勉強をしましょう
投稿がかなり不定期になってきました
んで、セリアさんの研究室。
「これから、三人に魔法について教えるわ」
多少の雑談を交わしてから、セリアさんが言った。
「先ずはスキルからね。魔法係のスキルは、他のスキルと多少違うの」
「違うって、何がですか?」
「魔法係のスキルは、才能による部分が多いのよ。剣術とかのスキルは、幾ら才能があっても、始めたばかりの頃はレベル1なの。どんなに才能があっても、素人なのは変わり無いから。でも、魔法は技術よりもセンスに依存しているの。・・・まあ、技術が要らないって訳じゃ無いけどね」
それは同感だ。魔法にセンスがいるのは確かだが、技術も必要になる。特に、規模や効果が高い魔法を発動する場合は、相応の技術が絶対に要る。でないと、魔法が発動しなかったり、最悪暴発する可能性がある。なので、一人前の魔法使いになるには、センスだけでなく技術も磨く必要がある。
俺がいた世界では、技術を磨き過ぎて魔法を即興で作るなんて非常識も、何人かいた。
・・・・・・俺もその内の一人だが。
「でも、魔法係のスキルは違うのよ。ステータスに魔法係のスキルがのっていなくても、魔法を使ってからもう一度ステータスを見ると魔法系のスキルがレベル2とか、それ以上のレベルで出てきていたなんて話しもあるわ」
そういえば、翔吾や雄一も、魔法系のスキルのレベルが初っ端から高かったな。
「なんでそんな事が起きるのかというと、ステータスは世界の認識だって言われてるでしょ?つまり、一度も使った事が無い技能は、世界から認識されていないから、スキルとして表示されないの。逆に、魔法系スキルが無いとしても
、才能が無いという訳じゃない可能性もあるの」
成る程。つまり、二人は魔法関係の適性が高かったから、スキルレベルがいきなり6とかだったりしたのか。
・・・・・・あれ?そう考えると、二人の方が、俺より魔法の才能あるんじゃね?
「先ず、貴方達には『魔力操作』というスキルを習得してもらうわ」
「「・・・・・・」」
セリアさんの台詞を聞いて、微妙な表情になる二人。
あー、そういえば持ってるっけ。
言うべきか、言わないべきか?
セリアさんは、ルーデウス王達との話し合いの場にはいた。話しても問題は無い。
「あの、セリアさん」
「どうしたの?」
「俺達、『魔力操作』のスキル持ってます」
「え?」
「あと、幾つかの魔法系スキルも持ってます」
「・・・・・・なんで?貴方達の世界には、魔法が無いのでしょう?」
「昨日の夜、城を抜け出して【王魔の樹海】でレベル上げをしたんです。その最中で覚えました」
あ、セリアさんが固まった。
「・・・・・・ねえ、今【王魔の樹海】って言った?」
「はい、言いました。・・・・・・あ、二人は俺の正体は知っているんで、一応」
「・・・そういう問題じゃ無くてね、ヒバリ君、君は【王魔の樹海】がどんな場所か知ってる?」
セリアさんが頭を抱えながら聞いてきた。
「レベル上げに持って来いの場所」
「全然違う!!!あそこは強い魔物達がうじゃうじゃいる、世界有数の危険地帯なの!!」
「っえ?だから持って来いじゃないですか」
ガックリと項垂れるセリアさん。
「・・・・・・お前、わざとやってるだろ?」
「実は微妙に機嫌悪いでしょ?」
後ろから二人が呆れ気味に言ってくる。
「いや、セリアさんって苦労人の雰囲気があったからつい」
何と無くイジメてみたくなるというか、色々と擽られるいうか。
「「 変態」」
「うん、否定はしない」
「「流石にそれは否定しろ!!」」
話題修正。
項垂れていたセリアさんに、レべリングの本当の目的を伝えて、話しを戻した。
「・・・・・・つまり、厄介事に対処できるくらいの力をつける必要があったと」
「まあ、そういう事です」
「それで、【王魔の樹海】って。君は本当に出鱈目ね」
セリアさんが頭を痛そうにして言った。
「まあ、雲雀だし」
「雲雀だからな」
「・・・・・・お前達は俺を何だと思ってるんだ?」
すかさず同意した二人に遺憾の意を示す。
「まあ良いわ。つまり、君達には魔法の訓練は必要無いって事で良いのね?」
「ええ、そういえ事ですね」
多少の罰の悪さを感じながら、セリアさんの言葉を肯定する。
「そう。だったら、君に聞きたい事があるのだけれど」
「聞きたい事?」
「ええ。異世界の魔法についてね」
「何故です?」
「それは勿論興味があるからよ。一人の魔法使いとしてね」
そう言ったセリアさんの顔は、好きなマンガの新刊が発売されるのを今か今かと待っている子供のそれだった。
まあ、その感情もわからなくもないが。
魔法使いというのは、神秘を探求する研究職みたいな物だ。そして、彼女は筆頭宮廷魔導師という位を持つ程の魔法使いである。それはつまり、魔導の深淵に通じている事に他ならない。
それ程の人物が、自分の知らない未知の魔法に興味を持たない訳が無いのだ。
かく言う俺も、この世界の魔法がどんな物なのか気になっていた。
「奇遇ですね。自分もこの世界の魔法に興味があります」
そう言うと、セリアさんが不思議そうにする。
「あら?二人はこの世界の魔法を使えるのでしょう?」
「はい」
「一応は」
話しを振られた二人は短く肯定する。
「確かに、二人は魔法を使えます。けど、使えるだけで把握はしていないんですよ。唯、出来そうな事をやっているだけなんです」
二人が使う魔法は、レべリングの最中で覚えた物、簡単に言うと我流だ。俺も所々でアドバイスはしたので実戦では一応使えるが、やはり基礎が出来ていない。
「俺も二人が戦えるように色々と技術を教えはしましたが、二人には根本的な事、魔法の知識が抜けています。それでは折角の技術が活かせない。だから、セリアさんにこの世界の魔法体系を教えて貰おうかと」
俺の言葉を吟味する様にセリアさんは頷いた。
「つまり、ヒバリ君は異世界の魔法を説明して、私は貴方達にこの世界の魔法を説明すると、こういう事?」
「駄目ですかね?」
「全然構わないわ。どのみち説明するつもりだったし、予定より早くなっただけだもの。それに、ヒバリ君の考えには賛成よ。技術を持っていても、理解が浅ければ効果が大幅に低下するし、理解が深ければ一層効果が高くなる。だから、先ず理解させふ為に二人知識を叩き込むと言う事でしょう?」
「ええ、その通りです。ついでに自分で盗めそうならば盗むつもりですが」
「貪欲に知識を求めるその姿勢、好感を持つわ」
どうやら、この人とは良い友人になれそうだ。
おもむろにセリアさんに近ずいて、握手を交わす。
「「ふふ、ふふふ!!」」
同志を見つけて二人で笑い合っていると、その光景を、頬を引きつらせながら見ていた翔吾と雄一がポツリと呟いた。
「・・・マッドサイエンティストみたい・・・」
「・・・アレはみたいじゃなくて、マッドサイエンティストそのものだ・・・」
セリアは基本的に苦労人です。でも、魔法の事になるとタガが外れます。




