フィリアの不幸と幸運 その1
長くなりそうなんで分けました。
フィリアの視点で書いてます
<フィリアside>
私の名前はフィリア。
フィリア・マキ・リザイア。
大国、リザイア王国の第三王女です。
この肩書きの性で、私は小さい頃から色々な目にあってきました。
派閥争いに巻き込まれたり、権力争いによる誘拐、挙句の果てに暗殺まで。
国王であるお父様は、私には女の子として幸せであって欲しいと言っていますが、それは叶いません。
どんなに願っても、王族という身分が邪魔をします。どんなに望んでも、第三王女の肩書きが妨げになってしまう。
恐らく、私は遠くない未来には、政治の道具として好きでもない人と政略結婚を行っているでしょう。
私は、この肩書きと身分の所為で、厄介事からは決して逃れられないのです。
そんな私に、人生最大の不幸と、人生最大の幸運がやって来ました。
その日は、私は他国で開かれるパーティーに出席する為に、馬車に乗っていました。
なんでも、ルーデウス王国で召喚された勇者のお披露目をするそうです。
勇者は、魔王復活を目論む魔人達に対抗する為の存在です。
勇者召喚は、太古から存在する特殊な魔法陣を使用する必要があり、その魔法陣を所持している四ヶ国が行うことになっています。リザイア王国もその一つで、近々行う予定になっています。
そのパーティーに向かう途中で、それは起こりました。
「退屈です」
馬車の中で、外の景色を見ながらつい呟いてしまいます。
「フィリア様、馬車の旅が暇なのは同意しますが、意識しますと余計にそう感じてしまう物です。ですので、あまり口に出さない方がよろしいかと」
私の世話役として同乗している執事、バロンがそう嗜めてきます。
「そうかもしれませんが、やはり退屈です」
何もなく、ただ淡々と進む馬車。
「何事も無く、平和な旅路という事ですよ」
バロンの言葉に返事を返そうとした時、爆音と衝撃が馬車を襲いました。
「何事だ!!」
バロンが直ぐさま近くの兵士に尋ねると、兵士は狼狽しながら答える。
「魔人です!!魔人がこの馬車を攻撃しています!!」
「魔人だと!?」
バロンが驚愕の声を上げる。
魔人。それは魔物の上位種であり、強い個体なら一体で国を相手に出来る、魔王に次ぐ厄災です。
そんな存在がこの馬車を狙っている。
その恐怖に、私は震えが止まらなくなってしまういます。
「フィリア様!急いで避「させねーよ」っ!?」
バロンが私を連れて避難しようとすると、それを遮る様に魔人が現れました。
「女、お前がフィリア王女か?」
この言葉で、魔人の狙いは私だと分かりました。
「貴様!フィリア様をどうするつもりだ!?」
バロンが私を魔人から庇う様に前に立ちます。
「黙れ。人間風情が」
その言葉と共に、バロンが吹き飛ばされる。
「バロン!?」
「安心しろ。普段なら殺す所だが、生憎と今は急いでいてな。この場にいる人間を皆殺しにする時間すら惜しい」
魔人が言いました。どうやら、無駄に殺すつもりは無いみたいです。目的はあくまで私という事でしょう。
魔人が私の手を掴みます。
「さあ、私と一緒に来てもらおう」
そして、私の意識は暗転しました。
目が覚めたら、私は手足を縛られた状態で祭壇の様な場所に寝かせれていました。
周りには、複数の魔人が私を取り囲むようにしていました。
その光景に恐怖しながら、情報を集める為に私は魔人に問います。
「一体何が目的ですか!」
「どうせ死ぬ貴様に教えても意味がない」
魔人の一体がそう答えます。やはり、私はこの場で殺されるようです。
予想はしていましたが、改めてそう言われた事で身体が死の恐怖で震えてしまいます。
「いや、冥土の土産に教えてやっても良いだろう」
蛇の魔人がそう言い出しました。恐らく、この魔人がリーダーなのでしょう。
「貴様は魔王ガルマン様の復活の礎になってもらう。ガルマン様の封印を解くには貴様の血が必要でな。故に貴様は、この場で死んでもらう。誇りに思え人間。貴様の命がガルマン様のお役に立てるのだから!」
私はその言葉を聞いて絶句してしまいました。
魔王ガルマン
それは、物語にも登場する太古の魔王。かの魔王は、絶対的な力の権化として英雄譚では描かれています。その力の強大さから、かつての英雄達も討伐する事が出来ず、多大な犠牲を払ってなんとか封印することが出来たと言われています。
そんな魔王の復活する。それも、私の血によって。
その事実に、私は絶望しました。
魔王が復活してでる犠牲を想像してしまったのです。かつての英雄達でも封印するのがやっとだった魔王が、私の家族を、友を、国の民を蹂躙する。そんな光景を想像して。そして、その光景の原因が私だという事を理解して。
魔人が刃物を持って近ずいて着ます。
必死抵抗しますが、逃れられません。
魔人が腕を振り上げる。
嫌だ。来ないで。死にたくない!死なせたくない!誰か、誰か助けて!!
しかし、魔人は腕を振り下ろし、私を刃物が貫いた。




