい。


魔法使いとしてどうなんだそれと思わなくもないが、良く良く考えると納得した。この世界にはスキルという物があり、魔法もスキルとして表示される。つまり、表示されている魔法だけを鍛えようとする人が多いのだ。結果として、ある程度までは魔法スキルを鍛えるに比例して魔力操作も上がるが、それ以上にしようとする魔法使いが少なくなった。巧みと呼べるまでの魔力操作を使えるのが、ほんの一部とされるぐらいまでに。


俺の知ってる限りでも、魔力操作が巧みだったのはセリアさんとダーブル学園長、エクレ先生を含めた数人の教師たちぐらいだ。


「……あ、本当だ。3になってる」


移動しながら何やらやっているなと思ったら、どうやらステータスを確認してたらしい。此方からだと何も見えないのは、恐らくステータスを非表示にでもしているのだろう。本当に便利な世界である。


「これで魔力操作だけなら一人前だな」


「おめでとう」


「良かったな」


俺たちはアルトに祝福を贈る。気分は親か兄弟か。


そんな俺たちの反応に照れ臭そうにしながらも、嬉しそうにアルトは微笑みを浮かべた。


「ありがとう。今まで魔法の才能なんて無いって思ってたけど、ヒバリ達のお陰で自信が付いたよ」


「そら良かったな。まあ、大概の事は努力次第で何とかなるんだ。そこいらで天才とか言われてる奴でも、努力次第では巻き返せる程度の才能しかない場合が多いし。ちゃんとやってりゃ一角の人物にはなれるさ」


努力すれば報われるとか言うが、実際あれは真理である。人間死ぬ気でやれば大概の事はなんとかなる。才能が無いなんて言って何もしない奴は、ただ逃げているだけなのだ。そう言う事を言うのは、一度死ぬ気で、其れこそ身体が壊れる寸前までやってからにしろって思う。……まあ、極々偶に例外、ガチで才能無い奴や、意味不明なレベルの天才がいるのも事実だが。


「それはそうとアルトさん。一つ聞いていいかい?」


話がひと段落ついた所で、俺は疑問に思っていた事をアルトに問い掛ける。


「何?」


「いやさ、俺達って刀剣研究会に向かってんだよな?」


「うん」


「それで、その為に俺達は学園の転移棟から出てきたんだよな?」


「うん」


「じゃあここは学園の敷地な訳だ」


「うん」


アルトは特に何も言わないで肯定している。


だが待って欲しい。


「これどう見ても街じゃね?」


何故学園の敷地に商店街があるのか。

現在、テストと受験勉強が嫌で執筆してます。現実逃避で執筆作業が捗る捗る。


……言うな。分かってるから。

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