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俺は何をすれば良い?

アレですね。うん、進まないわ話が。


誤字脱字の可能性大です

キーンコーン


「はーい、今日はここまでです。皆さんお疲れ様でした」


昼を告げる鐘の音が響き、エクレ先生が授業終了を告げた。


「そんじゃあ、今日はここまでね」


「はい。ありがとうございますお兄様」


授業が終了したので、クラリスへの指導も終了した。


クラリスはクラスメートの方へと向かって行ったのを見送った後、俺も雄一たちの方へ向かう。


「いやー、にしても凄いねあの子。ありゃ確かに優秀だわ」


その途中でさっきの事を思い出し、つい独り言を言ってしまった。


頼まれたので色々と教えてみたのだが、中々どうして彼女は優秀だった。才能もそうだが、それ以上に教えて貰う事への意識が凄い。俺の言った事をちゃんと自分で考えてから納得するし、何か分からない事があったら理解出来るまで質問してくる。かなり退屈で面倒な事をやらしていたのだが、それに不満を言う事も無かった。


「取り敢えず、爺さんの血筋では無いな。多分シータさんの方だ」


あの爺さんだったら確実に不満を漏らすだろう。アレは退屈な事を嫌う人種だからな。絶対に面倒だの何だの漏らす。……まあ、何だかんだでアレは狸だし、利益になる事を投げ出す事は無いだろうけど。


兎も角、クラリスは教える側からすればとても良い生徒だ。才能があり、真面目で努力家。成長していく姿は見ていて楽しいと思う。面倒臭がりの俺ですら、あの娘ならずっと教えていても飽きないだろう。


……さっき、この事つい口に出しちゃったんだよなあ。それをクラリスに聞かれてさ、今度から暇な時は魔法を教える事になったんだよねぇ。まあ良いんだけどさ。


「……あれ?それってほぼ毎日になりそうな気が?」


よく考えたら俺ってかなりの暇人だよな?学園以外は基本的に屋敷から出ないだろうし。冒険者の方も別にランク上げとか興味ない。気が向いたら程度にしか考えてないし。


「……んー?やっぱり結構な頻度になるかもな。いやでも、クラリスの方が予定ありそうだし……あの懐き様だと俺の事を優先しそうで怖いな。……そこんとこどう思うよ雄一」


雄一が丁度そこにいたので聞いてみた。考え事している間に到着したみたいだ。


「……いきなり何だそして知らねえよ」


聞かれた雄一は顔を顰めながらばっさりと切り捨ててきた。


なんだよー、少しは考えてくれても良いだろー。


「いや、それは雲雀が悪いから。……それで、ぶつぶつ言ってどうしたの雲雀?」


「いや、白の鯛焼きは邪道かどうかと」


「絶対違うだろそれ!」


「それに邪道でも何でも無いから!ちゃんとした商品だからアレ!」


はい、ツッコミどうも。


気を取り直して。


「いやさ、今度から暇な時にクラリスに魔法を教える事になってな。それで俺は基本的に暇な事に気がついたんだ」


「自分からボケといてさらっと流しやがったなこの野郎。……で、それが何か問題なのか?」


「それがさあ、なんかそうすると毎日の様に教える事になりそうなんだよ。クラリスの感じからすると、自分の予定とかぶっちしてきそうでなー」


「「へぇー」」


俺が思っている事を正直に告げると、案の定と言うか。二人共新しい玩具を見つけた様な顔になる。アレだよ。野次馬的な笑顔。


「ニマニマすな。特に翔吾。これはお前の好きな系統の話題じゃない……筈だ」


実際、あのクラリスの懐き様は好きとかの感情より、恩人とかを慕う方の色合いが強い。危機に瀕した所を救った事による刷り込みみたいな物だろう。


「断言出来ない時点でギルティ」


「やかましいわ」


ニヤける翔吾にツッコミを入れてから、話の続きを話す。


「まあ兎も角、俺がずっと教える事になりそうなのは色々とマズイかなと思った訳だよ」


クラリスは貴族の娘である。年の近い異性とずっと一緒というのは外聞も悪いだろう。……一緒に住んでるから大丈夫な気もするけど。


「とは言え、既に約束しちゃったから反故にするのも悪い。そこで考えたのが、俺の暇な時間で何かすれば良いって事だ」


そうすれば、俺が約束を破った事にはならないし、クラリスの風表が悪くなる事も無い。


我ながら見事な論理だと思う。だが、そう思ったのは俺だけだった様で、


「回りくどいだろそれ」


「後で断れば良いじゃん」


ばっさり切り捨てられました、はい。……予想の範疇ではあったけど。


「まあ、そうなんだけどさ。これって俺の性分みたいな物なんだよ。相手が悪人とかじゃない限り、一度した約束は出来るだけ守りたいんだわ」


これはクラックで培った俺の価値観だ。ギアスという誓約の魔法を使ったりするので、出来るだけ約束事には真摯でいたい。


そう説明すると、雄一と翔吾は仕方ないなと苦笑いを浮かべた。


「難儀な奴だなお前」


「本当にね。損な性格というか」


「自覚はしてるさ。お陰で規則とかの穴を突くのが上手くなっちゃってな」


「オイ、俺たちの関心を返せ」


「……うん。損な性格じゃなくて、いい性格してるよ」


テヘペロ。


ービキッ。


一瞬だけ空間に亀裂の入った様な音が聞こえた気がしたが、そう感じたのは俺だけらしく、雄一は何事も無かったかの様に俺の話を纏めに掛かる。……二人の顔に青い何かが浮かんでいる様に見えるのは気のせいだろう。


「つまり、学園の授業以外で何かやりたいと?」


「そういうこったな」


「冒険者じゃ駄目なの?」


首を傾げて聞いてくる翔吾に、俺は溜息をもって応えた。


「駄目っていうかなあ……。冒険者は自分たちの小遣い稼ぎの為になっただけだし」


「良いじゃんそれで」


まあ、普通に考えればそうなんだろうけども。俺の場合は少し異なるというか。


「でも、それだけなんだよ」


「それだけ?」


「冒険ってさ、金を稼ぐのもそうだけど、他にもスリルとかロマンとかを楽しむ要素も有ると思うんだよ」


「……まあ、確かに」


「分からなくはないな」


俺の言い分には共感出来るらしく、二人共うんうんと頷いた。


「だろ?……けどさ、俺にとってはスリルもロマンも有って無い様なモノな訳よ。客観的に見て、この世界で俺は最強だ。スリルなんてそうそう味わえん。宝だってそうだ。この世界で手に入らない様な代物が、俺の魔窟の中には腐る程入ってる」


この世界で天災とされる魔王。その一角であるガルマンと戦い、俺は危なげなく勝利……いや、圧勝した。


また、この世界では神の奇跡とされる死者蘇生。それを可能とし、一つで戦争にまで発展しかねないと言われた宝石は、俺の魔窟の中で無造作に山積みされている。


「危険も無い、宝の様なロマンも無い。そんなの冒険なんて言わない。只の作業だ」


勿論、冒険の楽しみがそれだけとは言わない。秘境を踏破し、未知の景色を見るのも良い。仲間と過ごし、馬鹿騒ぎをして絆を深めるの良い。新たな出会いも旅や冒険の醍醐味だ。


だが、残念ながらそれは出来ない。前提条件として、俺には学園生活がある。ここは俺たちが自らの意志で入って場所だ。それを途中で放り出すのは違うだろう。


「限られた時間の中で出来る冒険者の仕事なんて、小遣い稼ぎの作業以外の何物でも無い。それに時間を費やすのは何か違うだろ?」


ぶっちゃけてしまえば、そんな作業なんて長続きはしない。俺も爺さんとかと同じで、基本的に面倒臭さがりな人種だ。


だけどその反面、


「俺がしたいのはもっと面白い事だ。単純で退屈な作業じゃない。楽しくて、賑やかで、騒がしくて阿呆らしい!心が躍る様な馬鹿騒ぎをして、知り合いたちと面白可笑しい事がしたい!」


騒がしいのが大好きなお祭り好きな人種でもあるのだ。


そうじゃなければ、過去に紹介した師天の皆とオリジナルラピ○タ製作、ガン○ム全シリーズ連続視聴や、未だに紹介していないモンス○ーボール開発事件、ドラゴ○ボール製作事件、悪魔○実品種改良事件など、各会社から訴えられそうな馬鹿騒ぎをやりまくっていない。


普通の人間ならばドン引きする様な事であっても、それが面白そうならばやる。他人の人生を狂わす様な事でなければ、俺は躊躇する事は無い。もしそれで身体の半分を失ったとしても、俺はケラケラ笑って『面白かった』と言うだろう。


狂ってる。頭がおかしい。多くの人が俺の事をそう評し、批判する筈だ。


当然だ。俺が異常なのは俺自身が自覚している。


だってそうだろう?これまでの人生で多くのトラブルに巻き込まれまくった挙句、世界すら意のままに出来る力を手に入れたのだ。それも十何年しか生きていない様な若僧が、だ。これで狂わない方が、逆に狂ってると俺は思う。


多くの人が、狂ってる自覚があるなら改めろと言うだろう。だが、俺に改める気は無い。


俺はこの考え方に誇りを持っている。力に翻弄されるのは人間の性だ。力によって、考え方が悪にも善にも転がってしまうのが人間だ。これを改めて、克服してしまった時、俺は本当の意味で人間を辞めてしまう。例え身体が人間を辞めてしまっても、精神だけは人間でいたいのだ。


トラブルメーカー、面倒臭さがり、馬鹿、お祭り好き、エゴイスト、快楽主義。これ等が桜木雲雀の根幹。俺が怪物ではなく、人間として生きる為の中核だ。


だからこそ、俺は面白そうと思った事をやる。やりたいと思った事をやる。


「フィクションを再現するのも良い。自分の妄想を現実化させるのも良い。それが面白そうな事なら、俺は喜んで手を貸そう。翔吾や雄一の頼みなら断る理由なんて無い。途中で仲良くなった奴らも加えるのも面白そうだ」


「ーーうん、そうだね。ところで雲雀」


柄にもなく熱を帯びていくのが分かる。


似たような事はクラックでも散々やった。だからこそ分かる。親しい奴らで馬鹿やる事の楽しみが。


俺の体質を知りながら、それでもずっと付き合ってくれた親友たち。そんな二人とこれからは馬鹿が出来るのだ。良く考えると、それが楽しみで仕方ない。


「今から夢が膨らむよ。クラックでも楽しんだけど、やっぱり二人がいないと物足りなくてさ」


「ーーおーい、雲雀、ねえーー」


雄一と翔吾。親友二人に向き直り、俺は誘う。


「だからさ、何かやろうぜ。日本じゃ絶対に出来ない様な馬鹿な事して、この世界を精一杯楽しもうよ。翔吾、雄一」



……


………あれ?


向き直った先にいたのは、呆れた顔の翔吾。


「凄い興奮して熱弁するのも良いし、その内容に関しても特に異論は無いけどさ。少しは周りも見ようね?」


……翔吾、ただ一人。


「雄一、長そうだからって一人で教室戻っちゃったよ?先にお昼食べてるってさ」


辺りを見回してみれば、確かに雄一の姿が見えない。……ついでに言うと、俺と翔吾以外の姿も見えない。


「ほら、雲雀も行くよ。ここに残ってるの、もう僕たちだけだから」


手招きして先を促す翔吾だが、俺はその場に崩れ落ちた。


「うわっ!?ちょっ、如何したの雲雀!?」


何と言うか、翔吾以外に誰もいない状況で熱弁を振るってた事とか、本人が居ないのに雄一に語り掛けてた事とか、他にも色々な事実が俺の心に突き刺さってきた。


うん、つまりアレだ。


「……もう、いっそ殺せ……」


恥ずかしくて死にそう。

ちょっと本気でクラックの事を書きたくなりました。自分でも雲雀が何やらかしたのか気になる……

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