表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/123

夏だ! 休みだー!

新章開幕。という訳で少し短めです。


誤字脱字の可能性大です。

季節は夏。社会人にとってはただただ暑苦しい時期だが、学生たちにとっては嬉しい長期休暇の時期だ。


燦々と照りつける太陽の光。短い命を必死に燃やして飛び回る虫たち。どちらも鬱陶しいものだが、長期休暇という単語が付いてくるだけで清々しいものに変わる。


それほどまでに、学生にとっての長期休暇は輝かしいものなのだ。


なのだが、


「俺自身はそうでも無いんだよなぁ……」


俺はそう言ってため息を吐いた。


その時に漏れた声は、自分でもびっくりするぐらい暗い声だった。窓から見える景色は晴れやかなのに、俺の周りだけはどんよりと薄暗い。周りの雰囲気が明るい分、なんていうか落差が凄い。


「どうしたの雲雀? やけに暗い声出して」


そんな俺の言葉に反応したのは、ティーポットを持った翔吾だった。どうやら部屋にいるメンバーの為にお茶をいれてくれたらしい。気が利く。


「……本気で翔吾が女だったらなぁ」


「……え、急に何? キモイんだけど。マジで何かあったの?」


そう言って、全力で後ずさる翔吾。いや、うん。確かに今のは俺でもキモイと思うわ。


「悪い、失言。いや、ちょっと女性関係で悩んでたから、つい」


思い出すのは、先日の武闘大会である。あれによって、俺の女性関係が急変したのだ。


翔吾もそれを察したようで、あーと納得の声を上げた。


「てことはフィアちゃん絡みか。まあ確かに色々と変わったもんねあの娘」


「……うん、まあな。本当にあのバカ娘には苦労してるよ、うん」


「何か歯切れ悪いね? フィアちゃんの事で悩んでるんじゃないの?」


「……あー、まあ、そゆこと」


俺の反応に、怪訝な表情を浮かべる翔吾。


いや、うん。確かにフィアについても悩んではいるのだ。だがそれよりも、フィアの方から派生した問題の方が、俺にとっては悩みの種なのだ。


「………最近さ、家の妹が怖いんだわ……」


これが俺の目下の悩みである。


「妹って、クラリスちゃん? 何かしたの? 覗きでもした?」


「お前は俺を何だと思ってんだ」


「馬鹿だよ」


「馬鹿だろ」


言うと思ったよ。そして雄一もここで会話に入ってくんなや。罵倒出来るタイミングになった途端、嬉々として入ってきやがって。


「馬鹿」


「ドロップはドロップでタイミングをズラしてくんな!」


時間差で来るとツッコミが追い付かないから! それに地味にダメージくるんだぞ!


「で、覗いたの?」


「覗いてねえよそんなしょうもない事で悩みはしねえよ」


何で何時でも出来る事で悩まにゃいかんのだ。もっと別の真面目な理由だっての。


「ほら、この前の件からフィアが色々とはっちゃけだしただろ? お陰でクラリスがなぁ……」


あの日を境に、フィアは色々な意味で変わった。性格的には鬱陶しいぐらい積極的になったし、実力的には手がつけられなくなった。そして何より、師天メンバーの影響をモロに受けやがった。


お陰でやりたい放題だ。人のベットに潜り込むし、俺の出掛けた先で待ち構えてるし、いつの間にか隣にいるし、逃げようとしても逃げた先にいるし。


「何がタチ悪いかって、目的がただ俺の近くにいようとするだけってのがなぁ。ストーカーの怖さを思い知ったわ」


今までストーカーされた事が無かったという訳じゃないが、今回とは状況が違う訳で。基本魔導師は何でもアリなので、対処が異常にムズイのだ。後はフィアにストーカーらしさが無いってのも、対処に困る一因になっている。あのバカ娘、頭のネジが緩い所為か、ストーカーやヤンデレ特有のドロっとした雰囲気が基本無いのだ。清々しい笑顔でストーキングしてくるので、余計に怖い。


「……それ結局フィアちゃんの悩みじゃない?」


「これだけだったらそこまで悩まねえよ。度が過ぎたらシバキ倒せば済むんだから」


「シバキ倒すってお前な……もうあの娘に対して遠慮なくなってんじゃねえか」


「当たり前だろ。もうあのバカ娘は俺とほぼ同格だ。遠慮なんかしてらんねーよ」


万能系チートキャラに遠慮なんかしてたら、こっちが向こうのペースに飲み込まれるわ。


「フィアちゃんが雲雀と同格ねぇ……。何か、あんまそんな感じしないんだけど。強いイメージが湧かないって言うか」


「そりゃそうだろ。フィア弱いし。翔吾と雄一だったら、いい勝負すると思うぞ」


まあ、いい勝負をするだけであって、勝つのは絶対に無理だけど。


「え? そうなの?」


俺の言葉に、意外と声を上げる翔吾。雄一も声にこそ出していないが、似たような表情を浮かべていた。


「二人は俺を基準に考えてんだろうけど、そもそも俺の身体能力は付与魔法ありきのものなんだよ。それが無けりゃ身体能力はお前らと大して変わんない。そんでもってこの付与、というか【大罪刻印】なんだけど、師天メンバーには掛けてるけど、フィアには掛けてねえんだよ。だから身体能力は未だにお姫様レベル。お前らと正面から戦えば、フィアの腕じゃ確実に押されるよ」


あー、でも魔導師になった時に強敵を倒してる訳だし、レベルアップして身体能力も上がってる可能性もあるか。まあそれでもトントンだろうけど。能力スペックというよりも技術スキルの問題で。


「フィアって戦闘で必要になるようなスキル持ってないからなー。ステータス的に言えば、戦闘系のスキルは軒並みレベル1か2だと思うぞ」


多分だけど、人を殺した事も無いんじゃないか? それだったらやりようはあると思うんだ。覚悟が決まる前に畳み掛けるとか。


「ならどうやって絶対強者とやらを倒したんだよ。魔導師になれたって事は、そいつを倒したって事だろ?」


「あ、確かに。戦闘技術無いのに倒せるものなの?」


「気合いと執念と狂気だろ」


「ひーへの愛と執着と狂気だよ」


二人の疑問に、俺とドロップはほぼ同時に答えていた。内容も大方似たようなもので、つまりこの答えこそが、当事者たちにとっての共通認識だと言う事だ。俺への愛については何も言うまい。


ただ魔導師では無い二人にとっては違ったようで、何か微妙な表情をしていた。


「……なんか根性論みたいだね」


「確かに似てるっちゃ似てるが、実際は全然ちげえぞ。根性論ってのは英雄や勇者の領分であって、魔導師に必要なのは狂気。目的の為ならどこまでも堕ちていけるような壊れた価値観だ。根性論なんて清々しいものと比べちゃ駄目だよ。清水とコールタールぐらい違うんだから」


マッドサイエンティスト、狂信者、戦闘狂など、彼等は戦うと妙な力強さやしぶとさを発揮する人種である。その理由は、彼等の狂った価値観にある。真の意味で目的の為に、自分の価値観の為に手段を選ばない彼等は、選ばない故に強いのだ。


「……そんなんで本当に倒せるの?」


「そんなん言うな。結構大事な事だぞコレ。壊れた価値観があるからこそ絶対強者と戦えるんだ。自分の価値観、もはや信仰とも言えるそれは、よっぽどの事じゃ折れないし曲がらない。そうなると絶対強者と対峙しても諦めるという選択肢が出てこない。ココが重要だ。選ばないんじゃない。出てこないんだ」


英雄や勇者と呼ばれる人間と、狂人が違うのはここだ。弱い心を克服するのが英雄や勇者、そもそも弱い心が存在しないのが狂人だ。


「狂人のみが魔導師になれるってのはコレが理由なんだ。同格や格下が相手でも、心の弱さ負けたりする事もあるんだぜ? ただでさえ絶対に勝てない力の差があるんだから、心に弱さを持ってちゃ、本当にどうしようも無えだろ」


故にそこがスタートライン、完全な0が完全じゃない0になる訳だ。そして後は頑張れば、晴れて魔導師の仲間入りとなる。


「……うん、その頑張ったの部分を僕ら訊きたいんだけど」


「長々とした説明の割に、肝心の部分を喋って無えじゃねえか。理不尽が理不尽になる為のキッカケのキッカケの話とか、正直どうでもいいんだよ」


そういう事を言うんじゃねーよ。俺だって脱線してるとは思ってるけど、この辺りもそろそろ掘り下げる時期なんだから。


「お前が一番そういう事を言うじゃねーよ」


「特大のブーメラン投げて楽しいの?」


うん。


「まあぶっちゃけ、フィアが魔導師になった経緯は俺も詳しくは知らないんだわ。何かドロップの魔窟に邪神の類と一緒にぶち込んで、万から億単位のトライアンドエラーを繰り返したらしいけど」


因みにエラー=死。


「うわぁ……。僕だったら確実に精神病むか崩壊するわそれ。コンテニューを協力して貰えば魔導師になれるかなとは思ったけど、やっぱり現実ってそんなに甘くないか。むしろよくフィアちゃん成功させたと思うよ……」


だよね。その意思とやらは一周回って尊敬出来るんだけど、問題は俺にそれが向いてるって事なんだよね。怖い。


「万から億単位で死ぬとかドン引きだわ。幾ら戦闘系のスキルが皆無だとしても、そんな怪物の相手は絶対御免だわ。いい勝負すると言われてもやりたくない」


うん、俺も死に慣れてる相手とは絶対やりたくない。死んだら復活なんてサイクルが確率されてる相手と殺し合いとか、泥仕合になるのが目に見えてるし。


「やっぱ前言撤回するよ。フィアちゃんも十分強いわ」


「戦闘技術は未熟でも、理不尽には変わりなしって事だな」


まあ、実質的な不老不死を相手に勝つとか不可能だからな。どんなに技術があっても最終的には押し負けるし、フィアは魔導師だから火力は最強格だし。こうなってくると、戦いを知らないお姫様でも関係ない。無敗の最弱とでも言うべきかね?


……寒い事を考えたら正気に戻ったわ。何を巨大魚みたいな二つ名をフィアに贈呈しているのだろうか俺は。脱線するにしても酷すぎるだろ。


「あーっ、もう! ちゃうちゃう、こんなをしたいんちゃう!」


「チャウチャウ? 犬の話?」


「そっちちゃう!」


「ちゃうちゃう五月蝿い」


「チャウチャウ?」


アカンこれ無限ループする奴や。


「そ・う・じゃ・な・く・て! 盛大に話が脱線したけど、本題は俺の悩みだろうが!」


「ちゃうちゃう」


「合ってるよ!」


「COWCOW」


「クルックー?」


「もうイヌ科でも無えじゃねえか! お待ち一度ボケ始めると止まんねぇなオイ!」


ただでさえ二人ともツッコミ属性の癖してボケを重ねてくるタイプなのに、そこに生粋のボケ属性としてドロップが加わったのだ。これではボケを捌ききれない!


「という訳で灰猫先輩ヘルプ!」


割と常識人枠なキャラに助太刀要請だ!


「騒ぐなら出てけ!!!」


因みに今いるのは学生会室です。俺たち、夏休みの癖に登校してます。

魔導師についての補足、という名の蛇足。だってこれ無かったらオチまで凄い短くなるんだもん。それ以外に他意は無し。


因みにフィアですが、実際ルールありの勝負をするとなると多分弱いです。殺し合いになると強いけど。殺す覚悟と魔導師の戦い方を理解すれば最強の仲間入り?【テーマ】に関してはまだ習得してません。


強さで言えばこんな感じ。


師天メンバー〉〉〉フィア〉翔吾と雄一〉〉他キャラ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ