フィアとお話し
7日ぶりかな?投稿します
フィアと一緒に俺は、リザイア王国へと転移した。
転移した場所は、フィアの私室である。
「これが転移・・・って!?私の部屋じゃないですか!?」
いきなり叫び出したフィアに驚きながら、慌てて結界を張って空間を閉じる。
「あー、悪い。記憶から読み取ると、どうしても一番印象に残ってる場所になっちゃうんだ」
「それを先に言って下さい!!」
どうやら余り部屋を見て欲しく無い様で、良いと言うまで目を閉じていろと言われてしまった。
後ろでは、ガサガサと音が鳴っている。どうやら、物を片付けている様だ。
そして数分後。
「・・・ふう。もう良いですよ」
許可が出たので目を開ける。
「・・・なんか変わった?」
片付けていた筈なのに、部屋は特に変化が見られ無かった。
「うるさいです。女の子は色々あるんです」
ジト目で言われたので、大人しく引き下がる。
「あー、うん。じゃあ、気を取り直して、フィアに頼みがある」
軽く咳払いをして、本題に入る。
「頼みですか?」
「うん。魔王の事を黙っていて欲しいんだ」
「え?」
この言葉には彼女も驚いたみたいで、目を丸くする。
「何故ですか?魔王を倒した事は途轍もない偉業なのですよ?」
「さっきも言ったけど、俺や仲間の二人の立場がちょっと複雑でな。余り目立たない様にしたいんだ」
もう既に目立っているが。
「フィアも、説明とかする必要があると思うから俺達の事は話してくれても構わない。でも、魔王の事は伏せておいて欲しいんだ」
「・・・分かりました。皆に説明する時は、魔王の事は伏せる事を約束します」
一応、納得してくれたのか頷くフィア。
「ありがとう。助かるよ」
「い、いえ、べ、別にお礼を言われる程の事では・・・」
フィアが、どもりながらも答える。
・・・すごく分かり易い。
「それじゃ、俺はそろそろ帰るから」
何と無く気まずくなったので、俺は逃亡を選択した。
「あ、あの!また会えますか?」
恐る恐るといった感じで聞いてくるフィア。
「あー、えっと、一度行った場所だったらもう転移出来るから、会おうとすれば何時でも会えるが」
「本当ですか!!」
俺の答えに、花が咲く様な満面の笑みをフィアが浮かべる。
その顔に内心悶えながら、顔に出さないで雲雀は続ける。
「といっても、流石にそうそう転移する事は無いと思うよ」
「・・・・・・そうですか」
あからさまに落ち込むフィア。
その姿に頭を抱えながら、魔窟に腕を突っ込み、一つの指輪を取り出す。
「コレあげる」
「え?・・・指輪ですか?」
指輪を確認したフィアの顔が、次第に赤くなっていく。
「あ、あのあの、こ、こここれって、ゆ、指輪ですよ!?さ、流石にそれはまだ早いと思いますが勿論嫌って訳じゃなくて物事には順序があるというかまずはお互いの事をちゃんと知ってからでも遅くないというか」
呂律が回らない程に狼狽え始めたフィア。何と無くその理由が予想出来るが、あえてスルーする事にした。
「その指輪は通信用の魔道具だ。用事があったらそれ使って。使い方は、俺の名前を頭に思い浮かべながら、『コール』って念じればいいから」
フィアは、説明を聞いてキョトンとする。暫くしてから言葉の意味を理解したのか、先程よりも顔を赤くして叫んだ。
「あわわわわ!!あの、これは、その、そういう意味じゃ無くてその!えっと、ですからその・・・」
「それじゃ、準備出来たし帰るわ」
狼狽える姿を見ていられなくなったので、フィアの静止の言葉を無視して転移する。
その後、フィアは自分のベットでずっと転がっていた。
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「あ、帰ってきた」
転移で部屋に戻ると、翔吾が座っていた。
「あれ?雄一は?」
「寝てるよ。かなり疲れてたみたいだったから、戻ってくるなりバタンキューってね」
「あー、やっぱ無茶だったか。てか、翔吾は寝なくていいのか?」
「僕も眠いけど、雲雀の事が気になってね」
ニヤニヤと笑いながら聞いてくる翔吾。
翔吾は浮いた話しが大好物だったりする。見た目といい性格といい、つくづく女子っぽい男子である。
「あの後、結局どうなったの?」
「うっさい。別に何も無い。送った後は、魔王の事を黙ってくれるよう頼んで、通信用の魔道具を渡して終了だよ」
「本当にそれだけ?」
「ああ」
「本当に?」
「しつこい!」
何度も確認してくる翔吾。その姿は完全に女学生のそれである。
「・・・はあ。全く、雲雀は」
「オイ、なんだその溜息?」
「女心が分かってないよ、まったく」
「お前も男だろうが」
翔吾は、俺に向けて呆れた様な表情をする。
「雲雀もあの娘の様子を見たでしょう?まさか、いくら主人公体質だからって、あれを見て気づかないなんて無いよね?」
「流石にそこまで鈍感じゃねえよ」
俺は主人公体質なだけであって、主人公では無いのだ。漫画やアニメ、ラノベに登場するような鈍感な人間では無い。
「だったら、もう少しなんかなかったの?なんで何もしないのさ」
「一国の王女を相手になんか出来るかい。もれなく厄介事が付いてくるだろうが」
「そんなの何時も事でしょ。僕や雄一だって、そういう厄介事だったら喜んで力を貸すのに」
「嫌に決まってるだろうが。野次馬根性丸出しで何言うか」
明らかに面白がっている表情を浮かべる翔吾に、半眼で突っ込む。
「えー、折角面白そうなのに」
「・・・オイ、本音漏れてんぞ」
「おっと、失敬」
この野郎。キャラが違いすぎだろう。
「つーか、子供のプライベートにお袋が首突っ込んでくんな」
「僕は雲雀の母親じゃないよ!?」
翔吾に、意趣返しを含めたボケを返す。
「はいはい、分かったから早く寝ろ。お前さっきから瞼が下がってきてんぞ」
会話の途中でも所々で落ちそうになっていた。
「ぶーぶー!!」
「・・・・・・なんだったら、魔法で強制的に眠らしてやろうか?」
「・・・遠慮しとく」
軽く脅したら、翔吾は大人しくベットに入って行った。
翔吾がベットに入ったのを確認したら、魔法を発動する。
「今のは?」
「簡単な回復魔法だよ。これで起きたら、疲れは残って無い筈だ」
「相変わらず、便利だね」
「まあな」
関心した様子の翔吾に短く返事を返して、俺もベットに向かう。
すると、
『あ、あの、フィアですけど、ヒバリ様、聞こえてますか?』
早速フィアから連絡が着た。
「どうしたの?」
急に動きを止めた俺を見て、翔吾が尋ねてくる。
「あー、フィアから連絡が着た」
俺がそう答えると、翔吾が目を輝かしながら起き上がる。
「本当に?どんな理由で?」
「うるさいな。今それを聞く所だよ」
「やっぱりアレかな?なんだかんだで理由を付けて、雲雀と話しがしたかったのかな?」
ウキウキした顔でフィアの理由を想像する翔吾を無視して、フィアと会話する。
『早速なんかあったのか?』
『実は、その・・・』
何て言えばいいのか迷っている感じが、声から伝わってくる。
なかなか言い出さないフィアの様子から、翔吾の予想が当たったかなと思っていると、言いづらそうな声音で用件を言ってきた。
『あの、部屋から何故か出られないのですが』
・・・あ、結界解くの忘れてた。




