研究会?ナニそれ美味しいの?
話が進まない……ネタに走り過ぎだろうか?
まあ良いや。
という訳で、更新しました。誤字脱字の可能性大です。
爺さんとの会話から何日か経ち、今日も俺は学園に通っている。
「研究会?」
授業も粗方終わって放課後。帰り支度をするでもなくボーっとしていたら、アルトに話し掛けられた。
「そうそう。ヒバリ達まだ研究会とか入ってなかったでしょ?だから案内して欲しいってエクレ先生が」
「あー、そう言えば最初の方にそんな事言われてた気が……全然しないわ」
「駄目じゃんそれ」
いやさ、話の隅に出てきた様な伏線とも言えない話題に食いつけってのが無理だろ。
「んー?エクレ先生が説明したって言ってんだけど……」
俺それ初耳なんだけど。
「そりゃ雲雀が人の話を聞いてないだけだ」
「実際、エクレ先生は僕達にしっかり説明してくれたしね」
小首を傾げるアルトに援護射撃が入りました。
「……っ、この声は……!?雄一に翔吾、生きてたのか!?」
「死んでねーよ勝手に殺すな。そしてあり過ぎて元ネタが分からない様なボケを唐突にかますな」
「雲雀、その反応はありきたり過ぎ。脈絡も無いから三十点」
何故に点数……?いや、ならばテイク2。
「お前達は……!アンダーソンにジョセフィーヌ!?」
「「誰だよ」」
知らん。
「あはは……本当に仲良いね三人共」
俺達のやりとりを見て、アルトは苦笑していた。
さて、コントも済んだし、そろそろ話題を戻すか。
「で、何時説明されてたんだ?全く憶えがないんだけど」
そういう説明なら三人一緒の時にやってる筈なんだが。
「そりゃそうだ。エクレ先生が説明しようとした時にお前、『あ、ちょうちょ〜』なんて言って窓の外見てたし」
いやちょっと待てっ!!
「無えよ!?さすがにそれは無えよ!!……ないよな?」
「何で僕に聞くのさヒバリ。そして自信持って断言出来ない時点で色々アウトだから」
ごもっとも。いやでも待って!
「えーとね、雲雀がツッコミ受けて気を逸らしてる時だよ。流石にちょうちょを追いかけたりとかはしてないから安心して」
だよねー。幾ら俺でもそんな幼児みたいな行動はとらないよな。
「あーびっくりした……」
「(知らぬが仏って真理だよな)」
「(いや、うん、まあね。そっとしておこうよ)」
「おい俺本当にやってないよな!?」
わざと聞こえぐらいの音量で言ってるんだろうがヤメろマジで!流石に不安になってくるから!自分が色々と信じられなくなるから!
「ま、兎も角。そう言う訳でアルトが案内してくれるんだって」
「流さないで!俺の中で割と死活問題だからはっきりさせて!」
「五月蝿いわ!!」
いやお前らの所為だろっ!!
閑話休題。
「それじゃあ、最初に研究会について説明するよ。ヒバリも良く分かってないみたいだし」
「一言余計だ」
「「事実だろ」」
シンクロツッコミお疲れ様です。そして反論出来ねえ……。
「改めて説明すると難しいんだけど、研究会ってのは目標や目的を定めて、それを達成する為に行動する集団の事だよ」
うん、これは前にもアルトから聞いた。要するに部活の事だ。
「で、この研究会なんだけど数が凄い多いんだ。元々この学園自体が大きい事もあるんだけど、剣術やら魔法やらと幅広く教えている所為で研究会の数も凄い事になってる訳。だから各研究会を幾つかの種類毎に纏めてるの。僕達生徒はそれを『連盟』なんて呼んでるよ」
……はい?
「え、ちょっと待て何その括り?もしかして研究会って派閥みたいなのあったりする?」
「え?まあ、派閥はあるっちゃあるけど……」
アルトが戸惑いながらもあると答えた。そしてアルトの答えを聞いた俺達は軽くお互いの顔を見た後。
「俺研究会はパスの方向で」
「僕も」
「同じく」
研究会に所属するのは遠慮する事に決めました。
「えぇっ!?」
俺達が揃って拒否するとアルトは驚愕の声を上げる。まるで予想外とでも言う様な声音から、俺達が何処かに所属するものと思い込んでいた様だ。
「何でさっ!?三人の実力だったら何処の研究会でも大歓迎の筈なのに……」
「いや、まあ、そうだろうけど……なあ?」
「うん。何か派閥とかあるって聞くとちょっとね……」
「ぶっちゃけ面倒そう」
俺もそうだが、雄一と翔吾も権力関係には苦手意識を持っている。王城で過ごしていた時や、今の家に引き取られてから何度か他の貴族達の会話などを聞いたらしく、予想以上の黒さに辟易としたのだとか。
そんな俺達なので、派閥なんて面倒そうなファクターのある場所に所属するのは気が引けるのだ。
俺達のそんな反応に、アルトは慌てて更に説明を重ねる。
「そりゃ確かに派閥はあるって言ったけど、そんなのに関わるのなんて本科の上級生ぐらいだから!それに連盟なんて学園から配分された予算を分配するぐらいだから身構える程のモノじゃないから!」
詳しく聞いた所によると、この学園には日本の生徒会に当たる学生会という組織があるのだが、彼等は多忙であり大量に存在する研究会の方まで手が回らないらしい。そこで研究会を各分野毎に分け、細かい予算配分を丸投げしようとしたのが始まりだとか。
連盟として現在あるのは、鍛冶や調薬などの生産職関係の『職人連盟』、魔法関係の『魔法連盟』、商人を目指す生徒達による商売関係の『商人連盟』、戦闘関係の『戦士連盟』、最後になんでもござれの『冒険者連盟』だ。
連盟は所属している研究会から選出した代表者が運営し、功績や所属人数などを踏まえて予算を分配するらしい。
ふむ、結構上手く纏められたのではなかろうか。
それを踏まえて一言。
「……面倒くせぇ」
実際に関わる事はそうないだろうが、それでもやっぱりそう思ってしまう。
確かにそりゃね。学生会って所の人達も凄い人数のいるこの学園を回さないといけないから大変だとは思うよ?手が足りないなら増やせばいいってのも納得出来るし、それで学園が上手く回っているのだから問題も無いのだろうし。
とは言えさ、俺から見たら明らかに練習させてるんだよね。連盟や学生会に入る人間って事はそれなりに優秀である訳で。そうすると国としては出来るだけ優秀な人材は育てたいから、事務やらの仕事を任せて現段階から慣れさせようとしている感じがする。
方針としては間違っては無いだろうけど、子供の頃から権力闘争の縮小版みたいなモノを経験させるのはどうかと思う。この学園の重要性を考えれば、研究会の為の予算というのもかなりの額になる筈だ。そんな大金を生徒達に配分させるとなれば、当然利権やら派閥やらが出てくる訳で。宮廷とか程では無いにしろ、連盟内部も十分にドロドロしているであろう事は想像に難くない。
「……なんか変なのに巻き込まれる未来しか見えないんだが……」
「雲雀だからねぇ……」
「俺達は雲雀が巻き込まれたのに巻き込まれそうだがな……」
なんとなく遠い目になる俺達。
「いや、さっきも言ったけどさ。僕達が連盟に関わる事なんてそうそう無いからね」
それを白けた目で眺めるアルト。俺達の今までの経歴を知らないからこその反応だ。
「(ま、今はまだ教えなくていいでしょ)」
「(知らない方が良いこともあるしな)」
「(言葉じゃどうせ伝わらないだろうしなー)」
こそこそと目線だけで会話する俺達。側から見れば、擦れていない無垢な子供を生暖かく見守っている様に見えた事だろう。
「……え、何?なんか凄い不安なんだけど……」
本人からすればとても不吉に感じた様だが。
「「「その内分かるさ」」」
「ちょっ、ヤメっ、凄い怖いから!!」
本気で後退すアルト。その姿は正に小動物というか、保護欲を掻き立てるというか。
「お母さん、ネコ飼っちゃダメー?」
「ダメです。元いた所に返してきなさい。そしてお母さんじゃありません」
「僕ペット扱いされてる!?」
いやー、慌てるアルトも可愛いなぁ。
「さっきのセリフと今のモノローグ、完全に変態なのは自覚してるか雲雀?」
「それは勿論。分かってて言ってますが何か?」
「「黙れ変態」」
「ありがとうございます」
「「「本気で黙れクソ野郎」」」
「あれコントなのにガチトーンで返された!?」
ヤメて引かないで!ノリだから!別に俺変態じゃないから!
「……何気にアルトも乗ってきたね。雲雀の影響だね絶対」
「確実に毒されてるな。雲雀に」
「色々と衝撃的なキャラだったからね。まさか僕がこんなになるなんて……恨むよヒバリ」
「全部俺が悪いと言うのか!?」
「「「どう考えてもお前の所為だよ」」」
こいつらハモりやがった……自覚はあるけど。
また色々と脱線したな。戻さねば。
「それでさ、研究会って別に所属しなくても良いんだろ?だったら問題ないっしょ」
「うーん、それはそうだけどね……やっぱり勿体無いって感じるよ。三人共凄い優秀なんだから」
あー、成る程。つまりは宝の持ち腐れみたいに感じる訳だ。これまでの事を振り返るとさもありなんとも思うがな。
俺達はこの数日でかなりの事をやった。てか、やらかした。俺の上級魔法(笑)や食堂での風刃マニューバに始まり、雄一と翔吾は俺へのお仕置きやらツッコミやらで魔闘術を使用、剣や弓の腕前を期せずして見せてしまった。これらを目撃した生徒が広めたらしく、俺達三人の実力が学生レベルではないのでは、という噂が密かに流れているらしい。
「確かに三人は今も凄いよ。けど、研究会に入ればよりその才能を磨く事が出来るし、研究会で結果を残せばそれは明確な実績になるんだ。つまり、入っておけば将来きっと自分の為になる」
アルトが研究会について熱弁を振るう。なんとなしに聞いていた俺達だが、最後の将来の件では揃って微妙な表情を浮かべていた。
理由としては簡単。俺達には明確にやりたい事が無いのである。
アルトが知らないのは当然だが、俺達は既に人類最強と世界最強クラスの実力を持っている訳でを何処かの国に仕官するなりすれば高待遇は確実だし、冒険者として動き回れば直ぐにでも最上位の冒険者になれる。絶対に面倒なのでやらないが、その気になれば国だって興せる。
逆に、何もせずとも魔窟の中身を適当に売り捌けば一生遊んで暮らせる。もっと言えば爺さん達が後見人となっている為、衣食住は保証されている。……流石にそれはやらないが。
つまり、選択肢が多すぎて選ぶ事が出来ないのだ。贅沢な悩みと思うだろうが、選択肢を間違えれば厄介事や面倒事は確実。海賊王になりたいとか、ハンターになりたいみたいな明確な夢がある訳でもなし。お陰で選ぼうにも選べないのが現実だ。
なので将来の事で説得されても困るのだ。かと言って、それをアルトに説明する訳にもいかない訳で。
「将来ねぇ……そう言えば、アルトも研究会入ってんだよな?どんなの?」
やはりこういう時は話題を変えるべきだろう。少し露骨な気がしないでもないが、ギリで許容範囲だと思う。その証拠にアルトは特に疑問も無い様子で答えてくれた。
「《魔法改良研究会》だよ。文字通り魔法の改良を目的とした研究会。……一応、前にも言った筈なんだけど」
え?俺それ初耳なんですけど。
身に覚えが無い事に俺が不思議そうな表情をしていると、翔吾がポンっと手を叩いた。
「ほら、雲雀はその時エクレ先生から説教食らってたから」
「あー。そう言えばそうだったね。爆睡してたからだっけ?」
アルトは俺が説教食らった理由を思い出し、呆れたとでも言いたげな視線を向けてくる。
「ヒバリ。幾ら君が魔法の天才でも、座学落としたら普通に留年させられるからね」
いやいやいや。流石にそれは……無いよな?
「そっか。じゃあ今度から僕達の事は先輩って呼ぶようにね」
「おい後輩。ちょっと購買でドラゴンステーキ買ってこい」
なに不吉な事言ってんの!?
「まだ留年してねえよ!それに雄一もパシろうとすんなアホ!大体この前狩ったワイバーンの肉まだ残ってるだろうが!出してやるから翔吾に頼め!」
「……え?」
蛇足だが、レベリングの際に狩ったワイバーン二十頭は俺の魔窟の中である。全部翔吾と雄一の二人で狩った獲物なので、所有権は二人の物だ。保存などの理由から俺が一時的に預かっているが、既に何度か翔吾の料理の食材として使用されている。そのお陰で料理スキルのレベルが2程上がったそうな。
「ワイバーン飽きたんだよ。幾ら翔吾の料理でも、一体分食えば流石にキツイ」
「いや、ちょ、え?」
「あー、確かにそりゃそうだ。……だからって何故ドラゴン?あれだってワイバーンと同じ羽根トカゲだぞ?」
「いや、やっぱり上位種な分ワイバーンより美味いかと思ってな」
魔物関係は魔力が多い程美味かったりする。全部がって訳じゃないけど。……先に言っておくと、魔人は不味かった。いやまあ、彼処に居たの殆ど虫系だったけど。
「……期待を裏切る様で悪いが、大して変わらないからな」
「……」
ドラゴンって確かにワイバーンよりは美味いんだけど、味そのものは上位互換というか……いや、美味いは美味いんだよ。けどワイバーン肉で飽きてんだったらオススメしないというか。
「なんだ。じゃあいいや。雲雀、代わりにメロンパン買ってこい」
「だからパシるなと言うとろうに。お前ホントに何なの?」
「ッチ、使えない。何なのなんてこっちのセリフだよ」
「いや君達ホントに何なんなのさ!?」
「「へ?」」
俺と雄一が互いに悪態をついていると、横からアルトの絶叫が。俺と雄一から揃って間の抜けた声が出た。
「へ?じゃない!さっきから信じられない単語がちょくちょく出てるんだよ!ツッコミどころが満載なの!」
ふむ……アルトが言ってるのはワイバーンの事かな?確かに雑種とは言え竜の類だし、冒険者ギルドでもそこそこの扱いだった筈。それを俺達みたいな学生が狩ったとなれば、アルトの反応も当然か。……見ている分にはとても面白いが。
中々に良い反応をするので、ちょこっとアルトの事をからかってみる。
「……何処が?」
「どこが、何処が!?」
「そんなに叫ぶと血圧上がるぞ。少し落ち着けアルト」
あ、雄一も乗ってきた。
「何で僕が変みたいな感じになってんの!?冷静に言ってるけどユウイチも変だからね!」
「……何処がだ?分かるか雲雀?」
「いや全く。さっきの会話でおかしな事なんてなかったろ」
「全部が全部だ一から十まで徹頭徹尾オカシイわ!!」
アルトの怒声が教室中に響き渡った。
なんだかんだで雄一も翔吾もボケ属性。今の所出てきたキャラでマトモな常識人がアルトぐらいしかいない……。




