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パーティーは楽しいです

はいどうも、みづどりです。

久しぶりの投稿です。いやー、遅くなってすみません。もう一つの作品の「最弱勇者の大革命」を書いた後に書いたので遅くなってしまいました。一応、すこし前には戻ってはいたんですけどね。


さて、今回の話ですが、久しぶりすぎて感覚が訛っていまして、文章的に変な所や、誤字脱字などが多発している可能性があります。なので、変な所を発見したら生暖かく見守るか、やんわりと指摘してくれたら幸いです。

煌びやかな装飾がされたダンスホールに、美しい音色のクラシック。テーブルの上には所狭しと並ぶ色鮮やかな料理の数々に、様々な服で着飾った紳士淑女。目の前で行われているのは、映画や劇でお馴染みの貴族のパーティーそのものであった。


「おおう、流石は貴族のパーティー。色々と派手だな」


ある意味でファンタジーの代名詞の様なこの光景は、何度見ても感心してしまうものだ。………まあ、こんな女の子の憧れみたいなパーティーでも、裏では腹の探り合いやら何やらでドロッドロな権謀術数ひしめく場だったりするんだけど。


本当に、眺めてるだけなら綺麗で良いパーティーなんだけどなあ。クラックで散々こういう世界の裏を見てきた身としては、どうも素直に受けとめられないって言うか。穿った見方をしてしまうと言うか。………まあいいや。どうせ今回は俺は無関係だし。というより透明だから誰一人として俺の事に気付いてないし。


取り敢えず、当初の目的である食べ物の物色をする事にする。適当なテーブルに近づき、美味そうな食べ物を幾つか摘まんでいく。勿論、食べる時には偽装と隠蔽用の魔法を発動している。これで、いつの間にか食べ物が減っていても気付く人間は居ない。………あ、翔吾用に魔法で写真撮っておこう。


「………お、あっちにも美味そうな料理あんじゃん」


今いる場所の反対側にあるテーブルには、スペアリブの様な肉が補充されていた。出来たてらしく、白い湯気がなんとも眩しい。早速確保に向かう事にする。近くには何人かの貴族が固まって談笑しているが、透明だからバレる事は無いだろう。


『さて、あの話の事ですがーー』


『ーーいや、バルデン卿、それはやはり後程』


『やはりこの計画ーー」


俺が肉を取りに来た事には気付かず、貴族達は何やら話を続けていた。こんな公の場で話している事から大した内容、てか黒い内容ではないのだろう。だが、


(きな臭いな、この貴族達)


俺は彼等がまともな人間じゃないと確信した。

数々の狂人や外道を相手にしてきた俺には分かる。彼等の目の輝きは、他人の生き血を啜り悦に浸る外道のそれだ。


もし彼等に読心の類の魔法を使ったら、途轍もない量の埃が出てくるだろう。それこそ、小さな丘が出来る程に。そしてその丘は、彼等の被害者達の怨嗟によってドス黒くなっているに違いない。


はっきり言って反吐が出る。他人を貶めるのを是とする生き方も。そんな奴等が権力を握っている事も。そして何より、こんなめでたい場に平然と出席して談笑している事が気に食わない。


だから俺は彼等一人一人の顔を眺め、


(………肉取ってさっさと離れよう。ここで食ったら折角の飯が不味くなる)


関わらない事を決めた。



……


………え?何もしないのかって?いや、そりゃそうだろ。だって、この貴族達が外道って事が分かっただけで、今の所は実害無いんだし。


一応言っておくけど、俺が行動するのは自分と知り合いに飛んでくる火の粉を払う時と、目の前で事件が起こった時ぐらいだ。後は依頼とかの延長で行動するぐらいだろう。それ以外の場合は基本的に見て見ぬ振りをする。………まあ、偶に気まぐれ起こして全く関係無い事に首を突っ込んだりするけど。


それでも、基本的には関係無い他人の為に動く事を俺はしない。もし多くの赤の他人の為に行動したら、いつか俺の力が露見するだろう。そうなれば、勇者やら英雄やらに祭り上げられるのは確実。そんなのは絶対に御免だからだ。


だから俺は、俺と身内の為だけに力を使う。この考えを身勝手と言いたければ言えば言えば良い。薄情者と言いたければ言えば良い。鼻で笑ってその誹りを受け止めてやる。だって俺は、世界平和の願う聖人でもなければ、自己犠牲の出来る勇者でもないのだから。俺は唯の一般人で、自分の為にしか行動出来ない俗物なのだ。


(まあ、どっかの偉い人も言ってたしな。人間は自分の為にしか行動出来ない的な事)


誰がそう言ったかは覚えて無いが、いやはや全く、正しくその通りだと思う。どんなに正義だのなんだの言っても、結局は何処かに打算が入る。所詮、人間なんてそんなモノだ。何処までも俗物で、途轍もない程に愚かしいのだから。


………あーあ。何でこんなジジ臭い事考えてんだろ。今の思考って、完全に中二病か悟りを開いた坊主のそれだし。なんでこんな枯れた事考えてんだろ。俺まだピチピチの十代 (実年齢二十代)なのに。


(いや、ピチピチなんて使ってる時点でアウトかね?………まあいいか。さて、切り替えて飯漁りを再開しよう)


マイナス方面にシフトしていた思考を切り替え、かなりの量を食べても未だに収まらない食欲を解放する。


(これと、あれ、後は向こうの二皿。………お、あっちのデザートも良いな)


テーブルの上に所狭しと並んでいる料理の数々を摘み、気に入った物は保存の魔法を掛けて【魔窟】の中に放り込む。


既に食べた料理の質量は胃の許容量を超えているだろう。しかし、それでもまだ満腹になる事は無い。それは俺に掛かっている魔法の一つである【暴食】の効果である。簡単に説明するなら、あらゆる物を食べる事ができ、食べた物は即座に魔力や気といった生命エネルギーへと分解され、半永久的に身体の中に蓄えておく事が出来るという効果を持つ。


つまり、【暴食】という魔法は、蓄えられたエネルギーが尽きない限りは不眠不休で活動する事が出来るというチート魔法、という事だ。………まあ、開発された理由は途轍もないくらい馬鹿らしい理由なんだけども。いやだって、【暴食】開発された理由って、全ガン○ムシリーズを休み無しで鑑賞する為だからね。


はっきり言って、あれは地獄だった。先に弁明しておくけど、ガン○ムは面白かったよ?正に不朽の名作って作品だったし、ロボットの概念とかがあまり無い異世界の住人にも馬鹿ウケしたもん。………でもね、調子に乗って全シリーズを休み無しで制覇しようとしてみ?全シリーズだぜ?ガチで無謀だよアレは。それも普通に見てると時間が掛かり過ぎるからって理由で、通常の百倍ぐらいに体感時間と上映速度を加速させたデスマーチ。本当、よく廃人にならなかったよなぁ俺。………まあ、他のメンバーはピンピンしてたけどな!あの時程、師天のメンバーが化け物に見えた事なんて無いよ。


(改めて思い返してみると、若気の至りとは言え無茶したな俺………)


ついつい遠い目をしてしまう。あの時に実感した。楽しい事でも度が過ぎれば拷問だって。………まあ、それでも性懲りも無くバカな事を色々とやったんだが。


そのお陰で出来たのが、【暴食】を含む七つの強化魔法【大罪刻印】だ。………出来た経緯を考えると、俺にはこの魔法名がどうしようもなく名前負けしてると感じてしまう。


話がかなり逸れたが、何が言いたいのかと言うと、俺はまだまだ食べられるという事だ。


(………とは言え、これ以上食ったら流石に違和感を感じる奴も出てきそうだな。十分な量も食ったし、そろそろ引き上げるか?)


一応言っておくけど、隠れて摘み食いをしまくってる内に『俺、何してんだろう………』って思った訳じゃないからな。虚しくなった訳じゃないからな!本当だからな!


(………ヤバイ、テンションが変になってきた。部屋戻って寝るか)


大量の料理を食べた事の満足感が睡魔となり、俺の事を襲い始めた。その所為で、徐々にテンションが深夜の方面に傾きだしていた。これはマズイ。俺はハイテンションになると暴走と言っても過言ではない事をしでかす時がある。俺が冷静であれば暴走なんて基本的に起きる事は無いが、ここは貴族のパーティーだ。さっきみたいな貴族が糞みたいな会話をしていたら、もしかするとやらかすかもしれない。


寝起きで機嫌が悪かった時、八つ当たりで悪徳貴族を壊滅させたという前科がある以上、可能性は高い。


(流石にこの会場で問題を起こすのはマズイ。爺さん達の面子を潰す事になる)


主催するパーティーで問題が起きた場合、その責任は主催者に行く。爺さん達も貴族である以上は面子というモノを気にする必要がある。貴族という存在は、ほんの些細な事であっても、自分の失点を他の貴族に見せてはならないのだ。つけ込まれて不利な取引を持ち掛けられる事があるからだ。


クラックとは違い、この世界では俺の起こす行動の責任は後見人である爺さん達に行く。自分の尻拭いが出来無いのだ。衣食住の恩がある以上、彼等に迷惑を掛ける事など有ってはならない。なので、ここはさっさと退散するべきだろう。


(出口はあっちか。………おろ?クラリス?)


出口に向かう途中でクラリスを発見した。人混みの所為で視界がよいとは言えないが、それでも一目で彼女を発見する事が出来た。何故なら、ドレスで着飾った彼女が周囲の人間よりも一つか二つ程飛び抜けて美しかったから。


背中まで届く輝く様な金髪。少しばかり幼い顔立ちと、クリリと大きな碧眼。しかし、幼い顔立ちに反して身体にはたわわに実った二つの果実。その大きさは、露出の少なめなドレスの上からでもはっきり分かる程である。最近出会ったフィアが元気な妹キャラだとしたら、クラリスは気弱な妹キャラである。


そんな彼女は、彼女と同世代と思われる少年少女達に囲まれていた。学園の友人か、それとも貴族間での知り合いかは知らないが、彼等は楽し気に談笑をしているみたいだ。


(………いや、クラリスだけ愛想笑いっぽいな)


周りの連中は気付いて無いみたいだが、見た感じだとクラリスは周りと一歩引いて接しているみたいだ。とは言え、冷めているとかそんな感じでは無く、どちらかと言うとどう接すれば良いのか分からないと言った印象を受ける。………ふむ。爺さんの言っていた不器用とはこういう事か。どうやら彼女、気弱そうな見た目通り自分の意思とかを上手く伝える事が出来無いみたいだ。


(うーん。周りも気付いてやれよと思うけど、あの様子じゃ無理っぽい)


取り巻きの連中は誰一人としてクラリスの愛想笑いに気付いていない。いや、彼女と居る事に夢中でクラリス自身を見ていない、と言った方が正しいだろう。彼等の顔に浮かんでいるのは憧れと尊敬、多少の色欲だ。………色欲は男子が九割、女子が一割だった。女子に関しては考えまい。


爺さん曰く、クラリスはかなり優秀で、それに加えてあの容姿だ。一種のアイドルの様な扱いを受けていても不思議じゃない。そう考えると、取り巻きの連中は彼女のファンか親衛隊って感じだと思う。


そんな風に観察してたら、新たに一人の少年がクラリス達の方にに近づいていった。


(………なんだろう、凄くテンプレの予感がする……)


頭に浮かんだ予想にまさかと思いながら、彼等の話を聞くべく接近してみる。


「ご機嫌麗しゅうクラリス様。この度はご両親の快復、誠におめでたく思います。このハンス、心から御祝いを申し上げます」


「えっと、ありがとうございます。ハンスさん」


「いえいえ、勿体無いお言葉です。私とクラリス様の仲では御座いませんか」


「えっと、仲、ですか………」


困惑気味に返すクラリスに、ハンスは更に言葉を重ねていく。


「あの、ハンス殿。クラリス様も戸惑っておられますので………」


「うるさいぞ。私はクラリス様と話しておるのだ。大体、誰に意見しているつもりだ貴様?」


「も、申し訳御座いません!!」


(はい、アホ決定っと………)


助け船を出そうとした少年を、ハンスはジロリと睨んで黙らせた。恐らく、ハンスの家の方が少年の家よりも家格が高いのだろう。


それにしても、このハンスと名乗った少年、どうやら典型的な貴族の馬鹿息子みたいだ。さっきの少年の事もそうだが、動きの端々から尊大さと傲慢が滲み出ている。権力を傘に自分の好き勝手やるタイプだ。


(………しょうがない。助けるか)


見ていて思ったのだが、ハンスとクラリスの相性はかなり悪い。気弱な彼女には、ハンスの様な相手の事を考えない馬鹿はツライだろう。


魔法を透明化から幻覚の魔法に切り替え、特徴の無い男性使用人に姿を変える。勿論、急に人間が現れて騒ぎにならないように思考誘導の魔法を並列で発動させる。これによって、俺が予めそこに居たという風に周囲の人間に思い込ませる。


準備が整ったら、彼等の方にと向かっていく。


「失礼します、お嬢様」


「ん?なんだね君は?」


話の途中で突然割って入ってきた俺を見て、ハンスが不快そうにしながら聞いてきた。しかし、俺はハンスの事を無視してクラリスにと話掛ける。


「お部屋のご用意が完了しました。私めが付き添いますので、お部屋へと向かいましょう」


「え?あ、あの………」


「いきなり何なんだ貴様!一体何をしようとしている!」


無視した事に腹を立てたのか、怒鳴りながらハンスが詰め寄ってくる。


「お話しのところ申し訳ありませんが、お嬢様は体調が優れないようなのです。私めはお部屋の準備が整った事を報告しに参ったのですよ」


「体調が優れないだと?さっきまでクラリス様は元気に」


俺の言葉が納得出来ないらしく、ハンスはクラリスに確認を取ろうとするが、俺は彼のセリフを遮って言葉を続ける。


「[皆様。お嬢様はご退場いたしますが、ご心配は御座いません。どうかお気になさらず、引き続きパーティーをお楽しみ下さい]」


ハンスに対してではなく、周囲で見てる人達に向けて言葉を放つ。すると、取り巻きも含め、周りに居た人達はクラリスに一言二言だけ声を掛けて散っていった。


それを見て困惑するハンス。その後ろでは、クラリスも似た様な表情を浮かべていた。そんな彼女に笑顔で手を差し伸べる。


「[さて、お嬢様も参りましょう]」


「は、はい」


困惑していたのもつかの間、クラリスは迷わずに俺の手を取って歩きだそうとする。その顔には、自分は何故こうも素直に目の前の使用人の言う事を聞いているのかと、不思議そうな表情が浮かんでいた。それでも、クラリスは手を離そうとはしなかった。


「お、おい!貴様、使用人の分際でクラリス様の手を取るなど!」


後ろからハンスの怒声が聞こえてくるので、俺は振り返って、ハンスと周囲に言い聞かせる様に魔法・・言葉・・で語りかけた。


「[皆様。先程も申しました通り、どうかパーティーをお楽しみ下さい。主役の一人が退出する事を不快に思う方もいるかもしれませんが、どうかこの事は忘れ、ごゆっくりして頂きたく思います]」


「………そうだ、ライデン卿に挨拶をしてこなければ」


さっきまで声を荒げていたのが嘘の様に、ハンスは踵を返して歩いていった。周りの人達も、まるで何事も無かったかの様に談笑を始めた。


俺はその光景を一瞥した後、クラリスの手を引いて会場を立ち去った。

作中で登場した【大罪刻印】は、【暴食】の他に【憤怒】【色欲】【傲慢】【怠惰】【貪欲】【嫉妬】があります。


どれもこれもくだらない理由で開発されています。効果と開発エピソードはまた後日。

ネタの発信元は某アニメから。

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