魔導師様御一行、研究会探索ツアー
少し短め。
受験勉強やらテスト勉強で更新が遅くなります。ごめんなさい。
誤字脱字の可能性大です。
「……で、何で俺はこうなってる?」
先頭を行くアルトに向けて俺はそう尋ねた。俺達は今学園の廊下を移動しているのだが、そろそろ今の状況に対して疑問をぶつける頃だろう。
あの後、アルトの怒声を聞きつけエクレ先生が教室へとやって来た。そしてアルトに何事かと事情を聞いて、雄一と翔吾を呼びつけた。何故か俺だけ除け者にされていたが、それは良い。
ただ一つ気になるのは……
「何故私は簀巻きで引きずられているんですか?」
分厚い布でぐるぐる巻きにされた挙句、ロープで雄一に引きずられている事だ。
と言うか、この布団みたいなの何処から持ってきた?
「「……ノリ?」」
「今直ぐ私を解き放てぇい!!」
これかなり周囲の視線が痛いからなっ!?
「冗談だ。けど動き封じておかないとお前メンドイって逃げるだろ」
「そもそも何がどうして移動してるのかすら知らんのだが。流れからして研究会絡みって事は予想出来るけど」
お前らだけ説明受けて俺除け者だったし。と言う意味を込めてジト目を送る。
しかし流石は俺の親友達。俺のジト目など軽くスルーして説明を始めた。雄一なんて簀巻きの上から蹴り入れやがった。痛えな。
「研究会入らないにしても、見学ぐらいはしろって言われたんだよ」
と言うと?
「どっかの誰かさんのお陰で目立っちまったからな。何処の研究会も俺達を引き込みたいんだと。なのに面倒だから入らないじゃ誰も納得しないから、見学はしたって建前は作っておけって事だよ」
「……」
えーと、つまり?予算配分には実績などが加味される事から殆どの研究会は優秀な生徒を引き込みたい。その為に俺達は目をつけられていてる。それなのに研究会に入る素振りすら見せない場合、相手側も納得しないで食い下がってくる可能性が高い。それだと色々と面倒なので、摩擦を少なくする為に見学を行おうとしていると。
「……帰るわ」
「させん」
「ぐふっ!?」
簀巻き状態から脱出しようとしたら蹴り飛ばされた。最近雄一の俺への扱いが酷過ぎる件について。
「……雄一さんや。この状況で蹴られるのは堪えるんだけど色々と」
「別に効かないだろ」
「心が痛いって言ってんだよ!!」
身動きとれない状況で親友に蹴り入れられてる俺って何よ。
「こうなった原因の八割はお前にあるんだ。それで自分だけ逃げるなんて虫の良い事させると思ってんのか?」
「うっ……」
そこを突かれると痛い。率先してやらかしてる自覚があるだけに、雄一の指摘には言葉を詰まらせるしかない。
「はぁ……。分かった。分かりました。俺もちゃんと付き合いますよ」
簀巻き程度の拘束など無いに等しい。本気で逃げる気になれば一瞬だ。だがそれは不義理だ。原因の大半が俺にある以上、俺が逃亡するのは許されないだろう。……雄一の事だから容赦無くアルテミスも撃ってきそうだし。
俺が腹を括った事に雄一は満足そうに頷き、また俺をずりずりと引きずって歩き出した。
……。
「……え、いや、ちょ、雄一さん?何でまだ引きずるの?」
「何がだ?」
「いや何がじゃなくて、俺もう逃げないって決めたよ?なのにこのままなの?」
これって俺の逃亡阻止が目的でしょ?もう逃げないから解いてよ。学園の備品みたいな扱いの可能性もあるから、無理に引きちぎったりは出来ないし。
とまあそんな風に主張してみた訳だけど、雄一の反応は酷く冷たいもの、て言うか邪悪なものだった。
「何言ってんだ?お前の哀れな姿を曝してんだよ」
ぶち。
何かが切れる音がした。
「OK了解その挑発受けようじゃないかっ!」
力強く床を踏みしめ、雄一に向けて拳を構える。裂帛の気合いとは正しくこれ。自画自賛したくなる様な覇気が俺の全身を包み込む。
あまりの気迫に雄一は目を見開き、我関せずといった態度で前を歩いていたアルトと翔吾も振り向いた。
そして全員が俺を見て、床を見た。
「「「あ」」」
あ?
「……あ」
釣られて見ればそこには引きちぎられた分厚い布が。先程までは俺の事をぐるぐる巻きにしていた布だが、今は無惨な姿に変わり果てていた。
「あれって確か凶暴な魔物を捕獲する用のネットだった気が……」
「エクレ先生が高いから壊すなって言ってたよね?」
「ああ。大体一般家庭の収入の半年分くらいだとか」
ひそひそと雄一達が話し合っている。アルトは兎も角、雄一と翔吾は絶対俺に聞こえる様に言ってるだろ。
……とは言え、やらかしたのは事実だ。修復する事自体は訳ないが、アルトの目がある。ならば致し方無しか。
「【燃えろ】」
選んだのは焼き払う事での証拠隠滅。魔力を込めた一言により、千切れた布は一瞬にして跡形も無く燃え尽きた。特殊な素材で出来ていた様だが、流石に魔導師の炎相手には分が悪過ぎる。
「よし、これで万事無かった事に」
「「「ならねーよ」」」
ですよねー。
「……これってやっぱり弁償か?無かった事になんない?」
「貸した事が知られてんだからどうやっても無駄だろうよ」
「燃やさずに素直にゴメンなさいすれば良かったのに」
「と言うか良く燃やせたね。本当に何なのヒバリって?」
三人から口々に放たれる口撃。やっぱり弁償かね?
「……と言うかさ。何で俺を縛るだけにそんな大層な物使ってる訳?」
凶暴な魔物用のネットだぞ?しかも壊すなって言い含めてたみたいだし。
「日頃の行いだろ」
あれ?それって今みたいな時に使う言葉だっけ?
「知らん。それでアルト、最初は何処に向かうんだ?」
雄一がいきなり話題を変えてきた。どした急に?
「突然だなオイ。もうちょいネットの話題続けられたろ」
「そんなんだから展開遅いって言われんだよ。もう二千越えてるし、無駄な部分はカットだカット」
いや、ちょっ!?
「急にどうしたの雄一!?メタ発言なんて雲雀みたいな事して!」
「そうだぞ!俺の専売特許を奪うなよ!」
「そんな専売特許は捨てなさい!!」
「……急にどうしたの三人共?」
あ、アルトだけ話についてこれてないわ。出来ればそのまま純真無垢でいて欲しいね。
「……で、本当にどした雄一?確かに展開遅いとか色々言われてるし、このままいけばこの話だって後二・三話は使いーー」
「よし分かった危険だこの話題!アルト、最初は何処の研究会に向かうんだい!?」
翔吾は俺が加わってメタを捌ききれないと判断し、素早くアルトに話題を変えさせた。
「ええ?えっと、最初は商品研究会って所だよ。結構大きな研究会で、色々な物を商品として扱ってるんだ」
戸惑いながらも答えるアルト。ああ、なんといじらしい。
「にしても商業関係なのな。てっきり魔法やら戦闘関係の研究会に連れてかれるのかと思ってたわ」
俺達の能力を絶賛していたアルトだから、商業関係の研究会は意外である。
「だって三人共騒がれるの嫌なんでしょ?だから最初は君達の能力と関係無さそうなのを選んだんだ。それに学園に通う上で結構便利な場所だから、早い段階でどんな所か知っておいた方が良いかなって」
つまりアルトは俺達の事を考えてくれていると。もう性別変えて嫁にしたいわこの娘。
そんな俺の邪な思いを察したのか、アルトは毛を逆立て後退った。
「え、あれ?」
どうやら本能的に身体が動いたらしく、当の本人は全身から疑問符を浮かべていたが。
取り敢えずアルトを呼び戻す。
「るーるるる」
「そりゃ狐だ」
知ってる。
「でさ、その商品研究会って何処にあるんだ?」
この学園は無駄に広い。校舎だけでも三つあり、その他の施設やらを合わせれば大きさはなんと十平方キロメートル。王都の八分の一がこの学園の敷地という事になる。お陰で何処に何があるのか予想が出来ない。……パンフレット的な奴には書いてあった気がしたが、あんなの覚えてる訳がない。
「ああ、それは大丈夫。商業系は人がいないと成り立たないから、商人連盟に加入している研究会は校舎や寮に比較的近い場所にあるんだよ。逆に、戦闘関係や魔法関係みたいに周囲に大きな影響を与えたり、鍛冶や調薬みたいな集中力が必要とされる研究会は校舎とかから離れてるんだ」
因みにだが、この学園では離れている場所に移動するには転移陣という魔法陣を使用している。これはフィア曰く空間魔法という分類に入り、既に失われた技術らしい。そんなオーパーツが何故あるのかと言えば、過去に空間魔法に特化した異世界人が作製したとの事。
効果としては、転移陣の上に乗った物体を同種の転移陣へと転送する事が出来るというものだ。一見するとかなり便利ではあるが、質量制限やら重量制限やらと制約もかなり多い。代わりに発動コストが極めて低くなっており、一度展開すれば周囲の魔力で恒久的に陣が展開される様になっていた。魔導師的に見ても中々の構成であると言える。
尚、魔導師の魔法陣に関しては構成云々とは別次元にある模様。魔力を支配する魔導師の場合、魔力が自分のイメージに最も合った形へと勝手に動くからである。その為、魔導師の場合は陣の構成よりも、どの様な効果にしたいかを綿密に考える事を優先する。
さて、そんな感じで歩く事数分。俺達は一つの建物の前に辿り着いた。
「はい。此処が僕達学園の生徒、先生達も御用達の商品研究会だよ」
え、デカくね?
目の前の建物は、デパートぐらいのサイズがあった。
内容の半分が雑談の件。
更新期間がヤバいと思ったのでこうなりました。本来なら文字数は二倍ぐらいの予定だったり。
嗚呼、文字数二十万の壁が高い……




