フラグ回収
2/7、色々と編集しました。
学校からの帰り道の途中で、俺はさっき建ったと思われフラグについて二人に尋ねた。
「なあ、今回のフラグ、何が起こると思う?」
俺の疑問に、先に答えたのは雄一だった。
「……そうだな、俺の予想としてはやっぱ無難に犯罪系かな」
犯罪が無難と言う辺り、常識人な雄一も相当に毒されてると思う。
「僕は超能力とかそっち方面だと思う。雲雀の予想は?」
当然とばかりに返ってきた質問に、俺はしみじみと答えた。
「やっぱ何も起こらないが一番かな」
「ないな」
「ないね」
即答である。まあ予想はしていたが。
「今回は今までと違ってタメがある。それで何もないなんて流石に希望的観測がすぎる。言っただろ?嵐の前の静けさだって」
諦めろと言わんばかりの解説。だけど、ここで引いたら駄目だろう。
「そりゃそうだけど、何もないのが一番だろ?」
細やかな反論だが、それでも何もないが一番の筈だ。
これには二人とも同意らしく、うんうんと頷いていた。
「まあでも、今回はものよってはかなり楽かもしれないぞ」
話の流れに乗る様に、雄一が言い出した。
「何で?」
楽観的なその言葉に翔吾が首を捻る。
「そりゃあ、こいつがいるからだ」
そう言って、人差し指を俺へと向けてきた。人を指差すなこの野郎。
「雲雀が?」
「ああ。今までの場合、例外はあるが大抵は荒事とかそっち方面だ。だから俺達は苦労してきた。そりゃあ、雲雀と一緒に巻き込まれてるから、そこらの一般人よりは全然強い。潜った修羅場の数が違う」
「………」
「………俺達、高校生だよな?」
自分達のあまりにもあんまりな経験に遠い目をする二人。巻き込んでる身としてはかなり申し訳ない。
「正直、すまんと思っている。………でも、反省はしているが後悔はしていない‼︎」
「「やかましいわ!!」」
ユニゾンでツッコミ入れられた。解せん。……いや嘘だけど。
「はあ………。まあ兎も角、幾ら俺達が普通じゃない経験を積んでても、結局俺たちは高校生だ。子供に出来る事なんてたかが知れてる。……でも、今回は違う。雲雀は異世界で英雄に担ぎ上げられるぐらいの力があるようだし、ましてや魔法が使えるんだ。大抵の事はなんとかなる筈だ」
「……なるほど、納得。じゃあ、頼りにしてるね雲雀!」
大体の人間が思わず見惚れてしまうだろう笑みを浮かべて言う翔吾。
その微笑みを前に浮かんだ感想は一つ。それ即ち、
「クソ!これが美少女だったらよかったのに!!」
この理不尽な世界への怨嗟である。
「まーた言ってるよ……」
「当たり前だろうっ!!」
呆れる二人だが、その反応には否と言いたい。
翔吾の容姿はかなり中性的である。身長もあまり高くなく、女物の服を着せれば普通に女子に見えるくらい可愛いらしい。更に性格も優しくてノリが良いと文句無しだ。
つまりどういう事かと言うと。……翔吾はハイレベルの男の娘なのだ!
「いや違うから!!」
ついでに言うと、雄一の容姿も悪くない。身長は高く、キリッとした顔にメガネといった、まさに知的ですぞいって顔立ちだ。
つまり、俺達三人の中では、俺が一番平凡な容姿をしているのだ。(よく、顔と取り巻く実情が反比例しているといわれる)
これは余談だが、何故これ程の容姿を持った者が二人もいるのに、クラスでは二軍なのかというと、俺たちの会話を所々聞いた者達から中二病の集団だと思われているからである。……それでも、雄一と翔吾はそこそこモテるが。チッ。
そんな風に理不尽なこの世に唾を吐きかけていると、雄一がふと気になった様に聞いてきた。
「そう言えば、美少女って言ってるけど、お前異世界でハーレムとかしなかったのか?」
「ん、なんで?」
「いや、だってお前、英雄にされたんだろ?だったら女囲うのなんて簡単に出来そうだろ?」
「そういえばそうだね。そんこんとこどうなの雲雀?」
「あー……」
やはり二人も男の子のようだ。こうゆう話題は興味があるらしい。
だが、現実はそんな良いもんじゃない。
「そりゃあ、出来なくはなかったけど、やろうとは思わなかったな」
「なんで?」
「ハーレムが男の夢なのは認めるけど、実際はやりたいとは思えんよ。あの世界は確かに一夫多妻が認めらていたけど、複数の女性を娶るにはある程度以上の権力や地位が必要になる。そうすると、今度は財産やら跡目やらでかなりの泥沼になるんだ。それこそ、昼ドラなんて可愛いく思えてくるぐらいのな」
頭の中に過去の苦々しい映像が映し出される。欲望に溺れた権力者たちに、名声しか見てなかった女ども。はっきり言って、トラウマものだ。
「つまり、簡単に言うと?」
「男の夢であるハーレムは物語の中か、当事者を含む周囲が良く出来てなきゃ、ハッピーエンドにはならないんだよ。絶対にな」
「夢も希望もないな」
「でも、本当にエグいぜアレ。本妻や妾、子供どうしの殺し合いなんてしょっちゅうあったし」
「うわぁ………」
「だからむしろ、漫画やアニメみたいなハーレムが現実にあったら見てみたいよ。関わりたくはないけど」
ああいうのは遠目から眺めているに限る。傍観者であるから楽しめるのであって、当事者だったら色々と気が気じゃないだろう。
ハーレムについてそう再認識していると、ちょんちょんと翔吾が肩を突いてきた。
「ねえねえ。ハーレムってあんな感じかな?」
「ん?」
翔吾の目線の先には、男子一人と女子三人、計四人の高校生ぐらい男女が仲良く話している姿があった。……いや、仲睦まじいと表現するべきだろうか。
「………」
年頃の男女としては大層珍しい光景を前に、頭の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。隣を見れば、雄一も苦虫を噛み潰した様な表情となっていた。
「………なあ、雄一」
「なんだ雲雀」
「俺は今、そこはかとなく嫌な予感がするんだが?」
「奇遇だな。俺もだ」
「えっと、二人ともどうしたの?」
翔吾は分かってない様だったが、俺と雄一は概ね同じ考えみたいだ。
「どうすればいいと思う?」
「そんなの決まってる」
雄一が何も分かっていない翔吾の手を引いて踵を返し、
「逃げるぞ。走れ!」
駆け出した瞬間。
辺りが光に包まれた。




