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フラグは折るよりも建たない様にするべきだ

ちょっと遅れちゃったかな?どうもこにゃにゃちわ(死語)。

ようやっと、次回から学園の話に入れそうな所まで来ました。

いやー、大変だった。話が逸れるはグダグダになるはで、やっと学園タグが活かされる時が来るのだもの。

………こんな事を書きながら、次回が登校風景で終わりそうな気がするみづどりです。


ではまた次回。………これって後書きで書くべきじゃね?

クラリスの手を引いてパーティー会場を抜け出した俺は、周りに誰も居ない事を確認してから、クラリスに掛けていた魔法を解く。


「あ、あの!貴方は一体……?」


魔法を解いた事によって正気に戻ったらしく、クラリスは俺から警戒する様に距離を取った。その瞳には、多くの疑問の光が浮かんで見える。恐らく、何故見知らぬ男の言う事に従っていたのか、そもそも目の前の使用人風の男は何者なのか、とか考えているんだろう。


「あ、貴方は何者ですか?この家には貴方みたいな使用人はいない筈です」


うん、超警戒されてるねこれ。何か、どんな事をされようとも私の心は屈しません、的な決意を感じる。よく見たら膝がぷるぷる震えてるし。産まれたての子鹿を連想した俺は間違って無いと思う。


取り敢えず、とっとと正体をバラして、クラリスの警戒を解くことにする。見てる分には可愛いんだけど、こうなってる原因が自分だから罪悪感がヤバイ。


「そう警戒すんなクラリス。俺だよ俺」


「………え?」


幻覚の魔法を解きながら話し掛けると、ぽかんと口を開けるクラリス。数秒程固まっていたクラリスだが、思考が現実に追いついたらしく、恐る恐ると尋ねてくる。


「ヒバリさん………ですか?」


「そうです私が変なおじさんです」


「はい?」


あ、異世界だからネタ通じねーか。


微妙に距離を取り始めたクラリスに傷付きながら、パタパタと手を振って冗談だと弁明する。


「あー、別にトチ狂った訳じゃないからね。只の冗談だから。場を和ませようとしたのよ」


「はあ………」


「まあ失敗したけどね。流石に異世界のネタには反応出来ないよなー。お陰でクラリスにも変人認定されちゃったみたいだし」


「いえ、その………」


否定はしないのね。うん、分かってますよコンチクショー。


微妙に俺が落ち込んだのを察したのか、クラリスが慌てて話し掛けてくる。


「あ、あの!それで、さっきの使用人はヒバリさん、という事ですか?」


「そそ。俺だよ俺」


あからさまな話題転換だったけど、ここは正直に乗っておく事にする。………まあ、乗るも何も、大して落ち込んでないし。


俺の肯定を聞いたクラリスは、いきなり頭を下げてきた。


「助けてくれてありがとうございます」


「んにゃ?別に頭なんて下げなくて良いよ。ありゃ流石に見過ごせんし。どう考えても相性が悪い」


先程の典型的なバカ貴族と思われるハンス。見た所、あれは権力に弱い。目上の人間には媚びへつらうが、下の人間は虐げて高笑いするタイプ。後は、自己主張が激しく野心家。競争相手を貶めて上に上がろうとする人間だ。


逆にクラリスだと、アール一家の家風だろうが、権力云々には興味が無いと思われる。また、相手によって態度を変える事も無いだろう。性格も内気で、誰かの後ろに居る事が多そうだ。爺さんが前に言っていたが、かなりの努力家らしく、才能に驕る事なく魔法の鍛錬は欠かさないとか。


結論から言えば、二人の人間性は真逆と言える。相性最悪。水と油、光と闇、月とスッポン。………最後のは違うか。いや、性格的な意味なら的を射てると思うけど。


「実を言うと、前からハンスさんの対応には少し困ってまして」


うん、だろうね。表情は苦笑になってるけど、言葉は辛辣だ。対応って言ってる辺り、本当に迷惑だったんだろう。空気とか読まなさそうだし、アイツ。


「今回は魔法使ってあしらったけど、あれはマトモに相手してたら疲れるだろうからなぁ。………あ、事後承諾で悪いけど、さっき魔法掛けさせてもらったから。ゴメンね」


「い、いえ!私を助ける為の魔法だったんですよね?だったら謝らないで下さい」


勝手に魔法を掛けた事を謝ると、クラリスはそう笑って許してくれた。なんと心の広い事だろうか。クラリスちゃんマジ天使!………自分で言っておいてアレだが、気持ち悪いなオイ。


そんなアホみたいな事を考えていると、クラリスがおずおずと話し掛けてくる。何やら聞きたい事があるみたいだ。


「あのお聞きしてもよろしいでしょうか?先程は、一体どのような魔法を使ったのですか?」


「ん?【悪魔の囁き】の事?」


「悪魔、ですか……?」


「そそ。あの悪魔だよ。人を惑わし、たぶらかす。性格最悪なあの悪魔」


俺の言葉に困惑な表情を浮かべるクラリス。まあ、その表情も分からなくはない。悪魔なんて物騒な単語が混ざっている魔法だ。ヤバイ効果を連想しても不思議じゃない。と言うより、実際にヤバイ魔法の部類に入る。使い方を誤れば、絶対に碌でもない事になる。魔法を管理する組織があれば、確実に禁忌指定される様な魔法だ。


その効果は唯一つ。シンプルで、明瞭で、単純故に強力だ。


「精神干渉。『人間』を対象とした、言葉による絶対的な強制。これがあの時に使った魔法」


跪けと言えば、相手は躊躇いも疑問も無く跪く。記憶を消せと言えば、自らの意思と関係無く相手の記憶は消える。死ねと言えば、葛藤も無く自らの手で命を捨てる。【悪魔の囁き】はそういう魔法だ。


驚きに目を見開くクラリスに、俺は静かに尋ねてみる。


「怖い?こんな魔法を平然と使う俺は?」


ここでクラリスが怖いと返せば、俺は彼女からさっきまでの記憶を消す。そして適当に辻褄合わせをしてから、必要以上に彼女と関わらない事にする。………いや、重い感じで言ってるけど、この程度で堪えてるようじゃストレス溜まって身体に悪いよ、って事だから。後、毎回毎回、何かしでかす毎に怯えられると面倒だって理由もある。


さて、見た感じ臆病なお嬢様は、一体どんな反応をするでしょう?


「怖くは……ないです。ヒバリさんは、怖い事する人じゃ無いって思ってますから」


「………へ?」


あれ?何か結構信頼されてね?数日前に会ったばっかなのに。


「だって、魔法を使ったのも私を助ける為だったんですよね?目立ちたくない筈なのに、そんな強力な魔法を使って、凄い魔術師だってバレるかもしれないリスクを負ってまで私を助けてくれた人を、怖いなんて思う訳ないじゃないですか!」


………おおう。盛大に勘違いしちゃってるよこの娘。いや、絶対にバレない自信があるから使っただけなんですが。


つーか、何でこんなに信頼されてんの俺?俺何かしたか?


「いや、俺ってかなり黒いよ?間違っても善人なんて呼ばれる類いの人間じゃないよ?」


「そんな事ありません!!」


「うおっ!?」


何で!?正当な自己評価下したのに何で怒鳴られてんの!?何でこんな好感度高いの!?


「会ったばかりですけど、ヒバリさんは優しい人だって私は思ってます。周りの人が貴方をどう評価しようが関係ありません。私がそう思っているのですから」


「いや、クラリスの評価だとそうなのかもしれないけど。客観的に見たら本当に屑の部類に」


あれ、俺何してんだろ?何が悲しくて自分で自分をディスってんだろ?


「ヒバリさんは、何の見返りも無しに、絶対に助からないと言われたお父様とお母様を助けてくれました。上手く会話する事も出来ない私に、優しく笑い掛けてくれました。家柄や容姿、魔法の才能なんて関係無く、普通に接してくれました」


「………」


やめて!!そんなに褒めないで!褒め殺しはツライの!恥ずか死にそう!私のライフはもうゼロよ!?


「私が望んでやまなかった事。それを貴方は与えてくれた。私には、ヒバリさんが悪い人だなんて思えません」


………いや、冗談抜きでコレはツライ。治療の件は宿代みたいなものだし、笑顔云々は苦笑か愛想笑いだと思う。それか脳内でボケてたか。普通に接してくれたって部分も、爺さんの身内だから気にしないだろうって思ったからだ。


なのに、こうもキラキラした瞳というか、尊敬の眼差しというか、そんなモノを向けられたら堪える。色々とささくれ立った俺の心には、彼女の純粋な感情は眩し過ぎる。


「美化し過ぎだよ……。俺は本当にそんな上等な人間じゃない」


こうなったのは、タイミングが悪かったのだろう。恐らく、ライデンさん達を治療した時にある程度の好感度を得ていたんだと思う。その好感度の所為で、俺のボケた態度を気遣った行動と勘違い、今回の手助けでトドメとなった筈だ。………うん、凄まじいまでのすれ違い。ここまで行くといっそ清々しく感じるよ。


「クラリスが望んだ事を与えたって言ったけど、それだってノリと勢い、勘違いが重なって、偶然そういう結果になっただけだ」


さて、現在の状況において、俺にはやるべき事が出来た。それを現実に移す為に、何かを言いたそうなクラリスを遮って言葉を続ける。


「でも、そう言ってくれた事には悪い気はしなかったよ。まあ、かなり照れ臭かったけど」


「え?………あ!……あの、私、凄い事、言っちゃてました?」


「うん、かなり」


どうやらクラリスは、自分がかなり恥ずかしい事を言っていた事に気付いてなかったらしい。慌てる彼女の姿にほっこりしながら、俺は話を続ける。


「狙ってやった訳じゃないけど、それがクラリスの為になったって言うなら良かったよ。身内を助ける事が出来たんだから」


「身内……ですか?」


「そだよ。少なくとも俺の中じゃ、クラリスは身内、家族やそれに近しい部類に入ってる」


……さて、ここで俺が何をしようとしているかを説明しよう。もう気付いてる人も居るかもしれないが、俺がこんな気障なセリフを吐いてるのには訳がある。


フラグを折る為だ。


ちょっと何言ってるか分かんない?いや、だからフラグだよフラグ。俺はクラリスに恋愛フラグが建つのを防ごうとしているんだ。


………言いたい事は分かるよ?自惚れんな、だろ?でもな、ここまで好感度が高いと、何かの拍子で親愛の情が愛情に変わりかねないんだよ。


勿論、クラリスには俺に良い感情を抱いて欲しいし、仲の良い関係になりたいと思っていた。けど、それは親友や兄妹といった、仲は良いが恋愛対象になる事はまず無いであろう立ち位置になりたいのであって、懇ろな関係になりたい訳では無いのだ。


「俺はクラリスの兄貴分みたいな存在になりたいって思ってるんだ」


俺の予定では、馬鹿な兄や悪友みたいな印象を与えながら程々の好感度を稼いで、最終的には恋愛対象外の親しい人間になる予定だった。


それがどうだ?いつの間にかクラリスにはメッチャ信頼されてて、恋愛対象外の印象を付ける前にかなりの好感度を稼いでしまっている。完全に予想外の事態だ。


とは言え、こうなってしまっては仕方が無いと思う。人生で予定通りに進む事など殆ど無いのだから、今回の事も割り切った方が良い。大人しく現実を見据えるべきなのだ。


「勿論、クラリスが嫌なら今まで通りに接するよ。………けど、心の隅には留めておいて?まだ出会ったばかりだけど、俺は君を身内、妹分みたいに思ってる。だから困った時には頼ってくれ。一応内容によるけどさ、俺に出来る事なら協力を惜しむ事はしないから。遠慮なんて必要無いぞ?俺の中では、身内を助ける事は当たり前なんだから」


そして俺が選択したのは、今からでも恋愛対象外ポジションに着こうとする事だった。何回も身内や兄妹といった言葉を繰り返して、俺がそういう立ち位置に居る人間だと印象付けようとしたのだ。


現状、彼女の上がった好感度は俺がどうこう言った所で下がる事はないだろう。だからと言って、俺がクラリスに魔法を使うという選択肢は存在しない。何故なら、俺が嫌だからだ。確かに、魔法を使うのは最も確実で堅実な手段だとは思う。しかし、この行動の根底にあるのは俺の感情なのだ。それ故に、何より優先されるのは合理性や計画性ではなく感情だ。


そして、その感情が魔法を使う事を否定している。これは俺のエゴなのだ。そのエゴの為に他人の心、それもクラリスの様な純粋な少女の心に強制的に干渉するなど、俺の矜恃が許さない。だから俺は魔法は使わない。話術の類いは使うかもしれないが、魔法を使って強制的に干渉する事は絶対にしない。


「出来れば俺はクラリスとは兄妹の様に親しくしたい。クラリスはどうかな?……嫌かな?」


………とは言え、こうもクサイ台詞を何度も吐くのはかなり堪える。自分が王子キャラ(笑)みたいになったみたいで吐き気がするんだよ。


さて、この身を削る想いで行った作戦だが、クラリスなどんな反応をするか……。場合によっては、ベッドでもんどり打ちながら次の作戦を考える必要がある。


「………それはつまり、何の垣根も無く私と接してくれる、という事ですか?」


よしっ。


「言っただろ?俺はクラリスの兄貴分みたいになりたいって」


「………本当ですか?」


よしよしっ。


「何だったら、お兄ちゃんって呼んでも良いぞ?」


「……お、お兄ちゃん……?」


たどたどしくも兄と呼ぶクラリス。その姿を見て、つい小さくガッツポーズをしてしまった。どうやら俺の作戦は成功したみたいだ。うん、本当に良かった。………いや、でも調子に乗ったかも。お兄ちゃんは恥ずかしい……。


「あ、あの!……まだ恥ずかしいので、流石にお兄ちゃんはちょっと……」


クラリスも恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤にしながら訂正を求めてきた。………って、ん?『まだ』?……いや、気にしないでおこう。


「……けど、本当に良いんですか?私はこれでも公爵家の娘です。私に気安く接してたら、ハンスさんみたいな貴族が何か言ってくるかも……」


「んなの関係ねーよ。クラリス、先に言っておくけどな、俺と俺の仲間達は、色んな意味で常識が通用しねーから。心配する必要は無いさ」


不安気な表情を浮かべるクラリスに、俺は不敵に笑って宣言する。どうやらその効果は合ったらしく、彼女の不安気な表情は綺麗に消えた。


「さて、一応確認するけどさ。クラリスは俺が妹分みたいに接する事には反対かな?」


最終確認の気持ちでクラリスに聞いてみる。すると、彼女は笑って


「そんな訳無いです。これからよろしくお願いしますね、お兄様」


………あれ?何か変な単語が混ざってた気が?


「……えっと、クラリスさん?兄呼ばわりは恥ずかしいんじゃ?」


「確かにお兄ちゃんは恥ずかしかったです。だから、間を取ってお兄様にしました」


確認の為にクラリスに尋ねると、少し恥ずかし気に彼女から答えが返ってきた。怯えた様な雰囲気も無くなって、口調も敬語ではあるが、かなり砕けたモノに変わっていた。


「それじゃあお休みなさい、お兄様。確か、明日からはお兄様も学園ですよね?一緒に通える事を、クラリスは楽しみにしてますね」


「………うん、そだね。そ、それじゃあ、お休み、クラリス」


「はい!」


俺がお休みと返すと、クラリスは笑顔で自分の部屋へと去って行った。


その後ろ姿を見ながら、俺は首を傾げてしまう。


「作戦、成功か………?」


なんとか兄妹的ポジションには立てたが、それ以上に新たな地雷を設置してしまった様な気がする。


………まあ良いか。取り敢えず、恋愛フラグが建つ事は回避出来たと思うし。というより思いたい。


「恋愛か……。あーあ、普通の恋がしてみたいよ……」


全力でクラリスのフラグが建つ事を回避しようとした俺だが、別に恋愛がしたく無いという訳じゃない。むしろ、誰かと恋仲になりたいと思っている。ただ、特権階級の女性がダメなのだ。如何に美人や美少女であっても、相手になんの欠点が無かったとしても、どうしても特権階級の女性を恋愛対象として見る事が俺には出来無い。


「やっぱり、トラウマになってんのかな……」


過去のクラックでの二回の出来事。それが俺の心を縛る。


「……けど、あんなのは二度と御免だ……」


フィアの好意を全力でスルーしたのも、クラリスのフラグが建つのを全力で阻止しにいったのも、全て過去のトラウマが原因だ。


「……考えるだけ無駄だな……」


魔導師だった俺でも、このトラウマは改善する事が出来ていない。きっかけが何も無い以上、トラウマについて考えた所でどうしようもないのだ。そんな風に感傷的な思考を振り払い、俺は気持ちを切り替えて横になる事にした。


クラリスがパーティーから抜け出した事を爺さんに念話で報告した後、俺は静かに眠りについた。






翌日、朝食の席でクラリスにお兄様と呼ばれ、爺さんと一悶着あったのはまた別の話。

いやー、恋愛フラグは折れるべし。はいこれ名言。テストに出るよー。

さて、クラリスがメインの話でしたが、どうでしょうか?何気に妹キャラとなった彼女です。………そして、久しぶりにフィア登場(名前だけ)。

あれ、おかしいな?メインヒロインっぽい感じで最初は書いてたんだけど、出番が無い。何故?

答え.作者の構成が下手だから。


という訳で、徹夜明けテンションのみづどりでした。

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