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学園初日が終わったよ

前回が何を話したかったのかわからないと言うコメントが。

実は、今日と前回でうっすらと伏線を。張れてるかどうかは分からないけどな!


誤字脱字の可能性大です。

「平民の分際でこの私を無視するとはいい度胸だな。ヒバリ・サクラギ」


アルトに言われて視線をやれば、そこには見覚えのある様な気がする青年が立っていた。


「……誰?」


いや、本当誰だっけ?スッゲー見た事ある気がするんだけど。うーん、燻んだ金髪といい、やけに豪華そうな身なりといい。


「顔つきはイケメンの部類に入りそうだけど傲岸そうな笑みで残念に感じる所といい、やけに僕偉いんですオーラが出ていて妙に小物臭がする所といい、全体的に咬ませ犬的な雰囲気がビンビンな所といい。絶対にどっかで見た事ある筈なんだけど……」


「ヒバリ漏れてる漏れてる心の声漏れてる!!」


「え、マジ?」


あ、マジだわ。見れば、青年の頬が引きつってた。


「私を愚弄するか……!」


すんまそん。わざとじゃないの(嘘)。


「うん、ごめんちゃ」


「貴様っ!!」


激昂した青年は殴り掛かってくるが、残念ながら遅過ぎる。軽〜く拳を受け止めてから、青年に微笑みを向ける。


「で、ご用件は?」


「ぐっ……」


俺が笑うと、青年は気圧された様に一歩下がった。失礼な反応だと思う。……友人のニャーさん曰く、俺の笑顔には妙な迫力があるらしいが、それは関係無い筈だ。


青年の方も、一瞬だけ頭を振ってから睨んできた。しょうがないから手を差し伸べてやろうか。


「ほらね、怖くない。ね?怯えていただけなんだよね」


「何処の谷の姫だお前は」


ナイスツッコミ。


「貴様!やはり私を馬鹿にしているのか!?」


「うん」


「即答!?」


驚く青年。どうやら予想してた反応と違ってたらしい。いや、ああも分かりやすく馬鹿にしといて今更誤魔化すとでも思ったのか。


「ちょっとヒバリ!」


「んにゃ?」


呼ばれたので振り向けば、アルトが慌てた様に近づいてきた。


「(ヒバリ、あの人はハンス・ドルク・ジグムント。見て分かるだろうけど貴族、それも上級貴族の侯爵家の人間だ。目をつけられると厄介だよ)」


どうやらアルトは忠告してくれているらしい。まあ、幾ら身分は関係無いとされている学園でも、平民が上級貴族相手に喧嘩売るなんてマズイ。だからアルトが慌てるのも間違っては無い。


間違っては無いけど、


「関係無いね。いきなり上から目線で喧嘩売ってくる様な馬鹿相手に、わざわざ普通に接してやるつもりは無いし」


残念ながら俺はそれを否定する。


「貴様……!」


ハンスは怒気を露わにして睨みつけてきた。どうやら俺のセリフが聞こえた様だ。まあ、わざと聞こえる様に言ったんだけどさ。


いきなり挑発するなんて俺らしくないと思うだろうが、俺は貴族とか権力者が大嫌いなのだ。……ああ、勿論全部の貴族が嫌いって訳じゃないので悪しからず。爺さん達みたいに良い貴族もいるのも理解しているし、貴族という役職上、汚れ仕事をする事があるのもそういう物だと思っている。だからそれは良い。


「身分差?それがどうしたよ。何より此処は全てが平等の扱いを受ける学園だ。それすら理解出来て無い奴に、命令口調で話し掛けられる謂れは無い」


俺が嫌悪しているのは、自分が特別だと思い上がり何をしても良いと勘違いしている奴である。


この手の人種は欲望に際限というものが無く、それを満たす為なら外法の類すら用いる。それをある程度は可能にしてしまう権力という力があるからまたタチが悪い。そして、その所為で余計に自分が特別だと思い込むという悪循環。


しかも、そういう奴等は総じて何かやらかすのだ。これは多くの馬鹿共を粛清する為に奔走した経験から断言出来る。俺自身、何度か何処ぞの国の馬鹿貴族の派閥が迎合させようと色々やってきたので潰した事があるのだ。そしたらもう埃が出るわ出るわ。あまりに酷いので王城に怒鳴り込んだ記憶がある。……王や宰相、その他の重役がこの世の終わりみたいな顔してたのが印象的だったっけ。


ぶっちゃけ、下手な嫌がらせよりも遥かに堪えるのだ。やけに高く積み上がった自尊心や、ぶくぶくと際限無く肥大した欲望など、人の一番醜い部分をこれでもかと見せつけらる。終わったと一息つけば、その後の事後処理で埃が山と出てきて色々な意味で萎えさせられる。これが何回も続くのだ。本当、新手の精神攻撃か何かだと思う。


まあ、つまりだ。開口一番で『平民ども』とか舐めた事をほざいたハンスは、今の所俺の中では相手にする必要無しと判断した訳である。


まあ、向こうからすればふざけんなとは思うだろうし、あと一回ぐらいはチャンスをやろうか。


「さて、用事があるならちゃんとしろ。もう一回だけ聞いてやる」


「貴様、平民の分際で私に命令するーー」


改善する気など無いとばかりに叫ぶハンス。俺はそれに呆れながらも、威圧を込めた視線を向ける。


「違げえよ。俺は今何て言った?それともお前は人に話し掛ける時の礼儀すら知らんのか?」


「っ!!?」


威圧を受けてハンスの身体がビクリと跳ねる。そりゃそうだ。こちとら幾つも修羅場を潜ってんだ。学園という温室で育った貴族の坊々には、例え軽い威圧であっても刺激が強い。


その証拠にほら。もう心が折れ掛けてる。


「ぐっ……平民風情が、憶えていろ!」


威圧に屈したか、それともプライドが邪魔したかは知らないが、ハンスはそう言って去って言った。……典型的な捨て台詞ゴッサンです。


「……なんか、ヒバリが怖いよ……」


「あはは……雲雀って不機嫌だったり相手が気にいらなかったら容赦無いから」


「見た目と精神が釣り合って無いんだよ。ありゃ我儘なガキだ」


だって僕まだ十代だもん。子供だもん。……実年齢二十代だけどな!


「ってか、それより良かったの?あの人ヒバリに話があったんじゃ」


「良いんだよ。重要な用事だったらあんな風に引き下がらないだろ。睨まれただけで引っ込んだんだ。どうせ大した用じゃない」


大方、因縁か勧誘の何方かだろう。今思い出したがあのハンス、確かライデンさん達のパーティーでクラリスに絡んでた奴だ。クラリスと親しくしていた俺に嫉妬している確率が高いので、予想としては前者だと思う。


「んで、何でカツカレーとかあんの?」


「うん、此処までの流れを見事にぶった切ったね。そしてまだ引っ張るのその話題?」


頬をヒクつかせるアルト。いや、俺からすればあの坊々よりこっちの方が大事だし。


「あんなのよりGの話しした方がまだ生産的だろ」


「……君のその考えは一周回って尊敬するよ」


そりゃどうも。そしてGって通用するのね。


「それで、カツカレーだっけ?確か東国の料理だよ。数代前の勇者が造った国で、勇者の故郷の文化が多く残ってるんだって。着物とかスシが有名かな」


ある意味でテンプレで、凄い非現実的な答えだった。ちょっと予想外だったので、思わず間の抜けた声が出た。


「……マジかい」


そして、どうやら翔吾と雄一も俺と同意見の様だ。二人とも唖然としているし。


「……小説とかだと鉄板だけど、それを実現させるかな普通……?」


「……多分、極め付けの馬鹿だなその勇者は。それか異常なまでのホームシック。気合と根性って意味だと勇者らしいが」


中々に辛辣だな雄一。まあ、分からなく無いけどさ。


勇者や異世界人が日本文化の国を造る。確かに設定としてはありきたりだ。だが、よく考えてみて欲しい。それを実現させるとなると、話は全然別になってくるのだ。


国を造る。言葉で表せば簡単だが、それには多くの力がいる。パッと考えただけで、国を護る為の武力、国を導く為の政治力、民を飢えさせない為の生産力、財政を回す為の経済力、等が挙がる。今挙げた力の一つでも欠ければ、国は国としての機能を停止する。


専門家である政治家(この場合は貴族)ですらひいこら言って苦労しているのだ。異世界から召喚された、恐らく一般人であろう勇者が建国なんて馬鹿げている。しかも、そこに全く違う文化である日本文化を組み込んだのだ。その時の苦労を考えると自然と頬が引き攣ってくる。


それだけで十分ヤバいのに、その国が今も存続し、挙句の果てには地球と大して変わらないカツカレーが出てくる始末。ここまでくると気合や根性と言うより、妄執と執念と言った方が良いと思う。


「……三人共どうしたの?」


おっと。揃って微妙な顔してたら、アルトが不思議そうにしている。誤魔化さねば。


「いや、シースの本場は座銀かなと」


「はぁ?」


「流石にそれは……」


「馬鹿だろ」


皆に白い目で見られた……ぐすん。


「今度は涙目……さっきまで貴族に啖呵切ってた癖に……」


知ってるかい?美少女達の冷えきった目ってダメージ大きいんだぜ。


「僕は男」


「そうですた」


「???」


アルト俺と翔吾のやり取りに疑問符を浮かべている。これが年季の差って奴か。翔吾と雄一は魔法無しで俺のモノローグ読むからな。幾ら長い付き合いとは言え、読心が出来るレベルってなんなの本当?


「「だってお前分かりやすいし」」


「お前ら本当なんなの!?」


サトリ?俺の時だけ心を読む妖怪になるのか?


「「何でお前限定なんだよ。普通に嫌だわ」」


「息ぴったりで鬼かお前ら!?」


こっちこそ流石に願い下げだわ。


「「なら気持ち悪い事考えんな」」


「だったら読むなよ!!」


「何で会話になってんの!?」


いや知らんがな。




《翔吾side》


昼休みから何やかんや時は過ぎて午後の授業。今は算術の授業中。


「zzz」


雲雀が寝ている。それも先生の目の前で。


「……」


「(おい、あれ起こした方が良くないか?)」


「(いや、先生目の前だし手遅れだろ)」


クラスメート達は雲雀の事を勇者みたいな目で見てる。どうやらあの人は怖い先生らしい。


「zzz」


「……編入初日で爆睡ですか、ヒバリ・サクラギ」


「(あーあ。先生青筋浮かべてるわよ)」


「(よりにもよってオーガだもんなぁ。ヒバリ君殴られるんじゃない?)」


コソコソと交わされる会話から、ご愁傷様と言う雰囲気が感じられる。


そして、どうやらそれは正しかったみたい。


「いい加減に起きろヒバリ・サクラギ!!」


ゴンッッ!!


鈍い音が響き、クラスメートの殆どが眉を顰める。例外は僕と雄一だけ。


「「「(うわぁ、痛そ……)」」」


多くの同情の視線が雲雀に集まるが、僕はそれに甘いとしか言えない。だって、ほら。


「zzzんにゃ……zzz」


「「「「起きないのかよ!?」」」


あの程度で雲雀が起きる訳無いじゃないか。




《雄一side》


鐘の音が鳴り響き、授業が終わった。そして今日の学園も終わった。


「翔吾、帰るぞ」


「はいはい」


編入初日で特にやる事も無いので、翔吾と一緒にさっさと帰る事にする。


教室を出ようとした所で、雲雀経由で仲良くなった獣人のアルトと目が合った。


「アルト、お前も一緒に帰るか?」


「ううん。僕は研究会があるから」


「研究会……ああ、そう言えばそんなのあったな」


研究会。確か部活みたいな物だった筈だ。一つのテーマや目標を決め、集団で支え合いながら取り組む、みたいな説明を学園長から受けた。


まあ、詳しくは自分の目で確かめろと丸投げされたが。


「アルトはどんな研究会に入ってるの?」


翔吾がそんな事を聞いた。俺もそれには興味があるな。あまり詳しい事は聞いてないし。


「えっと、あんまり大きい会じゃないんだけど、《魔法改良研究会》って所。文字通り、魔法を改良するのを目的とした会だよ」


ほう、そんな会まであるのか。少し興味が出てきたな。


「アルト、今度研究会について色々と教えてくれるか?」


「それは構わないけど。と言うか、今から案内しようか?」


予定があると言っていたのに、俺達を優先しようとしてくれるのは、アルトなりの気遣いなのだろう。


有難い。だが、今はまだ早いだろう。


「いや、今日は良い。まだ色々とドタバタしているんだ。もう少し落ち着いたら頼めるか?」


「分かったよ。確かに今はヒバリもいないもんね」


「あれは唯の自業自得だ」


雲雀は結局実技以外の授業は寝ていた為に、今はエクレ先生に引っ張られて説教を喰らっている。……目立ちたくないとか言っときながら悪目立ちしやがって。本当、救いようが無い馬鹿だアイツは。


「それじゃあ、僕はそろそろ」


おっと、あの馬鹿に思考を裂かれた所為か、アルトを長く引き止めてしまったな。


「ああ、それじゃあまた明日」


「ばいばいアルト」


「うん、さようなら。ユウイチ、ショウゴ」


アルトが廊下を歩いて見えなくなってから、俺と翔吾は歩き始める。


「雲雀は待たなくて良いの?」


「待つ意味が無いな」


「それもそっか」


雲雀が何かやらかしたら基本放置。それが俺達の中での暗黙の了解である。


「にしても、学園も楽しそうだな」


「そうだね。特にーー」


翔吾と今日の学園での出来事を話す。


「……ん?」


そうやって会話しながら歩き、校舎から少しした所で多数の気配を感じた。


「どしたの?」


「いや、ちょっと変な感じが」


取り敢えず、気配を消して違和感を感じた方向へと進んでいく。


すると、


「おい、まだあの平民は出てこないのか」


「そう焦らないでくだせえハンス様。出てきた所を囲めば問題無いですよ」


「そうですよ。その後に存分と痛めつけれ良いんです」


昼休みの貴族の坊々と、柄の悪そうな男達がいた。一応、制服は着ているので生徒だとは思うが。


兎も角、何か悪巧みの最中らしい。


「……どうする?」


翔吾が止めるか?と目で訴えてくるが、そんなの考えるまでも無い。


「さっさと帰るぞ」


放置一択だ。


「良いの?」


「俺がアイツの安全に気を配る必要も無い」


勿論、アイツとは坊々の事だ。あの人数、しかも普通の人間が雲雀をどうこうする事など不可能なのだから。速攻で返り討ちに遭うのがオチだろう。


「それに、挑発したのは雲雀だ」


自分で撒いた種なのだから、収穫は雲雀にやらせるのが筋だ。自業自得とも言う。……まあ、俺もあの物言いにはイラっときたが。


「さて、それじゃあ行くか。校門こっちだよな?」


「うん、確かそう」


無駄に広い学園の地理を思い出しながら、俺達は学園を後にした。


こっそり翔吾が男達に向かってご愁傷様と手を合わせたのはご愛嬌だろう。


後日、学園で埋められて生首状態となった男達が発見されたらしい。




《ヒバリside》


時は過ぎてアール公爵家。


「ただいま帰りました」


未だにただいまと言うかのは少し気恥ずかしいが、それでも悪い気はしない。


それにしても、やっと帰ってきた。エクレ先生の説教長い。……悪いの俺だけどさ。


それでも、その後にも色々あって少し帰るのが遅くなってしまった。


「おお、ヒバリか。良く帰ったの」


自分に充てがわれた部屋に戻る途中で、ばったりと爺さんに遭遇した。朝とは違い、流石にもう落ち着いているっぽい。


「学園はどうじゃった?何かあったか?」


「そうだな。訓練場で火柱上げてから食堂で貴族の坊々の心折って、放課後に説教されて帰りに男達を埋めた」


「いや何しとんじゃお主!?」


本当にね。

師天の一人、猫のニャーさん。

人間のしがらみが面倒になって猫の姿になった馬鹿。

現在、クラックで消息不明になっていて、魔法と科学がいい感じに混ざった異世界にいる。

理由は、その世界の魔法学校に通う魔法使いの卵である女の子に使い魔としてサルベージされたから。

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